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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Y45
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y45
管理番号 1153754 
審判番号 無効2005-89118 
総通号数 88 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-04-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-09-08 
確定日 2007-02-22 
事件の表示 上記当事者間における登録第4820549号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4820549号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成からなり、平成15年12月24日に登録出願され、第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を指定役務として平成16年11月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第121号証を提出している。
1 請求の理由
(1)本件商標について
本件商標は、「BLESTON」(BとNを大きく表示)の欧文字とその上下にそれぞれ小さく表された「HARBOR PARK AVENUE」の欧文字と「ハーバーパーク アヴェニュー ブレストン」(「ブレストン」のみ大きく表示)のカタカナ文字よりなるところ、これに接する取引者、需要者は、その構成態様により、造語であり顕著に表された「BLESTON(ブレストン)」の文字部分を独立したものと捉え、それから生ずる「ブレストン」の称呼で取引に資するものというのが相当である。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、以下のとおり、ブライダル関連分野における取引者、需要者の間で広く知られたホテルの名称「ホテル ブレストンコート/Hotel Bleston Court」(以下「引用商標」という。)と出所の混同を生ずるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(ア)引用商標及びその略称の周知・著名性
請求人は、宿泊施設・婚礼(結婚披露を含む。)のための施設として「ホテル ブレストンコート/Hotel Bleston Court」を1995年から運営している(甲第2及び第3号証)。「ホテル ブレストンコート/Hotel Bleston Court」(以下「請求人ホテル」という。)は、歴史こそ浅いが、明治時代キリスト教外国人宣教師によって開拓され著名な文化人・財界人の別荘地として成熟してきた我が国有数の著名な高級リゾート地「軽井沢」のネームバリューと緑豊かな自然の中で開拓以来のキリスト教的伝統の残る文化的施設・歴史を背景に旅行と宿泊を組み合わせたウェディングスタイルを提供する特異なビジネスモデルによるホテルとして本件商標出願時に既に周知・著名性を獲得している。以下、引用商標ないしは請求人ホテル及びその略称の周知・著名性について詳述する。
請求人は、開業当初より今日に至るまで、結婚予定者の2人に1人は閲読しているとされる結婚情報誌「ゼクシイ」をはじめとして、複数の結婚情報誌・新聞に請求人ホテルが提供するウェディングプランに関する広告を掲載してきた(甲第4ないし第67号証)。
そして、それらの広告にも掲載されているように、請求人ホテルは、請求人が運営する軽井沢の代表的な施設である軽井沢高原教会での挙式をコーディネートし、軽井沢ならではのウェディングスタイルを提唱してきた。それは、ブレストンコートスタイル(Bleston Court Style)とも指称され(甲第32ないし第40号証)、旧近衛公爵邸や邸宅風のゲストハウスをパーティー会場として提供し、軽井沢の自然の中でゲストを招いて挙式・披露宴をとり行なうという点、また、ゲストも含め宿泊可能である点で、旧来の挙式スタイルとは一線を画するものであり、新しいウェディングスタイルとして注目を集め、今日の邸宅風ウェディングスタイルに先鞭を付け、需要者にも広く支持されてきたところである(甲第4ないし第31号証)。
その結果、引用商標は、「宿泊施設・婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」について、本件商標の出願時には需要者、取引者の間で広く認識されるに至り、引用商標の周知・著名性は長野県におけるマーケットリサーチや取引業界における証明書に示されるとおりである(甲第68ないし第89号証)。
特に、取引業界における認知度を示す証明書においては、長野県商工会議所、ブライダル業界における全国唯一の業界団体であるブライダル事業振興協会を始め、ブライダル宴会エージェント大手の株式会社コンパル及び株式会社モック、婚礼印刷大手の株式会社マイプリント、大手広告代理店の株式会社電通等、多数の取引先・代理店によって引用商標の周知著名性が認められており、またその略称「ブレストン」が直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっていることが認められている(甲第69ないし第89号証)。
(イ)本件商標と引用商標との対比
本件商標がその構成より「BLESTON(ブレストン)」の文字部分が強く看者の注意を惹き、これより「ブレストン」の称呼を生ずることは上記のとおりである。
