• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200130333 審決 商標
取消200630868 審決 商標
取消2009301023 審決 商標
取消200330505 審決 商標
取消2009301094 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z41
管理番号 1165999 
審判番号 取消2005-31457 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-11-30 
確定日 2007-10-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4622584号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4622584号商標の第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4622584号商標(以下「本件商標」という。)は、「揚羽」及び「アゲハ」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成13年11月15日に登録出願され、第9類「電子応用機械器具及びその部品」、第35類「広告」、第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,ラジオ放送,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送」、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与」及び第42類「デザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計」を指定商品及び指定役務として、平成14年11月22日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出している(なお、審判請求書に添付された「本件登録商標の登録原簿写」の甲第1号証を、以下「原簿甲第1号証」という。)。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定役務第41類中の「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
なお、権利者である株式会社揚羽は、自社のウェブページを有しておらず、業務内容が確認できない。また、原簿を確認しても専用使用権及び通常使用権が設定されておらず、権利者以外の者が使用している事実も把握できない。
(2)弁駁の理由
(ア)被請求人は、乙第1号証に基づいて、2001年11月より「AGEHA Inc.」と表示する自社ホームページ(以下「HP」と略記する。)(http://www.ageha.jp/)を開設し、自社HPに9のリンク先を張る行為が、被請求人の業務の広告に該当すると主張する。
しかし、乙第1号証は当該HPの画面を印刷したものに、「株式会社アゲハ 公式サイト2001年11月より公開」と記載されているだけであって、客観的に2001年11月に当該HPが存在していたことを示す証拠は何ら示されていない。
したがって、当該HPが2001年11月に存在していたことは立証されておらず、審判請求日前の登録商標の使用の証明にはならない。
また、「リンク」とは、「ホームページをほかのホームページに結び付ける機能」をいい、『リンクを張る』とは、ホームページに飛び先を書き込んで、それをクリックするだけで目指すホームページにジャンプできるようにすることをという。」(甲第1号証)。すなわち、リンクとはそれぞれ独立して存在するHP同土をつなぐのみで、リンク先のHPは、それぞれその運営者のもとで管理される。
したがって、リンクを張る行為が直ちに「広告」に該当するとはいえない。特に、乙第1号証のHPは、正方形の中に設けられた9つのアイコンをクリックしてリンク先のHPにジャンプしない限り、リンク先のHPの内容を知ることはできない構成になっているから、少なくとも被請求人の開設するHP上で、リンク先のHPの広告がされていたとはいえない。
よって、仮に当該HPが2001年11月に公開されていたとしても、本件商標が本件審判の請求に係る役務について使用されていたことの証明にはならない。
(イ)被請求人は、乙第2号証に基づいて、上記被請求人のHPのリンク先の一つであり、音楽のインターネット配信を行うサイト「Peps Podcast station」(http://www.sweettalkpeps.com/)中、「Presented by AGEHA」及び「Copyright 2005 C(マル) Ageha Inc.」の表示が、「音楽の演奏」という役務についての自己の登録商標の使用に該当すると主張する。
乙第2号証によれば、当該HPのバックナンバーは2005年12月であり、審判請求日である2005年11月30日の後であるため、そもそも審判請求の登録前3年以内の登録商標の使用の証明にはなっていない。このバックナンバーの他に、当該HPが審判請求前に公開されていたことを示す記載はない。
仮に、2005年11月30日前に当該HPが存在していたとしても、これにより本件商標が「音楽の演奏」という役務について使用されていたということは証明されない。国語辞典によれば、演奏とは「音楽を奏すること」をいう(甲第2号証)。また、商標法上の「役務」とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう」とされている。
したがって、「音楽の演奏」が商標法上の役務として認められるのは、「他人のために、有償で音楽を奏する」場合に限られるといえる。一般にコンサートやライブなど呼ばれる行為がこれに該当すると考えられる。
一方、音楽のインターネット配信は、インターネットを介して、サーバーから音楽ファイルをユーザーのパソコンにダウンロードしたり、音楽再生ソフトを通じて音楽をストリーミングして行うものである(甲第3号証)。
