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審決分類 審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Y10
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y10
管理番号 1151788 
審判番号 不服2005-2556 
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-14 
確定日 2007-01-10 
事件の表示 商願2004-53726拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「自立支援治療器」の文字を標準文字で表してなり、第10類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として平成16年6月10日に登録出願され、その後、指定商品については、同17年1月26日付け手続補正書により、「磁気治療器その他の治療器」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『障害者などが自立生活を営むことを支援し、病気やけがなどの治療をおこなう道具』の意を容易に認識させる『自立支援治療器』の文字を、標準文字で書してなるものであるから、これを本願の指定商品中、前記文字に照応する『治療器』に使用した場合には、単に商品の品質、用途を表示するにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記文字に照応する『治療器』以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権により証拠調べを行ったところ、以下の事実を発見したので、商標法第56条で準用する特許法第150条第5項の規定により請求人に通知し、相当の期間を指定して、意見を述べる機会を与えた。

1.「自立」、「支援」、「治療」及び「器」の語の有する意味について、広辞苑等辞書によれば、以下の事実がある。
(1)「自立」の項に、「他の援助や支配を受けず自分の力で身を立てること。ひとりだち。」(株式会社岩波書店 広辞苑第5版)等の記載がある。
(2)「支援」の項に、「ささえ助けること。援助すること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第5版)等の記載がある。
(3)「治療」の項に、「病気やけがをなおすこと。また、そのために施す種々のてだて。療治。」(株式会社岩波書店 広辞苑第5版)等の記載がある。
(4)「器」の項に、「物を入れおさめるもの。いれもの。転じて、一般に器具。道具。」(株式会社岩波書店 広辞苑第5版)等の記載がある。
2.「自立支援」の語について、以下の事実がある。
(1)厚生労働省のホームページに掲載されている「平成11年版厚生白書の概要」中の一覧表「(表)社会保障の目的と機能」に「○社会保障の目的 (2)個人の自立支援」として、「疾病などの予期しがたい事故や体力が衰えた高齢期などのように、自分の努力だけでは解決できず、自立した生活を維持できない場合等において、障害の有無や年齢にかかわらず、人間としての尊厳をもって、その人らしい自立した生活を送れるように支援すること。自立支援という考え方は、生活保護制度等の福祉分野では従来から存在していたが、近年、介護保険法の制定や児童福祉法の改正においても強調されてきている。」の記載がある(http://www1.mhlw.go.jp/wp/wp99_4/chapt-a1.html)。
(2)厚生労働省のホームページの障害者福祉についての情報欄に、平成18年4月施行の「障害者自立支援法の概要」として、「障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、障害者基本法の基本的理念にのっとり、これまで障害種別ごとに異なる法律に基づいて自立支援の観点から提供されてきた福祉サービス、公費負担医療等について、共通の制度の下で一元的に提供する仕組みを創設することとし、自立支援給付の対象者、内容、手続き等、地域生活支援事業、サービスの整備のための計画の作成、費用の負担等を定めるとともに、精神保健福祉法等の関係法律について所要の改正を行う。」等の記載がある(http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0214-1a.html)。
3.「自立支援機器」の語の有する意味について、辞典によれば、以下の事実がある。
(1)「自立支援機器」の項に、「障害者が自立生活を営む目的に使用する機器の総称。主に障害者自身が操作する。」(財団法人日本規格協会1998年7月15日第4刷発行 JIS工業用語大辞典[第4版])の記載がある。