これに対し、引用商標中、「ホテル」は宿泊施設の一般名称であり、また「コート(Court)」の文字は、「中庭、豪壮な邸宅」等の意味を有するところ(甲第90号証)、実際の取引において、ホテルの「中庭」は、そのホテルの特徴を表現するのに一般的に使用され、「中庭のある静かな和風旅館」 「中庭を囲んだ数奇屋作りの」等、宣伝上の謳い文句として用いられている(甲第91ないし第106号証)。また、中庭を囲んだ造りの住宅のことをコートハウスといい(甲第107号証)、「コート(Court)」が「中庭」を意味することは容易に理解できるものである。
したがって、「宿泊施設の提供,婚礼のための施設の提供」との関係において、引用商標の「ホテル(Hotel)」及び「コート(Court)」の文字部分は役務の提供施設の質等を表示又は暗示させるものであるから、造語である「ブレストン(Bleston)」の文字部分に認識、把握される場合も少なくないというのが相当である。
ところで、近年のインターネットの普及により、商品の販売や役務の提供に関する情報を各種検索サイトを通じて入手することは日常的に行われており、その際、文字入力の手間を省いたり、曖昧検索を行うための検索文字入力手法として、例えば、(ブレストン 結婚式)のように、対象文字列の前方一致入力により行うことは経験的に見受けられるところである。
また、昨今の商取引においては、郵便やファックスに比べて簡易かつ迅速な通信手段である電子メールが利用されており、サービス内容についての各種問い合わせ等において名称を略称することは日常的に行われている。実際の取引においても、請求人ホテルが「ブレストン」と略称されており(甲第108ないし第117号証)、インターネット上の各種の掲示板でもそのような事実が見受けられるのである(甲第118ないし第120号証)。
したがって、現実の取引においても、需要者は引用商標中「ブレストン(Bleston)」の文字部分に着目し、「ブレストン」と略称し取引に当たっているということができる。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、ともに「ブレストン(Bleston)」の文字を有し、その部分に相応する称呼において取引に供される互いに近似する商標であるというべきである。
そして、請求人ホテルがブライダル事業を重要な特徴としていることは上述したとおりであるが、一般的にも、我が国の主要なホテルは、宿泊・レストラン・宴会を営業上の柱とし、その中でもブライダル事業はホテル事業を支える重要な役割を担っているところである。このことは、我が国のブライダル業界で唯一の業界団体である社団法人日本ブライダル事業振興協会の会員の大半がホテル業に携わる者であることからも明らかである(甲第121号証)。
したがって、「宿泊施設の提供」と「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」とは、現実の取引において密接な関連性があり、形式的には非類似の役務であっても、役務の出所の混同を生ずる蓋然性があるものである。
なお、引用商標が「宿泊施設の提供,婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」について周知著名であることは上記(ア)で述べたとおりである。
したがって、本件商標にかかる役務と引用商標にかかる役務は同ー又は密接な関連性を有するものである。
(ウ)出所の混同を生ずるおそれについて
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきことは判例の示すとおりである(最判平成12年7月11日民集54巻6号1848頁)。
而して、引用商標の周知著名性、引用商標が「ブレストン(Bleston)」と称呼、認識されることの蓋然性、現実の取引において引用商標が「ブレストン」と略称されている事実、両商標の役務の関連性に鑑みれば、本件商標に接した需要者は、請求人ホテルと経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所の混同を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、商標登録を受けることができないものである。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人ホテルは、上記のとおり、本件商標の出願時には需要者等の間で広く認識されるに至ったものであり、また現実の取引において「ブレストン」と略称されており(甲第108ないし第120号証)、かつ、「ブレストン」といえば、直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっている(甲第69、第70、第72、第74、第76、第78、第80、第82、第84、第86及び第88号証)。
これに対し、本件商標は、請求人ホテルの著名な略称である「ブレストン」の文字を含む商標であり、また請求人の承諾を得ないで出願されたものである。
したがって、本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
(4)結び
本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は同項第8号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)被請求人は、甲第69ないし第89号証は請求人が予め用意した定形のフォーマットに基づいて当該証明者が把握する範囲内において私的に証明しているにすぎず、また、引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されるに至った時期、取引業者及び需要者の間でどの程度略称されているのか共に不明確であるから、本件商標の出願日である平成15年12月24日の時点で、「ブレストン」 が直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっていると認めることはできないと主張する。
