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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200335303 審決 商標
取消200530508 審決 商標
無効200335302 審決 商標
取消200530509 審決 商標
無効2007890065 審決 商標

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審決分類 審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1146624 
審判番号 無効2003-35094 
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-03-13 
確定日 2006-11-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4470684号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4470684号の指定商品中、第9類「眼鏡,レコード,メトロノーム,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,家庭用テレビゲームおもちゃ」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標登録の無効の審判に係る、登録第4470684号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年6月20日に登録出願され、別掲に示すとおりの構成よりなり、第9類「眼鏡,レコード,メトロノーム,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,家庭用テレビゲームおもちゃ」及び第14類「時計,身飾品,宝玉及びその原石並びにその模造品,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製コンパクト」を指定商品として、平成13年4月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
本件登録無効審判請求人である「力ナダ国 プリンス エドワード アイランド州(以下「請求人」という。)」は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第82号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法3条1項柱書、同4条1項5号、同条同項7号、同条同項8号、同条同項委15号及び同条同項19号に違反して登録されたものであるから、同法46条に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
(1)請求の利益について
請求人は、1864年に、その地でカナダ国連邦政府が形成され、カナダ発祥の地と呼ばれる由緒あるプリンス・エドワード・アイランド州の州政府である。本件商標である、欧文字を書してなる「Anne of Green Gables」は、カナダ国ないし請求人の文化資産を構成するものである。よって、このような商標はカナダ国政府ないし請求人または請求人が構成員となっている第3セクターの許諾なしに、何人も本件商標を商標出願し、商標権を取得できない筈である。
請求人は、1994年5月26日、小説「Anne of Green Gables」を著したルーシー・モウド・モンゴメリの著作権権利継承者とともに第三セクターを形成することとし、プリンス・エドワード・アイランド州シャーロットタウン市及びオンタリオ州トロント市所在のアン オブ グリーン ゲーブルス ライセンシング オーソリティ インク(以下「AGGLA」という。)を設立した。
2001年7月3日、「AGGLA」が指定商品を第28類「おもちゃ、人形」とする、甲第53号証の商標登録願に示された、本件商標と同一態様である、欧文字を書してなる「Anne of Green Gables」を商標出願したところ、特許庁から2002年7月5日付で、本件商標が先願として存在するので登録できない旨の拒絶理由通知書(甲第54号証)を受領した。
しかしながら、そもそも、先願である本件商標は、その出願時に既にカナダ国ないし請求人の文化資産を構成し、国際信義則に反するので、カナダ国政府、請求人ないし「AGGLA」の許諾なしに何人も商標出願ないし、商標権を取得できないものであった。
因みに、上記拒絶理由通知書自体、拒絶の主な理由として、「この商標登録出願に係る商標は、カナダ国の小説家ルーシイ・モウド・モンゴメリ著作で、世界中の読者に親しまれている小説『赤毛のアン』の原題である『Anne of Green Gables』の文字を書してなるから、このようなものを出願人一企業が商標として採択し独占的に使用することは、需要者をして該故人と何等かの関係があるかの如き印象を与え、いたずらに混乱を生ぜしめる結果となるおそれがあるので、国際信義則を守り、社会公共の利益を図る見地から、穏当ではない。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法4条1項7号に該当する。」と判断している。よって、当該文化資産の帰属者として、請求人は、無効審判請求をするにつき十全の利害関係を有するものである。
(2)無効理由について
ア 商標法3条1項柱書について
被請求人は同一態様の商標を旧区分の指定商品につき、平成2年4月23日から商標登録第2224831号及び同第2227776号(以下、「旧商標」という)として所有していたことろ、平成11年12月28日に「AGGLA」に不使用取消審判を申し立てられた。被請求人は、「旧商標」を全く使用していなかったので弁駁する由もなかった。
そこで被請求人は、不使用取消審判を申立てられた日から、175日後である平成12年6月20日に至って弁駁することを放棄して、本件商標を出願した。当然「AGGLA」が公的性格を有する団体であり、不使用取消審判につき決着がつかない限り、同一態様の商標を同一指定商品につき出願してこないことを見越してのことであった。
「旧商標」は弁駁されないためそれぞれ平成13年4月26日及び平成13年3月21日に取り消された(甲第41号証及び同第42号証)が、本件登録出願は新規に登録されるに至った。当該事実に照らせば、被請求人は、商標法3条1項本文記載の「自己の業務に係わる商品について使用する」から導き出される要件である指定商品を取扱っておらず、徒に請求人を主な構成員とする「AGGLA」をわが国の市場から排除する目的を成就させる意思で登録を取得したものと言わざるを得ない。
同一態様の商標につき、平成2年4月23日に登録を得たにも拘らず、9年半も経過した平成11年12月28日に不使用取消審判を申し立てられ使用を立証できなかった事実に基づけば、本件商標も使用していないとの事実上の推定がなされるのではないかと思料される。よって被請求人が使用している旨の反証がない限り、使用する意思はないと判断せざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法3条1項柱書の要件を充足していないので、同法46条1項によりその登録を無効とすべきである。
イ 商標法4条1項5号について
