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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y30
管理番号 1159087 
異議申立番号 異議2005-90670 
総通号数 91 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2007-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2005-12-22 
確定日 2007-05-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第4899894号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4899894号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4899894号商標(以下「本件商標」という。)は、平成17年2月4日に登録出願、「シャンパンローズ」の文字を書してなり、第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同17年10月7日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立ての理由の要旨
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、甲第1号証ないし甲第85号証を提出している。
本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

第3 本件商標に対する取消理由の要旨
当審において、平成18年11月21日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
1 「シャンパン」(CHAMPAGNE)の著名性について
申立人の提出した甲各号証及び職権による調査によれば、「シャンパン」「Champagne」に関して、以下の各事実が認められる。(1)「コンサイスカタカナ語辞典」(1996年10月1日、株式会社三省堂発行)によれば、437頁に、「シャンパン 」(Champagne)の見出しの下に「発泡ワインの1種,フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒。白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ、香料を配し、びん詰にして1年以上貯蔵する。多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ。祝宴に多く用いられる。シャンペンとも。日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた。シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリング-ワインと呼んで区別される。」との記載がある(甲第3号証)。
(2)「広辞苑 第5版」(1998年11月11日、株式会社岩波書店発行)によれば、1248頁に、「シャンパーニュ」( Champagne)の見出しの下に「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス」との記載があり、また「シャンパン」( Champagne)の見出しの下に「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。」との記載がある(甲第4号証)。
(3)「新版 世界の酒辞典」(1982年5月20日、株式会社柴田書店発行)によれば、228頁に、「シャンパン」(Champagne)の見出しの下に「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが、このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方、特にプルミュール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地)、ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。」との記載がある(甲第5号証)。
(4)「明治屋酒類辞典」(昭和63年8月1日、株式会社明治屋本社発行)によれば、201頁から202頁に、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出しの下に「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって、何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは、マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし、その地域内で、『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって、それを越えた部分には形容詞がつく。」との記載があり、また、209頁に、「統制名称」の見出しの下「シャンパンは、詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて、『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。」との記載がある(甲第6号証)。
(5)「ワイン紀行」(1991年9月25日、株式会社文藝春秋発行)によれば、シャンパンの歴史及び製造過程についての記載がある(甲第7号証)。
(6)「洋酒小事典」(昭和56年6月15日、株式会社柴田書店発行)によれば、95頁 に、「シャンペン Champagne」の見出しの下「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。」との記載がある(甲第8号証)。