4.新聞記事情報及びインターネット情報において、「自立支援機器」の文字が、高齢者及び障害者向けの機器を意味する語として使用されている事実。
(1)2006年4月15日付け毎日新聞(中部朝刊 10頁)に、「ビジネス情報:楽チン介護ベット--アイシン精機」の見出しのもと、「同社は99年に介護福祉用具事業に乗り出し、伝導の介護ベットや車椅子など自立支援機器を開発している。」の記事の掲載がある。
(2)2000年6月2日付け読売新聞(西部朝刊 34頁)に、「九州工業大大学院に安川電機が「教授」派遣/福岡・北九州市」の見出しのもと、「安川電機が担当するのは(中略)センサーなどを内蔵した機械が判断応答する技術の研究や障害者などの自立支援機器、血管内の血栓などを取り除く微細加工技術の分野。人間に限りなく近い「人間親和型ロボット」も研究開発する。」の記事の掲載がある。
(3)1993年11月5日付け読売新聞(東京朝刊 16頁)に、[医療ルネサンス](390)第三部病との共生 リハビリ=1(連載)の見出しのもと、「◆ハングライダーで墜落 手足が不自由な重度の身体障害者が、息や頭の動きなどの残存機能を利用し、有線やリモコンで身の回りの電気器具などを操作する自立支援機器・環境制御装置(ECS)。障害者の日常生活を助け、介護する家族の負担を軽減する先端福祉機器だ。」の記事の掲載がある。
(4)1992年7月3日付け読売新聞(東京朝刊 30頁)に、「高齢者介護機器 開発に厚生省も本腰 5年度から7年計画で」の見出しのもと、「具体的な研究・開発目標としては、トイレに行くための補助リフトに行くための補助リフトや移動のための会談昇降機、高齢者などの自立を助ける「自立支援機器」と、自動汚物悪臭処理装置や車イスごと入れる浴槽などの介護者の負担を軽くする「介護支援機器」を挙げている。」の記事の掲載がある。
(5)横浜市南区役所のホームページにおいて、「自立支援機器の紹介」として「移動リフター」、「段差解消機」、「階段昇降機」、「環境制御装置・コミュニケーション機器」の紹介の記載がある(http://www.city.yokohama.jp/me/minami/guide/service/717/997.html)。
(6)株式会社徳永装器研究所のホームページにおいて、「自立支援機器」として「食事支援ロボット」、「読書スタンド」、「バリアフリーストロー」等の商品紹介の記載がある(http://homepage3.nifty.com/tokuso/kiki6_2.htm)。
(7)酒井医療株式会社のホームページにおいて、「自立支援機器」として、「文字通り”自立”を支援する機器で、失った機能を代償・補助するのが目的です。SAKAImedは、歩行支援機器、入浴支援機器、トイレ(排泄)支援機器、療養・看護、自助具、車椅子と、症状にあわせたさまざまな機能やスタイルの製品をご提供しています。」の紹介文のもと「歩行支援機器」「療養・看護」「車椅子」の商品紹介の記載がある(http://www.sakaimed.co.jp/service/medical/product06.html)。
(8)株式会社パーカーコーポレーションのホームページにおいて、自立支援機器としてデンマークメイランドスミス社の商品紹介の記載がある(http://www.parkercorp.co.jp/_welfare/welfare/02.html)。
5.「治療器」及び「磁気治療器」について、分類表、新聞記事情報及びインターネット情報において以下の事実がある。
(1)類似商品・役務審査基準によれば、「治療器」の文字を含む指定商品例として、第10類に「高周波治療器」「紫外線灯治療器」「水銀灯治療器」「赤外線灯治療器」「炭素灯治療器」「低周波治療器」「電位治療器」が掲載されている。(特許庁商標課編 「商品及び役務の区分」に基づく 類似商品・役務審査基準[国際分類第8版対応])
(2)日本標準商品分類によれば、「大分類8-生活・文化用品」中の「86医療用品及び関連製品」として「86 52 家庭用電気・光線治療器」及び「86 53 家庭用磁気・熱療法治療器」が分類されている。(財団法人全国統計協会連合会平成8年9月第3版発行 日本標準商品分類)
(3)2006年6月1日付け日刊工業新聞27頁に、「マルチウ産業、足裏面に磁気シートを張った健康サンダル発売」の見出しのもと、「マルチウ産業は、足裏面に磁気シートを張ったサンダル「広面式磁気健康サンダル」を中旬に発売する。(中略)同サンダルは磁気治療器として厚生労働省認可も受ける。」の記載がある。
(4)2004年6月29日付け繊研新聞3面に、「襟に装着、凝り緩和 コナカ、8月下旬から「磁気治療器シャツ」」の見出しのもと、「コナカは、方や首の凝りを和らげる「磁気治療器シャツ」=写真=を8月下旬から、全国290店で順次発売する。初年度販売目標は5万着。紳士シャツの襟部分に内蔵したネオジウム磁石の磁気と、鉱石の特殊パウダー素材から発生する遠赤外線との相乗効果で血行を促進し、凝りを解消する。」の記載がある。
