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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1172465 
審判番号 無効2005-89040 
総通号数 99 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2008-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-22 
確定日 2008-01-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4570604号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4570604号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4570604号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年6月7日に登録出願、第25類「履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成14年5月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番を含む。)を提出した(なお、甲号証及び乙号証の枝番を有する証拠について、枝番のすべてを引用するときは、以下、枝番を省略する。)。
1 請求の理由
(1)請求人適格
請求人は、履物を製造販売するブラジル国法人であり(甲第3号証)、別掲(2)のとおり、水平方向に長い楕円形の外周上に沿って多数の略半円の花びらを連想させる形状を配し、当該楕円の中心部に「azaleia」(「e」には、アクセント記号が付されている。以下同じ。)の文字とその下に小さく表した「Brasil」の文字を有する商標(以下「請求人商標」という。)を請求人の業務に係る履物(以下「請求人商品」という。)に使用し、かつ、請求人商標は、ブラジル国のほか、世界49カ国で商標登録を受けている(甲第4号証)。そして、請求人は、請求人商標を日本国に登録出願したところ、本件商標を引用した拒絶理由通知を受けた(甲第5号証及び甲第6号証)。
したがって、請求人は、本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあり、本件審判を請求することにつき、法律上の利益を有する者である。
(2)被請求人について
被請求人は、日本国内でスポーツシューズ及びスニーカー等の輸入販売を行う法人である(甲第7号証の1)。
ところで、甲第7号証の1の差出人は、大阪市天王寺区大道2丁目1番23号所在のDAIWA Corporationであるところ、本件商標の商標権者は、大阪市北区大淀北1丁目5-29-702に所在のダイワ企業株式会社である。請求人の調査によれば、インターネット上に「ダイワ企業株式会社」(住所:大阪市天王寺区細工谷2丁目5-2)の掲載があり、そのホームページ(甲第8号証)によれば、(a)会社の英語表示として、DAIWA Corporationの記載があること、(b)甲第7号証の1に表示されている「dk」の特徴あるマークと同一のものが掲載されていること、(c)甲第7号証の1に記載されたFAX番号と同じものが記載されていること、(d)甲第7号証の1に記載された代表者の苗字び名前のイニシャルと同一のものが記載されていることが認められ、これらの事実から、甲第7号証の1の差出人が甲第8号証のダイワ企業株式会社であることは明らかである。
そして、インターネット上のダイワ企業株式会社のホームページ(甲第9号証)には、同社の取扱いに係るブランドが掲載されているが、これらのブランドについて、被請求人は、被請求人名義で登録ないし登録出願をしている(甲第10号証)。
以上のことから、インターネット上のダイワ企業株式会社と被請求人は同一法人であり、かつ、甲第7号証の1は、被請求人によって作成されたものであることは明らかである。
(3)本件商標と請求人商標との類否について
本件商標は、欧文字の「azaleia」(「e」には、アクセント記号が付されている。以下同じ。)を最上部に書し、その下に、4種類の音訳を片仮名表記してなる文字商標である。これに対し、請求人商標は、欧文字の「azaleia」を中央部に有する文字と図形の結合商標であるところ、その態様から「azaleia」の文字が最も看者の注意を引く部分と認められる。該文字は、英単語ではなく、日本国内で広く一般に知られたものではないから、特定の意味合いを持たない造語と認識されると解するのが自然である。
したがって、本件商標と請求人商標は、「azaleia」という要部が共通する結果、全体として互いに類似する商標というべきものである。また、指定商品も「履物,運動用特殊靴」において抵触する。
(4)取引関係の存在
(ア)請求人と被請求人との間で、以下のとおり、代理店契約に関する交渉があった(甲第7号証の1ないし5)。
