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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 016
管理番号 1150350 
異議申立番号 異議1999-90149 
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2007-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-01-28 
確定日 2006-12-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第4201117号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4201117号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4201117号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成5年9月8日に登録出願され、第16類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成10年10月16日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
(1)登録異議申立人「ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ」(以下「申立人1」という。)は、本件商標は別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、「騎乗したポロプレーヤー」の図形と「Polo」の文字を含む欧文字とを表したものであり、申立人1がその業務に係る被服、眼鏡等の商品に使用し、広く一般に知られている標章と構成の軌を一にするものである。したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合は、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、取り消されるべきである旨、述べている。
(2)登録異議申立人「上野衣料株式会社」(以下「申立人2」という。)は、「Polo Club」の欧文字を書してなり、平成3年6月25日に登録出願され、第19類「台所用品、日用品」を指定商品として、同8年4月30日に設定登録された登録第2713306号商標、及び、同じく「Polo Club」の欧文字を書してなり、平成3年6月25日に登録出願され、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、同6年6月22日に公告された商願平3-66851号を引用して、「Polo Club」は、「被服」をはじめ各種商品に使用された結果、申立人2の商標として周知著名である。一方、本件商標は、「POLO CLUB」の英文字を含むものであり、申立人2の商標が持つ周知著名性と親近性の故にこれと関連付けて把握されるものであり、この部分が需要者の注意を強く喚起する。すなわち、申立人2の周知著名な商標のシリーズマークとして誤認されるおそれがあり、本件商標をその指定商品に使用したときは、あたかも申立人2の業務に係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生ずるおそれがある。また、同様に、本件商標は「ポロクラブ」と略称されるから、上記申立人2の引用する商標と類似することは明らかである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当し、その登録は、取り消されるべきである旨、述べている。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、商標権者に対し、平成12年5月24日付け取消理由通知書をもって通知した本件商標の取消理由は、以下のとおりである。
(1)引用商標及びその周知性について
申立人1の提出に係る(株)講談社 昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」(甲第3号証)及びサンケイマーケティング 昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」によれば、以下の事実が認められる。
アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立、社名を「ポロ・ファッションズ」とし、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバン等のデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服のデザインにも進出、服飾業界の名誉ある「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャツビー」で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。我が国においても、そのころからラルフ・ローレンの名前は、服飾業界等において広く知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレイヤーの図形の各商標(以下「引用商標」という。別掲(2)参照。)が用いられ、これらの商標は「ポロ」の略称でも呼ばれている。
