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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消2007300061 審決 商標
取消200630931 審決 商標
取消200631602 審決 商標
取消200631291 審決 商標
取消200631043 審決 商標

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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 005
管理番号 1164141 
審判番号 取消2006-31260 
総通号数 94 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-10-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-10-11 
確定日 2007-08-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第3351292号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3351292号商標の指定商品中、「薬剤」については、その登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3351292号商標(以下「本件商標」という。)は、「その前に」の文字を横書きしてなり、平成4年7月31日に登録出願、第5類「薬剤,衛生マスク,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,失禁用おしめ」を指定商品として、同9年10月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「薬剤」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者又は専用使用権者あるいは通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人(商標権者)提出の乙第1号証の証明書に売上伝票(写)及びパンフレット(写)が添付されているところ、便宜上、その証明書を、以下、「乙第1号証の1」、売上伝票(写)を「乙第1号証の2」、パンフレット(写)を「乙第1号証の3」という。
(ア)乙第1号証の2
本件商標は、「その前に」の文字であるのに対し、乙第1号証の2に表示された商標は、「トイレソノマエニ」であり、両者は、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても非類似の商標である。
また、乙第1号証の2には、具体的商品が記載されておらず、該書面に表示された「トイレソノマエニ」が、いずれの商品についてのものであるかを特定することができない。
さらに、該書面の作成日として「031126」が記載されているところ、これが「平成03年11月26日」であるのか、「2003年11月26日」であるのかが特定できない。
仮に、これが「平成03年11月26日」であるならば、本件審判請求の登録前3年以内のものではない。
(イ)乙第1号証の3
(a)乙第1号証の3の上段に表示された「商品」欄には、「トイレ」、「その前に」、「ノンシュウ」の各文字の他「図形」が表示されており、該各文字の使用に係る商品(以下「本件使用商品」という。)の包装に表示されている「トイレ その前に」の文字部分については、その「商品特徴」欄に示すとおり、「排便前に使用し、水面に消臭膜を作って悪臭が広がる前にシャットアウトする。」の如き意味合いが認識され、商品の使用時期・使用方法を表示するに止まるものというべきであるから、前記各文字における自他商品の識別標識としての機能を果たす文字部分は、「ノンシュウ」の文字部分であるものといえる(なお、該「ノンシュウ」は、被請求人を商標権者として、登録第2641180号商標として登録されている。)。
したがって、乙第1号証の3に表示された「その前に」の文字部分は、商品についての記述的表示であって、商標としての使用ではない。
(b)被請求人は、乙第1号証の3において、「一滴消臭液」、「トイレ」、「その前に」、「ノンシュウ」の各文字から構成されている表示について、「一滴消臭液」と「トイレ」とを結合し、「その前に」が「トイレ用一滴消臭液」に使用されていると主張するが、「一滴消臭液」と「トイレ」とを結合することは、文字の構成順序を逆転させており、不自然な結合というべきである。