(a)甲第7号証の1(2001年5月7日付け書簡)からは、被請求人が、マミン氏を通じて請求人商品の存在を知り、請求人のカタログを同氏から入手し、請求人商品のサンプルを送付するよう求めていること、(b)甲第7号証の2(2001年5月8日付け書簡)からは、被請求人がカタログから気に入った商品のうち、製造を中止している商品についての問い合わせをしていること、(c)甲第7号証の3(2001年5月9日付け書簡)からは、被請求人が取引したい商品の具体的な品番及び取引数を提示して、交渉内容が具体的になっていること、(d)甲第7号証の4(2001年6月8日付け書簡)からは、被請求人が請求人から購入したい商品を具体的に特定し、数量・色彩・サイズ・値段等に具体的に言及して交渉していること、 (e)甲第7号証の5(2001年6月8日付け書簡)は、サンプルについての要求を請求人に対して行っていることが、それぞれ窺える。
(イ)被請求人は、上記経緯で請求人との代理店交渉を進めていた最中の2001年6月7日に、本件商標の登録出願をした。
なお、請求人は、その後の被請求人との取引事実を証明するために、インボイスの写しを提出する(甲第7号証の6ないし13)。これらの証拠からは、請求人と被請求人とが、商品名を「AZALEIA」とする履物の取引をしたことが窺える。そして、各インボイスには、請求人商標と同一の商標が明示されている。
(ウ)以上の事実から、被請求人は、請求人商標が請求人商品に使用される商標であることを、本件商標の登録出願日前に十分認識することができる立場にあったことは疑う余地はない。
(5)本件商標の登録出願に関する許諾の不存在
(ア)甲第7号証からは、請求人が被請求人に対し、請求人商標と類似する本件商標の登録出願をすることを認めた事実及び請求人が日本の市場にまったく興味がないという意思表示をした事実も確認することはできないし、また、請求人と被請求人との交渉の内容も、通常の代理店交渉の域を出ておらず、被請求人が独占的に請求人商品を日本国において販売できる旨の内容が当事者間で交渉されたことを示す記載はまったく見当たらない。
(イ)請求人は、請求人商品を販売する国に商標登録する場合は、自社名義で行っており、現地代理店に商標登録を認めることを基本方針としていない(甲第4号証)。
(ウ)よって、請求人が、被請求人に対し、日本国に限って本件商標の登録出願を現地代理店に許諾したと解釈する具体的事実はまったく存在しておらず、被請求人が本件商標を登録出願した行為は、請求人の感知しない状況で無断で行われたものである。
(6)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性
(ア)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は登録することができない旨を規定しているところ、東京高裁[平成16年(行ケ)第7号]判決は、「・・・特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である。」(甲第11号証の1)との見解を示している。また、平成11年審判第35257号及び平成6年審判第3450号における各審決(甲第11号証の2及び3)においても、上記判決と同様の判断をしている。
(イ)そこで、本件についてみると、「azaleia」の文字は、請求人の名称の一部であり、世界50カ国で商標登録を受けており、請求人商品を示す商標として請求人が所有し、使用しているものである(甲第3号証ないし甲第5号証)。そして、前述のように、被請求人は、2001年5月上旬から請求人と代理店交渉を始めており、その時点で請求人のカタログを入手済みである(甲第7号証の3)から、被請求人は、請求人商標が請求人にとって重要なものであることを認識できる立場にあったにもかかわらず、請求人と代理店交渉の最中に本件商標を請求人に無断で登録出願している。これらの事実に加え、「azaleia」という単語が日本人一般にとって馴染みのないものであり、被請求人の名称と何ら関係のない言葉でもあることから、請求人との代理店交渉以外に、被請求人が「azaleia」の文字を有する本件商標を登録出願する動機が見当たらない。
上記事情を総合勘案すれば、特定の商標の使用者(請求人)と一定の取引関係その他特別の関係にある者(被請求人)が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情が存在することは明らかであり、このような本件商標の登録出願の経緯は、著しく社会的妥当性を欠くものであり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものというべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)「azaleia」の語について
