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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1155593 
審判番号 無効2006-89076 
総通号数 89 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-05-31 
確定日 2007-03-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4804674号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4804674号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4804674号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成15年11月17日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同16年9月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4376378号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。
(2)登録第4378318号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,スキーワックス,釣り具」を指定商品として、同12年4月21日に設定登録されたものである。
(3)登録第4376377号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成10年6月26日に登録出願、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。
(4)登録第4399811号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成11年4月1日に登録出願、第3類「せっけん類,香水類,その他の化粧品,香料類,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛」を指定商品として、同12年7月14日に設定登録されたものである。
(5)登録第2708505号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同7年7月31日に設定登録、同18年1月4日に第9類「ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,スロットマシン,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,メトロノーム,レコード」、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴,仮装用衣服」、第28類「運動用具,おもちゃ,人形,囲碁用具,将棋用具,歌がるた,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(6)登録第2593080号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同5年10月29日に設定登録、同16年5月26日に第25類「履物」、第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(7)登録第4025668号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第17類「被服、布製身回品 その他本類に属する商品」を指定商品として、同9年7月11日に設定登録されたものである。
(8)登録第4180654号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成2年11月8日に登録出願、第21類「かばん類、その他本類に属する商品」を指定商品として、同10年8月21日に設定登録されたものである。
(9)登録第3324363号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、平成7年2月15日に登録出願、第14類「時計」を指定商品として、同9年6月20日に設定登録されたものである。
(10)登録第3147520号商標(以下「引用商標10」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成4年6月26日に登録出願、第9類「サングラス,その他の眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、同8年4月30日に設定登録されたものである。
(11)登録第3284231号商標(以下「引用商標11」という。)は、別掲(4)のとおりの構成よりなり、平成5年12月3日に登録出願、第14類「時計」を指定商品として、同9年4月18日に設定登録されたものである。
(12)登録第2693722号商標、登録第2671514号商標、登録第1587778号商標、登録第2609079号商標、登録第1423465号商標、登録第2693723号商標、登録第2704525号商標、登録第2693724号商標、登録第2671515号商標、登録第2528490号商標、登録第4522864号商標、登録第4522862号商標及び登録第4522863号商標は、願書に記載されたとおりの構成よりなり、その指定商品及び登録日は、商標登録原簿に記載のとおりである。
(以下、これらを総称するときには単に「引用商標」と表示する。)

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第140号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
(ア)出所混同のおそれ
請求人が所有する引用商標(甲第2号証ないし甲第25号証)に代表される3本線を基調とする商標は、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時には、本件商標の指定商品の取引者、需要者間で広く認識されている(甲第2号証ないし甲第126号証)。
本件商標は、引用商標1ないし引用商標11の図形部分の3本線の図柄の中央部分を甲第134号証に示すラインで切り取って中央部分を白抜きにした図形(甲第135号証)と酷似しており、前記引用商標と図形構成の軌跡を一にすることが明らかである。
また、本件商標は、その構成中に「3本線」を具備しており、「3本線の商標」として看取されるものであるから、3本線を基調とする引用商標と一致し、3本線のブランドとして著名な請求人及び引用商標を容易に想起連想させるものである。
引用商標5ないし引用商標11に示すとおり、請求人は、引用商標1ないし引用商標4の3本線の図柄に他の文字を付加し、デザイン変更して使用してきた経緯がある(甲第49号証ないし甲第53号証、甲第58号証ないし甲第61号証、甲第83号証ないし甲第87号証、甲第100号証及び甲第102号証ないし甲第126号証)。
したがって、今後、請求人が当該3本線の図柄のデザインを変更して新しいロゴマークとして使用することは十分に想定可能である。
そして、本件商標の指定商品は、請求人の取扱いに係る商品と同一又は類似の商品である。
よって、本件商標が指定商品に使用された場合には、取引者、需要者は、引用商標1ないし引用商標11、あるいは3本線のブランドとして著名な請求人を想起連想し、請求人の取扱いに係る商品であると誤信するおそれがあるから、本件商標は、請求人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあることが明らかである。
(イ)フリーライド、ダイリューション等の不正目的
被請求人が登録出願した甲第129号証及び甲第130号証に示す件外商標(商願2004-57167及び登録第4122534号商標)の存在よりみれば、被請求人が本件商標を指定商品に使用するときには、その構成中の中央白抜きの部分に「adidas」、「ADIDAS」等の文字、あるいは請求人を容易に想起連想させる文字、図柄等を表示して使用する蓋然性が極めて高いことが容易に推認できる。
被請求人は、請求人の著名商標以外にも、他人の著名商標を構成中に包含する商標を多数、登録及び出願しており(甲第133号証)、その中には、登録無効審決が確定した商号商標を包含した商標が存在する(甲第131号証、甲第132号証、甲第136号証及び甲第137号証)。
上記事情に鑑みれば、本件商標は、請求人の名声及び引用商標の顧客吸引力にフリーライドし、また、引用商標の商品等出所表示力を希釈化するダイリューション等の不正の目的をもって登録、使用されるものであることが明らかである。
東京高裁判決(甲第127号証)においても確認されているとおり、商標法第4条第1項第15号の規定は、出所混同防止に止まらず、著名商標のフリーライド、ダイリューション等も防止する趣旨の規定である。
(ウ)以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることが明らかであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されている引用商標1ないし引用商標11と構成の軌跡を一にするものであり、請求人の長年の企業努力及び宣伝活動によって、その業務に係る商品・役務を表示するものとして著名性を獲得した「3本線」の商標の名声にフリーライドする意図が明らかである。
被請求人が本件商標を指定商品に使用すれば、請求人の商品出所表示として著名な「3本線」の出所表示機能が毀損、希釈化される。かかるダイリューションによって、請求人が多大な損害を被ることが予見される。
被請求人の名義で登録又は出願された請求人の商号商標を包含する件外商標の存在(甲第129号証及び甲第130号証)、被請求人による件外商標の実際の使用態様(甲第139号証)、さらには、被請求人が他人の著名商標を構成中に包含する商標を多数、登録、出願している事実(甲第131号証ないし甲第133号証、甲第136号証及び甲第137号証)に照らせば、本件商標が不正目的で使用するものであることが容易に推認される。
本件商標の登録及び使用は、社会一般の道徳観念、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神、さらには国際信義に反するものであるから、本件商標は、公の秩序を害するおそれがある。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の前記主張に対し何ら答弁していない。

