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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y12
管理番号 1146912 
異議申立番号 異議2005-90581 
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2005-11-13 
確定日 2006-10-20 
異議申立件数
事件の表示 登録第4886980号商標の登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4886980号商標の登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4886980号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおり、ややデザイン化された「9ff」の文字を横書きしてなり、平成16年12月2日に登録出願され、第12類「自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素,落下傘,乗物用盗難警報器,車いす,陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。),船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品,鉄道車両並びにその部品及び附属品,乳母車,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片」を指定商品として、平成17年8月12日に設定登録されたものである。

2 取消理由の通知
本件商標の登録に対し、平成17年11月13日付けで登録異議の申立てがされた結果、平成18年6月28日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、ドイツ連邦共和国のポルシェ社の製造する自動車を改造して性能を向上するための自動車部品の製造販売、自動車の改造、改造した自動車の販売を行う改造車製作会社(チューナー)であり、同人が改造した自動車は2004年5月に世界最速の時速372Kmの記録を樹立し、同年12月には世界最速時速388Kmの記録を更新した(甲第3号証)。
(イ)申立人の業務に係る改造自動車及び改造用自動車部品は、一般の自動車・自動車部品に比べて高価であるほか、いずれにもややデザイン化された「9ff」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)が使用されている(甲第4及び第5号証)。本件商標は、この引用商標と同一といえるものである。
(ウ)本件商標の登録出願前に、ヨーロッパ各国、アメリカ合衆国、カナダ及び台湾において発行された雑誌に、引用商標を付した申立人の改造車が写真入りで紹介されている(甲第8ないし第16号証)。我が国においても、インターネットのホームページや自動車雑誌において、該改造車や世界最高時速を記録したことが紹介されている(甲第4、第6及び第7号証)。
(2)以上の認定事実によると、引用商標は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る改造自動車及び改造用自動車部品について使用する商標として、少なくともヨーロッパ及び北米においてはこの種業界の取引者・需要者間に広く認識されていたものというべきである。
ところで、引用商標は、特徴のあるデザインが施された文字からなるものであり、これと全く同一の構成からなる本件商標は、引用商標と偶然に一致したものとは到底いい難いものである。そして、上記(1)(ウ)のとおり、申立人の改造車が世界最高時速を記録し注目を集めていることが我が国においても紹介されていることに加え、商標権者は、輸出入業務も行っており海外にも拠点を設けている(甲第17号証)ことなどからすると、海外事情にもある程度通じていたものと推認されるのであり、本件商標の登録出願時に、商標権者が該改造車及び引用商標の存在を知らなかったものとはいい難い。
そうすると、商標権者は、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、申立人の我が国への参入を不当に阻止して申立人に損害を加える等の不正の目的をもって、本件商標を先取り的に出願し登録を受けたものといわざるを得ない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。

