• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 030
管理番号 1148221 
審判番号 取消2006-30216 
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2007-01-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2006-02-16 
確定日 2006-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第3097497号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3097497号商標(以下、「本件商標」という。)は、「狹山の緑」の文字を縦書きにしてなり、平成5年4月6日に登録出願、第30類「茶」を指定商品として、平成7年11月30日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第3号証を提出した。
(1)請求の理由
商標登録第3097497号に関し、商標権者である株式会社橋本園は継続して3年以上日本国内において商品区分第30類、指定商品「茶」について当該登録商標の使用をしていない。
(2)弁駁
被請求人は、登録商標「狹山の緑」の使用例として乙第4並びに8号証を提出し、その裏付け証拠として乙第5,6並びに9号証を提出している。しかし、乙第5,6並びに9号証は、シール用紙自体の購入に係わる書類であり、乙第4並びに8号証に貼られているシール自体の購入日を証明するものであっても、登録商標「狹山の緑」の使用の日時を裏付けるものではない。
被請求人は、乙第7号証の1ないし5として支店納品記録書を提出し、また、乙第12並びに13号証として納品書を提出している。しかし、これらの書類は、被請求人独自の作成書類であり、作るならば任意に作れる程度のものであって証拠価値の薄いものと思料する。もし、登録商標「狹山の緑」なる銘柄のお茶を販売した事実があるならば、例えばレジの伝票控えのような購入者が明らかに存在した事実を証明可能な書類の提出が望まれる。
被請求人は、乙第10並びに11号証を提出している。これらは、本件審判請求の登録後の日付けものであって証拠価値の全くないものである。
請求人は、本件審判請求前に市場調査を行った。しかし、被請求人が登録商標「狭山の緑」を指定商品「茶」に使用している事実を確認できなかった。
その市場調査は、被請求人が本社としている直販店に“「狹山の緑」なる銘柄のお茶がありますか”と尋ねることによって行った。しかし、回答は“そのような銘柄のお茶はありません”ということであった。
上記市場調査の中で、被請求人が「狹山の緑/さやまみどり」なる文字を付したお茶を販売していることが判明した(甲第1,2号証)。この「狹山の緑/さやまみどり」は茶農林5号で指定された品種名(甲第3号証)であり、登録商標「狹山の緑」の使用ではない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第13号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、被請求人により指定商品「茶」について、本件取消審判の請求前から使用しているものである。
(2)この点について以下に詳細に述べる。
被請求人は、昭和42年6月に農地を所有し、農業経営できる農業生産法人の有限会社橋本園の創立に始まり、茶用冷蔵庫、自動包装機械、蒸茶製造機械の自動化等の設置及び導入をなし、また包装製品工場、茶選別仕上工場等を完成し、平成16年6月に株式会社橋本園に組織変更し、その後、蒸茶工場や仕上工場の改修や蒸茶製造ラインの更新を行い現在に至っている(乙第2号証)。
(3)そして、被請求人は、被請求人の製造・販売になる狭山茶に他産地の原料茶を配合して香味を調整した茶(以下、「狭山茶ブレンド茶」という。)について、本件商標を平成17年9月から使用しているので、その経緯について説明する。なお、本件商標の使用は、被請求人の製造・販売になる狭山茶ブレンド茶の全部について使用するものではなく、その一部についての使用である。
被請求人は社業の発展を目指し、品質の向上、販売高の増加や経費の節減等について努力していることは同業他者と変ることはなく、新銘柄の開拓についても努力目標の一つにあった。
平成17年の新茶シーズンの後に、新しいブレンドを計画し社内において検討し、試行錯誤の結果、何とか納得が得られる新ブレンド茶にたどりつくことができた。この新ブレンド茶を発売するに当っては、新ブレンド茶としての商標名や、これを包装する袋や、一袋の容量、価格等を選定しなければならないことから、これらの点について、社内において次のように度重なる協議を経て決められた。
