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審決分類 |
審判 判定 審理一般(別表) 属する(申立て成立) Y09 |
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管理番号 | 1152334 |
判定請求番号 | 判定2006-60070 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標判定公報 |
発行日 | 2007-03-30 |
種別 | 判定 |
2006-12-20 | |
確定日 | 2007-02-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4998946号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | 「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」に使用するイ号標章は、登録第4998946号商標の商標権の効力の範囲に属する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4998946号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に表示するとおりの構成よりなり、第7類、第9類及び第11類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、2004年2月24日付けグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張をして、平成16年8月24日に登録出願、同18年10月27日に設定登録されたものである。 第2 イ号標章 請求人が商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」に使用するイ号標章は、別掲(2)に表示するとおりである。 第3 請求人の主張 商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」について使用するイ号標章は、商標登録第4998946号の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求める。 (1)理由の要点 請求人は、イ号標章を商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」に使用する予定であるが、イ号標章の該商品についての使用が本件商標の指定商品のうち、いずれの範囲に属するものか、疑問が生じている。とくに、商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」が第9類「磁気センサー,ホール素子を用いた磁気センサー,その他の測定機械器具」、または、第9類「電子応用機械器具及びその部品」のいずれの指定商品の概念に含まれるのか、判断いただきたい。 (2)判定請求の必要性 請求人は、本件商標の商標権者である。現在、請求人は、イ号標章を使用することを計画中であるが、商標権の分割譲渡等を検討する必要性が生じ、イ号標章を使用する予定の商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」(以下「本件商品」という。)が、本件商標にかかる指定商品中第9類「磁気センサー,ホール素子を用いた磁気センサー,その他の測定機械器具」、または、第9類「電子応用機械器具及びその部品」のいずれの概念に含まれる商品なのか、特定する必要性が生じた。 なぜなら、請求人としては、本件商品は「センサー」の一種であり、審査の運用によれば、商品「磁気センサー」は、第9類「測定機械器具」に属する商品として扱われると考えられるものの(甲第1号証)、本件商品が「IC(集積回路)型」であるため、第9類「電子応用機械器具及びその部品」に属する商品と判断される可能性も捨てきれないと考えたためである。 そこで、判定を求め、その判定に基づいて商標権の分割譲渡等を行いたい。よって、本件判定を求める次第である。 (3)イ号標章を使用する予定の商品の説明 請求人は、本件商品は、第9類「磁気センサー,ホール素子を用いた磁気センサー,その他の測定機械器具」に属する商品であると考える。 (ア)「測定機械器具」とは 特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(発明協会2001年改訂第4版)によれば、商品「測定機械器具」は、『電子の作用が機械器具の機能の面で本質的な要素となっているようなもの、例えば「超音波応用測探機」「ガイガー計数器」等は含まれず、これらは本類電子応用機械器具及びその部品に含まれる。更に電気又は磁気により測定するものはこの概念に属するが、電気の単位又は磁気の単位を測定するものは、本類電気磁気測定器に含まれる。