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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y12
管理番号 1165856 
審判番号 無効2006-89165 
総通号数 95 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-20 
確定日 2007-09-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4838438号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4838438号の指定商品中「自動車並びにその部品及び附属品」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4838438号商標(以下「本件商標」という。)は、「スパイカー」の片仮名文字と「SPIKER」の欧文字とを二段に横書きしてなり、平成16年1月5日に登録出願、第12類「荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報機,車いす,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、同17年2月10日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第30号証(「枝番号」を含む、以下、「枝番号」全てを引用するときはその「枝番号」を省略する。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号該当性
(1)請求人スパイカー カーズ エヌ ヴィ(Spyker Cars N.V.)は、高級スポーツカーのメーカーとして世界的に有名なオランダ法人であり、「SPYKER」の商標の下に請求人が製造販売するスポーツカーは世界的に有名である。「SPYKER」は、我が国において、請求人が製造販売するスポーツカーの商標として、また、請求人の略称として、本件商標の登録日である平成17年(2005)年2月10日には、スポーツカーの取引者、需要者の間に周知であった。なお、「SPYKER」は、同様に、本件商標の登録出願日である平成16年(2004)1月5日にも取引者、需要者の間に周知であった。
即ち、以下の(ア)ないし(シ)とおりである。
(ア)「SPYKER」は、1899年に創立されたオランダの乗用車メーカーである「SPYKER」によって、1902年に製造された世界最初のガソリンエンジンを使用した四輪駆動車の商標として需要者の間に広く知られており、「SPYKER」はそのメーカーとして需要者の間に広く知られている(甲第2号証ないし甲第7号証)。
甲第2号証は、請求人の日本及び全世界向けのホームページ上の「スパイカー社の歴史」である。
(イ)請求人は、1997年に設立されたスポーツカーメーカーであり、「SPYKER」を復活させたメーカーである。当初は2人の従業員からスタートしたが、2000年以降に大ブレークして、現在は100人以上の従業員を抱える企業に成長している(甲第6号証、甲第10号証、甲第17号証及び甲第18号証)。
甲第8号証は、2001年4月27日付「ザ ウォールストリートジャーナル(ヨーロッパ向け)」の記事である。請求人がいかなる方法で「SPYKER」を生き返らせたかを報じている。
甲第9号証は、2001年12月18日付「Nuneaton evening Telegraph」の記事である。「SPYKER」車が2002年のルマンヘ挑戦することが報じられている。
(ウ)請求人は、2000年10月、「C8スパイダー」、2001年2月にクローズドクーペ「C8ラビオレット」、GT耐久マシーン「C8タブル12」を開発し、発売した。その後、引き続き、スーパー・スポーツ・ユーティリティー・ビークル「D12」を発売した(甲第6号証(10分の8頁以下)、甲第10号証、甲第17号証及び甲第18号証)。「C8ラビオレット」は、2006年3月にはハリウッド映画「永の微笑2」で主演シャロンストーンの愛車として登場した車である(甲第17号証)。
請求人は、これらの車を1台づつ手造りで作っており、その生産台数は2005年で年間48台、2006年は100台以上の売上げが見込まれており(甲第17号証)、その人気は急速に高まっている(甲第18号証)。
その車の価格は一台当り4000万円もするものであるが(甲第18号証)、スポーツカー愛好者の垂涎の的であり、年々その人気は高まっている。
(エ)請求人のスポーツカーは、2001年のフランクフルトのモーターショー(甲第10号証ないし甲第12号証)、2004年3月のジュネーブのモーターショー(甲第28号証)、2004年の北京のモーターショー(甲第13号証、甲第14号証)、2005年ロスアンゼルスのモーターショー(甲第15号証、甲第16号証)、2005年のジュネーブのモーターショー(甲第29号証)、2006年のジュネーブのモーターショー(甲第17号証ないし甲第21号証)で、人気を博した。これらのモーターショーの模様はインターネットで広く報じられている。