むしろ、「トイレ」と「その前に」とをその構成順序で結合するのが自然であるから、「その前に」の文字は、「トイレ用一滴消臭液」に使用されているというものではない。
(c)そればかりか、乙第1号証の3には、1997年の新商品について、各商品欄の左上部の赤地楕円形内に「NEW」の文字が白抜きをもって表示されている(以下「NEWマーク」という。)ところ、被請求人が本件商標を使用していると主張する本件使用商品の「商品」欄には、NEWマークの表示が付されていないことからすると、それが1997年(平成9年)の新製品でないことは明らかであり、例えば、それは平成3年よりも前から販売されていた可能性を否定できないばかりでなく、平成10年には廃盤になっていたとも考えられる。
なぜならば、本件使用商品が平成3年以前に購入され、乙第1号証の2(売上伝票)により平成3年に返品されたのであれば、当該売上伝票の年月日欄の「年」の「03」は「2003年」を意図した下二桁の西暦表示ではなく、元号表示を用いた「平成03年」を意味する記載となるため、商品の販売時期と返品時期の時間的経過が近接しており全く矛盾がない。
百歩譲って、1997年(平成9年)頃に販売及び購入されていた商品が2003年(平成15年)に返品されたものであるとした場合、販売及び購入時期から返品に至るまで6年もの歳月が経過していることになり、あまりにも時間の開きがありすぎるばかりでなく、商品の耐久性から考えても全く平仄が合わない。
もっとも、被請求人が本件審判請求の登録前3年以内に「薬剤」について、本件商標を使用していたのであれば、平成15年?平成18年のカタログが提出されてしかるべきである。
しかしながら、このようなカタログの提出もなく、本件商標の使用が本件審判請求の登録前3年以内になされたと即断することには無理がある。
そうすると、乙第1号証の2(売上伝票)の日付は、「平成03年11月26日」である可能性が極めて強い。
(ウ)乙第1号証の1
乙第1号証の1における「トイレソノマエニ」は、本件商標と非類似であるばかりでなく、「トイレ その前に」は、商品の使用時期・使用方法を示すに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものである。
また、被請求人は、2003年11月26日以前は、薬局、薬店、ドラッグストア、スーパーその他の小売店への卸売対象品として、当該商品を取り扱っていたと主張するが、その使用年月日が明示されていないばかりでなく、前記薬局等への卸売対象品として、前記商品を取り扱っていたことを何ら証明していない。
(エ)してみれば、乙第1号証の1ないし3によっては、本件取消請求に係る商品「薬剤」について、本件商標が使用されていたものと認めることはできない。
(3)したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件取消請求に係る商品「薬剤」について使用していたとは認められないばかりでなく、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしているものでもないから、商標法第50条の規定により、その登録は、取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁するとともに、その理由及び請求人の弁駁に対する再答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、本件審判請求の予告登録日前に、その指定商品中の「薬剤」について使用されているから、不使用を理由に取り消されるべきいわれはない。
以下、その使用につき下記乙第1号証をもって立証する。
(2)乙第1号証の1ないし3による使用
(ア)乙第1号証の1(証明書)
乙第1号証の1は、被請求人の製造・販売に係る商品「トイレ用一滴消臭液」(本件使用商品)について、「トイレ その前に」が使用されていた事実を証明するものである。
すなわち、乙第1号証の2(返品伝票)の「商品コード/品名」欄における「4987072314807 トイレソノマエニ 20ML 420エン」という記載は、乙第1号証の3(パンフレット)に表示されているトイレ用一滴消臭液「トイレ その前に」を対象としたものであり、その返品日である2003年11月26日以前は、証明者である株式会社コバショウ(以下「(株)コバショウ」という。)が薬局、薬店、ドラッグストア、スーパーその他の小売店への卸売販売対象品として、これを取り扱っていたから、当該トイレ用一滴消臭液「トイレ その前に」(本件使用商品)は、本件審判請求の登録日(平成18年10月27日)前3年以内に、流通市場において商品として存在していたことが明らかである。