カナダ国造幣局(ロイヤル カナディアン ミント)はカナダのイメージを描いた5枚組のコインの一つにキャラクターである赤毛のアンの肖像を配し、且つ「Anne of Green Gables」なる文字を刻印して、カナダ国内で流通せしめている。他方カナダ郵政省はキャラクターである赤毛のアンの肖像を配し、且つ「Anne of Green Gables」の文字と同英文字のフランス語態様である「Anne de Green Gables」(アン ドゥ グリーン ゲーブルと発音する)を登載して切手の図柄として採用して流通せしめている。この2事をもって、既に「Anne of Green Gables」がカナダ国の象徴ともいうべき標章と見なされるに至っていることは明白である(甲第17号証11、同第25号証、同第26号証および同第39号証)。
更に、1992年に本件商標はカナダ国商標法に基づきプリンス エドワード アイランド州の公的標章と確認されている(現在は、第三セクターである「AGGLA」に譲渡されている)(甲第17号証4.5.6.)。
このような公的標章は、カナダ政府からWIP0に対して然るべく公式通知をすれば商標法4条1項5号の記号として通産省の指定を受ける資格のある商標である。
このようなカナダ文化資産を形成し、且つ公的性格の付与された標章をいたずらに何ら関係を有しない一私企業に独占させることを是認することは国際信義の上で断じて許されるべきではない。(甲第17号証2.3.4.5.6及び13)。特許庁も1986年1月の時点において弁理士会に対し、「外国商標を客体とする商標登録出願の受任に際しては、出願の妥当性を判断し、指導されるようお願いしたい。」(甲第34号証)との要請していることも十全に斟酌されるべきである。
よって、本件商標は、商標法4条1項5号に該当する、ないしはこれに準ずるべきものであるから、同法46条1項によりその登録を無効とすべきである。
ウ 商標法4条1項8号について
本件商標は、他人の名称もしくは著名な略称を含むものであるから登録されるべきではない。同商標は、カナダ国の史跡であり、カナダ国政府当局の管理下にあるAnne of Green Gables Museum(グリーン・ゲイブルス博物館)(甲第14号証及び同第16号証)ないしは第三セクターである「AGGLA」の著名な略称から構成されている(甲第36号証で、「今や当社は『Anne of Green Gables』と認識されるに至っている」との陳述がある)。
商標権者はこの間の事情を熟知した上、請求人ないし「AGGLA」等の許諾を得ないで商標登録を得たものである。同博物館(本件商標出願前である1980年11月30日から存在する)(甲第66号証)は年間約数十万人の観覧者があり、日本人観光客も多数訪れている(甲第14号証p191及び同第17号証10.)。なお、本件商標権者は「AGGLA」をその設立時点でその存在を知るべき状況にあった。
被請求人が、本件商標を使用した場合、カナダ政府又は請求人管理下のAnne of Green Gables Museumないしは請求人より使用許諾を得ていると一般消費者に認識され商品の出所の混同を生じさせる可能性は極めて大である。本件商標権者は、赤毛のアン関連のライセンシーとして、過去いわば請求人の構成員であるモンゴメリの権利継承者を大家とし、自らを店子とするライセンス契約を締結した経緯があるだけに、許諾を得るべき先は、「AGGLA」ないし請求人であるべきことは十分に了解していた筈である。
また、プリンス エドワード アイランドグ州経済発展大臣ミカエル キュリー発、特許庁長官宛の平成13年10月18日付書簡にも「州政府はAnne of Green Gablesに関連した一切の商品につき高品質性を確保すべく重大な関心を払っています。」と述べる(と)共に「当該キャラクターの名称とその有する特徴は、長年に亘リプリンス エドワード アイランドグ州の手工芸品及び産品に用いられ、且つプリンス エドワード アイランド州の観光事業の目玉とされてきました」と述べて、「Anne of Green Gables」が品質保証機能の一翼を担っていることを明確に示している(甲第26号証)。
よって、これらの事実によれば本件商標は商標法4条1項8号に該当するものであるから同法46条1項によってその登録を無効とすべきものである。
エ 商標法4条1項15号について
書籍でシリーズ本の場合、タイトルないし登場人物名が商標的役割をはたしているところ、被請求人が本件商標を使用した場合、商品の出所について混同を生じる虞がある。まして、上述の如く世界での「Anne of Green Gables」の販売部数は5000万部にのほるので尚更である。(甲第45号証)。
また、「AGGLA」のトロントオフィスが1994年1月1日より2000年6月15日迄に受領したライセンス使用料は約9億8600万円のところ(甲第35号証)、そのロイヤリティーが例えば7.5%と仮定すればAnne of Green Gablesグッズの売上げは6年半弱で約134億円にのぼることになる。プリンス エドワード アイランド州政府は、州内の中小企業を振興する趣旨で高品質な産品が販売されるよう、信用しうる企業を選んで、別途80社近くの会社に対して商標のライセンスを供与している(この場合プリンス エドワード アイランド州政府は原則としてライセンス使用料を徴収していない)(甲第36号証)。このような状況下において、本件商標を付した指定商品が日本国内で出回った場合、消費者は、請求人及び「AGGLA」又は同人と経済的もしくは組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について広義の混同を生じるおそれが極めて高い。
昨今、日本において漫画等人気登場人物名が商品の販売促進に用いられる傾向がみられ、かような観点から、本件商標が付された指定商品が提供された場合、これらの商品が権利継承者ないし「AGGLA」とライセンス契約を締結した者がその商品化事業の一環として本件指定商品を提供するに至ったものと誤解を生ずる虞があり、その意味で、出所について混同を生ずる虞のある商標といえるものである。なお、「AGGLA」は、同一態様の商標を社団法人日本輸入団体連合会発行の2000年度、2001年度及び2002年度外国ブランド権利者名簿に本件商標と同一態様のブランド所有者として掲載されている。(甲第50号証ないし同第52号証)よって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものであるから同法46条1項によってその登録を無効とすべきものである。
オ 商標法4条1項7号及び同条同項19号について
前記した本件商標の特徴を考慮に入れ、且つ、請求人と小説「赤毛のアン」ないし著作者モンゴメリとの関係、被請求人の悪意に照らせば、本件商標が本登録出願前に既にカナダないし請求人の文化資産を構成していることは明白である。このことは前記で記載の特許庁のA判断(甲第40号証)、B判断」(甲第9号証)において「カナダの文化資産的性格」であると端的に認められており、C判断(甲第27号証)において、「赤毛のアン」の主人公がカナダ女性の誇る敬慕すべき女性像として、Anne of Green Gables及びその登場人物がカナダの文化そのものであることが認められている。よって、本件商標の登録はわが国の国際信義に反し、公序良俗違反として無効とされるべきである。因みに、公序良俗に関する認識は変化し「外国の有名商標、著名な外国人の名称を冒認出願登録する等のわが国民による国際信義に反する行為は、取りも直さず、わが国の公序良俗を害する行為となり、本号の規定に該当する」とする考え方が通常である(甲第38号証)。
本件の場合、Anne of Green Gablesは1943年にカナダ国政府によって歴史的に重要な人物に指定されたモンゴメリの自画像であるから、かかる名称を商標として登録することは正に国際信義に反する。よって、本件商標は商標法4条1項7号に該当するものであるから、同法46条1項によってその登録を無効とすべきものである。