そして、(株)洋品界 昭和55年4月15日発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」における「ポロ/Polo」の項、ボイス情報(株)昭和59年9月発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」の「ポロ・バイ・ラルフローレン」の項及び同63年10月29日付けの日経流通新聞には、我が国においては、ポロ・ファッションズとの契約に基づき、西武百貨店が昭和51年にポロ・ファッションズから使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴等、同53年から婦人服の輸入、製造、販売を開始した旨記述されている。また、ラルフ・ローレンに係る紳士服、紳士用品については、「dansen男子専科」(株式会社スタイル社1971年7月発行)、前出「男の一流品大図鑑」、「世界の一流品大図鑑’79年版」(株式会社講談社昭和54年5月発行)、別冊チャネラー「ファッションブランド年鑑’80」(株式会社チャネラー同54年9月発行)、「男の一流品大図鑑’81年版」(株式会社講談社同55年11月発行)、「世界の一流品大図鑑’80年版」(株式会社講談社同55年6月発行)、「MEN’SCLUB1980.12」(婦人画報社同55年12月発行)、「世界の一流品大図鑑’81年版」(株式会社講談社同56年6月発行)、前出「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」、「流行ブランド図鑑」(株式会社講談社同60年5月発行)において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」及び「ポロ/ラル・フローレン(アメリカ)」等の標題の下に紹介されていることが認められる。
また、この間、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨、例えば、平成1年5月19日付け朝日新聞夕刊、同4年9月23日付け読売新聞(東京版)朝刊、同5年10月13日付け読売新聞(大阪版)朝刊、同10年6月8日付け朝日新聞夕刊等において報道され、これら記事中においても引用商標が「ポロ」、「Polo」、「POLO」等と称されている。
以上の事実を総合判断するに、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として遅くとも本件商標の登録出願時において既に我が国において取引者・需要者間に広く認識されるに至ったいわゆる周知・著名な商標と認められ、その状態は現在も継続しているとみるのが相当である。
(2)商品の出所の混同のおそれについて
本件商標は、別掲(1)のとおり文字と図形よりなるところ、構成中央に顕著に表された図形部分は、その若干の向きの違いはあるとしても、ともに打球棒を持って騎乗するポロプレーヤーを描いてなる点において引用商標の図形と構成の軌を一にし、かつ、構成中に前記認定の「Polo」又は「POLO」と同一と認められる「POLO」の文字を含み、さらに、これら文字、図形又はその全体より、不可分一体の既成の観念を表現するものとして一般に広く認識されているというような事情は見いだせない。
そして、昨今、いわゆるキャラクター商品の増大傾向やブランドイメージを利用した商品化事業の展開状況よりして、デザイナーのイメージを利用したいわゆるデザイナーズキャラクターに係る商品の流通も多様な商品分野に及んでいることは顕著な事実であって、文房具その他に係る本件商標の指定商品の分野においても例外ということはできない。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は前記各事情よりして、本件商標の図形部分及び「POLO」の文字部分に着目し、該部分に強く注意をひかれるとともに、引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
また、ラルフ・ローレンの「POLO」、「Polo」、「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決として、甲第7号証(東京高等裁判所平成2年(行ケ)第183号)及び甲第8号証(東京地方裁判所平成8年特(わ)第1519号)の判決をはじめ、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)、同第288号(平成12年1月25日言渡)、同第298号、同第299号(以上平成12年2月1日言渡)、同第192号(平成12年2月29日言渡)、同第333号、同第334号(以上平成12年3月29日言渡)等の一連の判決がある。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見
商標権者は、上記3の取消理由通知に対して、要旨次のように意見を述べ、乙第1号証ないし乙第54号証を提出した。
(1)引用商標の構成中の「Polo」の文字及びその著名性について
本件取消理由は、誤った違法な事実認定をしている。「POLO」の語がスポーツであるポロ競技を意味することは、少なくとも本件商標の出願当時、我が国においても広く知られているものと認められる(乙第3号証ないし乙第6号証)。また、「ポロシャツ」は、現在では、「半そで、かぶり型、オープンカラーの活動的なシャツ」を指称する外来語として定着しており、普通名称となっている。我が国の取引者・需要者は、「POLO」の語に接するとき、スポーツ競技の名称である「ポロ」を連想するか、あるいは「POLO SHIRT/ポロシャツ」の略称として認識し、理解するものと言うべきである(乙第6号証及び乙第7号証)。
現在、我が国において、被服等の商品区分で、「POLO」の商標を所有するのはポロ・ビーシーエス(株)であり(乙第8号証及び乙第9号証)、ラルフ・ローレン及び申立人1は、「POLO」の文字のみからなる商標権を所有していない状況が認められる。そして、ラルフ・ローレンは、「Polo」の文字を単独で使用することを避けてきたのが実情である(乙第12号証)。また、我が国において、構成中に「Polo」の文字を含む結合商標として、それぞれ第三者によって、「被服、時計」等の商品に使用されていることが認められる(乙第13号証)。それらのブランドは、ラルフ・ローレンに係る商品と明確に区別して取引されており、取引者・需要者から高い認知を得ているものである(乙第14号証)。