先ず新ブレンド茶の商標名としては、本件商標が登録されて保有していることから「狭山の緑」を採用することを決定した。
また、この新ブレンド茶の包装袋については、次のように協議を決定された。
すなわち、この新ブレンド茶を発売するに当っては一斉に大量販売するにはリスクが大きいことから、顧客の反応をみるために、本社内直売店において展示販売し、その後の状況に応じて販路を拡大することとし、この方針に沿って、発売当初の袋としては、新包装袋を調達した際に、売行きが芳しくなかった時に生ずるリスクを避けるために、従来から発売している包装袋を利用し、これに前記した本件商標を印字したシールを貼付することにした。
幸なことには、被請求人を代表するとも言える「宮寺郷」という被請求人が所有する登録商標(登録第1892202号)を使用した包装袋があることから、この包装袋を利用することとなった。
乙第3号証は、本件商標と社会通念上同一の商標(シール)であり、乙第4号証は、この宮寺郷という包装袋に「狭山の緑」と縦書きしたシール(乙第3号証)を貼付してなる包装袋である。
なお、これは社内にあっては徳用煎茶狭山の緑とされ、一袋の容量は500g、価格は本体価格1500円で、平成17年9月から本社の直売店で販売されるに至った。
この「狭山の緑」と縦書きしたシールのシール地は、乙第5号証(東芝テック株式会社の請求書(写))に明らかなように、東芝テック株式会社北関東支社から購入したものであり、購入に際して請求書の日付が2005年8月31日であることから、被請求人が平成17年9月から使用したことは疑のない処である。なお、シール地に「狭山の緑」なる文字を印刷したのは被請求人において、パソコンにより行ったもので、このことは当初述べたように、新ブレンド茶を計画した際の努力目標の一つとして経費の節減の趣旨にも沿うものであり、また、中小企業にとっては当然のことでもある。
なお、この乙第5号証の商品名欄において「ナナコピーCE-245」とあるのは、「白地のシール」であることは乙第6号証により明らかである。
(4)乙第4号証に示した包装袋によって販売された事実については、乙第7号証の1ないし乙第7号証の5によって更に詳しく説明する。
乙第7号証の1ないし乙第7号証の5は、本社の直売店における各種銘柄のお茶の販売のための展示の記録のための支店納品記録書なる帳票のうち、平成17年9月から平成18年1月までの前記支店納品記録書の写である。この帳票は題目として支店納品記録書とあるが、これは被請求人の会社が有する複数の支店において、陳列販売している多数の銘柄の商品の陳列を売行きの状況を概略で把握するためのもので、直売店と各支店とに共通に使用できるように、支店納品記録書とされ、各支店にあっては、それぞれ用紙に支店名や記録年月を記入し、記入月の翌月に本社に送られることとなっており、直売店にあっては店名を本店としている。
また、この記録書における納品とは、各支店からの連絡に応じて本社から当該商品が送られたことをいう。
それ故、乙第7号証の1にあっては、品名欄の第3番目に記入された「徳用煎茶狭山の緑」が使用商標を使用した商品であり、これによれば、直売店においては平成17年9月には当初500g入包装袋3袋を陳列していたが販売により陳列数量が減ったために2袋を追加して納品され陳列されたことを示している。
また、乙第7号証の2にあっては平成17年10月には5袋を陳列しこれと同様乙第7号証の3は平成17年11月には合計13袋が、乙第7号証の4は平成17年12月には合計8袋が陳列され販売に供されたことを示している。
これら直売店の販売に際しての乙第4号証の包装袋は500g入という大袋にかかわらず、これに貼付された本件商標を使用したシールが小さいことから、直売店の陳列に際しては、陳列箇所の背後に、「狭山の緑」なる商品は新ブレンドによる新発売されたものであることを始めとする広告文を記した用紙を掲出して、宣伝に務めたことは言うまでもない。
(5)なお、この乙第7号証の1ないし乙第7号証の5において、乙第7号証の1ないし乙第7号証の4、すなわち平成17年9月から同年12月の間にあっては「狭山の緑」は1袋500g入となっており乙第7号証の5にあっては1袋200g入となっている。これは次の様な事情によるものである。すなわち、発売当初にあっては企画時のブレンド内容から1袋を500g入とし本体価格を1500円として発売していたが、数ヶ月の間における顧客の声を聞く等した結果、若干の高級化を計る必要を感じ、ブレンド内容を若干変更してその容量も200gとし、本体価格を1000円と決めた結果によるものである。これらの区別は次のようにされた。