最後に被請求人が「不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的その他の不正の目的」を有しているか否かについては、商標審査基準十七、4条1項19号5.によれば(甲第37号証)、「本号の適用に当たっては、イ及びロの要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとする。とし「(イ)一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。(ロ)その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであること。」と定めている。
本件商標は、カナダ国において登録標章として登録されているので「一以上の外国において周知」である。又、「AGGLA」は、プリンス エドワード アイランド州シャーロットタウンのP.E.I.プリザーブ社に生活用品につきライセンスを与え、同州シャーロットタウンのカナディアン ピュア ウオーター カンパニーにミネラル ウオーターにつきライセンスを与え、生活関連事業に関与している(甲第17号証5.)。「AGGLA」のトロントオフィスだけで1994年1月1日より2000年6月15日までの間に、「赤毛のアン」キャラクターにつき少なくとも12,017,949カナダドル(約9億8600万円)のライセンス使用料としての売上があった(甲第35号証)。このことは、その口イヤリティーが例えば7.5%と仮定すればAnne of Green Gablesグッズの売上げは6年半弱で約134億円にのぼることになる。
他方、プリンス エドワード アイランド州政府は、州内の中小企業を振興する趣旨で高品質な産品が販売されるよう、信用しうる企業を選んで、別途80社近くの会社に対して商標のライセンスを供与している。
なお、これらのライセンスを得たカナダの事業会社はカナダでの日本の旅行客への販売に止まらず、日本国内において「アン物語」のイメージを用いたアングッズの販売、即ちおもちゃ、人形、衣服用バッジ・衣服用バックル・衣服用ブローチ・装飾品等の販売を大々的に行おうとしている。「AGGLA」はこれに対応すべく、日本における未曾有な不況にも拘わらず、日本国内において大規模なライセンス事業の展開を着々と準備をしている。その一例として、「AGGLA」のAnne of Green Gablesのライセンシーであるカナダ国の建築業者はアトランティックカナダホームは、赤毛のアンの家のレプリカとも言えるもので約一億円の売上げをあげ、好評を博している(甲第23号証及び同第24号証)。
カナダ国の代表的企業も、本件商標が「カナダ文化資産の象徴なので、製造業者と卸業者がプリンス エドワード アイランド州政府及びルーシイ モウド モンゴメリの権利継承者による公的機関である「AGGLA」の特別な同意なしに何人も商標「Anne of Green Gables」を使用出来ないことは知らない筈はありません」と陳述している(甲第43、同第44号証及び同第24号証)。又、「Anne of Green Gables」という商標が使用主義を採用しているアメリカ合衆国、カナダ国、ドイツ共和国他主要国において、1909年頃から赤毛のアンの著作権者ないしはそのライセンシーにより物品又は役務の商標として広く使用され、既にこれらの国々で著名になっている(甲第28号ないし同第30号証)。これらの事情を総合すれば「一以上の外国において周知」であることは明らかである。
次に、本件商標は構成上顕著な特徴を有するか否かの点については、架空人名辞典によれば「アン」を引くだけで「カナダ東部のプリンス・エドワード島、アボンリーの村のグリーン・ゲイブルズに住むクスバート兄弟のもとへ引き取られてきた孤児」と出る程であり(甲第6号証)、1999年7月の時点で「Anne of Green Gables」は世界中で5000万部売れたのであるから、そのずば抜けた顧客吸収力は全く例をみない。
即ち、他と混同を生じる余地のない程構成上顕著な特徴を有するものである。いずれにしても又商標審査基準十七、4条1項19号5.によれば、「一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するもの」に該当するので他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認されることは疑いの余地がない。
したがって、上記の審査基準を充足し、不正の目的があると推認される。
よって、本件商標は、商標法4条1項19号に該当するものであるから同法46条1項により、その登録を無効とすべきである。
(3)弁駁の理由
ア 請求人は、平成15年6月13日付の審判事件答弁書(以下、「答弁書」という)の送達を受けたので、以下の通り弁駁するものである。
被請求人は、「答弁書」において主に、以下の主張を展開している。
(ア)日本において、本件商標が被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博した結果、同映画の標章として周知・著名化したものである。
(イ)審判官は、我が国において数回に亘り放映された「赤毛のアン」が、日本人にいかに「良い影響」を与えたかを配慮すべきである。
(ウ)本家・本元から発生した商標を正式な契約の下に複数の主体に使用させた結果、各主体が、それぞれの分野で実績を挙げ、商標が原作者の思惑を超えて著名化された現在、その複数の主体が各自の権利を自己のものとして主張しあっている。
(エ)著名な原作「赤毛のアン」という日本語翻訳タイトルを商標として、登録された事例を歴史的、かつ、客観的に考察すべきである。
そこで、これらの各点につき以下、反論する。
(ア)について
被請求人は、請求人が主張する小説「赤毛のアン」が5000万部売れた事実を認めておきながら(「答弁書」7頁)、我が国において、被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画が爆発的人気を博した結果、第9類の指定商品に係わる本件商標が著名化したと述べている。他方において、第9類の指定商品、眼鏡、家庭用テレビゲームおもちゃ等に関し、被請求人が本件商標を使用して周知・著名化した旨の主張はない。
被請求人としては、第9類の指定商品、眼鏡、家庭用テレビゲームおもちゃ等に関して、被請求人が本件商標を使用した結果、著名化したと主張したいところであるが、本件商標を使用した事実が全くないため、止むを得ず、本件商標登録が認められた第9類の指定商品と一切関連を有さない、使用許諾を受けた著作権の対象たる映画を被請求人が、我が国において製作、宣伝、放映した結果、同映画のタイトルである「Anne of Green Gables」なる名称を著名にしたと主張しているものと解される。
本件商標が、被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博した結果、本件商標が周知・著名化したとするのが、被請求人の主張の骨子であるから、被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博したとの主張が事実に反していれば、被請求人の立論はすべて言いがかりであることが明白になる。
請求人は、放映された映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博したか否かについて映画ジャーナリストの斉藤守彦氏に対し、レポートの作成を依頼したところ、以下の事項が明らかになった(甲第73号証)。
(a)映画は原作の知名度を利用する形で宣伝費もさほどかけずに済んだ等の理由もあり、不成功ではなかったが、「爆発的人気」は事実に反する。
(b)「インディ・ジョーンズ」や「ドラえもん」に比べて約8分の1の売り上げしか与えていない。