しかしながら、商標が周知著名性を獲得した具体的日時を特定するのは困難であり、商標の使用態様、使用開始日、広告宣伝の内容等を総合的に勘案して判断されているところ、甲第69ないし第89号証が周知著名性を獲得した具体的日時を特定しないで、証明書作成時点における証明であることは、むしろ、証明内容の客観性を担保したものであるというべきである。
すなわち、甲第69ないし第89号証は、平成16年4月から5月にかけて作成されたものであるが、この時点において、引用商標が周知であり、また「ブレストン」と略称され広く認識されるに至ったことを証明しているのである。
そもそも、周知著名商標と言われるものは、ある日突然周知著名となるものではなく、継続的に使用されることにより徐々に周知度が高まっていくものである。
そうとすれば、証明日の僅か5、6ヶ月前、すなわち本件商標の出願日である平成15年12月24日の時点で、平成7年4月23日より継続して使用されている引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されるに至ったことは十分推認できるものである。
そして、甲第2ないし第89及び第108ないし第120号証により、請求人ホテル及びその略称「ブレストン」の知名度は、本件商標の出願日以前において高まっていたことを十分推認できるものである。
(イ)また、証明者のうち、長野県商工会議所連合会は、通商産業大臣の認可を経て設立された公益法人であって、長野県内20の商工会議所を会員としており、日本ブライダル事業振興協会は、国内のホテル・結婚式場及び婚礼に直接係わる企業等545社によって構成される我が国唯一の業界団体であり、当該証明者による証明書(甲第69及び第70号証)が私的に作成されたものでないことはいうまでもなく、該証明書によっても、取引者、需要者間において、引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されるに至っていたことが証明されているのである。
なお、証明書は、証明内容を確認の上、記載されている内容について責任をもって証明しているのであるから、証明書フォーマットに関する被請求人の主張は当を得ない。
(ウ)被請求人は、引用商標の称呼を「ホテルブレストンコート」と一連に称呼されるものであり、取引の実情を考慮せずに、一概に「ホテル」 の文字部分が除かれた状態で認識、把握されるとするのは早計に過ぎると主張する。
しかしながら、「ホテル(HOTEL)」の文字が「西洋風の設備様式を整えた宿泊施設」等を意味する語として、普通一般に使用されていることは明らかであり、当該文字を除外して商標の類否が判断されているところである(平成9年審判第8667号、平成10年審判第9736号)。
(エ)また、「ブレストン」 が外国人のファミリーネーム等として相当数見つけることができる旨主張するが、ファミリーネームとしての相対的なヒット件数は低いものであり、我が国において、「ブレストン」 を外国人のファミリーネームと認識し理解されるとは到底言えず、また、「ブレストン(Bleston)」が成語として存在しないことから、この語は独創性を備えたものであるということができる。
(オ)被請求人は、電子メールは改ざんが容易であり、その証拠能力について疑義が生じざるを得ないと主張する。
しかしながら、審判官を欺いて虚偽の資料を提出し、自己に有利な審決を得たとしても、そのような行為は詐欺の行為として処罰の対象にもなりかねず、そのような危険を冒してまで審判請求人が自己の不利益に繋がる行為をしようはずもない。
そもそも、電子メールは、現在における主要な通信手段として一般に用いられており、多くの民事事件で有力な証拠として認められており、被請求人の主張は何ら根拠のないものである。
(カ)また、甲第108ないし第117号が商標法第4条第1項第15号の適用に関する証拠としての体をなしていないと主張するが、同号証により引用商標が「ブレストン」と略称されている事実は十分立証されているのであり、甲第118ないし第120号証についても同様である。
(キ)さらに、インターネットの検索サイトの検索文字入力手法に関し、需要者が(ブレストン、結婚式)のように入力して前方一致検索を行うことがあるという可能性を述べているに過ぎない旨主張するが、前方一致検索(prefix search)は、インターネットその他各種の検索において、検索手法の一つとして確立したものであり、引用商標が「ブレストン」と略称される可能性を十分推認させるものである。
したがって、引用商標中「ブレストン(Bleston)」の文字部分が強く看者の注意を惹き、本件商標と引用商標とは互いに近似する商標である。
なお、被請求人は、引用商標の称呼に関し、東京高裁平成16年(行ケ)第168号判決(乙第89号証)を引用しているが、本件とは事案を異にするものである。同判決は上告審で差し戻され、結果、商標登録は無効とされている(最高裁平成16(行ヒ)343、知財高裁平成17(行ケ)10613)。
(ク)被請求人は、ホテル事業と婚礼事業との混同の可能性について、直接の需要者である結婚の対象者のみについて言及し、混同の可能性を否定するが、ホテル事業と婚礼事業とは、密接な関連性を有しており、また被請求人も「需要者の婚礼施設の選択において宿泊施設の有無が重要な判断材料ともなり得る」と自認しているところである。
なお、被請求人は営業形態の差異が出所の混同の判断に大きな影響を与えることに関し、東京高裁平成16年(行ケ)第168号判決(乙第89号証)を引用しているが、本件とは事案を異にするものである。
