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審決分類 |
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y33 |
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管理番号 | 1151811 |
審判番号 | 無効2006-89057 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2007-03-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-05-02 |
確定日 | 2007-01-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4727351号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4727351号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4727351号商標(以下「本件商標」という。)は,「百合若」の文字を標準文字により表してなり,平成15年3月20日に登録出願,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として同年11月21日に設定登録されたものである。 2 引用商標 請求人が引用する登録第3197837号商標(以下「引用商標」という。)は,「百合若大臣」及び「ユリワカダイジン」の文字を上下二段に横書きしてなり,平成5年10月12日に登録出願,第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として,同8年9月30日に設定登録されたものである。 3 請求人の主張 請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第9号証を提出している。 (1)請求の利益 請求人玄海酒造株式会社は,本件商標と抵触する範囲に引用商標を所有する。また,請求人会社と引用商標の権利者壱岐焼酎協業組合は,いずれも長崎県壱岐郡に所在し,取り扱う商品は,焼酎である。よって,請求人は,被請求人が扱う商品と自己が扱う商品との間で出所混同が生じた場合には,多大な損害を被るおそれがある。 したがって,請求人は,本件無効審判を請求する利益を有する。 (2)引用商標の称呼,観念について (ア)「百合若大臣」に関しては,広辞苑(第5版)に「幸若舞の一。剛勇の百合若大臣は,ちくらが沖で蒙古軍を攻め降した帰途,無人の玄海島に置き去られるが,国より鷹の使を得,帰国して悪臣を滅ぼすという異色ある作品。のち説経節にも取り入れられ,また近松門左衛門の『百合若大臣野守鏡』などに翻案。」と説明されている(甲第3号証)。 そこで,「百合若大臣説経節」及び山口麻太郎氏による百合若大臣説経節の解説(甲第4号証)並びに「実力成長小学国語読本の教授」中の説明(甲第5号証)を確認した。 「百合若大臣」の意味内容については,広辞苑に掲載があるとおり周知であり,このように周知である「百合若大臣」を一般需要者がどのように称呼観念するかは,上記「説経節」及び教科書における表現が大きく影響すると考える。なぜなら,説経節は,江戸時代初期より広く庶民に親しまれたものであり,また,小学校教科書は,正しい日本語教育を行うために日本語を吟味して用いており,当時のすべての小学生がこれにより学習したからである。 そこで,これらの文献において「百合若大臣」をどのように表現しているかを精査し,「百合若」と称呼している箇所を桃色,「百合若大臣」と称呼している箇所を水色,「大臣(殿)」と称呼している箇所を黄色,「百合草(百合草若大臣)」と称呼している箇所を緑色,その他の称呼をオレンジ色で色分けした結果,次のとおりであった。 説経節(抜粋)では,「百合若大臣」を示すすべての語が131ヶ所であるが,その内9ヶ所で「百合若」と称している。また,96ヶ所で「百合若大臣」を「百合若」と「大臣」で切り離して,単に「大臣(殿)」と称している。また,教科書では,「百合若大臣」を示すすべての語が103ヶ所であるが,その内74ヶ所で「百合若」と称している。また,13ヶ所で「百合若大臣」を「百合若」と「大臣」で切り離して,単に「大臣(殿)」と称している。 すなわち,「百合若大臣」は,これらの書籍において頻繁に「百合若」と称呼され,あるいは,「百合若」と「大臣」の間で切り離されている。 (イ)「長崎県文化百選」の「壱岐・対馬編」の,[40,鬼ヶ島と百合若伝説・鬼凧]には,以下の記載がある。「・・・(前略)・・・あるとき,豊後の国の百合若大臣が,鬼退治にやってきた。百合若大臣は若くて強い武士だった。鬼どもを次々にやっつけて,とうとう鬼の大将との一騎打ちになった。はげしい戦いのすえ,鬼の大将は百合若大臣に首を斬られ,その首は天高く舞い上がっていった。再び舞いおりてきた首は,百合若大臣の八重の兜に噛みつき,そのまま果ててしまったそうだ。壱岐に昔から伝わる話である。この伝説そのままに,鬼が兜に食らいついた姿を描いた凧が『鬼凧』である。・・・(後略)・・・」(甲第6号証)。 すなわち,「百合若大臣」は,壱岐・対馬に伝承される武勇伝の主人公として,広く親しまれ,伝統工芸の「鬼凧」のモデルにもなっている。 (3)本件商標の称呼,観念について 上述のとおり,「百合若大臣」と「百合若」は,観念が同一のものとして用いられていることが明らかである。 したがって,本件商標の称呼,観念は,「百合若」又は「百合若大臣」である。 (4)本件商標と引用商標との類否について 引用商標と本件商標の称呼,観念は,いずれも「百合若大臣」又は「百合若」であり,両者は,同一である。また,引用商標は,文字のみからなる商標であり,特徴的な外観を有しない。本件商標は,標準文字であり,外観的な特徴はない。 したがって,本件商標と引用商標とは,互いに類似する。 (5)本件商標の使用の態様について (ア)平成18年2月1日付け新聞「新壱岐」に,商品「百合若」に関する本件商標権者の広告が掲載されている(甲第7号証)。この広告には,商品「百合若」が,「・・・(前略)・・・さて,2月2日より,壱岐酒販組合のオリジナル商品として,新商品麦焼酎『百合若』(ゆりわか)を発売しますので,お知らせ致します。この焼酎は,壱岐の昔話『百合若大臣の鬼退治』の伝説に因んで命名しました。・・・(後略)・・・」と紹介されている。すなわち,本件商標権者は,商標「百合若」を「百合若大臣」を観念するものとして使用している。 (イ)平成18年2月1日付け新聞「壱岐日報」に,商品「百合若」に関する本件商標権者の広告が掲載されている(甲第8号証)。この広告には,商品「百合若」が,「・・・(前略)・・・百合若は,壱岐の昔話・百合若大臣の鬼退治の伝説にちなみ命名され,・・・」と紹介されている。すなわち,本件商標権者は,商標「百合若」を「百合若大臣」を観念するものとして使用している。 (ウ)平成18年2月9日付け新聞「壱岐日々新聞」に,商品「百合若」に関する本件商標権者の広告が掲載されている(甲第9号証)。この広告には,商品「百合若」が,「・・・(前略)・・・さて2月2日より,壱岐酒販組合のオリジナル商品として,新商品麦焼酎『百合若』を発売しますので,お知らせ致します。この焼酎は,壱岐の昔話『百合若大臣の鬼退治』の伝説に因んで,命名しました。・・・(後略)・・・」と紹介されている。すなわち,本件商標権者は,商標「百合若」を「百合若大臣」を観念するものとして使用している。 (エ)請求人は,引用商標「百合若大臣」を有し,使用するものであるから,被請求人が上記態様により使用する場合,両者の間に出所混同が生じるのは,明らかである。 (6)結び 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,類似する。また,本件商標は,引用商標に係る指定商品について使用するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するから,同法第46条第1項第1号により,その登録を無効にすべきものである。 4 被請求人の答弁 被請求人は,何ら答弁していない。 5 当審の判断 本件商標と引用商標との類否について検討するに,両商標は,上記1及び2のとおりの構成からなるところ,引用商標を構成する「百合若大臣」の文字は,岩波書店発行「広辞苑第5版」(甲第3号証)によれば,「幸若舞の一。剛勇の百合若大臣は,ちくらが沖で蒙古(むくり)軍を攻め降ろした帰途,無人の玄海島に置き去られるが,国より鷹の使を得,帰国して悪臣を滅ぼすという異色ある作品。のち説経節にも取り入れられ,また近松門左衛門の『百合若大臣野守鏡』などに翻案。」とされる語であり,百合若大臣の物語は,古来より説経節や小学校の読本などにも取り上げられ,一般に親しまれているものといえる(甲第3号証ないし甲第5号証)。また,甲第6号証(「長崎県文化百選ー壱岐・対馬編」)によれば,壱岐・対馬地方においては,百合若大臣は,鬼退治の伝説の主人公として広く親しまれているほか,伝統工芸の「鬼凧」のモデルにもなっていることが認められる。 そして,甲第4号証及び甲第5号証の書籍では,「百合若大臣」が単に「百合若」と,しばしば略称されていること,甲第6号証の書籍においても「鬼が島と百合若伝説・鬼凧」との表題の下に説明がされていること,他の国語辞典(例えば,講談社発行「日本語大辞典」)でも「ゆりわか【百合若】」のみの項目見出しが設けられ,上記とほぼ同様の説明がされていること,被請求人自身が新商品麦焼酎「百合若」について,「壱岐の昔話『百合若大臣の鬼退治』の伝説に因んで命名しました。」と説明して新聞広告をしていることを総合勘案すると,「百合若大臣」は,「百合若」と略称され,「百合若大臣」と「百合若」とは,同一の物語・人物を指称するものとして認識し,理解されるというべきである。 他方,本件商標は,「百合若」の文字からなるものである。 してみれば,本件商標と引用商標とは,観念を同一にする全体として類似する商標といわなければならない。 また,両商標は,同一の商品を指定商品とするものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効とすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-08 |
結審通知日 | 2006-11-14 |
審決日 | 2006-11-28 |
出願番号 | 商願2003-22069(T2003-22069) |
審決分類 |
T
1
11・
263-
Z
(Y33)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 清棲 保美 |
特許庁審判長 |
田代 茂夫 |
特許庁審判官 |
小林 由美子 柳原 雪身 |
登録日 | 2003-11-21 |
登録番号 | 商標登録第4727351号(T4727351) |
商標の称呼 | ユリワカ |
代理人 | 河野 昭 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 穂坂 道子 |