したがって、「音楽のインターネット配信」は、他人のために音楽を演奏するのではなく、演奏された音楽をデジタル処理してファイル化し、流通させる行為をいうにすぎないから、「音楽の演奏」という役務に該当しない。
特許庁電子図書館(IPDL)の「商品・役務名リスト」で第41類について「音楽及びインターネット」をキーワードとして使用例を調べたところ、「インターネットを利用した映像・音楽の提供」が指定役務名として多く使用されていることがわかった(甲第4号証)。このことから、一般的に、「音楽のインターネット配信」は、商標の審査基準に従えば、「インターネットを利用した音楽の提供」という役務であり、「音楽の演奏」という役務ではないといえる。
また、HPの末尾に「Presented by AGEHA」及び「Copyright C(マル) 2005 Ageha Inc.」が表示されていたとしても、これらは当該HPの制作者が「AGEHA」であり、あるいはHPの著作権が「AGEHA Inc」に属することを普通に用いられる方法で示すのみであって、商標的使用とはいえないと考えられる(甲第5号証)。
したがって、被請求人が本件商標を指定役務「音楽の演奏」について使用したことを証明したことにはならない。
(ウ)被請求人は、乙第3号証に基づいて、2004年10月頃に「人相学にもとづく恋愛運アップメイク」というコンテンツを制作・提供しており、その映像面中の「Presented by AGEHA」との表示は、「映画の上映・制作」についての商標の使用に該当すると主張する。
しかし、乙第3号証は、「BIGLOBE ストリーム」と表示された1画面を印刷したものにすぎず、しかも2004年10月に当該コンテンツがインターネット上で公開されていたことは何ら証明されていない。また、本件審判の取消請求の対象となる指定役務に「映画の上映・制作」は含まれてはいないから、商標法第50条第1項にいう、請求に係る指定役務について本件商標の使用の事実を証明したことにならない。
(エ)被請求人は、DVDの制作を受託する覚書(乙第4号証)中に「株式会社揚羽」と表示されている。これは、「映画の制作」についての商標の使用に該当する。また、当該DVDの映像面には「AGEHA Inc」の表示(乙第5号証)があり、これは「映画の制作」についての商標の使用に該当すると主張する。
しかし、まず、覚書中の「株式会社揚羽」は、覚書の当事者を表示しているだけであって、商標法第2条第3項各号で定義される商標の使用のいずれにも該当しないから、商標として使用していることにはならない。
また、乙第5号証の「AGEHA Inc」の表示は、当該DVDの制作に「AGEHA Inc」の川端智司氏が加わったことを示すのみであって、当該DVDの制作について「AGEHA」が出所である等の事実を示すものではないから、やはり商標法上の使用とはいえない。よって、乙第4及び第5号証は本件商標が使用されているという証拠とはならない。
さらに、「映画の制作」は被請求人の本件商標の指定役務に含まれているが、本件審判の取消請求の対象には含まれていないから、仮に「映画の制作」について使用の事実があるとしても、本件審判において、請求に係る指定役務について本件商標の使用を証明したことにはならない。
(オ)以上により、被請求人の提出した答弁書により、本件審判の請求に係る指定役務「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」について、本件商標が使用されたことは一切証明されていない。
したがって、本件商標は、上記役務についての登録が取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁及び弁駁に対する答弁の要点
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び請求人の弁駁に対する答弁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証を提出している。
(1)被請求人の答弁
ア 被請求人は、2001年11月以降、「AGEHA Inc.」と表示した自社HP(URL:http://www.ageha.jp/)を開設し、被請求人が制作・運営するHPやその他被請求人が役務を提供したコンテンツを含むHPにリンク(同ホームページはその中ほどで縦3、横3に並ぶ9つの小さな正方形のそれぞれをクリックする)を張ることによって、被請求人の業務を広告している(乙第1号証)。
公開しているその中には、本件商標の指定役務の一つである「音楽の演奏」に該当する後掲「Peps Podcast Station」及び「映画の上映・制作」に該当する後掲「BIGLOBE ストリーム」が含まれる。
したがって、被請求人は、自社HPにて、本件商標を使用している。
イ インターネットサイト「Peps Podcast Station」(URL:http://www.sweettalkpeps.com/)は、音楽のインターネット配信を行うものである(乙第2号証)。
この業務は本件商標の指定役務の一つである「音楽の演奏」に該当するが、このサイトは、被請求人が制作運営している。被請求人は、この業務に関して「Presented by AGEHA」及び「Copyright C(マル) 2005 Ageha Inc.」と表示して、本件商標を使用している。
ウ 被請求人は、2004年10月ころ、日本電気株式会社が提供する動画配信サービス「BIGLOBE ストリーム」向けに「人相学にもとづく恋愛運アップメイク」という動画コンテンツを制作・提供した。
このコンテンツの制作・提供は、本件商標の指定役務の一つである「映画の上映・制作」に該当するが、被請求人は、その映像面に「Presented by AGEHA」と表示して、当該商標を使用した(乙第3号証)。