被請求人は、ポルトガル語の辞書に掲載されている事実を根拠に、「azaleia」は造語ではない旨主張するが、請求人は、「azaleia」について、前述のとおり、日本国内で広く一般に知られた単語ではないから造語と認識されると解するのが自然であると主張しているのであって、「azaleia」は造語であると主張しているわけではない。そして、ポルトガル語が日本国内において一般的に親しまれている外国語ということができないことは、日常の経験から明らかである(甲第12号証)。乙第3号証ないし乙第5号証に示す事実は、日本国内で広く一般的に知られていることを示す目的で指摘しているものではないことは明らかである。
(2)取引関係の存在について
甲第7号証の1ないし5について、被請求人は、単にサンプルを取り寄せただけであって代理店契約を要求していないから代理店契約はなかった旨を主張する。
しかし、甲第7号証の1の第3段落において、被請求人は、請求人のスポーツシューズを販売することを考えていると明確に意思表示していることに加え、甲第7号証の4の2頁において、請求人商品を最初の注文として、4800から6000足を考えているとし、さらに、請求人商品を日本において紹介する計画について3つの段取りを例示していることから、被請求人が請求人商品を日本国内において販売する意思をもって請求人に接触していたことは明らかである。
加えて、請求人は、2001年9月19日に、被請求人に対して1368足の請求人商品を輸出しており(甲第7号証の6及び7)、1368足という規模からすれば、単なるサンプルの取り寄せの枠を超えているものである。
このように、被請求人は、請求人商標を付した請求人商品を国内に輸入すれば、請求人商標の使用になることを認識しながら、あるいは、認識できたにもかかわらず、請求人商品を輸入販売する目的をもって請求人と交渉をしていたことになるから、甲第7号証の1ないし4が示す交渉は、いわゆる代理店交渉に該当することは明らかである。
3 むすび
以上のとおり、被請求人による本件商標の登録出願行為は、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものといわなければならないから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであり、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標について
(1)本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるものであり、また、請求人商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものであるから、両商標の外観は全く異なるものである。
本件商標の称呼は、その構成中の片仮名文字より、「アザレイア」、「アザレイヤ」、「アザレア」、「アゼリア」の称呼を生じ、請求人商標の称呼とは異なるものである。
(2)請求人は、特定の意味合いを持たない造語よりなる請求人商標と類似する本件商標は、請求人商標を剽窃したものである旨主張する。
しかし、本件商標は、一般的な植物の「アザレア」、「オランダツツジ」の観念を有するポルトガル語であり(乙第1号証)、英語の「azalea」、「アザリア」と同じ、花の「オランダツツジ」の観念を有するものである(乙第2号証)。
また、ブラジルにおいて、「Azaleia」は、日本及び中国を原産地とするポピュラーな花のツツジ(乙第3号証)であり、ブラジルでは、この花の名に因んで女子の名前(乙第4号証の1及び2)、カラーの名称(乙第4号証の3及び4)、商品としてのビキニの水着の名称(乙第4号証の5)、壁紙の名称(乙第4号証の6及び7)、コンピューターソフトウエアの名称(乙第4号証の8)、花の種の名称(乙第4号証の9)、花の名前(乙第4号証の10)、花屋の名称(乙第4号証の11)等に使用され、また、ホテルの名称「Hotel Azaleia」(乙第5号証の1及び2)、アパートメントの名称「Azaleia」(乙第5号証の3)、オフィスビルディングの名称「Azaleia」(乙第5号証の4)、ギャラリーの名称「Azaleia’s GALLERY」(乙第5号証の5)、バーの名称「AZALEIA BAR」(乙第5号証の6)、眼科クリニックの支店の名称「AZALEIA」(乙第5号証の7)、動物商の名称「Kennel Azaleia」(乙第5号証の8)、国連の中の団体の名称「The Democratic Republic of Azaleia」(乙第5号証の9)、医療器械のブラジルの社名「Calcados Azaleia」(乙第5号証の10)、医療器械のアメリカの社名「Azaleia」(乙第5号証の11)等々がインターネット上で容易に検索できる。
2 請求人は、請求人と被請求人との間に代理店契約の交渉があったとする根拠として、甲第7号証の1ないし5を提出する。
しかし、これらの書簡は、いずれも被請求人から請求人に対するサンプル取り寄せの依頼書簡のみであり、代理店契約を要求する記載は一切ない。
したがって、これらの書簡により、逆に請求人と被請求人との間に代理店契約はなかったことが立証できる。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)請求人は、商標法第4条第1項第7号該当性について、東京高裁平成16年(行ケ)第7号判決(甲第11号証の1)を提出する。