また、医療用のものは第10類医療用機械器具に属する。』と解説されている(甲第2号証)。 すなわち、この定義からすれば、磁気により測定するある商品が「測定機械器具」であると判断されるためには、次の要件を満たす必要があると考えられる。(a)電子の作用がその商品の機能の面で本質的な要素となっておらず、(b)電気の単位等を測定するものでも、医療用のものでもないこと。 そこで、以下では、磁気により測定する本件商品が、(a)(b)の要件を満たし、商品「測定機械器具」に属する商品であることを示す。 (イ)本件商品の概要 本件商品は、回転する検出対象に設けられた永久磁石から発生する磁束を、内蔵するホール素子を用いて検出することにより検出対象の回転位置を検出するモノリシックIC(全ての回路部品が一枚の半導体基板上に組み込まれた集積回路)型の回転位置検出センサーである(甲第3号証)。 ここで「ホール素子」とは、半導体試料において、x方向に流れている電流に対して、直交するy方向に磁束密度をかけることにより、荷電粒子がローレンツ力を受けて電流・磁束密度の両方に直行するz方向に電場(ホール電場)を生じる現象(ホール効果)を利用した磁気検出素子である(甲第4号証の1及び甲第4号証の2)。そのため、ホール素子を用いた回転位置検出センサーは、回転する検出対象に設けられた永久磁石から発生する磁気を検知して、検出対象の回転位置を電気信号として出力するセンサーとして機能する。 ちなみに、本件商品の特徴は、ICの表面に対して直交する磁束密度のみならず、ICの表面と平行する磁束密度をも検知することが可能な点にある。本件商品を使用することにより、ICの上でIC表面に平行して回転する小さな磁石の(絶対)回転位置を接触することなく測定することができる(甲第5号証)。本件商品の主な使用用途は、自動車用ハンドルの回転位置の測定、ペダル位置の測定、非接触型電位差計等である。 このように、本件商品は、ICの外観を呈しているが、その機能は検出対象に設けられた永久磁石から発生する磁気を検出し、検出対象の回転位置を電気信号として出力する回転位置検出センサーである。 (ウ)各要件についての検討 上述の通り、本件商品は磁気により測定するものであることは明らかであるから、次に、本件商品が上記(a)(b)の要件を満たすものであるかを検討する。 (a)電子の作用がその商品の機能の面で本質的な要素となっているか否か 上述の通り、本件商品の機能は、ICの上でICに平行して回転する小さな磁石の(絶対)回転位置を検知し、磁石の位置を示す電気信号を出力するものである。検知する際、ホール効果を利用するため、電子の作用を利用することにはなるが、ここで利用する電子の作用は、本件商品の機能を発揮するための手段に過ぎず、「ガイガー計数器」や単なる「IC(集積回路)」のように、電子の作用が機能の面で本質的な要素となっているとは言えない。 (b)電気の単位等を測定するものでも、医療用のものでもないこと。 上述の通り、本件商品は、磁気を検知して電気信号として出力するものであり、電気の単位等を測定するものではない。また、その使用用途は医療用のものではない。 以上より、本件商品は、磁気により測定するものであり、(a)(b)の各要件を満たすものであるため、第9類「磁気センサー,ホール素子を用いた磁気センサー」を含む上位概念である第9類「測定機械器具」に属する商品であると考えられる。 なお、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(発明協会・2001年改訂第4版)の商品「電子応用機械器具及びその部品」についての解説には、『ただし、“電気通信機械器具”は、何らかの形(例えば、「大規模集積回路」)で電子の作用を応用しているものも多いが、電気通信機械器具という概念がある以上、電子応用機械器具には含まれない。』という考え方が示されている(甲第6号証)。 この考え方を援用すれば、回転位置検出センサーである本件商品の場合も同様に、「測定機械器具」という概念がある以上、電子の作用を応用していたとしても、「電子応用機械器具」には含まれず、「測定機械器具」に含まれる商品であると考えるべきである。 (エ)取引実情 本件商品のような「IC型のセンサー」が、単なる「IC(集積回路)」としてではなく、「センサー」として取り扱われていることは取引実情からも明らかである。 登録例からもわかるように、本件商品のような「IC型のセンサ一」は、取引者・需要者が限られる特殊な商品であるため、取引者・需要者は、外観ではなく、機能・用途を重視し、単なる「IC」と「IC型のセンサー」を明確に区別して取引を行っている現状があることがわかる。特許庁の商品区分は、当然、このような取引実情なども考慮してなされているはずである。 したがって、このことからも、本件商品は第9類「電子応用機械器具及びその部品」に属する商品ではなく、第9類「測定機械器具」に属する商品であることがわかる。 (4)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明 以上より、本件商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」の機能・用途及び取引実情から考えると、本件商品は、「磁気センサー」を含む上位概念である第9類「測定機械器具」に含まれる商品であると判断できる。 第4 当審の判断 (1)イ号標章を使用する本件商品について (ア)本件判定の請求において、請求人が証拠方法として提示したイ号標章は、請求人が本件商標について使用を予定する標章であって、本件商品は「回転する検出対象に設けられた永久磁石から発生する磁束を、内蔵するホール素子を用いて検出することにより検出対象の回転位置を検出するモノリシックIC(全ての回路部分が一枚の半導体基板に組み込まれた集積回路)」型の回転位置検出センサー(甲第3号証)であり、その主な使用用途は「自動車用ハンドルの回転位置の測定、ペダル位置の測定、非接触型電位差計」等と認められる。 (イ)「ホール素子」については、旭化成電子株式会社のホームページにおいて、ホール素子の概要として、「ホール効果を利用した磁気センサー。磁石の発生する磁界や電流の発生する磁界を電気信号に変換し出力します」「ホール素子は、ホール効果と呼ばれる電流に対する磁気効果を応用したものです。この現象は1879年にアメリカの物理学者ホール(Hall)によって発見されたことからこのような名前が付けられています。」との掲載。 また、NIPPON CERAMIC CO.,LTDのホームページにおいて、ホール素子の概要として、「ホール素子とはホール効果を利用した磁電変換素子であり、磁気量を電気量に変換するのに用いられます」、ホール素子の動作原理として、「ホール素子は、ホール効果を利用した磁気センサーです。このホール効果とは、固体(半導体薄膜)に電流を流し、固体表面に対し垂直に磁界を加えたとき、電流方向及び磁界方向それぞれに垂直な方向に電圧が発生するという原理に基づくものです。」、ホール素子の用途として、「ブラシレスモーター、位置検出センサー、回転数検出センサー、電流センサー、その他各種磁気センサー」との掲載がみられる。 (ウ)商品及び役務の区分解説(国際分類第8版対応)によれば、「第9類の測定機械器具には、「この概念には、電子の作用が機械器具の機能面で本質的な要素となっているようなもの、例えば「超音波応用測探器」「ガイガー計数器」等は含まれず、これらは本類電子応用機械器具及びその部品に含まれる。更に電気又は磁気により測定するものはこの概念に属するが、電気の単位又は磁気の単位を測定するものは、本類電気磁気測定器に含まれる。また、医療用のものは第10類医療用機械器具に属する。」と記載されている。 同じく、電子応用機械器具には、「いわゆる電気機械器具」が、電気の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むのに対して、この概念には、電子の作用を応用したもので、その機械器具の機能の本質的な要素としているものだけが含まれる。ただし、電気通信機械器具は何らかの形(例えば、「大規模集積回路」)で電子の作用を応用しているものも多いが、電気通信機械器具という概念がある以上、電子応用機械器具には含まれない。また、医療用のものとして、例えば、「医療用X線装置」はこの概念から除かれ、第10類医療用機械器具に属する。」と記載されている。 (エ)上記事実を総合勘案すれば、本件商品は、ホール素子それ自体を見ればIC(チップ)の外観を呈しており、半導体製品とみることもできるが、その本質的な要素は、電子の作用ではなく、ホール効果を利用した磁電変換素子であって、検出する対象物の回転位置を磁気量から電気量に変換し測定(検出)するものとみるのが相当である。 そして、本件商標は、該ホール素子を利用して、主に自動車のハンドルの回転位置やペダルの位置を検出する検出器の一商品とみるのが相当であるから、本件商標の指定商品である測定機械器具に属すべき商品というべきである。 (2)してみれば、本件商品「ホール素子を用いたIC型回転位置検出センサー」に使用するイ号標章は、本件商標権の効力の範囲に属するものと認める。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
別掲(1) 本件商標 別掲(2) イ号標章 |
判定日 | 2007-02-02 |
出願番号 | 商願2004-78109(T2004-78109) |
審決分類 |
T
1
2・
0-
YA
(Y09)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 箕輪 秀人 |
特許庁審判長 |
中村 謙三 |
特許庁審判官 |
小林 和男 石田 清 |
登録日 | 2006-10-27 |
登録番号 | 商標登録第4998946号(T4998946) |
代理人 | 西浦 嗣晴 |