(ケ)被請求人は、自己の営業努力のみにより本件商標に関して既に周知著名性を獲得し、本件商標には被請求人の業務上の信用が相当程度化体するに至っており、このような取引の実情から本件商標は引用商標と具体的な出所の混同を生ずる虜のない商標であることは明白であって、引用商標へのただ乗り希釈化といった問題も事実問題として生じておらず、被請求人と請求人との間には現在健全な競業秩序が形成されている旨主張する。
しかしながら、出所の混同のおそれの存否は、本件商標の出願時及び登録査定時を基準に判断されるべきところ、被請求人が本件商標の周知著名性を示す証拠として提出したものの大半は、登録査定日以降の使用にかかるものであり、登録査定日前の使用にかかるものは、乙第3ないし第7、第19ないし第22、第27、第28、第31ないし第42、第54、第55、第69ないし第73、第83及び第84号証の一部に止まり、そのうち乙第3、第5、第7、第54、第55及び第70ないし第73号証に示された商標の使用態様は、本件商標とは異なるものである。
したがって、被請求人の提出した証拠によっては、本件商標が相当程度の周知著名性を獲得していたとは到底言えず、引用商標と出所の混同を生じていないことの証左は何ら示されていない。
よって、引用商標の周知著名性、引用商標が「ブレストン(Bleston)」と称呼、認識されることの蓋然性、現実の取引において引用商標が「ブレストン」と略称されている事実、役務の関連性に鑑みれば、両商標は役務の出所の混同を生ずるおそれがある。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標がその構成から「BLESTON」及び「ブレストン」が独立して認識されることは、被請求人も自認するところ、請求人のホテルの名称が著名であり、その略称「ブレストン」が周知であることは証拠によって明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第92号証を提出している。
1 本件商標について
被請求人は、株式会社アークベルを含むアークベルグループの中核を担う法人であり、新潟県を拠点に冠婚葬祭に関する一切の業務を行っている(乙第1及び第2号証)。本件商標は、ビバリーヒルズの高級邸宅をモチーフにしたウェディングスペース「ハーバーパーク アヴェニュー ブレストン」が2004年10月に完成した当初から、被請求人を始めアークベルグルーブにより結婚情報誌(乙第3ないし第30号証)、タウン誌(乙第31ないし第68号証)、自社プレス紙(乙第69ないし第79号証)、フリーペーパー(乙第80及び第81号証)、スポーツ情報誌(乙第82号証)、新聞(乙第83号証)、テレビCM(乙第84及び第85号証)等様々なジャンルの媒体において大々的に使用され、現在既に周知著名性、高度な顕著性を獲得するに至っている。
被請求人が本件商標の使用の実情を示す証拠として提出した乙第2ないし第85号証において、被請求人は本件商標と同一のロゴマークを正当使用しており、通常ロゴマークを使用しない掲載記事中でも「ハーバーパーク アヴェニュー ブレストン(ハーバーパークアヴェニューブレストン)」又は「HARBOR PARK AVENUE BLESTON」と本件商標を構成する文字部分を省略することなく正当使用している。
ウェディングスペース「ハーバーパーク アヴェニュー ブレストン」は、新潟市のシンボルである万代橋と柳都大橋を展望する信濃川沿いの最高のロケーションに建設された結婚式場であり、本件商標を構成する「HARBOR PARK AVENUE」及び「ハーバーパーク アヴェニュー」は日本海に面し信濃川が流れる水の都新潟を象徴している。
2 商標法第4条第1項第15号に基づく無効理由について
(1)引用商標の略称の周知著名性について
(ア)請求人は、甲第69ないし第89号証を提出し、引用商標が需要者、取引者の間で「ブレストン」と略称されており、その略称「ブレストン」が直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっていることが認められる旨主張する。
甲第69ないし第89号証は、その内容から、請求人の業務に係る取引者等が、引用商標が平成7年4月23日より現在(平成16年4、5月時点)に至るまで継続使用されていること、引用商標が取引業者及び需要者間において現在著名に至っていること、引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されていること、を証明することを意図したものであると見受けられる。
しかし、これらは、作成日付となる平成16年4、5月時点で引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されているという事実を、請求人が予め用意した定形のフォーマットに基づいて当該証明者が把握する範囲内において私的に証明しているにすぎず、また、引用商標が「ブレストン」と略称され広く認識されるに至った時期、取引業者及び需要者の間でどの程度略称されているのか(一般的かどうか)が共に不明確である。そうすると、このような証明書のみから、商標法第4条第3項に規定される同条第1項第15号の適用についての判断時期、すなわち本件商標の出願日である平成15年12月24日の時点で、引用商標が需要者、取引者の間で「ブレストン」と一般的に略称されており、その略称「ブレストン」が直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっている事実を認めることはできない。
(イ)引用商標の使用の事実を示す甲第4ないし第67号証を参酌すると、判別可能なものについて数えた限りにおいて、「ホテルブレストンコ ー ト /Hotel Bleston Court」の掲載数は約310、「ブレストンコート(ブレストンコートスタイル)」の掲載数は約25であるのに対し、「ブレストン」という略称では1つも掲載されていない。