(イ)乙第1号証の3(パンフレット)
乙第1号証の3の「商品名」欄には、「一滴消臭液 トイレその前に ノンシュウ」と記載されており、その左側にある「商品」欄の包装(パッケージ)の写真では、最上段に「一滴消臭液」と表示し、その下部に「トイレ」の文字(「ト」のみが大きく表示されている。)を表示し、かつ、その下に「その前に」を独立して表示し、さらに、その下部に「ノンシュウ」が表示されている。
すなわち商品のパッケージ(包装)における表示態様においては、「その前に」は、「トイレ」とは字体、大きさを異にし、独立した態様で表示されており、これよりは、本件商標「その前に」が本件使用商品「トイレ用一滴消臭液」に使用されていることが確認できる。
そして、上記本件使用商品が本件取消請求に係る商品中の「薬剤」の範疇に属する「消臭剤」に含まれていることは明白であり、結局、本件商標「その前に」は、商品が返品されるまでの間、商品「薬剤」について、流通市場において使用されていた。
(3)請求人の弁駁に対する再答弁
請求人は、乙第1号証に対し、反論を試みているので、被請求人は、それに対し、以下のように再答弁する。
(ア)乙第1号証の2(売上伝票)
(a)請求人は、乙第1号証の2に表示された商標は、「トイレソノマエニ」であり、本件商標とは非類似の商標であると主張している。
しかし、乙第1号証の2は売上伝票であり、対象となる商品を特定するために商品コードと品名が表示されているものである。
そして、商品コード「4987072314807」は、乙第1号証の3(パンフレット)に「JANコード」として表示されている「4987072314807」と一致しており、商品名「一滴消臭液 トイレその前に ノンシュウ」を表示した商品を指すことは明白である。
乙第1号証の2に表示された「トイレソノマエニ」は、その商品名を簡略化して表示したにすぎない。
(b)請求人は、乙第1号証の2には、具体的商品が記載されていないと主張している。
しかし、商品コード/品名が表示された「4987072314807」及び簡略化して表示された「トイレソノマエニ」が、乙第1号証の3(パンフレット)に表示されたJANコードの「4987072314807」及びPOSレジ登録用名略称の「トイレソノマエニ/ノンシュウ」の前半部と一致しており、乙第1号証の2の商品コード/品名欄に表示された「20ML 420エン」が、乙第1号証の3(パンフレット)における「梱入数・単品容量」欄の「20ml」、「希望小売価格」欄の「¥420」と一致していることから明らかなとおり、乙第1号証の2に記載された商品は、乙第1号証の3(パンフレット)に表示された商品名「一滴消臭液 トイレその前に ノンシュウ」を対象としており、さらに、その「商品」欄にパッケージ(包装)とともに表示されている商品を指していることは明白である。
そして、この商品が「消臭剤」であることは、「一滴消臭液」の記載からも明らかであり、また、「商品特徴」欄に「排便前に使用し、水面に消臭膜を作って悪臭が広がる前にシャットアウトする。」と記載されている点からしても明白である。
(c)請求人は、乙第1号証の2の作成日が、その年月日欄に「031126」と記載されているのみであるから、当該作成日が「平成03年11月26日」であるのか「2003年11月26日」であるのかを特定できないと主張している。
しかし、年月日を単に「031126」と記載する場合において、年を表す「03」が西暦の「2003」を表示することは常識である。
請求人の弁を借りるとすれば、それは「大正03年」かも知れず、「昭和03年」かも知れないということに帰着する。商取引において、そのような曖昧さは許されるものではなく、和暦を使用する場合には、「昭和」や「平成」であることを明らかにして使用するのが常識であり、元号表示がない場合には、西暦表示であると判断するのが正当である。
しかも、乙第1号証の1(証明書)に示すとおり、乙第1号証の2(売上伝票)の発行者である(株)コバショウが返品日を2003年11月26日と証明しており、疑う余地のないところである。
なお、被請求人が、この再答弁書に添付した乙第2号証は、1994年(平成6年)4月発行の被請求人の製品カタログであるが、その2枚目の「INDEX」の頁中の「芳香・防臭剤」のカテゴリー(項目)内に「トイレその前にノンシュウ」と表示されており、これに対応する商品は、その26頁に掲載されており、該商品は、乙第1号証で表示した商品と同一の「一滴消臭液 トイレその前に ノンシュウ」であり、しかも、「NEW」の表示が付されている。