以上の事実によれば、我が国において、「POLO」の語を含む結合商標のすべてについて、直ちにラルフ・ローレンを想起するという関係は成立しないものである。したがって、本件商標のように結合商標中に「POLO」の文字が含まれている場合、当該商標からラルフ・ローレンに係る引用商標を連想するか否かは、個別具体的に判断するほかはないと言うべきである。
(2)引用商標の構成中の「競技中のポロプレーヤー」の図形について
本件取消理由は、本件商標の図形部分について、引用商標の構成中の図形部分とは構成の軌を一にし、さらに、本件商標は、その「文字、図形又はその全体より、不可分一体の既成の観念を表現するものとして一般に広く認識されているというような事情は見いだせない」と認定した上で、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本件商標の図形部分及び「POLO」の文字部分に着目し、該部分に強く注意をひかれるとともに、引用商標を連想、想起するから、該商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあると、誤った判断を行っているが、本件商標の構成は、引用商標とは、判然と区別し得る外観上の差異を有するものである。したがって、商品の出所について誤認混同を生じさせるほど両者の外観が近似したものであるとは、到底認めることができない。
上記の主張が相当であることは、本件商標の商標権者が他類で出願した、本件商標と同じ態様の商標の審査結果(乙第16号証ないし乙第18号証)及び登録異議の決定からも明らかである(乙第19号証ないし乙第22号証)。
また、現在、我が国において、例えば、「BEVERLY HILLS POLO CLUB」、「SANTA BARBARA POLO & RACQUET CLUB」、「ロイヤルクィーンズポロチーム(ROYAL QUEEN'S POLO TEAM)」、「ワールド・ポロ・チャンピオンシップス」などのブランドが、馬に騎乗したポロプレーヤーを描いた図形を含む商標を、「被服」等の商品に使用していることが認められる(乙第23号証ないし乙第25号証)。そして、上記のブランドは、特許庁において登録が認められているものである(乙第26号証ないし乙第39号証)。ラルフ・ローレンが、自他の商品を識別する標章として引用商標を使用していることは事実であるが、第三者によって昭和42年の時点で登録されていた事実(乙第40号証及び乙第41号証)からかんがみれば、引用商標の構成が、他に類例を見ないほど極めて独創性を有するものとまでは、到底認めることができない。
以上の事実から見れば、構成中に、馬に乗ったポロ競技プレーヤーを含む商標全てについて、引用商標が想起され、出所の混同を生ずるおそれがあると短絡的に判断することはできない。本件商標は、外観構成上も引用商標とは明らかな差異を有するものであるから、本件商標によって引用商標が連想、想起されるという関係は成立せず、商品の出所は、両者の視覚的印象の差異によっても十分区別できるものである。
(3)引用商標の連想の有無
(a)本件商標の構成中の「POLO」の文字や図形部分のみに注目して、引用商標を連想、想起することは有り得ない。
(b)外観
本件商標の欧文字部分は、線円の外周に同一の書体で、バランス良く円形に配したものであり、外観構成上、「POLO」の文字部分のみが独立して自他商品の識別機能を発揮する部分として分離抽出される要素は全く存在しない。この点は、例えば、商願平5-38636号登録異議の申立てについての決定で判断されていることを見ても明らかである(乙第15号証及び乙第16号証)。
(c)観念
本件商標の出願当時、「BERKSHIRE」は、英国にある酪農が盛んな地として、我が国の取引者・需要者にも広く知られていたことが認められる(乙第5号、乙第6号証及び乙第42号証)。そして、この地名である「BERKSHIRE」と、競技の名称である「POLO」、さらに「CLUB」の組み合わせは、地名を冠してスポーツ競技等の団体名を表示することは普通に行われているものであるため、看者をして、英国に存在する特定のポロ競技団体を表した固有名詞を観念させるものであり、このように、観念上一体に構成されている本件商標の「ROYAL COUNTY OF BERKSHIRE POLO CLUB」の部分から、「POLO」の文字のみが分離して把握されるということは、およそあり得ないものである。上記の主張が相当であることは、昭和63年審判第9157号登録異議の決定、商願平6-109555号登録異議の申立てについての決定からも明らかである(乙第43号証ないし乙第47号証)。
なお、本件取消理由では、本件商標について、「文字、図形又はその全体より、不可分一体の既成の観念を表現するものとして一般に広く認識されているというような事情は見いだせない。」と認定しているが、本件商標の図形部分はポロ競技団体と関連性の深い馬及び人物を描いたものであって、本件商標は、この図形部分を含めた商標全体として、英国に存在する特定のポロ競技団体の名称の観念を生ずるものであるから、上記認定には、重大な誤りがあると言わざるを得ない。
(d)称呼
本件商標からは、「ロイヤルカウンティオブバークシャーポロクラブ」の一連の称呼のみを生ずると判断されるのが相当である(乙第15号証)。
なお、本件取消理由では、東京高等裁判所平成2年(行ケ)第183号(甲第7号証)、等を引用しているが、東京高裁の判決は、「Polo Club」なる文字商標についての事件であるから、本件とは全く事案を異にし、同列に論じられないものであることは明らかである。
これに対して、本件商標より単に「ポロ」の称呼及び観念が生じないことは前述のとおり明らかであり、本件商標からは、「引用商標の付された商品群の愛用者集団」の観念が生ずる余地もないから、本件取消理由は、事案の全く異なる判決を安易に引用し、事実認定を誤ったものといえる。
以上によれば、本件商標をその指定商品に使用する場合に、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「POLO」の文字にのみ注目し、ラルフ・ローレンに係る引用商標を連想、想起するものとまで認めることはできず、この点で本件取消理由の判断には、誤りがあることが明らかである。