(c)映画はテレビ番組を焼直したものであり、その上映された場所は主に上映系列では5番目に過ぎない東劇系に過ぎず、上映期間はそれぞれ短期間(東京地区基準で「赤毛のアン」4週間(乙第4号証でも同期間限定であることが明示されている)、「アンの青春」8週間、「アンの結婚」7週間、完全版2作品は各3週間)に止まった。もともと、「赤毛のアン」はたまたま空いていた劇場チェーンの穴埋め番組に過ぎなかった。
斉藤守彦氏は、上記しポートを作成するに当って、キネマ旬報1990年、1991年、1995年、1999年各年の2月下旬号、2004年映画年鑑を資料として使用しているところ、これらの資料はいずれも当該レポートの内容と符号する(甲74号証ないし同第78号証)。
また、以下の各理由により、放映された映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博した事実はありようがない。
(a)SF MOVIE Data Bankのホームページは、社団法人日本映画製作者連盟の発表資料をもとに集計したものとして、1980年から2003年までの日本国内興業収益ランキング109のリストを公表しているが、同リストの中に被請求人の製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」は登載されていない(甲第79号証)。
(b)被請求人は、映画の周知・著名性の証拠方法として、主に映画のパンフレット、宣伝広告(乙第3号証、同第4号証及び同第6号証ないし同第8号証)を挙げているが、いずれも被請求人作成の宣伝材料に過ぎず、客観的な証拠価値はない。
(c)唯一の客観的資料として1989年8月3日の朝日新聞の芸能欄(乙第5号証)があるが、新聞等で一般的に「赤毛のアン」が引用されるときは、疑いなく小説「赤毛のアン」であり、断じて映画「赤毛のアン」ではない(甲第80号証)。
上記の事実を総合すれば、放映された映画「赤毛のアン」が爆発的人気を博した事実は認められない。
そうとすれば、かような主張が全く根拠がないとすれば、その余の被請求人の主張もすべて信用性がないと判断せざるをえない。
(イ)について
被請求人は、審判官が被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」が我が国において、日本人にいかに「良い影響」を与えたことを配慮すべきと主張する。
日本において、被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」は、実はテレビ番組を焼直したものであり、その上映された場所は主にマイナーな東劇系に過ぎず、上映期間はそれぞれ短期間に止まった。もともと、「赤毛のアン」はたまたま空いていた劇場チェーンの穴埋め番組に過ぎなかったのである。これでは、とても日本人全体に「良い影響」を与えたとはいえない。
(ウ)について
被請求人は、(a)ルーシイ・モウド・モンゴメリの権利継承者が本家・本元であること、(b)本件商標がこれらの権利継承者から発生したこと、(c)権利継承者が、本件商標を正式な契約の下に被請求人に使用させたこと、(d)その結果、被請求人が、映画の分野で実績を挙げ、本件商標が著名となったことを主張しているものと思われる。
(a)および(b)については、いずれも認める。(c)については、映画およびテレビシリーズに関する著作権の使用許諾をしたことは、認めるが、商標権につき、商標出願権および使用権を付与した事実はない。
加えて、被請求人は、「映画とテレビ番組等の製作、脚本、放映等の著作権に関する正式な契約に基づく商標出願」等と主張するが、その契約中に定められている、映画に関して被請求人が永久に総収益の10%を支払うこと(甲第49号証)について、被請求人は映画の収益が上がらないと主張し、全く支払っていないことが、カナダで被請求人とモンゴメリの権利継承者間の2004年1月19日付判決(甲第82号証)で事実認定されている。請求人が商標出願権があると強弁する根拠となっている「正式な契約」についてさえ、被請求人は同契約の基幹を構成する本質的な支払義務さえ果たしておらず、同判決において「サリヴァンはマクドナルドファミリーとの合意書を遵守していない。」と事実認定されている。
(d)については、上記において主張した如く、被請求人が、本件商標を著名化した事実はない。被請求人の主張は、店子が本家を乗っ取ろうとしている口実に過ぎず、認められるべきではない。
(エ)について
被請求人は、著名な原作「赤毛のアン」という日本語翻訳タイトルを商標として、登録された事例が31件あり、そのうち「AGGLA」およびプリンス・エドワード・デベロップメント・エージェンシー以外の組織が24件もあると指摘している。他に剽窃者があるのに、なぜ本件商標だけ無効審判の対象になるのかという疑問である。
請求人は、甲第72号証に示す如く、特許庁長官に対し、すべての剽窃者による商標登録の防喝を要請しており、そのためには、日本において日本企業の剽窃を取り締まると共に、被請求人のような外国企業の剽窃も取り締まりを求める必要がある。なお、請求人は今後も継続して、本件同様の無効審判を申し立てる準備がある。
イ 「答弁書」7.(はじめに)の項について
(ア)被請求人が商標出願権を付与されたこと
甲第31号証により、被請求人は商標権の登録および使用を禁止されており、商標出願権はない。
(イ)請求人の悪意
被請求人は、請求人の意図こそ寧ろ、日本において、被請求人が製作し、宣伝し、放映した映画「赤毛のアン」として爆発的人気をもたらした実績、実効に「ただ乗り」せんとする行為であり、公平かつ客観的にみれば、まさに公序良俗に反するものとさえ考えられると論じている。根拠もなく、爆発的人気といい、且つルーシイ・モウド・モンゴメリの権利継承者を本家・本元と認めておきながら、その本家・本元に対して、「ただ乗り」と泥棒扱いすることは、許し難いことである。
ウ (6つの無効原因に対する反論)の項について
(ア)商標法4条1項7号及び19号の非該当性について
被請求人の反論は以下の通りである。
(a)1986年の被請求人(B)と遺産相続人(A)との間で被請求人が対価を払って正式に締結された契約に基づく出願、登録から判断して公序良俗に反しない。又被請求人の本件商標の著名化への功績から公平に判断して、公序良俗に反しないと反論する。
しかし、1986年の契約は前記の如く、映画とテレビに関する著作権使用許諾契約であり、法律的にいって同契約から本件商標についての出願ないし登録権を引き出すことは無理である。
加えて、これらの契約締結後に1987年7月28日にルーシイ・モウド・モンゴメリの権利継承者の代理人マリアン・ディングマン・ヘブ弁護士と被請求人の責任者トルデイ・グラントとの間で締結された商品化事業に関する合意(甲第31号証)において、被請求人が、商標権に関し「書面により特段の合意をしない限り、上記マクドナルド等のみがこれらの権利に関する全ての登録をなしうる権限を有します。」と誓約していることに反する。
被請求人は、「1984年2月17日に成立した原作者の遺産相続人(A)と被相続人(B)との間で正式に締結された契約の効力は、その後の1987年7月28日の遺産相続人(A)と「AGGLA」の-構成員(C)との契約とは無関係に効力を発揮しているものである。」と主張しているが(「答弁書」12頁)、「1987年7月28日の遺産相続人(A)と「AGGLA」の一構成員(C)との契約」とは何を意味するのか明らかにされたい。
また、被請求人は、契約法の大原則に照らして見ても、請求人の主張は法的根拠がない誤った主張と反論しているが、契約法の大原則とはいかなる事柄を指称するのか、明らかにされたい。
(b)登録された商標が使用されたかどうかは、公序良俗違反とは無関係と反論する。
被請求人は、請求人にいかなる主張の反論をされているのか定かでないので、その点を明らかにされたい。
被請求人は、請求人に有利な特許庁の唯一の判断(以下「D判断」という)(乙第12号証)を引用して、7号及び19号に反しないと断じている。