(7)「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会発行)の18頁に、「ワインの分類」の見出しの下に「A.O.C.(原産地統制名称ワイン)に関する記載があり、また、19頁に「A.O.C.(原産地統制名称ワイン)」の見出しの下「A.O.Cワインの製造は、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならない。…A.O.Cワインの原産地域は、V.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されている。…A.O.Cワインの生産地域の場合は、まずこの名称のために要求される様々な基準に合うように製造され、それに合格してはじめてA.O.C 名称を使用することができる。しかし、鑑定試飲会の際に不適当と見なされたものは、この等級から除外され、名称使用権利を失うこととなる。」との記載がある。また、20頁においては、「産地別A.O.C.ワイン一覧表」に「シャンパーニュ/ CHAMPAGNE」の欄があり、また26頁及び27頁においては「シャンパーニュ(CHAMPAGNE)」の見出しの下、シャンパーニュ地方及びシャンパンの歴史及び製造過程についての記載がある(甲第9号証)。
(8)「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年9月 30日、日本経済新聞社発行)によれば、「私たちはシャンパーニュという言葉を聞いただけで、心が浮き浮きしてくる。それだけシャンパーニュは特別な意味をもったワインなのだ。近頃は日本でもシャンパーニュが本格的にレストランやワインバーで飲まれるようになったのはうれしい限りだ。」との記載がある(甲第10号証)。
(9)「最新版 The ワイン & コニャック アルマニャック」(昭和62年10月14日第一刷、発行日不明、読売新聞社発行)によれば、シャンパーニュ地方の様子及びシャンパンと食事との関わり合いについての記載がある(甲第11号証)。
(10)「世界の酒4 シャンパン」(1990年6月30日株式会社角川書店発行)によれば、8頁に、「シャンパーニュのぶどう畑」との見出しの下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。…シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」との記載がある(甲第12号証)。
(11)「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(1991年5月27日第1刷、発行日不明、ネスコ(日本映像出版株式会社)発行)によれば、58頁に、「フランス」の見出しの下に「フランスは勤勉で感覚的なだけでなく、実に組織的だ。ぶどう栽培に適した土地を持っているだけでなく、栽培を規定し、分類し、管理している。どの地所がいちばん優れているかを、ほぼ200年にもわたって整然とリストアップし続けている。過去60年前後、こうした仕事はワインそのものだけでなく、消費者の保護という点で世界的な関心事として次第に重要性を増している」との記載があり、110頁に、「champagne シャンパーニュ」の見出しの下に「シャンパーニュという名前は、ボルドーの称呼などのように、限定された区域に適用されるだけでなく、この名前を名乗るまでに1滴ずつのワインが経なければならない一連の手法をも指す。」との記載がある(甲第13号証)。
(12)「世界のワインカタログ1999by Suntory」(1998年12月1日、サントリー株式会社発行)によれば、242 頁の左上に「シャンパーニュ」の文字を小さく「Champagne」の文字を大きく横二段に表し、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」の見出しの下にその地域図の記載があり、243頁の「シャンパーニュ」の見出しの下に「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界で最も有名なワインのひとつです。その名にふさわしく、大変手間のかかる伝統的な手法をかたくなに守り続けて、素晴らしい風味を生み出しています。」との記載がある(甲第14号証)。
(13)「料理王国1月号別冊 季刊ワイン王国 NO.5」(2000年1月 20日、株式会社料理王国社発行)によれば、80頁に「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングワインだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」との記載がある(甲第15号証)。
(14)「世界の名酒事典’80改訂版」(昭和55年5月30日、株式会社講談社発行)によれば、248頁の「スパークリング・ワイン」の見出しの下部に「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、グラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で別格扱いされるが、世界のワイン地帯には、ほとんどある」との記載があり、「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下に、シャンパンの特徴及び製造法及び地理についての記載があること(甲第16号証)、また、「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’84-’85年度版、’87-’88 年版、’90年版ないし’93年版、’95年版ないし2000年版においてもほぼ同内容の記載と製品の紹介がされている(甲第17号証ないし甲第23号証、甲第25号証ないし甲第30号証)。
(15)「世界の名酒事典’90年版」(1989年12月22日、株式会社講談社発行)によれば、215頁の「ワインの法律」との見出しの下に「…ヨーロッパではEC(欧州共同体)においてワイン法を制定し、加盟各国はこれに基づいてそれぞれ国内法を設けている。」との記載及びECのワイン法に基づく品質区分例として、フランスにおける指定地域優良ワインはV.D.Q.S.ワインとA.O.C.ワインとの記載があり、「ワインのタイプ」の見出しの下に、スパークリング・ワイン(発泡性ワイン)について「シャンパンに代表されるように、発酵中の炭酸ガスを瓶の中に閉じ込めて、発泡性をもたせたワイン。ただし、シャンパンは原産地呼称法上定められた名称で、フランスのシャンパーニュ地方産に限られる名称。」との記載がある(甲第20号証)。
(16)「世界の名酒事典’94年版」(1993年12月9日、株式会社講談社発行)によれば、12頁及び13頁に、映画にかかわるシャンパンについて、例えば、「『肉料理には赤いワイン、魚には白いワイン、そして恋にはシャンパンを』といったのは『昼下がりの情事』(57年、ビリー・ワイルダー監督)のオードリー・へプバーン。」のように多数紹介されている(甲第24号証)。
(17)「世界の名酒事典2000年版」(1999年(平成11年)11月15日、株式会社講談社発行)によれば、16頁ないし22頁の「ミレニアム・シャンパーニュ紀行」との見出しの下にシャンパンメーカー及びシャンパーニュ地方についての記載がある(甲第30号証)。