以上から、引用商標の略称として請求人が主張する「ブレストン」が、本件商標の出願時に需要者、取引者の間で直ちに請求人ホテルを認識できる程に周知となっているとは到底認められるものではない。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
(ア)本件商標は、請求人が提出した甲第1号証に示されるように、欧文字16文字で「HARBOR PARK AVENUE」と書した下に図形を伴う欧文字7文字で「BLESTON」と大きく書して、さらにその下にカタカナ13文字にて「ハーバーパーク アヴェニュー」、その右にカタカナ5文字にてやや大きく「ブレストン」と書して構成されるものである。
これに対し、引用商標は、カタカナ11文字にて「ホテル ブレストンコート」又は英文字17文字にて「Hotel Bleston Court」と書して構成されるものである。しかし、請求人が自己の事業内容を説明するために提出した甲第2及び第3号証を参酌すると、請求人は自己の業務に係る役務について、「ホテルブレストンコート」と空白をあげずに一連に書した構成態様で自己の商標を使用している事実が認められ、甲第4ないし第67号証を参酌しても、その殆どが「ホテルブレストンコート」と一連に書した構成態様で使用されている。
(イ)両者の外観、観念が異なることは明らかであり、請求人も両者の類否を称呼のみから判断しているため、以下、両者の称呼について答弁する。
本件商標は、その構成態様により、「ブレストン」、「ハーバーパークアヴェニュー」、「ハーバーパークアヴェニューブレストン」の称呼が生じ得る。これに対し、引用商標は、前記した使用の事実から「ホテルブレストンコート」とよどみなく一連に称呼されるものである。
請求人は、引用商標の 「ホテル(Hotel)」及び「コート(Court)」の文字部分は役務の提供施設の質等を表示又は暗示させるものであるから、造語である「ブレストン(Bleston)」の文字部分に認識、把握される場合も少なくないというのが相当である旨主張しており、その根拠として、「ホテル」は宿泊施設の一般名称であり、また「コート(Court)」の文字は、実際の取引において宣伝上の謳い文句として用いられている旨主張する。
確かに、「ホテル」は宿泊施設の一般名称ではあるが、請求人の業務が「宿泊施設・婚礼(結婚披露を含む)のための施設の提供」であるからといって、取引の実情を考慮せずに、一概に引用商標が「ホテル」の文字部分が除かれた状態で認識、把握されるとするのは早計に過ぎる。また、他の宿泊施設提供者が中庭があることを宣伝上の謳い文句にしていることや、中庭を囲んだ造りの住宅のことをコートハウスを意味するからといって、引用商標を構成する「コート」に識別力がないとすることは単なるこじつけにすぎず、このような主張は失当といわざるを得ない。
(ウ)また、「ブレストン」についてインターネット上で検索してみると、外国人のファミリーネーム等として相当数見つけることができ(乙第87及び第88号証)、「ブレストン」は純然たる造語というわけではない。むしろ、引用商標は「ホテル」と「ブレストン」と「コート」とを結合した「ホテルブレストンコート」にこそ、その顕著性があるとするのが相当である。
引用商標に係る取引の実情を判断するために甲第32ないし第40号証を参酌すると、請求人が提供する役務を「ブレストンコートスタイル」と指称するに際して「ブレストンコート」を使用するケースは若干あるものの、この場合においても必ず「ホテルブレストンコート」と共に使用されており、引用商標から「ホテル」の文字部分を除いた「ブレストンコート」に比べて「ホテルブレストンコート」の使用頻度が圧倒的に多いことからも、現実の取引界では引用商標からは「ホテルブレストンコート」と一体不可分の一連の称呼が生じているとみるのが自然である。
(エ)11音の称呼である「ホテルブレストンコート」が省略することを要しないことに関し、東京高裁平成16年(行ケ)第168号判決(乙第89号証)は、「本件商標は、「国際自由学園」の文字よりなるところ、当該文字は、同じ書体、同じ大きさで一体的に表されており、また、これを構成する6文字という文字数、これより生ずる「コクサイジユウガクエン」という11音の称呼は、省略を要するほど冗長なものということはできない。」と判示している。
また、商標中に役務に供する施設の普通名詞が含まれていても称呼上省略されないことに関し、乙第89号証に示す同判決は、「これら両語に学校ないしいくつかからなる学校の組織を意味する普通名詞である「学園」の語を付した場合、「国際」及び「自由」の両語が重なりあって当該学園を特定することになるが、両語の間に識別力に関して軽重がないことから、これらの各語は学校の名称を表示する一体不可分の標章として認識把握されると考えるのが自然である。そして、原告商標は、その構成文字の一体不可分性から、当該構成文字に照応して「コクサイジユウガクエン」の称呼を生ずるものと認められる。」と判示している。
(オ)また、請求人は、甲第108ないし第117号証を提出し、実際の取引に利用される電子メールにおいて請求人ホテルが「ブレストン」と略称されている旨主張する。
一般的に電子メールは改ざんが容易であり、その証拠能力について疑義が生じざるを得ない。これらは、その電子メールの文面から請求人の業務「宿泊施設の提供」に係る取引(宿泊予約等)に関するものであると見受けられる。しかし、本件商標の指定役務は「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」であって、その主たる需要者は結婚を控えたカップル等であり、宿泊施設としてホテルを利用する旅行者等ではない。すなわち、商標法第4条第1項第15号に規定する「役務の出所の混同」の主体となる需要者は、商標審査基準(乙第86号証)にあるとおり、本件商標に係る役務「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」に接する需要者を意味しているところ、これらの電子メールの差出人は本件商標の指定役務の主たる需要者層ではない。そうすると、甲第108ないし第117号証は同号の適用に関する証拠としての体をなしていないものといわざるを得ない。