しかし、同判断と矛盾する庁の「A判断」(甲第40号証)「B判断」(甲第9号証)および「C判断」(甲第27号証)に対する反論は一切ない。
特に「A判断」は「主人公である『アン』の活躍の舞台であったカナダ国のプリンス・エドワード島(PRINCE EDWARD ISLAND)には『グリーンゲイブルズ博物館(Anne of Green Gables Museum)』が設立されプリンス・エドワードアイランド州等が、その著作及び舞台となった『GREEN GABLES』の保護を図るなど、これらは、カナダ文化資産的性格を有するに至っている。してみれば、本件商標を我が国において出願し、権利を取得しようとする行為は国際信義に反するものというべきであり、かつ、その行為には不正の目的があるものといわざるを得ない」と判断を下し、請求人の本件申し立ての趣旨と軌を一にするものである。
請求人は、「D判断」は、単に伝統的な公序良俗違反事由によったもので、商標審査基準として、その後に公序良俗違反事由に追加された「他の法律によって、その使用が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標は、本号の規定に該当するものとする。」という新基準について判断を脱漏したに過ぎない。同新基準に従えば、「B判断」と同一になると確信する。
よって、本件商標は商標法4条1項7号及び19号に該当するものであるから、同法46条1項によりその登録を無効とすべきである。
(イ)商標法3条1項柱書の非該当性について
排除する意図でない根拠として、「現在、日本に限らず世界中が厳しい経済状況下にあるなか、使わない商標を取得するなどあり得ない」という一般論を展開するのみで、具体的に使用している旨の主張はない。被請求人は映画製作会社であり、「Anne of Green Gables」印を付して、第9類指定商品である眼鏡、浮袋、エアタンク等を製造、販売する意思がないものと事実上推定される。
よって、本件商標は商標法3条柱書に該当するものであるから、同法46条1項により、その登録を無効とすべきである。
(ウ)商標法4条1項5号の非該当性について
被請求人は、「正当理由がないにも拘わらず公的標章と決め付けた」と非難する。カナダ国商標法9条は、「何人も、業を行うにつき、商標その他として、以下を含み又は以下と容易に混同しうべき程度に類似している商標を使用してはならない」とし、「カナダ国の公権力により、商品又は役務につき公的標章に採用され又は使用されるもの」が禁止商標と定められている(甲第81号証)。
本件商標は、カナダ国法に基づき、公的商標と指定されている(甲第17号証)。従って、「正当理由がないにも拘わらず公的標章と決め付けた」との主張は根拠がない。
次に、甲第34号証は、外国著名商標につき、日本企業がフリーライド等による国際信用の失墜防止のためにとられたものであると決め付けて、外国法人である被請求人は対象となっていないと反論している。
しかし、甲第34号証は日本において外国著名商標のフリーライド等が横行するのを防止し、国際信用を高める目的であり、日本において外国企業がフリーライドすることを目をつむってよいと定めてはいない。然りとすれば目的を達せないばかりか、国内企業と外国企業に差等をつけるもので許されるものではない。被請求人のかような主張は奇異というしかない。
よって、本件商標は商標法4条1項5号に該当ないし準ずるべきものであるから、同法46条1項によりその登録を無効とすべきである。
(エ)商標法4条1項8号の非該当性について
被請求人は、「乙第1号証によれば、日本で放映された『赤毛のアン』の原題である『Anne of Green Gables』なる標章こそは、被請求人が製作、宣伝、上映した結果、一躍著名性を獲得したものである事実が客観的に明らかになる」と主張する。
上記において説明したごとく、「爆発的人気」を博して、一躍著名性を獲得した事実はない。また、被請求人は品質保証機能の一翼を担っているとの請求人の主張は、8号とは関係ないと反論している。
然し、大判大13.12.19・大13(オ)793・民集3巻531頁等は8号の立法趣旨が商品の混同による不正競争を防止しようとするものであるとの立場から判断をくだしており、8号とは関係がないとの指摘は正当ではない。
最後に被請求人は、「AGGLA」が1994年に設立されたことをもって、本号の該当性がないと主張している。
本件商標は、優に本件商標の出願前に存在する、カナダ国の史跡であり、カナダ国政府当局の管理下にあるAnne of Green Gables(グリーン・ゲイブルス博物館)ないし Green Gables National Park(グリーン・ゲイブルス/プリンス エドワード アイランド国立公園)の著名な略称からも構成されているのである。
よって、本件商標は商標法4条1項8号に該当するものであるから、同法46条1項により、その登録を無効とすべきである。
(オ)商標法4条1項15号の非該当性について
「Anne of Green Gables」なるシリーズ本が世界中で5000万部売れたことは争いがない。然りとすれば、本件登録商標を付した指定商品が日本国中で出回った場合、消費者は、請求人及び「AGGLA」又はこれらと経済的もしくは組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について広義の混同を生じる蓋然性が高いと主張することは理由のあることである。
よって、本件商標は商標法4条1項15号に該当するものであるから、同法46条1項により、その登録を無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第13号証(枝番を含む)を提出した。
【答弁の理由】
1 請求人は、審判請求書において、本件商標は、商標法3条1項柱書、同4条1項5号、同条同項7号、同条同項8号、同条同項15号並びに同条同項19号に各該当する旨主張する。しかし、以下の答弁理由に明らかな通り、請求人の主張は全く根拠のないものである。
本件商標は、現在、日本では「赤毛のアン」の原題を意味する商標として親しまれている。これは請求人によって提出された甲第20号(商願2000-68585に関し、被請求人が特許庁へ提出した意見書)にその詳細が説明されている通りであって、そもそも被請求人が存在し、本件商標に関し被請求人による「映画」というメディアによって、日本人に甚大な影響を与えたからこそ「本件商標」が全ての点で周知・著名化されて来たものである。
尚、請求人提出の上記甲第20号証は、意見書本文のみであり、証拠がついていない。そこで、その実体をより正確、かつ、客観化するために、被請求人は、甲第20号証を完全な形に復元したものを「乙第1号証ないし同第10号証としてここに提出する。(尚、請求人主張の、小説「Anne of Green Gables」が1999年7月1日当時、世界中で5,000万部売れた、という事実は、映画を鑑賞した観客もそれに劣らず5,000万人或いはそれ以上いたということにリンクさせて考えることも十分できるものである。)
これに対し、「請求人は、1994年5月26日、小説『Anne of Green Gables』を著したルーシー モウド モンゴメリの著作権権利継承者とともに第三セクターを形成することとし、プリンス エドワードアイランド州シヤーロツトタウン市及びオンタリオ州トロント市所在の『AGGLA』を設立した。」と主張しているように、被請求人が、「赤毛のアン」の遺産相続人と契約した1986年7月31日(昭和61年)から、実に8年もの後に設立した「AGGLA」を実質的な主体としつつ、公法人名義で本件審判を請求している。
このように、「AGGLA」と請求人とは互いに共通する利害関係を根拠として、「そもそも、先願である本登録商標は、その出願時に既にカナダ国ないし請求人の文化資産を構成し、国際信義則に反するので、カナダ国政府、請求人ないし『AGGLA』の許諾なしに何人も商標出願ないし、商標権を取得できないものであった。」と主張している。