また、乙第3号証は、新聞記事検索のアウトプットデータであるが、これによっても、乙第1号証及び乙第2号証に表示された商品が1994年(平成6年)4月に新製品として発売されたことが確認できる。
すなわち乙第1号証で表示した商品は、1994年(平成6年)4月に新商品として発売されたものであり、「平成03年11月26日」に返品されることはあり得ず、この点においても、請求人の主張は失当である。
(イ)乙第1号証の3(パンフレット)
(a)請求人は、「トイレ」「その前に」「ノンシュウ」他(図形)からなる商標において、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、「ノンシュウ」の文字部分である旨主張する。
しかしながら、乙第1号証の3の「商品」欄に表示された商標は、最上段に「一滴消臭液」と小さく表し、その下部に「トイレ」の表示を「ト」のみを大きく、「イレ」をやや小さく表し、さらに、その下に「その前に」を「一滴消臭液」よりも大きく独立して認識できる状態で表示し、なおかつ、その下部に「ノンシュウ」を表示した態様のパッケージ及び商品が表示されている。
商品のパッケージ及び商品への表示態様において、「その前に」は、「トイレ」とは、その字体、大きさを異にしており、独立して認識できる態様で表示されているから、商標「その前に」が排便前に使用して悪臭をシャットアウトする商品「一滴消臭液」に使用されていることは明白である。
(b)「その前に」が独立して自他商品識別力を有することは、本件商標以外に6件の登録(登録第2500733号商標、登録第3024678号商標、登録第3036455号商標、登録第3077409号商標、登録第3077410号商標、登録第3348596号商標)が存することからも明白である。
すなわち、「その前に」は、記述的表示ではなく、自他商品識別力を有する商標であるから、取引者、需要者が乙第1号証の3で表示されている商品に接した場合、独立して認識可能な状態で表示された「その前に」を商標と認識することは明らかであり、「ノンシュウ」のみを商標と見るのは、誤った観察方法である。
(ウ)乙第1号証の1(証明書)
(a)請求人は、「トイレソノマエニ」は、本件商標と非類似であり、「トイレ その前に」は、商品の使用時期・使用方法を表示するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有しないと主張する。
しかしながら、上述のとおり、「トイレソノマエニ」は、商品名「一滴消臭液 トイレその前に ノンシュウ」で表示される商品を簡略化して表示したにすぎず、「トイレ その前に」の「トイレ」が使用場所を示すとしても、独立して認識可能な「その前に」は、複数の登録商標が存在することからも明らかなとおり、それ自体で自他商品識別機能を発揮するものである。
(b)また、請求人は、当該商品が被請求人により薬局・薬店・ドラッグストア・スーパーその他の小売店への卸売対象品として取り扱われていたという点について、使用年月日が明示されていない、被請求人が卸売対象品として取り扱っていたことを証明していない旨の主張をしているが、証明者の(株)コバショウは、インターネットサイトのホームページ(http://www.kobashou.co.jp/)からも明らかなように、「薬局・薬店・ドラッグストア・スーパーその他の小売店への一般用医薬品を主体とした健康食品・コンタクトケア用品・日用雑貨・乳製品等の卸売販売」を事業内容としている。
卸売販売の場合、商品在庫を持ち、小売店からの発注に応じて商品を提供するものであり、返品日である2003年11月26日以前には、乙第1号証で示す商品を在庫として保有しており、小売店から発注があれば、出荷する体勢にあったことは、流通業界の常識として、何ら疑念のないところである。
仮に、その間に小売店から発注がなく、出荷していなかったとしても、本件商標に係る商標権者が乙第1号証の商品を流通業界に置いていたことは、疑念のないところである。
(エ)請求人の弁駁に対して
(a)請求人は、本件商標が被請求人により薬局・薬店・ドラッグストア・スーパーその他の小売店において使用されていた事実が証明されていないと主張しているが、卸売店で商品が取り扱われている限り、商標の使用がなされているとみられることに何ら誤りはない。
(b)請求人は、「一滴消臭液 トイレ その前に ノンシュウ」という構成について、「トイレ用一滴消臭液」に、「その前に」が使用されているとするのは不自然であると主張している。