(4)改正商標審査基準、および本件商標の正当性について
(a)特許庁は、周知・著名商標の保護についての重要性が高まっていることにかんがみ、商標法第4条第1項第15号については、審査基準を追加し、平成11年7月1日以降の審査より適用している。本件商標に、上記審査基準を照らし合わせてみた場合、本件商標がその構成中に「POLO」の文字を含むことは、認められるところである。
(b) しかしながら、上記審査基準の適用後になされた平成12年1月27日付の東京高裁平成11年(行ケ)第253号審決取消請求事件の判決(乙第48号証)では、取引者・需要者は、「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」の名称と理解するものと認定し、ラルフ・ローレンに係る商標「POLO」が想起されることはないから、指定商品について使用されても、ラルフ・ローレンに係る商品であるかのように誤認混同を生ずるおそれはないとの判断が示されている。この裁判において、被告の特許庁は、「偽物ブランド商品が、後を絶たない。」、「実在の団体を表したものとは認められない」と主張している。これに対して、判決は、実在することが不可欠の前提であると解することはできないところ、前記のとおり、本件商標の出願当時、米国にある保養地として日本においても広く知られていたこと、及びポロ競技が貴族的なスポーツとして受け取られていることからすると、「PALM SPRINGS POLO CLUB」が「PALM SPRINGS」にある「ポロ競技のクラブ」を意味するものと認識されるとみることに何ら影響を及ぼすものではないと判断し、特許庁の主張を退けている。裁判における特許庁の主張は、前述の改正商標審査基準を導入した背景、趣旨にも通じるものである。しかしながら、商標法第4条第1項第15号は、具体的出所の混同について判断する規定であるところ、判決は、改正商標審査基準の導入後も、同法第4条第1項第15号の判断手法は本質的に変わりがないことを明らかにしたものと見ることができる。
(c)そして、実際には存在しないポロ競技団体の名称ですら、前記の判決がなされているのに対し、本件は、英国に実在するポロ競技団体であり(乙第49号証)、本願の出願人は、当団体を代表して日本国において商標権を取得しようとしているものであるから、近時、見受けられる不正競争を意図した「POLO」の文字を含む商標出願などとは明らかに性質の異なる正当な権利者の出願であることは、本件審判の審理において斟酌されるべきである(乙第49号証)。「ROYAL COUNTY OF BERKSHIRE POLO CLUB 」は、例えば、我が国において、第25類でも商標登録が認められている「CAMBRIDGE UNIVERSITY POLO CLUB」(乙第50号証)等と並び英国に実在する25のポロクラブの中の1つであり、英国でも有数のポロクラブである。また、当ポロクラブの名称が、「ROYAL COUNTY OF」(「英王室領」の意味」)の語を用いていることは、貴族、名士により構成される鉾々たる陣容の運営組織を見れば首肯できるものであり、格式の高い正統のポロ競技団体として認識されている(乙第52号証)。そして、本願出願人は、当ポロクラブのチェアマンであり、当ポロクラブを代表して、本願の出願人となったものである(乙第49号証)。そして、本件商標の構成中の図形は、当ポロクラブに係る商品を表す商標として、我が国においても周知となっているものである(乙第53号証)。また、上下二段書きされた「Royal County of Berkshire POLO CLUB」の文字の上部に、本件商標と同一の図形を描いてなる第25類の商標は、英国において、商標登録第1402908号として登録が認められている(乙第54号証)。このように、本件商標と同一の図形と、同じスペルの文字で構成される商標は、英国の特許庁においても、当ポロクラブの商標権として登録が認められているものである。そして、不正競争を意図したものではなく、正当な権利者が自己の業務に係る商品の出所を表示するために使用している商標であることは、明らかと判断されるべきである(乙第53号証)。
(5)むすび
以上、述べてきたように、本件商標は、「ロイヤルカウンティオブバークシャポロクラブ」の称呼と、英国に実在する特定のポロ競技団体の名称の観念のみを生じる商標であり、図形部分を含めた商標全体として、英国に実在する特定のポロ競技団体のイメージのみが想起される商標である。
また、本件商標は、引用商標とは別異の非類似の商標であって、本件商標から引用商標が想起されることはないから、その指定商品に使用しても、ラルフ・ローレンと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれは無いものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではないから、その登録は維持されるべきものである。

5 当審の判断
本件商標登録については、平成12年5月24日付けで前記3の取消理由を通知したものであるところ、この取消理由は妥当なものと認められる。
商標権者の意見は、以下の理由で採用できない。
(1)商標権者は、「Polo」の語がスポーツであるポロ競技を意味することは、少なくとも本件商標の出願当時、我が国においても広く知られているものと認められ、我が国の取引者・需要者は、「Polo」の語に接するとき、スポーツ競技の名称である「ポロ」を連想するか、あるいは「POLO SHIRT/ポロシャツ」の略称として認識し、理解するものと言うべきである。そして、現在、我が国において、構成中に「Polo」の文字を含む結合商標として、それぞれ第三者によって使用され、取引者・需要者から高い認知を得ているものであるから、本件商標のように結合商標中に「POLO」の文字が含まれている場合、当該商標からラルフ・ローレンに係る引用商標を連想するか否かは、個別具体的に判断するほかはないと述べる。
