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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y11 |
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管理番号 | 1172731 |
審判番号 | 不服2005-49 |
総通号数 | 99 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2008-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-04 |
確定日 | 2008-01-30 |
事件の表示 | 商願2003-55116拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 本願商標 本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第11類「懐中電灯」を指定商品として、2003年1月21日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成15年7月2日に登録出願されたものである。 第2 原査定の理由 原査定は、「本願商標は、懐中電灯をライトの点灯部分を左斜め下に向けた図形であると認められるので、これを本願指定商品に使用しても、単に商品の品質等を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 第3 請求人の主張(要旨) 1 本願商標が商標法3条1項3号に該当しない理由 (1)請求人(出願人)(以下、単に「請求人」という。)「マグ・インスツルメント社」は、当該懐中電灯の比類なき耐久性、耐衝撃性、耐腐食性等は各種業界における信頼を得ることとなり、今や請求人の懐中電灯は世界各国の警察、軍隊、消防等のプロ仕様の懐中電灯として正式に採用されるに至っている。 (2)インターネット上で「マグライト」を検索すると、32,100件ものヒットがあり、その中には多岐にわたる請求人の一連の商品を紹介しているウエブサイトが多数見受けられ、請求人は、「懐中電灯」の製造販売会社として今や世界的に周知著名となっている。 ちなみに、日本では請求人商品のデザインは日本デザイン学会の賞を受賞したこともある。 (3)本願商標は、現実に製造販売されている請求人商品を平面的に表したものである。請求人は、「懐中電灯」の胴体部分に2本線を施し、この2本線を施すことで他人の商品と識別することを意図したものである。すなわち、請求人は、いわばアディダス社のスニーカー等における3本線の如く「懐中電灯」の胴体部に2本線を施して、そこに請求人商品を特徴づけ、需要者に印象づけ、他社商品と識別させ、需要者の記憶に定着させることを意図したものである。 本願商標の如くデザインされた「懐中電灯」を製造販売しているのは、知る限りにおいて請求人1社のみである。 (4)この2本線は、懐中電灯の機能を確保するために不可欠とはいえず、そこに本願商標の独創性があるといえる。 すなわち、2本線を入れた「懐中電灯」図形が「普通に用いられる方法で表示する」商標に該当するとはいい難い。「懐中電灯」図形を普通に用いられる方法で表示するとは、何らデザインの施されていない懐中電灯の形状そのもののみを表示することを意味するものである。 以上よりすると、本願商標が全体として識別力を有していないとはいえない。 (5)我が国には、米国のようなプロダクトデザインマークを保護する制度が実質的になく、商品それ自体のデザインを識別標識として保護する場合、本願商標の如く平面的に保護するしかない。それが識別力なしとして拒絶されていたのでは、他人が同様のマークを用いることを許すことになる。本願商標と現実に販売されている商品が密接なつながりを有することは言うまでもなく、本願商標が登録されず、本願商標と同一・類似の商標の他人による使用が許されるならば、出願人が不利益を被ること疑いないところである。 (6)一方、本願商標が登録されたとしても、第三者が不利益を被ることは考えられない。本願商標の権利範囲が当該商標の同一・類似範囲内であることを請求人は認識しており、その権利範囲外で、他人が「懐中電灯」を図案化して使用することをなんら制限するものではないからである。「懐中電灯」の図案化は千差万別考えられるはずである。 したがって、本願商標は、その指定商品について識別力がないとはいえず、登録されて然るべきである。 第4 当審の判断 1 本願商標は、別掲に示すとおりの構成よりなるところ、請求人自らも認めているとおり、指定商品「懐中電灯」の形状の一を表したものと容易に理解されるものである。 そして、本願指定商品である「懐中電灯」は、近年の防災用品(2004年9月1日「朝日新聞 大阪朝刊」)として、またアウトドアー用品としても着目され、従来の商品と比較して、その機能性が改良され、それとともに様々なデザインが施されたものが販売されているのが実情であり、このことは、以下に示す事実からも認められるところである。 (1)「LIGHT*MANIA(懐中電灯趣味のサイト)」の「Review 」(http://fuja.s22.xrea.com/index.shtml)に、「市販品、メーカー品」として、相当数の懐中電灯の現物写真が掲載されている(http://fuja.s22.xrea.com/review/index.html)。 (2)「日本フラッシュライトチャンネル」(http://www.lightch.com/)の「あかるい National」に、相当数の懐中電灯の現物写真が掲載されている(http://www.lightch.com/national/index.html)。 (3)「フラッシュライト・LEDライト・懐中電灯の特価販売ページ」(http://www.akaricenter.com/akari_kaichuu.htm -)の「Akaricenter」に、相当数の懐中電灯の現物写真が掲載されている。 2 上記の(1)ないし(3)における現物写真の「懐中電灯」には、頭部あるいは胴体部に輪状の切り込み模様等が施されているものが相当数掲載されており、これらのことよりすると、本願商標に表示された「懐中電灯」は、たとえ頭部から胴体にかかった部分に2本線が施されているにせよ、格別独創的な形状、デサインが施されているとはいえず、取引者、需要者をして、通常施されるデザインの範囲内の程度にしか認識されないものと解されるというのが相当である。 そうとすれば、本願商標は、これをその指定商品「懐中電灯」について使用しても、取引者、需要者は、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示したものと認識するに止まり、それ自体、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。 3 請求人の主張について 確かに、請求人は、懐中電灯の製造販売会社として著名であることは認められる。 しかし、請求人が著名であることと、本願商標自体の自他商品の識別標識としての機能とは直接的には関わり合いのないものである。 請求人は、「懐中電灯の胴体部の2本線が機能を確保するために不可欠とはいえず、本願商標は独創性がある。」旨の主張するが、上記2のとおり、たとえ該2本線が機能を確保するためのものでないとしても、本願商標は、格別独創性を有するデサインであるとはいい難いし、該2本線は通常施されるデザインの範囲内の程度といわざるを得ないものであるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。 また、請求人は、「『懐中電灯』の図形を普通に用いられる方法で表示するとは、何らデサインが施されていない懐中電灯の形状そのもののみ意味するものである。」旨の主張するが、この点についても、上記2のとおり、たとえデサインが施されているとしても、通常一般に施されたデサインの範囲内であれば、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ないから、この点に関する請求人の主張も採用できない。 さらにまた、請求人は、「我が国には、米国のようなプロダクトデザインマークを保護する制度が実質的になく、本願商標の如く平面的に保護するし かない。そして、本願商標が登録されず、本願商標と同一・類似の商標の他人による使用が許されるならば、出願人が不利益を被ること疑いないとろである。」旨、及び「本願商標が登録されたとしても、第三者が不利益を被ることは考えられない。本願商標の権利範囲が当該商標の同一・類似範囲内であることを請求人は認識しており、その権利範囲外で、他人が「懐中電灯」を図案化して使用することをなんら制限するものではない。」旨の主張する。 しかし、米国のプロダクトデザインマークを保護する制度は、その詳細、目的、趣旨が明らかではないし、また、たとえ該制度が我が国に存在していないとしても、平面図形商標である本願商標を登録すべきであるとはいえないことは明らかである。また、本願商標が登録されたとしても、その商標の権利範囲がいかなる範囲であるか請求人は認識しており、第三者に不利益を被らせないとする旨の主張も、そのことをもって本願商標を登録すべきであるとはいえないことは明らかである。 そして、米国における保護、我が国における意匠法による保護、また我が国における平面商標の自他商品の識別力については、それぞれの法目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力等が定められているものであるから、上記の請求人の主張も採用できない。 4 むすび したがって、本願商標は、指定商品の形状を表示したものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は正当であって取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本願商標 |
審理終結日 | 2007-08-27 |
結審通知日 | 2007-08-28 |
審決日 | 2007-09-18 |
出願番号 | 商願2003-55116(T2003-55116) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(Y11)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松田 訓子 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
石田 清 橋本 浩子 |
代理人 | 樋口 豊治 |
代理人 | 西津 千晶 |