しかし、「一滴消臭液」は、商品名称であり、「トイレ」は、使用場所の表示にすぎないから、前記構成は、トイレで使用する一滴消臭液、すなわち「トイレ用一滴消臭液」を対象商品とすることを説明したにすぎず、構成順序を逆転したものではない。
「トイレ用一滴消臭液」に、「その前に」が使用されていることについては、疑念を挟む余地はない。
(c)請求人は、乙第1号証の3(パンフレット)において、平成9年(1997年)の新製品については、「NEW」の文字が付されており、本件使用商品については、「NEW」の文字が付されていないから、新製品ではないと推測し、平成10年には廃盤になっていたとも考えられると主張している。
しかしながら、被請求人の商品は、本件使用商品を含めて、いずれも市場において好評を博しており、商品寿命が長いのが特徴である。
平成9年に新製品でないから、平成10年には廃盤になっていたという推測は、当てはまらない。
請求人は、1997年頃に販売及び購入された商品が2003年に返品されたものだとすると、時間の開きがありすぎ、また、商品の耐久性から考えても、つじつまが合わないと主張する。さらに、平成15年?平成18年のカタログを提出してしかるべきであるとも主張している。
しかしながら、2003年11月26日の日付をもって、本件使用商品が返品されたことは疑いのない事実であり、この点から逆に考えれば、2002年以降に納品されたものと考えることも可能であり、請求人の指摘する点は、「031126」の日付を平成03年の日付とみる合理的根拠とはいえない。
むしろ、前述のとおり、年月日を単に「031126」と記載する場合において、年を表す「03」が西暦の「2003」を表示することは常識である。また、乙第2号証及び乙第3号証もこれを裏付けている。
(3)むすび
上述のとおり、本件商標は、本件審判請求の予告登録日前3年以内に、商標権者によって、商品「薬剤」に使用されていたことは明白であるから、不使用を理由に取り消されるべき根拠はさらさら無い。

4 当審の判断
(1)乙第1号証の1ないし3によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第1号証の1は、東京都中央区日本橋本石町3丁目3番8号 日本橋優和ビル4階に所在の(株)コバショウの代表取締役社長である小坂晴良が被請求人に対して証明した2006年12月11日付け証明書である。
その内容は、乙第1号証の2(売上伝票)に記載の返品の対象となった「商品コード/品名:4987072314807 トイレソノマエニ 20ML 420エン」が乙第1号証の3(パンフレット)のトイレ用一滴消臭液「トイレ その前に」であり、返品日である2003年11月26日以前に(株)コバショウから、薬局、薬店、ドラッグストア、スーパーその他の小売店に対して卸売りされた商品であったことを証明するものである。
(イ)乙第1号証の2の「年月日」欄には「03/11/26」、「お得意先名」として「(株)(株)コバショウ」、「〒567-0099 大阪府茨木市西田中町2-30」、「取引先名」として「小林製薬株式会社」という表示が記載されており、また、「商品コード/品名」欄の「1」には「4987072314807 トイレソノマエニ 20ML 420エン」、その「納品数量」欄には「-1」、「金額」欄には「-241」という表示がそれぞれ記載されている。
(ウ)乙第1号証の3は、パンフレットの抜粋(写)(「芳香・消臭剤」の頁)である。
(a)該パンフレットの最上段の左側の「商品」欄には、当該商品の包装箱の写真が掲載されている。
そして、該包装箱の表面には、上段に「一滴消臭液」の文字が赤色で同書同大同間隔で表示されており、その下に、「トイレ」の文字が青色で他のいずれの文字よりも大きく表示されているところ、そのうちの「ト」の文字は、「イレ」の文字の約2倍の大きさをもって表されており、該「トイレ」という文字中の「ト」の文字の右下から「イレ」の文字の下までに、「その前に」の文字が黒色で表示されており、さらに、該「その前に」の文字の下には、赤地長方形内に「ノンシュウ」の文字が白抜きで表示されており、該「ノンシュウ」の文字には、登録商標であることを示す丸囲みの「R」の記号(以下「マルアール記号」という。)が付されている。
しかして、看者の注意を強く引く「トイレ」の文字及び赤地長方形内に白抜きしてなる「ノンシュウ」の両文字間に挟まれるようにして、「その前に」の文字は、黒字で小さく表示されていることから、看者に与える印象は薄いものといえる。
(b)前記(ウ)のパンフレットにおける「商品名」欄には、それぞれ同書同大同間隔で書された「一滴消臭液」、「トイレその前に」、「ノンシュウ」の各文字が三段に表示されている。