エ 被請求人は、2004年9月27日、「新しい介護 きほんのき?腰痛ゼロ作戦?」というDVDの制作を受託する「覚書」を締結した。この業務は、本件商標の指定役務の一つである「映画の制作」に該当するところ、被請求人は、当該覚書に「株式会社揚羽」と表示して、本件商標を使用した(乙第4号証)。
そして、2004年11月ころ、上記覚書に基づいてDVDを制作した(乙第5号証)。この業務は、本件商標の指定役務の一つである「映画の制作」に該当するところ、被請求人は、その映像面に「AGEHA inc.」と表示して本件商標を「使用」した。
オ 以上のとおり、本件審判の予告登録前3年以内に、被請求人は本件商標をその指定役務である「音楽の演奏」及び「映画の上映・制作」に使用しているから、請求人の請求には理由がない。
(2)弁駁に対する答弁
ア 自社HPにおける商標使用
(ア)請求人は、「AGEHA Inc.」との標章を付した自社のHPを他のHP(乙第1号証)にリンクさせる行為が業務の広告にあたるとする被請求人の主張に対し、被請求人のHPが2001年11月から存在していたことについて客観的な証拠がないと反論する。
しかし、同HPは平成13年(2001年)1月に被請求人の元社員により作成され、同年11月8日から公開されていた。このことは、ホスティング(インターネットに情報を発信するコンピュータの容量の一部を間貸しするサービス、乙第6号証)業者である Internet Valuable Provider社のレター(乙第7号証)および報告書(乙第8号証)から明らかである。
(イ)請求人は、リンク先HPはそれぞれの運営者の下で独自に管理されるので、被請求人が自社HPにリンクを貼る行為は「広告」にあたらないとする。
しかし、リンク先のHPも被請求人が管理運用するものであって、自社HPとリンク先HPは一体として存在するものであるから両者は同一HP内のトップページと次ページの関係と何ら変わりはない。そして、リンク先HPの一つ「Peps Podcast Station」(乙第2号証)は、インターネット上で音楽ファイルの配信を行うHPであるところ、被請求人は、音楽ファイル作成のための音楽の録音、編集を含め同HPの運営全般を行っている。このことは、被請求人代表者が報告書(乙第9号証)で報告するところである。また、被請求人が同HPの管理運営を行っていたことは、同HPがアップロードされていたレンタルサーバの契約者が被請求人の社員であることや(乙第9号証、乙第10号証:平成18年7月10日付け被請求人代理人宛てのEメール)、同HP内の各ページ最下部に「Presented by AGEHA」と表示されていること、同HP内に日記の形式で掲載されている各記事の最下行に「Podcast Station with Ageha」と表示されていることからも明らかである。
さらに、かつてのリンク先であるBIGLOBEストリームについても、NECビッグローブ株式会社の報告書(乙第11号証及び乙第9号証)から明らかなとおり、被請求人は、同HP内の主要コンテンツの一つである「恋愛運アップメイク」という動画の制作をNECビッグローブ株式会社から委託されていたのであるから、被請求人が同HPを運営していたことは明らかである。
以上のとおり、リンク先HPの管理に被請求人は関与しないので、被請求人は自社HPで広告を行っていたとは言えない、との請求人の反論には理由がない。
(ウ)また、請求人は、被請求人のHPを閲覧するだけではリンク先HPの内容を知ることはできないから、被請求人は自社HPで広告を行っていたとは言えないとする。
しかし、前述のとおり、両者は同一HP内のトップページと次ページとの関係と変わりがない。そして、被請求人のHPは、その中ほどに並ぶ小さな正方形をクリックすることを積極的に誘引する構成になっているのであるから、同HPはリンク先HPと一体となって被請求人の業務を広告するものである。
イ インターネットサイト「Peps Podcast Station」における商標使用
(ア)請求人は、「Peps Podcast Station」(乙第2号証)における被請求人の商標使用につき、審判請求登録日である2005年11月30日以前の使用が立証されていないとする。
しかし、同HPにおける商標使用が2005年11月30日以前であったことは、前述したレンタルサーバの申し込みメール(乙第10号証)においてサーバの利用期間が2005年11月25日からとされていることから明らかであり(【お試し期間】の欄を参照)、また被請求人代表者自らが報告するところでもある(乙第9号証)。
(イ)また、請求人は、「Peps Podcast Station」における音楽のインターネット配信は「音楽の演奏」にあたらないと反論する。
しかし、「Peps Podcast Station」上のコンテンツは、ソウルバーでの音楽の演奏であるところ、インターネット上においては、音楽の演奏はこれを録音したファイルの送信の形をとる。したがって、インターネット配信であることは「音楽の演奏」であるという側面と両立しうるものである。
(ウ)さらに、請求人は、同HPの「Presented by AGEHA」 および「Copyright C(マル)2005 Ageha Inc.」の表示は、当該HPの著作権表示にすぎず、商標的使用にあたらないとする。
しかし、著作権の表示が同時に商標的使用にあたりうることは、請求人が提出した甲第5号証の裁判例(東京高裁平成8年12月19日判決)が示すとおりである(判決理由第2、2の第3段落「そもそも商品に付された1つの標章が、商品流通の過程において常に1つの機能しか果たしえないと考えるべき理由はないから、商品が著作物の複製物であり、かつ、著作物の名称がそのまま商標とされている場合に、商品の製造者・販売者等を示す商標の使用でもあると解することは、何ら背理といえない。」)。
そして、本件においても上記各表示は著作権表示であると同時に、「放送番組の制作」という役務の出所が被請求人にあることを示すものであるから、これらは商標的使用であるともいえる。
ウ 結語
以上のとおり、弁駁書の主張には理由がなく、被請求人が審判請求の登録前三年以内に指定役務「音楽の演奏」について使用を行っていることは十分に証明済みである。

4 当審の判断