しかし、前記2のとおり、請求人と被請求人との間には代理店契約はなく、被請求人は、「azaleia」、「アザレイア」、「アザレイヤ」、「アザレア」、「アゼリア」が植物の「オランダツツジ」の一般的な名称であることをポルトガル語辞典から知った。
被請求人は、日本国内でスポーツシューズ及びスニーカー等を輸入販売する法人であり、請求人が被請求人の取扱いブランドの具体例(甲第10号証)を示したように、被請求人は、国内での自社取扱い商品が、他社との商標権侵害によるトラブルが起こらないように、できるだけ自社で商標権を取得するか、商標権者の使用許諾を受けて商標を使用する方針で事業を継続してきた。
上記のように、商標権の重要性を知る被請求人は、商標権もなく、本件のように単なる一般的な花の名称の標章を選択した商品を展開するのに、同業他社が同一商標で商品を展開する可能性をおそれ、登録の可能性について充分に調査した上で、これと抵触する先願商標、登録商標の不存在を確認し、事業を防衛するために本件商標を五段書きにして、可能な限り多数の称呼を生じるようにした商標によって、商標権を取得する方針を固め、本件商標を2001年6月7日に登録出願して、2002年5月24日に登録に至ったものである。
本件商標は、上述のように、造語商標でもなく、特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が不正の目的をもって登録出願をしたものでもないので、商標法第4条第1項第7号に該当しないものである。
(2)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、平成11年審判第35257号の審決及び平成6年審判第3450号の審決(甲第11号証の2及び3)を提出する。
これらの審決において、請求人の商標と被請求人の商標が全く同じであるという事情、出願手続きを代理店の立場で行う、あるいは、商標が辞書等に見いだすことのできない造語であるといった事情等により、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠き、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない、公序良俗に反する商標として、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであると判断されたものであるが、本件商標は、商標の態様が請求人商標と異なるものであり、また、特別な造語でもない。さらに、代理店の立場にもなく、不正の目的もなく取得したものであるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
4 むすび
以上のように、本件商標と請求人商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても非類似であり、また、不正の目的をもって取得したものでもない本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものでない。

第4 当審の判断
1 甲第7号証の1ないし5が、被請求人から請求人に宛てた書簡であること、甲第7号証の6ないし13が、請求人から被請求人に対してした請求人商品の輸出に関するインボイス(写し)であることについては、当事者間に争いはない。
2 甲第3号証、甲第4号証及び甲第7号証並びに請求の理由によれば、以下の事実が認められる。
(1)甲第3号証は、作成年月日が不明である請求人のカタログと認められるところ、該カタログによれば、請求人の業務に係る履物(請求人商品)について、別掲(2)のとおりの構成よりなる請求人商標が使用されていること。
(2)甲第4号証は、請求人商標のブラジルをはじめとする世界50カ国での登録証であるところ、請求人商標は、ブラジルにおいて、1994年(平成6年)3月17日に商標登録されたこと。
(3)甲第7号証の1は、2001年(平成13年)5月7日付け書簡であるところ、その内容は、概略以下のとおりである。
被請求人は、請求人の評判をサウジアラビアのAbdul Ghafoor Amin & Co.,のAmin氏から聞き、請求人の商品カタログを入手した。被請求人は、海外からスポーツシューズを輸入し、様々なブランドを日本に紹介していること。そして、被請求人は、請求人商品に興味があり、全国25の代理店舗を通じて日本中に請求人商品を販売したいと考えており、先ず、請求人商品のサンプルを見たいので送ってほしいことなど。
(4)甲第7号証の2は、2001年(平成13年)5月8日付け書簡であるところ、その内容は、概略以下のとおりである。
被請求人は、請求人の商品カタログを見て、直ちにファックスしたが、被請求人が最も興味を持った商品の生産が中止したことを知り、被請求人が望んでいるスポーツシューズ、サンダル及びカタログにない他のスポーツシューズを請求人が製造することができるか否か、又は製造を再開することが可能であるか否かなどの問い合わせをしたことなど。
(5)甲第7号証の3は、2001年(平成13年)5月9日付け書簡であるところ、その内容は、概略以下のとおりである。