さらに、請求人は、甲第118ないし第120号証を提出し、請求人ホテルが「ブレストン」と略称されている旨主張する。
これらは、インターネット上におけるいわゆる口コミ情報の掲示板であるが、このようなインターネット上の掲示板も改ざんが容易であり、さらに電子メールに比べ匿名性が高いものであるため、その証拠能力について重大な疑義が生じざるを得ない。仮に、インターネット上の一部の掲示板において、一個人が請求人ホテルの略称として「ブレストン」を使用したという事実があったとしても、そのことのみから当該略称が需要者の間で一般的に使用されていると認めるには及ばない。
なお、平成17年11月1日現在で甲第118ないし第120号証と同じサイトを含む口コミ情報の掲示板では、請求人の主張に反して、請求人ホテルを省略せずに「ホテルブレストンコート」、又は請求人ホテルから「ホテル」のみを省略した「ブレストンコート」として使用されているという事実がある(乙第90ないし第92号証)。
インターネットの検索サイトの検索文字入力手法に関して、請求人は(ブレストン 結婚式)と入力する旨主張するが、需要者がそのように入力して前方一致検索を行うことがあるという可能性を単に述べているにすぎない。
以上から、現実の取引において、需要者が引用商標中「ブレストン(Bleston)」の文字部分に着目し、一般的に「ブレストン」と略称し取引に当たっていると結論づけることは甚だ見当違いであり、本件商標と引用商標の類似性は認められない。
(3)被請求人の業務と請求人の業務の対比
(ア)被請求人は、「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を業務としている。
これに対して、請求人は「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」に加え、「宿泊施設の提供」を業務としている。
(イ)ところで、結婚は人生の一大行事であり、現在、婚礼・結婚披露のために一般的に使用される施設としても、例えば、結婚式場、ホテル、ゲストハウス、レストランなど多種多様にわたるものが存在しているため、その需要者である結婚を控えたカップル等は、結婚情報紙等による情報収集に余念がなく、実際現地に足を運んで下見、サービス内容等の相談を行うなど、一般的な役務取引に比べ、相当程度高い注意力をもって結婚式場、披露宴会場選びに当たることが通常である。
とりわけ、当該カップルが結婚式場等を選択するに当たっては、婚礼施設の場所(地元かリゾート地か)、設備、サービス内容、予算等が吟味されるが、遠方から親類、友人等を列席者として結婚式・結婚披露宴に招待することが少なくなく、また、式後、新郎新婦が結婚式を行った現地でそのまま宿泊したいとの理由から、需要者の婚礼施設の選択において宿泊施設の有無が重要な判断材料ともなり得る。
まして、「軽井沢」のような我が国屈指の高級リゾート地であれば、式後、新郎新婦や親族等の殆どが現地での宿泊を希望することは当然に想定されるものである。
請求人が主張するとおり、甲第2ないし第64号証の掲載記事では、高級リゾート地「軽井沢」のネームバリューと緑豊かな自然の中で開拓以来のキリスト教的伝統の残る文化的施設・歴史を背景に旅行と宿泊を組み合わせたウェディングスタイルを提供するホテルであることが強調されている。
(ウ)このような取引の実情から、婚礼施設の場所(地元かリゾート地か)と宿泊施設の有無(婚礼施設の提供主体がホテルか否か)は需要者の最大関心事項といえ、新潟県を本拠地とし婚礼施設の提供のみを行う被請求人と、高級リゾート地「軽井沢」を本拠地とし婚礼施設の提供に加えホテルサービスによる宿泊施設の提供をも行う請求人とでは、大きな差異があるものである。
(エ)このような営業形態の差異が出所の混同の判断に大きな影響を与えることに関し、乙第89号証に示す判決は、「その本拠地、教育方針、教育内容等は、東京都に所在し、前記のような独自の教育を実施している原告と大きな差異があるものである。しかして、上記の諸点を考慮すれば、本件商標をその指定役務に使用した場合に、これに接した需要者である学生等が、原告商標である「自由学園」を想起し、その役務が原告ないし原告と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所につき誤認を生じさせるおそれがあるとは認めることはできない。」と判示している。
(4)出所の混同を生ずるおそれについて
(ア)商標法第4条第1項第15号の規定は、具体的な出所の混同を生ずるおそれのある商標の登録を排除することを目的とするものであり、また乙第89号証に示す前記判決では、同号の規定の趣旨について、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものである旨判示している。
上記1のとおり、被請求人は、自己の営業努力のみにより本件商標に関して既に周知著名性を獲得し、本件商標には被請求人の業務上の信用が相当程度化体するに至っており、このような取引の実情から本件商標は引用商標と具体的な出所の混同を生ずるおそれのない商標であることは明白であって、引用商標へのただ乗り希釈化といった問題も事実問題として生じていない。すなわち、被請求人と請求人との間には現在健全な競業秩序が形成されており、このような場合にまで同号を適用するのは上記同号の趣旨に反するものであり妥当ではない。