5 当審の判断
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば以下のことが認められる。
引用商標に共通する概念である3本線(ThreeStripes)の図柄(以下「3本線の図柄」という。)は、請求人の商標として1949年に採択されたものであり、その3本線の図柄をスポーツシューズに採用し(甲第26号証の6、甲第26号証の8・9及び甲第31号証)、以後、50年を超える長期にわたり今日まで請求人の業務に係る商品の識別標識として世界各国で使用され、親しまれていることが認められる。
また、1970年に初めて請求人のサッカーボールがサッカーのワールドカップ大会の公式ボールとされ、これ以降今日まで連続して請求人のボールが公式ボールに採用されており、近年では、1998年のフランス大会で優勝したフランス代表チームが請求人の製造販売に係る3本線の図柄の商標を用いたユニフォームを着用している。同じく、スペイン、ユーゴスラビア及びスウェーデンのサッカー代表チームが請求人の製造販売に係る3本線の図柄を用いたユニフォームを採用している(甲第53号証)ことが認められ、我が国においても日本サッカー協会が1999年4月1日から5年契約で3本線の図柄を使用した請求人の製造販売に係るユニフォームを日本代表チームユニフォームに採用することを決定し、現在も請求人は日本代表チームにユニフォームを提供している(甲第65号証ないし甲第67号証、甲第86号証)。
そして、少なくとも1989年から1996年までの7年間、商品カタログの裏表紙(甲第35号証ないし甲第40号証、甲第44号証ないし甲第48号証)には、3本線の図柄の表示と共に「3本線はアディダスの登録商標です」なる表示が継続的に記載されてきたことが認められる。
そして、引用商標5ないし引用商標11は、甲第41号証(「Tennis’92 SPRING/SUMMER COLLECTION」)、甲第42号証、甲第48号証ないし甲第53号証、甲第83号証及び甲第84号証の商品カタログ、甲第58号証(「陸上競技マガジン TOKYO’91世界選手権展望号」)ないし甲第61号証の雑誌、甲第85号証(2005/02/15現在)ないし甲第87号証及び甲第100号証ないし甲第102号証の請求人ホームページ、及び甲第103号証(2004年3月31日 朝日新聞)ないし甲第114号証の新聞広告等に使用されている事実を認めることができる。
以上より、3本線の図柄と共に引用商標5ないし引用商標11は、本件商標の登録出願時及び査定時において本件商標の指定商品の取引者、需要者の間で請求人の商品「スポーツシューズ、ユニフォーム」等を表示するものとして広く認識されていたものと認められる。
(2)本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの縦長の台形を、当該台形の幅のほぼ3分の1程度の間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くし、右端に位置するものを最も長くした図形において、当該図形の左端の台形の下辺から約3分の2程度の位置で当該3つの台形の上部を水平線で切り取ったものと、当該切り取られた3本線の各幅の3倍程度の余白をおいて、当該切り取った3本線の上方に直角三角形を配置した構成からなるものである。
他方、引用商標1ないし引用商標11は、別掲(2)、(3)、(4)のとおりの構成よりなるところ、その構成中の図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗りの縦長の台形を、当該台形の幅のほぼ3分の1程度の間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くし、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
そうすると、本件商標は、引用商標1ないし引用商標11の図形部分の中間部分を切り取った図柄(別掲(5)、甲第134号証及び甲第135号証)と酷似するといえるから、本件商標は、引用商標1ないし引用商標11の図形部分と着想、構図等その構成の軌を一にするものとみるのが相当である。
そして、件外登録第4122534号商標の使用証拠として、提出された甲第139号証よりすると、請求人の著名な上記引用商標1ないし引用商標11にフリーライドする意図が推認されるとするのが相当である。
また、本件商標の指定商品は「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」であり、請求人の取り扱いに係る商品「スポーツシューズ、ユニフォーム」と同一又は類似の商品を含むものである。
してみれば、本件商標は、請求人の長年の企業努力及び宣伝活動によってその業務に係る商品を表示するものとして著名性を獲得した引用商標1ないし引用商標11の名声にフリーライドするものといわざるを得ず、本件商標の登録及び使用は、社会一般の道徳観念、公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神、さらには国際信義に反するものであるといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
以上のとおり、他の無効理由について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)
本件商標


別掲(2)
引用商標1ないし引用商標4


別掲(3)
引用商標5ないし引用商標9


別掲(4)
引用商標10及び引用商標11


別掲(5)
甲第135号証(上記引用商標の図形部分の中央部分を白抜きにした図形)


審理終結日 2007-01-26 
結審通知日 2007-01-31 
審決日 2007-02-14 
出願番号 商願2003-101784(T2003-101784) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y25)
T 1 11・ 271- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小畑 恵一 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 小林 和男
寺光 幸子
登録日 2004-09-24 
登録番号 商標登録第4804674号(T4804674) 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 柳田 征史 
代理人 柳田 征史 
代理人 佐久間 剛 
代理人 中熊 眞由美 
代理人 佐久間 剛 

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