被請求人が入手した請求人のカタログは、「HOT COLLECTION 2001,Azaleia」である。SW800等の入手可能な商品を被請求人に送る手配をしてほしい。また、5月15日からの請求人の新商品に関するカタログを送ってほしいことなど。
(6)甲第7号証の4は、2001年(平成13年)6月8日付け書簡であるところ、その内容は、概略以下のとおりである。
請求人商品の見本について、日本の代理店が良い反応を示したこと、被請求人は、請求人商品を日本の市場で紹介しようと計画しており、第1段階に男性用及び女性用のスポーツシューズ、第2段階に男性用及び女性用のサンダル、第3段階にカジュアルシューズなど、請求人の商品に関する計画等を示して、サンプルを要求していること。
(7)甲第7号証の5は、2001年(平成13年)6月8日付け書簡であるところ、その内容は、概略以下のとおりである。
被請求人は、実際には、合計6足の二種類の色の商品サンプルを受け取ったことなど。
(8)甲第7号証の6ないし13は、「COMMERCIAL INVOICE」を「1273-204/2001」とする一連の取引書類(写し)と認められるところ、甲第7号証の7によれば、請求人は、被請求人に対し、2001年(平成13年)9月19日付けで、「AZALEIA AT400」、「AZALEIA SW700」等の請求人商品1368足を輸出したこと。
3 前記2で認定した事実によれば、請求人は、1993年(平成5年)ころから、少なくともブラジルにおいて請求人商品に請求人商標を使用していたと推認することができる。
一方、被請求人は、海外からスポーツシューズを輸入販売している業者であり、2001年(平成13年)5月7日以前にはすでに、Abdul Ghafoor Amin & Co.,のAmin氏が送った請求人のカタログ「HOT COLLECTION 2001,Azaleia」によって、請求人商品及びこれに使用される請求人商標の存在を知っていたばかりでなく、該カタログを媒介として、2001年(平成13年)5月7日ころから、請求人商品を日本国内で販売したい旨を請求人に伝え、請求人との間で、取引の交渉を進めていたこと、また、被請求人は、請求人との間で、請求人商品についての取引の交渉があった2001年(平成13年)6月8日までには、本件商標の登録出願(平成13年6月7日)をし、その事実を請求人に隠して、同年9月19日ころ請求人商品1368足を輸入したことが認められる。
4 本件商標は、別掲(1)のとおり、「azaleia」の文字を上段に大きく横書きし、その下に「アザレイア」、「アザレイヤ」、「アザレア」、「アゼリヤ」の各文字を四段に横書きしてなるものであるところ、その構成中、上段に大きく表された「azaleia」の文字部分が看者の注意を強く引く部分であるといえる。そして、該「azaleia」の文字部分は、我が国においては馴染みの薄いものといえるから、その下に書された片仮名文字が該「azaleia」の文字部分の読みを表したと理解されるとみるのが相当である。
そうすると、本件商標中の「azaleia」の文字部分は、「アザレイア」、「アザレイヤ」、「アザレア」、「アゼリヤ」の称呼をもって、独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るものというべきである。
一方、請求人商標は、別掲(2)のとおり、花びらを想起させる波状の縁取りを有する横長楕円様図形内に、「azaleia」の文字を大きく横書きし、その下に「Brasil」の文字を小さく横書きにした構成よりなるものであるところ、請求人商標中、看者の注意を強く引き、印象に残る部分は、「azaleia」の文字部分であるといえる。
そうすると、請求人商標中の「azaleia」の文字部分は、独立して自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るものというべきである。
そして、本件商標中の「azaleia」の文字部分と請求人商標中の「azaleia」の文字部分は、文字の態様等において、実質的に同一のものであって、また、これより生ずる称呼も当然のことながら、同一の称呼が生ずるものと認められる。
してみれば、本件商標と請求人商標は、外観及び称呼上類似する商標というべきものである。
5 以上によれば、被請求人は、本件商標の登録出願前より、請求人が請求人商品に請求人商標を使用していたことを知りながら、請求人商標が日本において商標登録がなされていないことを奇貨として、請求人商標に類似する本件商標を、請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものといわざるを得ず、また、本件商標の登録出願後において、請求人商品を1368足輸入している事実に照らせば、不正の利益を得る目的等をもって、本件商標の登録出願をしたものと認められ、本件商標の登録出願の経緯には著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するものであることは明らかである。