(イ)上記(1)及び(2)のとおり、引用商標は宿泊施設の名称を表示する一体不可分の標章として、称呼、観念され、本件商標と外観、称呼、観念上も類似するものではない。また、請求人が引用商標の略称として主張する「ブレストン」が一般的に使用されていると認めるに足る根拠はなく、本件商標の出願時に著名性を獲得しているものではない。
(ウ)上記(3)のとおり、本件商標の指定役務は婚礼に係るものであるため、その需要者である結婚を控えたカップル等は、高度の注意力を持って役務を提供する婚礼施設の場所、宿泊施設の有無等の吟味を行うことが通常であり、被請求人と請求人の営業形態には、本拠地、業務形態において大きな差異がある。需要者の式場選びに資する乙第2ないし第85号証においても、本件商標は「ブレストン」と省略されることなく正当に使用されており、本件商標を構成する「ハ一バーパークアヴェニュー」は「港公園通り」すなわち「海」との関連を観念させるため、本件商標に接した需要者が「海」に面しておらず、山に囲まれ緑豊かな長野県の「軽井沢」を想起する可能性はない。とりわけ、引用商標にはその使用により高級リゾート地「軽井沢」のブランドイメージを伴った状態で請求人の業務上の信用が化体するものと考えられるため、新潟県を本拠地とする被請求人の業務に係る「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」が、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認混同する可能性は皆無である。
(エ)以上の諸点から、本件商標に係る役務に接した需要者が、引用商標を想起し、その役務が請求人ないし同人と何らかの関係を有する者の業務であるかのように、その出所につき誤認を生じさせるおそれがあると認めることはできない。
(5)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
3 商標法第4条第1項第8号に基づく無効理由について
上記2(1)及び(2)のとおり、引用商標は、宿泊施設の名称を表示する一体不可分の標章として、称呼、観念され、請求人ホテルの略称として「ブレストン」が一般的に使用されていると認めるに足る根拠はなく、本件商標の出願時に著名性を獲得していないことから、本件商標に係る役務に接する需要者である結婚を控えたカップル等において、本件商標から直ちに請求人ホテルを認識するとは認められない。
したがって、本願商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
4 結論
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第8号に該当するものではない。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標及びその略称の周知・著名性
請求人は、軽井沢において宿泊施設及び婚礼(結婚披露を含む。)のための施設としての請求人ホテルを運営しており、「ホテル ブレストンコート」及び「Hotel Bleston Court」の文字からなる引用商標及びその略称「ブレストン」が本件商標の登録出願時には既に周知・著名性を獲得している旨主張し、証拠を提出しているので、この点について検討する。
(ア)請求人の提出に係る証拠によれば、請求人ホテルが提供するウェディングプランに関する広告が各種雑誌に掲載されていることが認められる(甲第4ないし第67号証)。
しかしながら、これらの広告中に掲載された請求人ホテルは、片仮名文字で「ホテルブレストンコート」と表示するものが殆どであり、欧文字の「Hotel Bleston Court」と共に表示したものが数点見られるにすぎず、単に「ブレストン」又は「Bleston」と略称するものは見当たらない。説明文中に「ブレストンコートスタイル」又は「BLESTON COURT STYLE」と表示するものもあるが(甲第32ないし第40号証)、ごく僅かであって、しかも表題等に「ホテルブレストンコート」又は「Hotel Bleston Court」の文字が常に用いられており、単独で表示するものはない。
そうすると、これらの広告からは、請求人ホテルは、「ホテルブレストンコート」の一連の表示では、ある程度知られているとしても、単に「ブレストン」と略称されて取引者・需要者間に広く認識されているとまでは到底いえない。
(イ)甲第69ないし第89号証として提出された「証明書」は、定型文によるものであり、証明者が何を根拠に証明しているのかも明らかでなく、これらの証明書のみによって直ちに請求人ホテル又は引用商標が単に「ブレストン」と略称されて本件商標の登録出願時において取引者・需要者間に広く認識されているものということはできない。
(ウ)実際の取引において請求人ホテルが「ブレストン」と略称されているとして提出された甲第108ないし第120号証については、甲第108ないし第117号証が請求人ホテルの利用者からの電子メールの写しであるとしても、その発信先が明らかでなく客観性に乏しく、誰にでも容易に作成できるものである。また、甲第118ないし第120号証はインターネットのホームページの写しと認められるものの、わずか数人の投稿者による口コミ情報にすぎない。そうすると、これらの証拠によっては、請求人ホテルが単に「ブレストン」と略称されて取引者・需要者間に広く認識されているものということはできない。
(エ)甲第91ないし第107号証は、第三者である旅館又はホテルによるインターネットのホームページの写しと認められ、これら旅館又はホテルが中庭を有していることが認められるとしても、請求人ホテル又は引用商標とは直接関係しないものであり、これが請求人ホテル又は引用商標が単に「ブレストン」と略称されることの根拠となるものでもない。