(18)「The 一流品 決定版」(1986年4月17日、読売新聞社発行)によれば、260頁の「スパークリングワイン/シャンパン」の見出しの下部に「スパークリングワイン、発泡性で炭酸ガスを多量に含んだワインである。いちばん有名なのがシャンパン。フランスではマルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ四県のブドウ畑でとれたものを原料にしたものだけをほんとうのシャンパンと証明している。祝祭典や結婚式、誕生日など華やいだ場所で乾杯用として使われる、歓びを演出する酒でもある。」との記載があり、以下に著名なシャンパンが紹介されていること(甲第34号証)、同誌PART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)にも同様の趣旨の記載がある(甲第35号証ないし甲第37号証)。
(19)「家庭画報特選 Made in EUROPE ヨーロッパの一流品 女性版」(昭和57年11月1日、株式会社世界文化社発行)によれば、198頁の「“女性を美しくする唯一の飲み物”-シャンパン」の見出しの下に「シャンパンという名称は、フランスのシャンパーニュ地方で造られる発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)の総称で、それ以外のものは単にスパークリングと呼ばれます。」との記載があり、製品が紹介されている(甲第38号証)。
(20)「家庭画報編女性版 世界の特選品’84」(昭和58年11月1日、株式会社世界文化社発行)によれば、217頁には、「CHAMPAGNE シャンパン」との見出しの下に、「パリから170 キロ東の、ランスより南一帯がシャンパーニュ地方。ここでつくられる発泡性ワインがシャンパンです。」との記載がある(甲第39号証)。
(21)「男の一流品大図鑑’86年版」(昭和60年12月1日、株式会社講談社発行)によれば、191頁に、CHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されており(甲第40号証)、同誌’87年版及び’88年版においても同様にCHAMPAGNE(シャンパン)が一流品の一つとして紹介されている(甲第41号証及び甲第42号証)。
(22)「はじめてのシャンパン&シェリー」(1999年、株式会社宙出版発行)によれば、132頁の「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年における上位10カ国へのフランスからの国別出荷量等がグラフにより示されており、我が国への出荷量については、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml、以下同じ。)であること及びフランスからの総出荷量は、1993年が22909万本、1998年が29246万本であって、この間ゆるやかに上昇を続けている旨の記載がある(甲第43号証)。
(23)我が国の新聞記事の抜粋(日付、新聞社名が明らかでないが、証拠方法リストには1989年1月5日「日本経済新聞」?1992年7月27日「毎日新聞」とある。)に、「シャンパンについて、『シャンパン(産地)」との見出しの下に「シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で造られたスパークリングワイン(発泡酒)のこと。グラスに注ぐと軽やかな細かい泡が立つ華やかなワインだ。シャンパーニュ地方はパリの北東、約百七十キロにあり、同国のブドウ産地では最も北に位置する寒い地域』、及び『結婚披露宴の乾杯用かクリスマス・ディナーの小道具--。これまで限られた出番に甘んじていたシャンパンなど発泡性ワインの人気が急上昇している。』等の各種記事」が掲載されている(甲44号証ないし甲第50号証)。
(24)「特別法コンメンタール 不正競争防止法」(1986年(昭和61年)6月30日第4刷 第一法規出版株式会社発行)の227頁に、「『シャンパーニュ』と発泡葡萄酒のように、地名と商品との結びつきが極めて強固である場合などは、いかなる打消表示によっても、原産地誤認のおそれは排除されないと解する。」との記載がある(甲第51号証)。
(25)「パリ条約講話」(1987年(昭和62年)12月16日 社団法人発明協会発行)の346頁に、「…『地方的名称』は、都市町村の名称、その他特定の地域に与えられている呼び名をいいます。この『地方的名称』や『ぶどう生産物の原産地の地方的名称』については何ら規定はありませんが、後者について現在の国際慣行上大体一般に認められている地方的名称のうちでわが国によく知られている主なものとしては、シャンパン(champagne)、ポート(port)、コニャック(cognac)等があります」との記載がある(甲第52号証)。
(26)「1985年、制定50周年を迎える原産地統制名称(AOC)」(「1985年、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット」とあるが、発行日等は不明)において、「原産地統制名称とワインおよびオー・ド・ヴイ原産地名称国立研究所(INAO)は、1935年7月30日に設立されました。」との記載があり、またINAOの職務として「1.AOC ワインおよびオー・ド・ヴイの承認を行う」、「2.原産地名称ワインを発生し得る災害から保護する。」との記載があり、「この2番目の任務は必然的に以下の事項に向けられます」と記載の後「フランス国内外を問わず、不正と偽造行為に対する戦い。」が列挙されている(甲第53号証)。
(27)商標法第43条の8において準用する同法第56条第1項で準用の特許法第150条第5項に基づいてした職権による証拠調べによれば、「WTO加盟国によって保護されているぶどう酒又は蒸留酒の産地の表示リスト-リスボン協定に基づき国際登録された原産名称の中から-」(平成7年 特許庁商標課)中に、「CHAMPAGNE」「シャンパーニュ」について、その説明とともに「登録番号231」と掲載されている(特許庁のホームページ「商標審査便覧42.117.03 世界貿易機関(WTO)の加盟国のぶどう酒または蒸留酒の産地を表示する標章」の巻末資料2-1、2-2参照)。