しかし、上記請求人の主張は、日本において、被請求人が製作し、宣伝し、放映した世界的に秀でた映画「赤毛のアン」として爆発的人気をもたらした実績、実効に「ただ乗り」せんとする行為であり、公平かつ客観的に見れば、正に請求人の意図こそ、商標法4条1項7号に該当するものとさえ考えられるものである。
従って、本件商標は、以下に被請求人が答弁するように、請求人主張の6つの登録無効理由のいずれも該当しないものであることは明白であり、審判官においては、我が国において数回に亘り放映された「赤毛のアン」が、日本人にいかに「良き影響」を与えたものであるかの諸事実を十分に配慮の上で公正かつ客観的な判断をされよう切望する。
尚、請求人主張の第3頁ないし第11頁の「3)無効理由について(1),(2),(3),(4)」において、請求人は種々の事実と主張とを重ねているが、これらの主張は、無効理由と直接関係のない事実か、或いは関連性が非常に不明瞭である。従って、被請求人は、これらの主張に対しいちいち反論せず、以下、6つの無効理由について、それぞれ反論する。
2 商標法3条1項柱書の非該当性
3条1項柱書は、使用の意思が大前提であり、被請求人は、請求人の主張、「徒に請求人を主な構成員とする『AGGLA』をわが国の市場から排除する目的を成就させる意思で登録を取得したものと言わざるを得ない。」の如き意図で出願したものではない。現在、日本に限らず世界中が厳しい経済状況下にあるなか、使わない商標を取得することなどあり得ないことである。従って、本件商標が3条1項柱書に該当しないことは明らかである。
3 商標法4条1項5号の非該当性
請求人は、本件商標につき、正当理由がないにも拘らず公的標章と決めつけた上で、「このような公的標章は、カナダ政府からWIPOに対して然るべく公式通知をすれば商標法4条1項5号の記号として通産省の指定を受ける資格のある商標である。このようなカナダ文化資産を形成し、且つ公的性格の付与された標章をいたずらに何ら関係を有しない一私企業に独占させることを是認することは国際信義の上で断じて許されるべきではない。」と主張する。
もし、5号に該当すると主張するなら、適正な手続を経て、商標法上の地位、即ち、法的要件を具備した上で主張し、立証すべきである。又、甲第34号証は、外国著名商標につき、日本企業がフリーライドし、ダイリューション,ポリューション発生による国際信用の失墜防止のためにとられたものであり、中曽根首相時代の国家アクションプログラムの1つとして特許庁,弁理士会を通して周知徹底させたものである。
従って、日本企業ではない被請求人所有の本件商標と、カナダ法人の被請求人との関係には、上記の事実は該当しない事例であり、請求人の主張は的はずれもはなはだしいものである。よって、5号の主張は誤りである。
4 商標法4条1項7号の非該当性
請求人は、無効理由7号につき、第13頁の記載通り、7号と19号とを「及び」でくくってひとまとめにし、そこで種々主張している。
しかしながら、商標法の各条項は、それぞれ各立法精神,立法趣旨(主旨)に則って定められているものであり、関連性があるからといって、「いっしよくた」に論ずべき性質のものではない。
この点から鑑みても、請求人の無効理由に対する姿勢を伺うことができるが、少なくともきちんと条文の的を絞り、必要、かつ、十分な証拠と共に無効審判請求をすべきものと考える。
但し、被請求人は、7号に対しては、請求人の立場を尊重し、19号と共に、答弁することとする。
5 商標法4条1項8号の非該当性
請求人は、本件商標は、「カナダ国の史跡であり、カナダ国政府当局の管理下にあるAnne of Green Gables Museum(グリーン・ゲイブルス博物館)(甲第14号証及び同第16号証)ないしは第三セクターである『AGGLA』の著名な略称から構成されている(甲第36号証で、今や当社は「 Anne of Green Gables」と認識されるに至っているとの陳述がある)。本件商標権者はこの間の事情を熟知した上、請求人ないし『AGGLA』等の許諾を得ないで商標登録を得たものである。」と主張する。
しかし、被請求人は、甲第20号証にも明らかな通り、原作者の遺産相続人との間で、正式な契約に基づき展開させた「映画化」という大事業の功績者であり、被請求人の正式な契約から実に8年もの後に設立された「AGGLA」によって、本件商標が支配されるべきではない。
それどころか、被請求人が提出する乙第1号証によれば、日本で上映,放映された「赤毛のアン」の原題である「Anne of Green Gables」のこの標章(マーク)こそは、被請求人が製作,宣伝,上映した結果、一躍著名性を獲得したものであるという事実が客観的に明らかになるはずである。
従って、事後的に成立した団体によって8号を論ずるのは筋ちがいであり、法的な根拠を欠くものである。従って、本件商標は8号にも該当しないことは明白である。
請求人は、8号に関し、「また、プリンス エドワード アイランド州経済発展大臣ミカエル キュリー発、特許庁長官宛の平成13年10月18日付書簡にも『州政府はAnne of Green Gablesに関連した一切の商品につき高品質性を確保すべく重大な関心を払っています。』」とし、請求人が本件商標と同一商品の品質保証機能の一翼を担っている旨主張するが、これらの主張と8号とは直接関係のない主張である。
要は、「本家・本元から発生した商標を正式な契約の下に複数の主体に使用させた結果、各主体が、それぞれの分野で実績を挙げ、商標が原作者の思惑を超えて著名化された現在、その複数の主体が各自の権利を自己のものにしようと主張し合っている」というのが現状であろう。
このような場合、契約の効力が及ぶか、或いは及ばないかは、原作者、その遺産相続人らと、契約を行った各主体との当初契約に遡って、客観的に判断されるべきである。少なくとも、本件商標に対し、8号に該当するとする請求人の主張は法的な根拠を失するものである。
即ち、1984年2月17日に成立した原作者の遺産相続人(A)と被請求人(B)との間で正式に締結された契約の効力は、その後の1987年7月28日の遺産相続人(A)と「AGGLA」の一構成員(C)との契約とは無関係に効力を発揮しているものである。ましてや、その「AGGLA」は、請求人の主張によれば、1994年5月26日設立と云うのであるから、上記(A),(B)間の契約に影響を及ぼすものではない。
従って、契約法の大原則に照らして見ても、請求人の主張は法的な根拠のない誤った主張である。
6 商標法4条1項15号の非該当性
15号は、著名商標主とこれと関連性のない第三者との間に生じる特定商標と非類似商品間,役務間の商標との混同防止規定である。
被請求人は、日本での「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)を上映するに先立って、カナダ、アメリカで上映或いはテレビ放映し、それが大ヒットしたという実績を有する権利主体である。
その大成功を挙げたという事実をベースとして日本進出を図った結果、日本上映の「赤毛のアン」も爆発的なヒットをしたため、「続赤毛のアン」(アンの青春)更には「総集編」へと展開し、現在に至っている。
一方、請求人は、このような被請求人の少なくとも、カナダ、アメリカ、日本における映画「赤毛のアン」の原題と被請求人採択のその字体「Anne of Green Gables」の存在を全く無視して、「書籍でシリーズ本の場合、タイトルないし登場人物名が商標的役割をはたしているところ、被請求人が本件登録商標を使用した場合、商品の出所について混同を生じる虞がある。」、「このような状況下において、本件商標を付した指定商品が日本国内で出回った場合、消費者は、請求人及び『AGGLA』又は同人と経済的もしくは組織的に何らかの関係ある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について広義の混同を生じるおそれが極めて高い。」などと主張する。