しかし、前記3の取消理由のとおり、引用商標はアメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を示すものとして、我が国においては、昭和51年頃から使用されるようになり、遅くとも昭和50年代半ばまでには取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたこと、その当時から、引用商標及びこれを付した商品ブランドは、「ポロ」、「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり、ラルフ・ローレンの「ポロ」、「Polo」ないし「POLO」として著名になり、強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであるから、本件商標の出願当時(平成5年9月)、我が国の取引者・需要者は、「Polo」の語に接するとき、スポーツ競技の名称である「ポロ」を連想するか、あるいは「POLO SHIRT/ポロシャツ」の略称として認識し、理解するものとの商標権者の主張は認められない。また、「Polo」の文字を含む結合商標として、第三者によって複数の商標が使用されている事実があったとしても、「ポロ」、「POLO」(「Polo」)については、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を示すものとして取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたことは前記のとおりであるから、第三者によって使用され、取引者・需要者から高い認知を得ているとは認められない。
そして、これについては、東京高裁平成11年(行ケ)290号判決(平成11年12月16日判決言渡)において判示しているように、「ラルフ・ローレンあるいはポロ社は、少なくとも本願商標の登録出願時である平成3年4月までにはファッション関連業者として広く知られ、著名といい得る状態に至って今日に及んでおり、その際、ラルフ・ローレン、ポロ社あるいは引用商標は、『POLO』、『Polo』、『ポロ』と略称されることが少なくないことが認められる。一方、球技としてのポロは、我が国においてはほとんどなじみのないものであることは、当裁判所に顕著な事実である。そうすると、被服等のファッション関連商品に『POLO』、『Polo』、『ポロ』の文字が使用されると、これに接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いということができる。」「『ポロシャツ』の語が『ポロ』と略称される例があるとしても、商品に使用された『POLO』あるいは『ポロ』の語に接した取引者・需要者がラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と識別するか否かにそのことが関係するのは、『POLO』あるいは『ポロ』の語が普通名称として用いられている可能性が認識される場合に限られ、それ以外の場合には関係しないことは明らかである。」とあることよりすれば、前記取消理由のとおり、本件商標に接した取引者・需要者は、球技としてのポロに関係する商品とは認識せず、ラルフ・ローレンあるいはポロ社に関係する商品と認識する蓋然性が極めて高いというのが相当である。
(2)また、商標権者は、本件商標が、外観構成上も引用商標とは明らかな差異を有するものであるから、本件商標によって引用商標が連想、想起されるという関係は成立せず、商品の出所は、両者の視覚的印象の差異によっても十分区別できるものである。本件商標をその指定商品に使用する場合に、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「Polo」の文字にのみ注目し、ラルフ・ローレンに係る引用商標を連想、想起するものとまで認めることはできず、この点で本件取消理由の判断には、誤りがあることが明らかであると述べる。
しかし、本件商標と引用商標とは、相違する部分があるとしても、ともに打球棒を持って騎乗するポロプレーヤーを描いてなる点において構成の軌を一にし、かつ、前記取消理由のとおり、本件商標は、構成中に「POLO」の文字を含み、さらに、これら文字、図形又はその全体より、不可分一体の既成の観念を表現するものとして一般に広く認識されているというような事情は見いだせない。そして、昨今の商品化事業の展開状況よりして、デザイナーのイメージを利用した商品の流通も多様な商品分野に及んでいることは顕著な事実であって、文房具その他に係る本件商標の指定商品の分野においても例外ということはできない。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、前記各事情よりして、本件商標の図形部分及び「POLO」の文字部分に着目し、該部分に強く注意をひかれるとともに、引用商標を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(3)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標


異議決定日 2006-07-25 
出願番号 商願平5-92358 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (016)
最終処分 取消  
前審関与審査官 高山 勝治 
特許庁審判長 田代 茂夫
特許庁審判官 藤平 良二
内山 進
登録日 1998-10-16 
登録番号 商標登録第4201117号(T4201117) 
権利者 ブライアン モリソン
商標の称呼 ロイヤルカウンティオブバークシャーポロクラブ、ロイアルカウンティオブバークシャーポロクラブ、ローヤルカウンティオブバークシャーポロクラブ、ロイヤルカウンティオブバークシャー、ロイアルカウンティオブバークシャー、ロイヤルカウンティオブバークシャー 
代理人 溝上 満好 
代理人 山内 淳三 
代理人 溝上 哲也 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 曾我 道照 
代理人 岡田 稔 
代理人 内山 美奈子 

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