(5)2004年5月30日付け読売新聞(東京朝刊)22頁に、「女性用下着「磁気治療器 コリピタインナー」発売/トリンプ」の見出しのもと、「肩こりなどを磁石の力でほぐす女性用下着「磁気治療器 コリピタインナー」=写真=がトリンプ・インターナショナル・ジャパン(0120・561042)から発売されました。こりやすい肩、背中、腰部分に、薄さ0・9ミリの磁石が付けてあり、血行を促進、こりを和らげます。」の記載がある。
(6)2004年5月18日付け繊研新聞2面に、「フレックスジャパン 携帯収納ポケット付きシャツを開発」の見出しのもと、「フレックスジャパンは04年夏から、「携帯電話収納ポケット付きシャツ・P4P」=写真、「磁気治療器シャツ」を販売する。(中略)磁気治療器シャツ(3900?6900円)は、兵庫県のファンデーションメーカーと提携し、シャツ襟の部分に血行を促進するネオジウム磁石などを縫い込んだ。首や肩コリの原因となる血流の停滞を改善する効果があるという。販路は百貨店、専門店、量販店、通信販売で、初年度15万枚の販売を見込む。」の記載がある。
(7)2004年1月13日付け繊研新聞11面に、「セダージャパン 帽子を着替える 和のアクセサリー」の見出しのもと、「インナーウエアでは、磁気治療器インナーや「ビーズパットブラ」などを企画した。磁気治療器インナーは1300ガウスの磁力を活性する小型磁器チップを内蔵し、「着用するだけで血行の促進や凝りを和らげる効果が期待できる」という。スポーツブラタイプのソフトブラ(5980円)とハイウエストガードル(3980円)がある。」の記載がある。
(8)2003年10月25日付け朝日新聞(東京朝刊)56頁に、「ピップエレキバン ピップフジモト(キミの名は)」の見出しのもと、「直径4?8ミリ、厚さは2ミリほどの磁石に5円玉大の丸いばんそうこうがついている磁気治療器だ。凝りの部位に張ると磁気が作用し、筋肉内の血行をよくするという。72年に発売をはじめ、同社によると、現在、磁気治療器では約8割のシェアを占めている。」の記載がある。
(9)2003年8月17日付け読売新聞(東京朝刊)24頁に、「血行をよくする磁石付き下着発売/ワコール」の見出しのもと、「肩や腰のこりに悩む中高年女性向けに、血行をよくする磁石がついた下着「グラッピー磁気治療器インナー」が、ワコール(0120・307・056)から発売されました。ブラジャー=写真=など肌着が4種類あり、肩、腰の部分などに磁石8個が装着されています。ゆったりしたデザインです。6500-7500円(税別)。」の記載がある。
(10)2003年8月7日付け日刊工業新聞21頁に、「ワコール、婦人用インナー発売-磁気の効果で血行促進」の見出しのもと、「【京都】ワコールはコリを感じやすい肩や腰の部分に磁石を縫い込み、磁気の効果で血行を促進する婦人用インナー「グラッピー 磁気治療器インナー」を発売した。ブラジャー(価格7500円)やボトム(同6500円)など4品目をそろえ、同社で初めて医療用具認定を受けた。販売目標は04年1月までで合計3万枚。ネオジウム磁石と呼ぶ小型の永久磁石を8個使用。磁気が血液中のイオンを増加させコリをほぐす。磁束密度は厚生労働省の基準範囲内の450ガウス以上、800ガウス未満に設定、使用後水洗いしても効果は持続する。グラッピーは60歳以降を対象にした同社の婦人用インナーのブランド。同ブランドを取り扱う百貨店や下着専門店で販売する。」の記載がある。

第4 請求人の意見の要旨
本願商標は、「自立」、「支援」、「治療」及び「器」の語を一体に結合してなる造語であり、各語が優劣なく、かつスペース、ハイフン等の区切り要素を含むことなく一連に表記されている構成態様からして、各語ごとに分離して把握すべき理由はない。また、「自立支援治療器」なる語が一般に使用されている事実もないから、本願商標は自他商品識別力を有している。
してみれば、本願商標は、一般的に使用されておらず且つ使用の要請がなく、また、商品を流通過程におく場合に必ず必要となる表示ともいえないから、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

第5 当審の判断