しかし、この主張は、被請求人が主張し、かつ、提出する乙各号証の存在から公平に観察して、出所混同を生ずるおそれなど全くない誤った主張である、と云わざるを得ない。よって、請求人の主張にはそれを裏付ける証拠もなく明らかに誤りである。
7 商標法4条1項7号及び19号の非該当性
請求人は本件商標に対し、「因みに、公序良俗に関する認識は変化し『外国の有名商標、著名な外国人の名称を冒認出願登録する等のわが国民による国際信義に反する行為は、取りも直さず、わが国の公序良俗を害する行為となり、本号の規定に該当する』とする考え方が通常である」とか、「被請求人は『赤毛のアン』ないしは『Anne of Green Gables』のとりわけ女性における図抜けた顧客吸収力に着目し、『赤毛のアン』物語の良いイメージを正当な理由なくフリーライドすることを企て、『赤毛のアン』の原題である『Anne of Green Gables』が『AGGLA』ないしそのライセンシーがその当時日本において出願していないことを奇貨として『旧商標』登録を得た。」或いは、「かように、本件商標出願日より遥か前の時点において『Anne of Green Gables』が日本において知らぬ人とてない『赤毛のアン』の原題であることを熟知しつつ、『Anne of Green Gables』なる称呼の日本における桁はずれの著名性、顧客吸引力に刮目し、請求人及び『AGGLA』が『Anne of Green Gables』なる称呼を用いて『アン物語』の良いイメージを用いて本指定商品につきライセンス等事業に今後更に拡大する可能性が高いことを見越して、権利承継者又は請求人及び『AGGLA』に無断で本件商標を出願したもので、被請求人は、不正競争的悪意の出願人であり、」などと主張する。
しかし、このような主張は、前記のように1986年(昭和61年)の被請求人(B)と遺産相続人(A)との間で被請求人が対価を払って正式に締結された契約に基く出願・登録時から判断し、又、被請求人の本件商標の著名化への功績から公平に判断して、明らかに誤りである。
よって、本件商標が4条1項7号の規定に該当しないことは勿論のこと、19号の規定にも該当しないことは明白である。
8 第二・第三答弁
(1)請求人の平成15年7月18日付の上申書に対する答弁
請求人は、平成15年7月18日付の上申書により、甲第35号証の2他5件の証拠を追加して商標「Anne of Green Gables」が、当然のように請求人に帰属すべきものと主張している。
被請求人は、先の答弁書において、請求人の主張の前提自体が、原著作権者の遺産相続人との間で、正式に締結された契約書(乙第2号証の1及び同第2号証の2)の存在の現実を全く無視した主張である旨を答弁した。
しかし、それにも拘らず請求人は、後から成立した事実を既成事実として、被請求人の出願及びその登録に対し、「不公正な行為であり、かつビジネス慣行に反するもの」と主張する。
そもそも、本件商標が現在問題となるきっかけは、被請求人が存在し、本件商標に関し被請求人による「映画」というメディアによって、日本人にすばらしく良好な影響を与えた事実が存在していたのである。そうであるからこそ「本件商標」が全ての点で周知・著名化されて来ているのである。
請求人は、このような諸事実の存在を全く無視し、被請求人が、「赤毛のアン」の遺産相続人と契約した1986年7月31日(昭和61年)から、実に8年もの後に設立した「AGGLA」を実質的な主体としつつ、公法人名義で本件審判を請求している。
被請求人側から見れば、請求人の主張は、正に日本において、被請求人が製作し、宣伝し、放映した世界的に秀でた映画「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)として爆発的人気をもたらした実績、実効に「ただ乗り」せんとする行為であると云える。被請求人提出の乙各号証に照らして、公平かつ客観的に見れば、正に請求人のこのような意図こそ、商標法7条1項7号で云う公序良俗に反する行為とさえ云える。
(2)請求人の平成15年9月9日付の上申書に対する答弁
ア この上申書も、極めて一方的な既成事実を前提とする主張である。即ち、乙第1号証及び同第2号証で示す契約に基づき、ケヴィン・サリヴァン氏が買取った著作権は、同氏が遺産相続人との契約に基づき相当な対価を支払って獲得した権利である。この権利は「ベルヌ条約」および「万国著作権条約」に基づき定められた著作権によって保護されるべき権利である。従って、本件商標の採択行為には、不正の意図など全くない。
我が国における「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)映画により、その人気は、既に小説で有名になっていたものに拍車をかけ、極めて良い結果を導いたものと考えられる。即ち、甲第6号証の第2ページに明らかな通り、カナダ国、米国における数々の受賞に基づき、我が国の文部省は「文部省特選」に選定した。その上で日本各地で上映された結果、「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)の人気は一層高まったものである。このようにケヴィン・サリヴァン氏及び彼のプロダクション会社が我が国における「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)の人気に寄与したからこそ、いわゆる「Anneグッズ」が請求人主張のような高収益をあげる人気を呼んだものと云っても過言ではない。
このような諸事実からだけでも、本願に対し商標法4条1項7号が適用されることは考えられない。
イ 更に、プリンス・エドワード・アイランド州と本件との関係につき、被請求人は、次のように考える。即ち、プリンス・エドワード・アイランド州が例え公法人であっても、商標法で定めている国々または公法人に対する保護範囲を超えて迄、保護することは違法になるものと考える。
即ち、本出願人らは前記のように、原作者の遺産相続人から特定範囲の事項に関し、相当な対価を支払って著作権を獲得し、この権利に基づいて映画、テレビ番組等の視覚映像分野を世界的に進展させた功労者である。
このことは、本出願人らが原作者に次いで、上記公法人よりも10年近くも先に、著作権に基づく映画・テレビシリーズ等の事業展開を行ったという事実に基づくことである。従って、本出願に対し、甲第10号証で示す「刊行物等提出書」による提出者「AGGLA」が、本願に対して主張する「Anne of Green Gablesに只乗りする」とか、あるいは「顧客吸引力を副窃する」というような主張は全くの見当違いである。
ウ 本願に対する刊行物等提出書によると、提出者は、本出願人よりもずっと後になって設立された法人である。請求人は被請求人による映画「赤毛のアン」(Anne of Green Gables)の上映に対し、カナダ国、米国を含む多くの受賞等を含めためざましい事実展開の素晴らしさに目をつけて設立された向きがある。その上で、被請求人らによる商業化の活動を色々と規制するために、前記の刊行物等提出書を提出したものと推測される。
いずれにしても本件商標は法律上の正当な手続に則って出願されたものであり、例え公法人といえども、このような私権に関する商標権に対して、私法で定められた権利・利益を当然に排除することは許されないと考える。
エ 商標権者の前身会社である、ハンチンウッド・フィルム・リミテッドのケヴィン・サリヴァン社長は、「『2月16日』の契約書については、『確かにサインはしたが、契約書の内容に関し、契約成立の前提となるアドバンス・マネーを支払う迄は、最終的合意が成立しないものと考えた。』即ち、サリヴァンは、『2月16日の契約書中には、合意をすることができない数々の条項が含まれている。』と判断した。そこで、代理人を通しての両者による再度の合議の結果、翌日の『2月17日の合意書』として両当事者がサインし、『2月17日の契約書』として成立したものが、本件に関し商標権者が乙第1号証の1(及び2)として提出した契約書である。』旨を主張している。