(c)前記(ウ)のパンフレットにおける「希望小売価格」欄には「¥420」、「JANコード/POSレジ登録用名略称」欄にはバーコード及び「4 987072314807」の数字、「トイレソノマエニ/ノンシュウ」の文字などが表示されている。
また、「商品特徴」欄には、「排便前に使用し、水面に消臭膜を作って悪臭が広がる前にシャットアウトする。」などの文字が記載されている。
(d)「商品名」を「無香空間」及び「無香空間げた箱用」とする商品には、それぞれNEWマークが付されているところ、このパンフレットの最下段には、NEWマークの付された商品が「’97春の新製品です。」という説明書きが表示されている。
(2)前記(1)によれば、以下の事実が認められる。
(ア)本件使用商品について
本件使用商品は、薬剤の範疇に属する「消臭剤」である(当事者間に争いはない。)。
(イ)使用商標について
(a)パンフレットの表示
乙第1号証の3(パンフレット)における左側の「商品」欄に掲載されている本件使用商品の包装に表示されている「その前に」の文字は、前記認定のとおり、看者の注意を強く引く態様で表示された「トイレ」の文字及び赤地長方形内に白抜きしてなる「ノンシュウ」の文字との間に挟まれるように、黒字で小さく表示されているところ、前記「ノンシュウ」の文字には、登録商標であることを示すマルアール記号が付されていることから、本件使用商品の包装に接する需要者は、該「ノンシュウ」の文字が自他商品の識別標識としての機能を具有するものと理解し、大きく表示された「トイレ」の文字及び小さく表示された「その前に」の各文字については、「商品特徴」欄に記載されているような「排便前に使用する」といった意味合い、すなわち商品の用途、使用時期を表示したものと認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認識しないというのが相当である。
また、前記「商品」欄の右にある「商品名」欄に表示された「トイレその前に」の文字は、一体不可分に表示されており、該文字の下には、造語と認められる「ノンシュウ」の文字が表示されていることから、これらに接する需要者は、「トイレその前に」の文字中、「その前に」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を具有するものと見て、これを分離、抽出するというよりも、むしろ、「トイレその前に」という文字の全体をもって、「排便前に使用する」といった意味合い、すなわち商品の用途、使用時期を表示したものと認識するというのが相当であり、しかも、造語である「ノンシュウ」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を発揮する文字部分であると認識して、その部分をもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。
(b)売上伝票及び証明書の表示
被請求人が作成したと認められる売上伝票(乙第1号証の2)には、品名として「トイレソノマエニ」と表示されているところ、この表示は、「ソノマエニ」(その前に)が単独で使用されているものではなく、また、取引先の(株)コバショウも、「トイレ用一滴消臭液『トイレ その前に』」(乙第1号証の1)と表示していることからみて、「その前に」の文字が単独で使用されていた事実は見当たらない。
(c)上記(イ)(a)及び(b)によれば、被請求人が実際に使用している「その前に」という表示は、「トイレ」の語と不離一体のものとして、本件使用商品に使用されており、全体として「トイレで用を足す前に使用する商品」といった意味合い、すなわち商品の用途、使用時期を表示しているものと認められるから、この使用態様をもってしては、自他商品の識別標識としての機能を発揮し得る態様での使用と認めることはできない。
また、仮に、「トイレその前に」の文字が自他商品の識別標識としての機能を発揮する商標であるということができたとしても、該文字からは、「トイレソノマエニ」の称呼及び「トイレで用を足す前に」という観念を生じ、「ソノマエニ」の称呼及び「その前に」という観念を生ずる本件商標とは、称呼及び観念を異にしており、結局、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認めることができない。
(ウ)使用時期
乙第1号証の2によれば、(株)コバショウは、2003年(平成15年)11月26日に、被請求人に宛てて、商品コード「4987072314807」の「トイレソノマエニ」(本件使用商品)を返品したことが推認し得るところである。