(オ)請求人は、世界の主要な自動車メーカーに数えられている(甲第22号証)。
(カ)請求人は、その製造にかかるスポーツカーでルマンのレースに参加しており(甲第21号証)、ラリーにも参加することにしている(甲第17号証)。
(キ)請求人の製造にかかる「SPYKER」ブランドのスポーツカーは、世界のスーパーカーを記載するインターネットサイトでも紹介されている(甲第24号証)。
(ク)請求人は自らのインターネットサイトで、自社及び自社の「SPYKER」スポーツカーを告知している(甲第25号証)。
(ケ)また、請求人のディーラーのインターネットのサイトでも、請求人の「SPYKER」スポーツカーは告知されている(甲第26号証)。
(コ)請求人の指定商品の需要者であるスポーツカーの愛好者は、モーターショーや新車の情報に敏感であり、インターネットの情報等に敏感である。
(サ)よって、「SPYKER」は、請求人の略称として、また、「ポルシェ」、「ランボルギーニ」と並ぶ最高級のスポーツカー(甲第13号証)の商標として、2001年には取引者、需要者の間に浸透していたのであり、本件商標の登録時には我が国において取引者、需要者の間に周知であった。なお、「SPYKER」は、同様に本件商標の登録出願時にも我が国において取引者、需要者の間に周知であった。
(シ)ちなみに、請求人は、「SPYKER」及び「SPYKER」と「エンジンの正面の図形」からなる商標を、第12類に、請求人を商標権者として、WIPO(甲第27号証の1)、香港(甲第27号証の2)、ニュージーランド(甲第27号証の3)、オーストラリア(甲第27号証の4)、メキシコ(甲第27号証の5)、米国(甲第27号証の6、甲第27号証の7)、カナダ(甲第27号証の8、甲第27号証の9)、UAE(甲第27号証の10、甲第27号証の11、甲第27号証の12)、ベネルックス(甲第27号証の13)、OHIM(甲第27号証の14、甲第27号証の15)、タイ(甲第27号証の16)に登録している。
(2)本件商標は「スパイカー/SPIKER」よりなり、「スパイカー」の称呼を生ずる。他方、請求人の商標であり、略称である「SPYKER」からは「スパイカー」の称呼を生ずる。よって、本件商標は「SPYKER」と称呼において同一である。また、本件商標の要部である「SPIKER」は「SPYKER」と第3文字の「I」と「Y」との相違のみであり、外観において酷似する。したがって、本件商標は「SPYKER」と類似する。
(3)本件商標の指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品」は、請求人が「SPYKER」を使用するスポーツカーを始めとする自動車に類似する。
(4)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)仮に、請求人の商標であり略称である「SPYKER」が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に商標法第4条第1項第10号に規定する意味で周知でなかったとしても、上記1(1)において述べた事実に照らせば、「SPYKER」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、請求人の製造販売するスポーツカーを始めとする自動車に使用する商標として、自動車の取引者需要者の間に浸透しており相当程度知られていた。上述のとおり、2001年のフランクフルトのモーターショーへの出展はネット等を通じて自動車に関心のある取引者、需要者に知られていたものであり、既に2001年には取引者、需要者の間に浸透していたのであり、更に2004年のフランクフルトのモーターショーへの出展及びその報道により、尚一層取引者、需要者の間に浸透したのである。
(2)そして、本件商標が「SPYKER」と類似することは、上記1(2)において述べたとおりである。
(3)そうすると、本件商標の登録出願時及び登録時、被請求人が本件商標をその指定商品中スポーツカー等の自動車に使用したときは、取引者、需要者は、かかる商品が請求人により製造販売されたものであると誤認混同するおそれがあったものである。
(4)商標法第4条第1項第15号は、他人の業務にかかる商品と混同を生ずるおそれのある商標の登録を排除する包括的規定であり、他人の商品に使用する商標は周知であることを要せず、取引者需要者に相当程度知られていることをもって足りる(平成10年11月10日東京高民6判・平成9年(行ケ)323号)。
(5)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当するから、その指定商品中「自動車並びにその部品及び附属品」について、その登録を同法第46条第1項第1号により無効とすべきものである。