これらの認定事実によれば、「Champagne」「シャンパン」の語は、「Champagne」の語がフランス北東部の地名であり、同地で作られる発泡性ぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、「Champagne」を表す邦語として「シャンパン」が普通に使用されていること、シャンパンが発泡性ぶどう酒を代表するほど世界的に著名であること、世界的に有名な映画でシャンパンが使用されていること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍、雑誌及び新聞などにおいてシャンパンについての説明がなされていること、世界の名酒事典などにおいてシャンパンの具体的製品が紹介されていること、ポンという景気のよい爆音、黄金色の酒の美しさ、泡立ちの快さなどから乾杯用としてシャンパンが用いられることが多いこと及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められるものであり、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願当時(平成17年(2005年)2月4日)はもとより登録査定時(同17年(2005年)9月6日)を含むその後においても、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
2 商標法第4条第1項第7号の該当性について
本件商標は、前記1のとおり「シャンパンローズ」の片仮名文字を横書きしてなるところ、構成中の「シャンパン」の語については、上述したとおり「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られているものであり、また「ローズ」の文字は、「薔薇(バラ)」を意味する語として一般に親しまれており、指定商品「菓子,パン」等の食品関係においては、「バラのエキス、バラの香り」が各種商品に用いられているところである。
そうすると、「シャンパンローズ」の語が、例えば、一連で特定の意味を持った成語として親しまれている場合等を除き、これを常に不可分一体のものとして認識しなければならない事情は認められない。
以上によれば、本件商標は、構成全体を一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情を発見し得ず、むしろ構成中の「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして本件商標の登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること前記2のとおりであること、並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、これを食品に属する本件商標の指定商品に使用するときは、著名な「CHAMPAGNE」「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当である。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第4 商標権者の意見の要旨
前記第3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べると共に証拠資料1ないし同4(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、商標権者が造り出した特定の語義を有さない同書同大の片仮名からなる一連の造語である。証拠資料1及び2に挙げた商標登録異議決定の判断を同様に解釈すれば、本件商標もその構成自体が矯激、卑狼あるいは差別的な文字からなるものではなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益・一般道徳観念に反するものではなく、公正な競業秩序を乱すおそれがあるものともいえない。
また、証拠資料3は本件商標と同様、「CHAMPAGNE」、「シャンパン」を含む商標であり、方式上の理由により登録異議の申立てが却下決定されているが、その後商標登録無効審判を請求されることもなく、登録が維持されている。さらに、我が国における他の法律によってその使用が禁止されているものとすべき事実は認められない。
また、指定商品も「フランス国シャンパーニュ地方産の発泡性ぶどう酒を使用した菓子・パン」と限定しており、実際の取引状況においても、証拠資料4に挙げたように商標権者は本件商標をアイスクリームに使用し、フランス・ポメリー社のシャンパンを原料として使用しているので、公正な競業秩序を乱し、国際信義に反するものではなく、公の秩序を害するおそれもないものと思料する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 本件商標は、構成全体を一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情を発見し得ず、むしろ構成中の「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味するものとして本件商標の登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること、並びにフランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであること等前記第3の取消理由のとおりであるから、本件商標を食品に属するその指定商品に使用するときは、著名な「CHAMPAGNE」「シャンパン」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当である。
2 なお、商標権者は、意見書において本件商標は、商標権者が造り出した特定の語義を有さない同書同大の片仮名からなる一連の造語である旨主張しているけれども、本件商標を構成する「シャンパンローズ」の文字については、その構成中、「シャンパン」の文字が分離されて認識されると判断されること上記1のとおりであるから、その主張は採用できない。
また、商標権者は、商標登録異議決定例(以下「決定例」という。)を挙げて、これらの事例にならえば本件商標も登録されるべき旨主張しているが、いずれも、その商標の構成及び指定商品(又は役務)等において、本件とは事案を異にするものであるから、本件は、これらの決定例の判断に拘束されることなく検討されるべきものである。
3 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2007-03-27 
出願番号 商願2005-9252(T2005-9252) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Y30)
最終処分 取消  
前審関与審査官 稲村 秀子 
特許庁審判長 澁谷 良雄
特許庁審判官 石田 清
山本 良廣
登録日 2005-10-07 
登録番号 商標登録第4899894号(T4899894) 
権利者 カネボウフーズ株式会社
商標の称呼 シャンパンローズ、ローズ 
代理人 稲葉 良幸 
復代理人 佐藤 俊司 
復代理人 石田 良子 
代理人 田中 克郎 

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