6(1)被請求人は、本件商標中の「azaleia」の文字部分は、「アザレア」等植物名を表す一般的な語であるから、本件商標は、請求人商標を剽窃したものではない旨主張し、乙第1号証ないし乙第5号証を提出する。
しかし、乙第1号証は、ポルトガル語辞典等であり、また、乙第2号証は、「azalea」の語の掲載頁の英和辞典である、さらに、乙第3号証ないし乙第5号証は、いずれも外国語によるインターネットの検索結果のみであるから、これらの証拠をもって、「azaleia」の語が我が国で親しまれているものとは到底認めることができない。そして、前記認定のとおり、「azaleia」の語は、我が国において馴染みの薄い語であって、ありふれた語とは認められないのみならず、本件商標中の「azaleia」の文字部分は、請求人商標中の「azaleia」の文字部分と実質的に同一の構成態様からなるものであり、このような文字を被請求人が偶然に採択したものとは、およそ考えられないところである。
そうすると、外観及び称呼において請求人商標に類似する本件商標を、請求人に無断で登録出願した被請求人の行為は、被請求人が請求人の日本における販売代理店でないとしても、不正な意図をもって本件商標の登録出願をしたものと判断されてもやむを得ないところであり、剽窃行為といわなければならない。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
(2)被請求人は、甲第7号証の1ないし5に関し、いずれも被請求人から請求人に対するサンプル取り寄せの依頼書簡のみであり、代理店契約を要求する記載はない旨主張する。
確かに、甲第7号証の1ないし5には、被請求人が請求人に対して、代理店契約の要求をする旨の記載は見あたらない。しかしながら、前記認定のとおり、2001年(平成13年)5月7日付け書簡(甲第7号証の1)には、「被請求人は、請求人商品に興味があり、全国25の販売業者を通じて請求人商品を販売したいと考えている」旨記載し、さらに、2001年(平成13年)6月8日付け書簡(甲第7号証の4)には、「被請求人の最初の注文として、4800?6000足を考えていること、被請求人は、請求人商品を日本の市場に紹介する計画として、第1段階に男性用及び女性用のスポーツシューズ、第2段階に男性用及び女性用のサンダル、第3段階にカジュアルシューズ等の紹介」などと記載しており、これらの記載からすれば、取引の相手方(請求人)に対し、被請求人が請求人商品の日本における販売総代理店となって、請求人商品を日本で売りさばくとの期待を抱かせるものである。そして、甲第7号証の1ないし5の書簡は、被請求人が本件商標の登録出願前に、請求人のカタログにより請求人商標を知り得ていた事実及び請求人との間に請求人商品についての取引の交渉が存在していた事実を示す証拠であり、このことは、販売代理店契約の要求があったか否かに関わりなく、被請求人は、請求人との商取引を通じて知り得た請求人商標を剽窃して、本件商標の登録出願をしたものとみるのに十分なものというべきである。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
(3)被請求人は、請求人の示す判決例等(甲第11号証)について、本件における本件商標と請求人商標との非類似性、「azaleia」の語の非独創性、被請求人が請求人の日本における販売代理店でなかったことなどを挙げ、本件は、上記判決例等とは事案を異にするものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない旨主張する。
しかし、本件商標と請求人商標が外観及び称呼において類似すること、「azaleia」の語が我が国において馴染みの薄い語であること、被請求人が請求人の日本における販売代理店であったか否かにかかわらず、被請求人が本件商標の登録出願をする行為は、剽窃行為といわざるを得ないことは、前記認定のとおりである。したがって、上記被請求人の主張は理由がない。
7 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)
本件商標


別掲(2)
請求人商標


審理終結日 2007-11-15 
結審通知日 2007-11-20 
審決日 2007-12-05 
出願番号 商願2001-51859(T2001-51859) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Z25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富田 領一郎 
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 2002-05-24 
登録番号 商標登録第4570604号(T4570604) 
商標の称呼 アザレイア、アザレイヤ、アザレア、アゼリヤ、アゼリア、アザリヤ 
代理人 若林 拡 
代理人 浅村 皓 
代理人 高原 千鶴子 
代理人 根本 雅成 
代理人 浅村 肇 

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