第3 被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 本件商標と請求人商標
本件商標は、前記第1のとおり、「スパイカー」の片仮名文字と「SPIKER」の欧文字とを二段に横書きしてなり、第12類の指定商品中に「自動車並びにその部品及び附属品」を包含するものである。
一方、請求人は、「SPYKER」(以下「請求人商標」という。)の欧文字よりなる商標を商品「スポーツカー」に使用しているものである。

2 請求人商標の周知性について
(1)甲第2号証によれば、1898年アムステルダムでJacobsとHendrik-Jan Spijkerの2人の兄弟は初めてベンツ社製エンジンを搭載した車を作り、大きな喝采をあびたこと、同年この兄弟は現在もまだ使われている黄金の国王の公式車をオランダ女王の追悼のために製作したこと、会社の名前もオランダ以外の国においてもわかるようにSpijkerからSpykerへ変更したことが認められる。
甲第3号証及び甲第4号証によれば、ガソリンを使用した四輪駆動車は、1902年にオランダのスパイカー兄弟によって作られた「SPYKER」が最初であるものと認められる。
甲第2号証によれば、1907年にSpyker社の標準モデルの自動車が北京?パリ間レースで第2位になったこと、1921年にパワフルな車「Spyker C4」が36日間30,000キロメートルを走り続ける新しい耐久記録を作ったこと、1922年3月モンテカルロ近くのレースで1位を獲得したこと、同年24時間スピードレースを制覇したこと、1925年にSpyker社は事業をやめたこと、2000年10月に「Spyker C8 Spyder」がバーミンガムのモーターショーに発表され、「2000年自動車技術者デザインアオード」に輝いたこと、2003年のル マン24時間耐久レースでは、初の勝利をあげたことが認められる。
甲第7号証によれば、1998年に発行された「SPYKER Made in Holand」と題する自動車に関する雑誌が、我が国のネットオークションに出品されていることが認められる。
甲第10号証によれば、1898年に創立されたスパイカーというメーカーが1925年まで存在していたこと、新スパイカー社は、スポーツカー・メーカーとして、1997年に創立され、2000年10月に「スパイカーC8スパイダー」を2001年2月にはロードクーペの「スパイカーC8ラビオレット」を発表したこと、「スパイカーC8スパイダー」の価格は約2300万円以上であること及び「スパイカーC8ラビオレット」の価格は約2580万円以上であることが認められる。
甲第12号証によれば、ネコ・パブリッシングが2001年7月26日に発行した雑誌「Rosso」9月号には、「フェラーリF60」と並んで「スパイカーC8」の記事が掲載されていることが認められる。
甲第19号証によれば、スポーツカーの「スパイカー」が、2001年2月8日から18日まで開催されたアムステルダムショーに出展されていることが認められる。
甲第22号証によれば、主な自動車メーカーの中に「スパイカー(蘭)」が、「ランドローバー(英)」、「ポルシェ(独)」、「ゼネラルモーターズ(米)」とともに掲載されている。
甲第30号証によれば、我が国で発行されたスポーツ新聞にも、スパイカーのレーシングチームがF1の日本グランプリに参戦した記事が掲載されている。
(2)以上の事実からすると、請求人商標は、我が国の自動車、特に高額なスポーツカーの取引者又は需要者の間では、本件商標の登録出願前はもとより登録後においても、請求人の取り扱いに係る商品「スポーツカー」を表す商標として周知であると認められる。

3 商標法第4条第1項第10号について
請求人商標は、周知であると認められるところ、本件商標は、「スパイカー」の片仮名文字と「SPIKER」の欧文字よりなるものであるから、「スパイカー」の称呼及び「(バレーボールで)スパイクする選手。アタッカー。」の観念を生じる。
一方、請求人商標は、「SPYKER」の欧文字よりなるものであるから、「スパイカー」の称呼を生じ、特定の観念を生じさせない造語と認められる。
してみれば、本件商標と請求人商標とは、「スパイカー」の称呼を共通にし、欧文字部分おける外観も、3文字めの「I」と「Y」との差異を有するにすぎず、請求人商標が造語であって観念上は両商標を比較できない点を考慮しても、両商標は類似する商標といえるものである。
また、請求人商標が用いられている「スポーツカー」も、本件商標の指定商品中の「自動車並びにその部品及び附属品」に包含される商品である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、その商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものというべきである。

4 むすび
したがって、本件商標は、その指定商品中、本件審判請求に係る指定商品である「自動車並びにその部品及び附属品」について、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、請求人のその余の主張について検討するまでもなく、同法第46条第1項第1号の規定により、無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-07-26 
結審通知日 2007-08-01 
審決日 2007-08-14 
出願番号 商願2004-47(T2004-47) 
審決分類 T 1 12・ 25- Z (Y12)
最終処分 成立  
特許庁審判長 井岡 賢一
特許庁審判官 鈴木 修
渡邉 健司
登録日 2005-02-10 
登録番号 商標登録第4838438号(T4838438) 
商標の称呼 スパイカー 
代理人 古木 睦美 
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 鳥巣 実 

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