(6)平成17年9月発売してから同年12月までは、乙第4号証に示した包装袋(白地シールに狭山の緑という文字を印刷したシールを貼付したもの)によって販売していたが、前記したように高級化を計る必要からブレンド内容を変更し、1袋の容量も200gとしたもので、このために前述の「宮寺郷」という被請求人が所有する登録商標を使用した包装袋に「狭山の緑」と「さやまのみどり」を二段の横書きとした金地のシールを貼付した包装袋(乙第8号証)を用いて、平成18年1月から販売したもので、この乙第8号証の包装袋を用いられた金地のシールは乙第9号証(株式会社清和の金無地シールを含めた商品の納品書)にみるように金無地シールは2006年1月18日に納品されたものであって、被請求人は納品された金無地シールに、被請求人においてパソコンにより、「狭山の緑」と「さやまのみどり」とを二段に横書きに印刷して、1月から使用したものである。この金地シールを貼付した包装袋が、乙第7号証の5である本店18年1月分11枚口2枚目の支店納品記録書に記載された「狭山の緑200g、10、10本」である。
(7)これら経過を辿るにつれ、「狭山の緑」なる新ブレンド茶が、先行き明るい見通しを得られたことから、被請求人は、この新ブレンド茶の100g入りを1袋として、主として卸販売をしてゆくという方針を樹て、これに必要な包装袋の別註(袋の形状、大きさ等をはじめとして表面、裏面における模様、文字等を指定した註文)を行い、平成18年3月17日に納品された。
この別註袋は、乙第10号証で示され、また、乙第11号証はこの別註袋の納入日を証する書類である。この別註を行うに当って、これ迄の経験から発註元と製造元との間では相当日数の意見交換を行い、修正に修正を重ねた上で最終決定されてから製作を始め納品に至るもので、この間最低1ケ月半から2ケ月以上を必要とするものである。
それ故、この乙第10号証の包装袋を正式に発註した文書はない(多くの場合、電話連絡によることが多い。)が、遅くとも1月下旬までに行われたものである。
この別註袋による商品は、納品後に使用されていることは勿論現在も引続き使用されている。
(8)その上、使用商標「狭山の緑」を使用した商品「狭山茶ブレンド茶」は、本件審判の請求前の平成17年10月21日には、同業者である株式会社菊川緑茶センターに販売納品している(乙第12号証)し、また、電話やインターネット等の通信販売によっても、使用商標「狭山の緑」を使用した商品は本取消審判の請求前である2005年9月26日付で個人に販売納品されている(乙第13号証)。
(9)したがって、本件商標と社会通念上同一商標の使用は、本件商標の使用に該当し、その使用事実も前述したとおりであるから、本件商標は、その指定商品「茶」に使用していることは明らかである。
以上の説明において被請求人が商品「茶」に使用した商標は、「狭山の緑」の文字を縦書きにしたもの、「狭山の緑」と「さやまのみどり」の文字を横書きに併記したもの、「狭山の緑」と「さやまのみどり」の文字を縦書きに併記したもの等である。これら「狭山の緑」と「さやまのみどり」の併記は、称呼及び観念が同一であり、商標法上で社会通念上同一の商標と認められているものである。
(10)以上のように、本件商標は、その指定商品「茶」について、本件審判請求の請求日前3年以内に被請求人により使用されているので、商標法第50条の規定に該当しないことは明らかである。

4 当審の判断
(1)被請求人の提出した乙号証によれば、以下が認められる。
ア 乙第4号証は、被請求人の500g詰め煎茶の包装袋現物と認められるところ、その表の面には、いずれも縦書きの「お徳用」「煎茶」「狹山の緑」の各文字を表した各シールが貼付されている。
なお、乙第5号証及び同第6号証によれば、上記「狹山の緑」を表すのに使用したシールは、2005年8月31日付請求書に示された「無地シール用紙」であり、東芝テック株式会社から被請求人に納められたものと認められる。
イ 「支店納品記録書(写)」(乙第7号証の1)には、品名欄に「徳用 煎茶 狹山の緑」「500g」との表示が印刷されており、同記録書に「本店17年9月分」と記入がされて、下部の欄外に「吉野孝彦」の記名及び押印があるのが認められる。また、同2には、品名欄に「徳用 煎茶 狹山の緑」「500g」との表示が印刷されており、「本店17年10月分」として、下部の欄外に「吉野孝彦」の記名及び押印があるのが認められる。
ウ 乙第8号証は、被請求人の200g詰め煎茶の包装袋現物と認められるところ、その表の面には、横書きで「狹山の緑」及びその振り仮名「さやまのみどり」を赤色の文字で表した金色のシールが貼付されている。
なお、乙第9号証によれば、上記「狹山の緑」を表すのに使用したシールは、2006年1月18日付納品書に示された金無地シールであり、株式会社清和から被請求人に納品されたものと認められる。