3 商標権者の意見
商標権者は、上記2の取消理由に対して、意見を要旨次のように述べている。
(1)商標権者は、取消理由における認定事実については、これを認め、「そうすると、商標権者は、・・・等の不正の目的をもって、本件商標を先取り的に出願し登録を受けたものといわざるを得ない。」については、これを否認し、本件商標が商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであるとの点は、争うとしている。
(2)その理由とするところは、商標権者は、アメリカ合衆国に「3T Associates,Inc.」と称する法人(以下「3T社」という。)として拠点を設け、自動車部品の販売等の営業活動を行っていること(乙第1及び第2号証)。また、3T社の親会社である商標権者の主たる事業は段ボール製品の販売等であるが、その他に自動車部品の販売も行っていること(乙第3号証)。そして、3T社は申立人に接触し、アメリカ合衆国及び我が国での総輸入元、総代理店の権利取得交渉を開始し、2004(平成16)年1月21日に申立人の代表者より3T社営業部長宛てに、取引条件を記載した書面が添付されたメールが送られたこと(乙第4号証)、
また、2004年11月にラスベガスで開催された展示会(SEMA SHOW)で3T社が申立人の製品を9ffブランドで出展する等、交渉は順調に進んでいたとし、その展示会において商標権者の海外事業部長と申立人の代表者が面談し、日本での販売は3T社の親会社である商標権者が行うことについて内諾を得たと述べ、
その後も両者は断続的に交渉を行い、2005(平成17)年1月8日にアメリカ合衆国内においてのみ、申立人が同人社製品の独占的販売権を3T社に与える旨の「Dealer Contract」を締結したこと(乙第5号証)、
商標権者は、我が国において「9ff」商標を付して販売する計画を立て、3T社がアメリカ合衆国内で製造したサンプル(ポルシェ997用 19"ホイール)の送付受けたこと(乙第6号証)。また、申立人は、2005年1月8日に商標権者に対し、当該製品サンプルを我が国で販売することを許諾したこと(乙第7号証)。
一方、2005年1月下旬、申立人が我が国において、商標権者以外の会社と独占販売契約を締結したとの情報が商標権者にもたらされたため、商標権者は、我が国における申立人製品の販売計画を中止したと述べている。
(3)本件商標に係る登録出願は、上記経緯中の2004年11月にラスベガスで開催された展示会ないし2005年1月8日に当該製品サンプルを我が国で販売することを許諾した時期である2004(平成16)年12月2日にされたものであり、その時点では、申立人は、3T社には契約によりアメリカ合衆国における独占販売権を付与し、口頭では商標権者の海外事業部長に我が国における独占販売権についても付与する予定である旨を述べていたとして、本件商標は、その登録出願時点では、その登録出願について、申立人の少なくとも黙示の許諾を得ていたものであり、「不正の目的」でされたものでないこと明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号により取り消されるいわれはない旨主張している。

4 当審の判断
(1)引用商標は、後掲の本件商標と同一といえるものであり、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る改造自動車及び改造用自動車部品について使用する商標として、少なくともヨーロッパ及び北米においてはこの種業界の取引者・需要者間に広く認識されていたものというべきであり、第三者はこれと同一の商標を申立人の承諾を得ることなく、その商標登録を受けることができるものではないというべきである。
(2)商標権者が、上記3(2)及び(3)で述べるところは、要するに申立人と同人の製品等に関し、アメリカ合衆国内における3T社及び我が国における商標権者との取引経緯によれば、本件商標は、その登録出願時点では、その登録出願について、申立人の少なくとも黙示の許諾を得ていたものであり「不正の目的」でされたものでないから、本件商標は商標法第4条第1項第19号により取り消されるものでない旨主張していると解される。
(3)しかしながら、商標権者と申立人とがした合意は、商標権者が我が国において3T社がアメリカ合衆国内で製造したサンプルを我が国で販売することを許諾したこということであって、それ以上のものではなく、これを越えて、申立人において,商標権者が本件商標の登録を受けることを容認していたことをうかがわせるものとはなり得ない。
したがって,本件商標の登録出願について、申立人の少なくとも黙示の許諾を得ていた旨の商標権者の主張は、採用することができない。その他、商標権者の主張を検討しても、申立人が、商標権者による本件商標の登録出願及びその登録を受けることについて同意していたことを認めることはできない。
(4)そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものであるとして、その登録を取り消すべきものとした上記2の取消理由は妥当なものであって、これに対する商標権者の意見は、商標権者が申立人の事業活動及び引用商標の存在を認めた上で、自己都合による事情及び本件商標の登録出願についての解釈を自己に有利なように述べたに止まるものというべきであって、商標法の目的に照らしみても社会的妥当性を欠くものであるから、その主張は採用できないものである。
(5)結局、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ないから、その登録は商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 本件商標



異議決定日 2006-09-01 
出願番号 商願2004-110242(T2004-110242) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (Y12)
最終処分 取消  
前審関与審査官 金子 尚人 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 中村 謙三
井岡 賢一
登録日 2005-08-12 
登録番号 商標登録第4886980号(T4886980) 
権利者 株式会社TANA-X
商標の称呼 キューエフエフ 
代理人 山本 尚 
代理人 小林 良平 
代理人 中山 千里 

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