(1)商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、審判の請求の登録[本件の場合、平成17(2005)年12月20日]前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについて登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消を免れないとされている。
(2)そこで、被請求人は、本件商標をその指定役務である「音楽の演奏」及び「映画の上映・制作」に使用しているとして証拠を提出しているので、提出に係る各乙号証について検討する。
なお、本件審判請求書の「4.請求の趣旨」の項には、「商標法第50条第1項の規定により、登録第4622584号商標に係る第41類の指定役務中、「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」について登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」と記載されているものであり、この記載中「映画の上映・制作」については、記載されていないから、「映画の上映・制作」は、請求の趣旨に含まれていない役務である。
(ア)乙第1号証は、平成18年1月20日に作成された被請求人のインターネットHP及び2006年1月19日にプリントアウトされた該HPによるリンクページの写しと認められるところ、該HPの欄外に「株式会社アゲハ公式サイト2001年11月より公開」の文字が表示されているものの、該HPが本件審判請求の登録(平成17(2005)年12月20日)前3年の期間内に存在していたことを客観的に立証する証拠はない。むしろ、該HPは、その画面に「c(マル)2006 AGEHA Inc.」の表示があることからすれば、2006年に開設されたものとみるのが自然である。しかも、該HP自体には、「音楽の演奏」に該当する役務については何ら掲載されていない。
(イ)乙第2号証は、「Peps Podcast Station」と題するHPをプリントアウトしたものと認められるところ、これは、乙第1号証同様、平成18年1月20日に作成されたものであって、該HPが本件審判請求の登録(平成17(2005)年12月20日)前3年の期間内に存在していたことを客観的に立証する証拠はない。そして、該HPにおいては、レコード等の紹介がされているのみであり、後述のとおり、音楽の演奏を行っているとは認め難いものである。
被請求人は、該HPは音楽のインターネット配信を行うものであり、これが「音楽の演奏」に該当し、該HP中に「Presented by AGEHA」及び「Copyright 2005 Ageha Inc.」と表示して本件商標を使用している旨主張するが、音楽のインターネット配信は、演奏された音楽を加工(デジタル処理)して配信するものであって、それ自体が独立した役務としての音楽の演奏に該当するものではなく、音楽の演奏とは別異のものである。つまり、役務としての「音楽の演奏」とは、独立した商取引の対象として他人のために音楽を奏することを意味するのであり、一般に、コンサート、ライブ等を通して提供されるものである。
上記「Presented by AGEHA」及び「Copyright 2005 Ageha Inc.」の表示があるとしても、それは上記音楽の配信者ないしはHPの作成者を示すものとして認識し理解されるというべきであり、音楽の演奏についての商標とは認識し得ないものである。
(ウ)乙第3号証は、「BIGLOBEストリーム」と題するHPをプリントアウトしたものと認められ、乙第4号証は、新しい介護 基本のき ?腰痛ゼロ作戦?」と題するDVDの制作について被請求人と株式会社講談社学芸局学術図書出版部との間で交わされた「覚書」と認められ、また、乙第5号証は、乙第4号証に示す「覚書」に基づき被請求人が制作した新しい介護 きほんのき ?腰痛ゼロ作戦?」と題するDVDのオープニング画像の写しと認められる。
そして、被請求人は、本件商標を「映画の上映・制作」について使用している旨主張するが、「映画の上映・制作」は、前記のとおり、本件審判の請求の趣旨は含まれていない役務である。
(2)その他、本件審判の請求の登録前3年以内に、その取消請求に係る役務「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」について本件商標が使用されていることを認めるに足る証拠の提出はない。
(3)以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務について本件商標を使用していることを証明していないものといわざるを得ない。また、該指定役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があるものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定に基づき、その指定役務第41類中「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,娯楽施設の提供」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-07-31 
結審通知日 2007-08-06 
審決日 2007-08-23 
出願番号 商願2001-107387(T2001-107387) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z41)
最終処分 成立  
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小畑 恵一
津金 純子
登録日 2002-11-22 
登録番号 商標登録第4622584号(T4622584) 
商標の称呼 アゲハ、アゲハネ 
代理人 木坂 尚文 
代理人 山本 隆司 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