しかしながら、本件使用商品の返品日である平成15年11月26日と本件審判の請求の登録(平成18年10月27日)前3年に当たる平成15年10月25日との間は、約1ヶ月程度の期間しかなく、しかも、(株)コバショウは、薬局、薬店、ドラッグストア、スーパーその他の小売店へ本件使用商品を卸売りしている業者であり(乙第1号証の1)、同人がその店頭等で直接本件使用商品を展示、販売しているという事実を示す証拠は見当らないところからすると、上記約1ヶ月の間に、使用商品が実際に市場において取引に資されていた商品であるか否かの疑問が残る(返品された商品が、(株)コバショウと小売店等の間での取引がなく、市場において流通されないまま、平成15年10月25日から平成15年11月26日までの間、(株)コバショウの元にあったとも考えられなくはない。)ばかりでなく、その間に、使用商品が取引の対象商品となっていたことを明らかにする証拠の提出はない。
しかも、本件使用商品が掲載されているパンフレット(乙第1号証の3)の最下段に表示されている「’97春の新製品です。」という文字に徴すれば、該パンフレットは、本件審判請求の予告登録(平成18年10月27日)前3年以内よりは遙かに前である1997年(平成9年)の春よりももっと前の段階で作成されていたものとみるのが相当である。
また、乙第2号証のパンフレットの1枚目には、1994年(平成6年)4月現在と記載されており、その時点では、26頁(4枚目)の中段左側の「商品」欄に見られる「一滴消臭液」「トイレその前に」「ノンシュウ」の各文字を表示してなる商品「消臭剤」の包装(パッケージ)の写真の左上付近に、それが新製品であることを示すNEWマークが付けられていたことが見出せるものの、前記乙第1号証の3のパンフレットの作成時期においても、同じ商品にNEWマークが付けられておらず、既に新製品ではなくなっていたと考えられることよりすると、前記乙第1号証の3のパンフレットが(これも予告登録日前3年以内よりも遙かに前ではあるが、)使用に係る証拠の一つとして提出されてきたものとみるのが相当である。
さらに、乙第3号証(新聞記事検索のアウトプットデータ)は、1994年2月18日及び同年3月25日発行の記事であるところ、これには、トイレその前にノンシュウという文言が記載されていることが認められるものの、それに見られる「その前に」の文字が他の文字や図形から独立して自他商品識別標識としての機能を発揮する態様で使用されていると認められるようなものではなく、しかも、この記事自体、本件審判請求の予告登録日前3年以内よりも遙かに昔のものであるから、これをもって、使用事実の立証のための証拠と見ることはできない。
そうすると、被請求人の提出した証拠をもってしては、本件使用商品が本
件審判請求の登録前3年以内に、現実の取引市場において流通していたとみることはできないといわざるを得ない。
なお、上記乙第1号証の2(売上伝票)の日付について、請求人は、平成3年11月26日である旨主張するが、それに記載された(株)コバショウの郵便番号が7桁(郵便番号が3桁から7桁に変更されたのは、1998年(平成10年)2月である。)であることから、上記日付は2003年11月26日と解するのが相当である。
(3)むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る商品「薬剤」について、本件商標「その前に」の使用をしていなかったものであり、また、それを使用していないことについて、正当な理由も明らかにしていないものである。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の「薬剤」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2007-06-28 
結審通知日 2007-07-05 
審決日 2007-07-18 
出願番号 商願平4-149518 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (005)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山口 烈
特許庁審判官 鈴木 新五
寺光 幸子
登録日 1997-10-09 
登録番号 商標登録第3351292号(T3351292) 
商標の称呼 ソノマエニ 
代理人 小栗 昌平 
代理人 市川 利光 
代理人 稗苗 秀三 
代理人 後藤 誠司 
代理人 小原 順子 
代理人 大島 泰甫 

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