(オ)その他、請求人ホテル又は引用商標が単に「ブレストン」と略称されて本件商標の登録出願時において取引者・需要者間に広く認識されていることを認めるに足る証拠はない。
(カ)以上を総合勘案すると、請求人ホテルないしは引用商標は、ブライダル業界においては「ホテルブレストンコート」の一連一体のものとしてある程度知られているとしても、その略称「ブレストン」が取引者・需要者間に広く認識されているということはできない。
(2)本件商標と引用商標との対比
(ア)本件商標は、後掲のとおり、中央に大きく目立つ態様で「BLESTON」の文字を書し、その上段に「B」と「N」の文字に挟まれるように小さく書した「HARBOR PARK AVENUE」の文字を配し、さらに最下段に小さな「ハーバーパーク アヴェニュー」の文字を書し、続けてこれより大きな「ブレストン」の文字を配した構成からなるものである。そして、本件商標は、構成文字全体から「ハーバーパークアヴェニューブレストン」の称呼を生ずるほか、上記構成に照らし、「BLESTON」の文字部分が看者の注意を強く惹くことから、「ブレストン」の文字とも相俟って、単に「ブレストン」の称呼をも生ずるものというべきである。
また、被請求人の提出に係る証拠によれば、被請求人は、新潟県を拠点に運営する結婚式場について本件商標を使用しており、各種雑誌等に相当程度広告宣伝していることが認められ、本件商標はブライダル業界においてはある程度知られているものといえる。
(イ)他方、引用商標は、上記(1)のとおり、「ホテルブレストンコート」又は「Hotel Bleston Court」の一連一体のものとして認識し把握されているものであるから、「ホテルブレストンコート」の一連の称呼を生ずるものというべきである。
百歩譲って、「ホテル」又は「Hotel」の文字部分が役務の質、内容等を表示するものであって、自他役務の識別標識の観点からは識別力がないものとして、引用商標が「ブレストンコート」と称呼されることがあるとしても、単に「ブレストン」と称呼されることはないというべきである。
(ウ)そうすると、本件商標から生ずる「ハーバーパークアヴェニューブレストン」又は「ブレストン」の称呼と引用商標から生ずる「ホテルブレストンコート」又は「ブレストンコート」の称呼とは、構成音数の差、音構成の差、相違する各音の音質の差等により容易に区別できるものである。そして、両商標は、その構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、いずれも造語と認められるものであるから、観念上両者を比較すべくもない。
(エ)してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からしてみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(3)出所の混同を生ずるおそれ
本件商標の指定役務と引用商標が使用されている役務とが同一又は類似のものであるとしても、本件商標と引用商標とは非類似のものであり、かつ、引用商標が「ブレストン」と略称されて取引者・需要者間に広く認識されているものでもないことに加え、一般に、役務はその提供者から直接提供を受け、比較的地域が限定されることが多く、本件商標が使用されている役務の提供地が新潟県の信濃川河口に近い場所であるのに対し、引用商標のそれは軽井沢であって、地域・環境が異なるものであり、本件商標も引用商標も、互いにこの種業界においてはある程度知られていることをも考慮すれば、本件商標がその指定役務について使用された場合、これに接する取引者・需要者がその構成中の「BLESTON」又は「ブレストン」の文字に注目して引用商標ないしは請求人ホテルを連想、想起するようなことはなく、該役務が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
(4)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
2 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について
上記1(1)のとおり、請求人ホテルは一連一体のものとして認識し把握されるものであり、単に「ブレストン」と略称されて取引者・需要者間に広く認識されているものとはいえないし、本件商標と請求人ホテルの名称とは、類似するところのない別異のものであるから、本件商標は、他人の名称又はその著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第8号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。

本件商標


審理終結日 2006-07-21 
結審通知日 2006-07-27 
審決日 2006-08-22 
出願番号 商願2003-114561(T2003-114561) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (Y45)
T 1 11・ 271- Y (Y45)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 綾 郁奈子小川 きみえ 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 井岡 賢一
中村 謙三
登録日 2004-11-26 
登録番号 商標登録第4820549号(T4820549) 
商標の称呼 ハーバーパークアベニューブレストン、ハーバーパークアベニュー、ブレストン 
代理人 吉田 正義 
代理人 外山 邦昭 
代理人 岡田 稔 
代理人 清水 榮松 
代理人 曾我 道照 
代理人 曾我 道治 
代理人 牛木 護 

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