本願商標は、前記第1のとおり「自立支援治療器」の文字を、同じ大きさ、同じ書体で等間隔に横書きにしてなるところ、「自立支援」の文字と、本願指定商品を表す「治療器」の文字とを結合したものと容易に認識されるものである。そして、「自立支援」の語は、「疾病などの予期しがたい事故や体力が衰えた高齢期などのように、自分の努力だけでは解決できず、自立した生活を維持できない場合等において、障害の有無や年齢にかかわらず、人間としての尊厳をもって、その人らしい自立した生活を送れるように支援すること。」の意味を有する語として一般に理解され、また、「治療器」の語は、「病気やけがをなおすための器具または道具」を意味する語として、一般に良く知られ、親しまれた語であるといえるものであるから、これを一連に表してなる「自立支援治療器」の文字からは「障害者などが自立生活を営むことを支援するための治療器」程の意味合いを認識させるものというのが相当である。
ところで、自立支援という考え方は、生活保護制度等の福祉分野では従来から存在していたが、近年、介護保険法の制定や児童福祉法の改正においても強調されてきており(前記第3の証拠調べ通知中の2.(1))、また、平成18年4月から「障害者自立支援法」が施行され、障害者の自立を支援するための関係法律も改正される(前記第3の証拠調べ通知中の2.(2))など「自立支援」の語は以前にも増して注目されている語である。
さらに、「自立支援機器」の語が、障害者が自立生活を営む目的に使用する機器の総称として使用されていることよりしても、本願商標の「自立支援治療器」の文字からは「障害者が自立生活を営む目的に使用する治療器」の意味合いを容易に認識させるものである。
請求人は、「自立支援治療器」の文字が、一般に、「治療器」の流通過程において、商品の品質を表すものとして必ず使用されなければならないものではなく、現に使用されている事実もないから、本願商標は自他商品識別力を有している旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号については、東京高等裁判所においても「商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、必ずしも要求されないものと解すべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第76号)」と判示されているところ、仮に「自立支援治療器」なる語が造語であるとしても、それを構成する各単語の語義から前記意味合いを有する複合語として認識されるものである。
しかして、本願商標は、指定商品を「磁気治療器その他の治療器」とするものであるところ、本願商標より「障害者などが自立生活を営むことを支援するための治療器」との意味合いが生じるものであること前記のとおりであるから、本願商標をその指定商品に用いた場合には、これに接する取引者、需要者は、本願商標につき、当該商品がそのような用途に用いる治療器であることを表したものと理解するにすぎないというのが相当であり、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
そして、本願商標は、前記第1のとおりの構成よりなるものであるから、指定商品の品質(用途)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわざるを得ない。
したがって、「自立支援」及び「治療器」の文字を結合して一連に表した「自立支援治療器」の文字よりなる本願商標は、これに接する取引者、需要者をして、全体として「障害者などが自立生活を営むことを支援するための治療器」の意味合いを有するものであると容易に認識、理解されるというのが相当であり、これを本願指定商品中「障害者などが自立生活を営むことを支援するための治療器」に使用するときは、単に商品の品質(用途)を表示したものと認められ、自他商品を識別するための標識としての機能を有しないものといわざるを得ないものである。
そして、前記商品以外の治療器に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものというのが相当である。
なお、請求人は過去の登録例をあげて、意見を述べているがいずれも、本件とは事案を異にするものであるから参考とすることはできない。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-11-10 
結審通知日 2006-11-10 
審決日 2006-11-30 
出願番号 商願2004-53726(T2004-53726) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Y10)
T 1 8・ 272- Z (Y10)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼富 あおい 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 寺光 幸子
海老名 友子
商標の称呼 ジリツシエンチリョーキ、ジリツシエン 
代理人 斎藤 晴男 

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