エ 乙第10号証は被請求人の100g詰め煎茶の包装袋現物と認められるところ、その表の面には、縦書きで「狹山の緑」及びその振り仮名「さやまのみどり」が印刷されている。
なお、乙第11号証(納品証明書)によれば、この包装袋は、本件審判請求の登録日の10日後にあたる18年3月17日に納品されたものである。
オ 乙第12号証によれば、被請求人から「(株)菊川緑茶センター」宛の2005年10月21日付の納品書(控)には、品番・品名欄に「狹山の緑【ダンボール入り】」、数量欄に「(28入 2)56kg、単価欄に「1,250.00」、金額欄に「70,000」、合計「¥73,500」と記載されていることが認められる。また、乙第13号証によれば、被請求人から「佐和政子」宛の2005年9月26日付納品書(控)には、品番・品名欄に「徳用煎茶 狹山の緑 500g〈t袋入〉」、数量欄に「4個」、単価欄に「1,575.00」、金額欄に「6,300」と記載されていることが認められる。
これらと上記(1)ア及びイを併せみれば、前記年月日に、「狹山の緑」と表示した商品「茶」が取引されたと推認し得るものである。
(2)本件商標は「狹山の緑」の文字を縦書きにしてなるものであるところ、前記(1)における使用商標は、本件商標と書体の違い、縦書きと横書きの相違や振り仮名の有無の違いがあるけれども、使用商標における「狹山の緑」の文字は、本件商標と同一の構成文字からなり、称呼・観念を共通にするものであるから、社会通念上同一と認められる商標であり、斯かる商標が継続的に使用されてきたといい得るものである。
(3)以上によれば、本件審判請求の登録前3年以内である前記(1)オの年月日に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を表示した商品「茶」が取引され、被請求人から引き渡されたと推認し得るものであり、本件商標が使用されたと認められるものである。
(4)請求人は、本件審判請求前の市場調査で、被請求人の直販店に「狹山の緑」なる銘柄のお茶があるかと尋ねたところ、そのような銘柄のお茶はないとの回答があったと主張するが、当該主張事実を裏打ちする具体的資料はなく、前記のとおり証拠をもって本件商標の使用を認め得る以上、この主張のみによって先の認定を左右することはできない。
また、請求人は、乙第12号証及び同第13号証に関して、被請求人独自の作成書類であり、作るならば任意に作れる程度のものであって証拠価値の薄いものと思料するという。しかし、当該納品書が被請求人自身によって作成されたものであることは当該書類の性格上当然であるうえ、複数の具体的な取引の相手等を明記するなどしているものであり、この種の取引書類(控)として、これが不自然なものであるとする明確な理由は見出せない。
さらに、「さやまみどり」が茶の品種名であり(甲第3号証)、当該品種名に相応した「狭山緑」(「狭」は「狹」の正字である。)及び「さやまみどり」の文字を包装袋に表示する被請求人の商品「茶」が存在した(甲第1号証及び同第2号証)としても、本件商標とは別異の標章に係ることといわざるを得ず、これによっても、前記認定判断は左右されないというべきである。
(5)以上のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に我が国において商標権者が、指定商品について本件商標の使用をしたと認め得るものである。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、その指定商品に使用をしていないものには該当しないから、商標法第50条に照らし、その登録を取り消すことはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-09-07 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-26 
出願番号 商願平5-34642 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (030)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蛭川 一治半田 正人 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小川 有三
登録日 1995-11-30 
登録番号 商標登録第3097497号(T3097497) 
商標の称呼 サヤマノミドリ 
代理人 長沢 越男 
代理人 竹下 和夫 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