たしかに、誰が考えても、一日違いで、多くの共通する合意を含む契約を二重に行うということは、客観的に見て極めて不自然であり、大変おかしなことと考えられる。ここに商標権者は、上記「2月16日」付の契約書を乙第13号証として提出致する。
従って、商標権者は、あく迄も商標権者提出の乙第1号証の1の契約書〔「1984年(昭和59年)2月17日の契約書」〕こそが、両当事者の正規な契約書である旨、主張する。
そして、2月17日付契約書の第7項相当箇所には、「(7)もし、貴方とマクドナルド家が、貴方の映画から描かれたイメージ、及びその映画上映により調整されたイメージに直接基づく商品化権利をライセンスすることに合意した時は、まず始めに使用許可による25,000ドルがマクドナルド家に支払われ、次にその後の収入は全て均等に、貴方とマクドナルド家で分配されるものとする。」と定められている(乙第1号証の2)。このように、両者間には、商品化権につき、十分な合意が成立していたことは明らかである。
反対に、請求人が、甲第31号証として提出した「1987年7月28日付の契約書」の文中の第2フレーズ中の「(1984年)2月16日付書簡形式の合意書」については、商標権者は、遺産相続人と商標権者との間に交わされた正規の契約書ではない旨を主張する。
従って、商標権者は、正規契約に基づかない契約を前提とした審判請求人の主張及び提出の甲第31号証は、何等の拘束力もないものと考える。加えて、審判請求人がこれを前提として商標法4条1項7号及び同19号を主張するのは、あまりにも不当な主張である。
オ 商標権者は、請求人が提出した甲第49号証〔1984年(昭和59年)2月16日付の契約書〕は、商標権者提出の乙第13号証と対比すると、請求人側にどのような事情や理由があって、そのようにしたのかについては全く不明であるが、契約金等の部分が全て削除され、空白になっている。商標権者はこの事実を指摘し、かつ、その写しをここに提出する。
但し、その翻訳には、契約金の全額が明記されており、その意味では、上記の甲第49号証は不正確かつ矛盾する翻訳であり、極めておかしい契約書と云わざるを得ない。
商標権者は、審判請求人提出の1987年7月28日付書簡形式の契約書(甲第31号証)に関しては、前述の理由に基づき、「(1987年)2月16日付の契約書」は、「同年2月17日付の契約書」に代えられるべきであると重ねて主張する。
9 まとめ
以上を総合すると、本件商標は、請求人主張の6つの無効理由のいずれにも該当しないものである。よって、被請求人は、「答弁の趣旨」に求めた通りの審決を求めるものである。
尚、本件無効審判請求事件の前段階で、請求人との関係で実質的な主体を構成している「AGGLA」は、本件と同じ理由を根拠として、登録異議を申立てたが、平成14年8月6日付別紙の「異議の決定」(乙第12号証)の通り、「維持決定」が為された。
特許庁審判部の合議体によって示された各無効理由に対する判断は、極めて法律的であって、矛盾がなく、必要かつ十分な判断を示しており、被請求人は、本件無効審判に対してもこのような公平かつ客観的な判断を仰ぐ次第である。

第4 当審の判断
1 「Anne of Green Gables」の文字について
請求人から提出された甲各号証を総合すれば、本件商標を構成する「Anne of Green Gables」の文字は、カナダの小説家、ルーシイ・モウド・モンゴメリイが著した著作物の題号であり、該著作物は、1908年に出版され、主人公の孤児アンが、カナダ東部のプリンス・エドワード島で成長する過程を描いた小説(和名「赤毛のアン」)であり、この小説は、その題号とともに世界中の人々に親しまれているものと認められるところである。
そして、本件著作物及びこれに関連したその他の著作物に係わる世界中における著作権・商標権その他の法律上の権利を管理し保護している者は、1942年に死亡した作者ルーシイ・モウド・モンゴメリイの遺産相続人たるデイビット マクドナルドとルース マクドナルド並びにカナダ国政府ないし請求人らが構成員となっている第三セクターとして、1994年5月26日にカナダ国 プリンス エドワード アイランド州法に基づき設立された「アン オブ グリーン ゲーブルス ライセンシング オーソリティ インク(AGGLA)」であることが認められる(甲第36号証)。
しかして、本件商標は、別掲に示すとおりデザイン化された文字ではあるが「Anne of Green Gables」の欧文字よりなるところ、この語は、上記したように、ルーシイ・モウド・モンゴメリイが著わした世界的に著名な著作物の題号であり、また、カナダ造幣局が発行した1オンス金貨に刻印として使用されたり(甲第17号証11及び同第25号証)、さらに、カナダ郵政省より発行された切手等にも使用され(甲第26号証および同第39号証)、「AGGLA」がその保護の一環として商品化事業を行うなど、上記請求人らを含めたカナダ国の文化資産的性格を有するものというべきである。
2 そこで、被請求人が我が国で商標登録出願して商標権を取得した行為に基づく本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるか否かについて、以下検討する。
(1)商標法4条1項7号に該当する商標とは、商標の表示自体が公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがあるものや、商標を使用することが社会公共の利益に反する場合に限定されるものではなく、それを採択し権利化する行為が穏当でなく、国際信義に反すると認められる場合においても、当該行為に係る商標は公正な取引秩序を乱し公の秩序を害するものに該当すると解しても差し支えないというべきである(平成11年12月22日 平成10年(行ケ)185号 東京高等裁判所判決 最高裁ホームページ参照)。
(2)被請求人は、「即ち、1984年2月17日に成立した原作者の遺産相続人(A)と被請求人(B)との間で正式に締結された契約の効力は、その後の1987年7月28日の遺産相続人(A)と『AGGLA』の一構成員(C)との契約とは無関係に効力を発揮しているものである。」(答弁書12頁下線部)、「被請求人は、日本での『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)を上映するに先立って、カナダ、アメリカで上映或いはテレビ放映し、それが大ヒットしたという実績を有する権利主体である。」(答弁書13頁8行ないし10行)、「このような主張は、前記のように1986年(昭和61年)の被請求人(B)と遺産相続人(A)との間で被請求人が対価を払って正式に締結された契約に基く出願・登録時から判断し、又、被請求人の本件商標の著名化への功績から公平に判断して、明らかに誤りである。」(答弁書15頁13行ないし18行)などと述べ、被請求人(被請求人の前身の会社)とルーシイ・モウド・モンゴメリイの遺産相続人との間で締結された1984年2月17日付の乙第1号証の1及び同号証の2に示される契約、並びに1986年7月31日付の乙第2号証の1及び同号証の2に示される契約をもって、本件商標についての登録出願ないし商標権を取得した行為について、正当性を有する旨主張している(上記答弁書における主張ほか答弁の全趣旨による)。
しかしながら、乙第1号証の1に係る契約は、主として「赤毛のアン」の「映画制作及びテレビシリーズ化」に関する契約であり、乙第2号証の2はその続編に関する契約と認められるところ、この各号証には、本件著作物の題号であり、かつ本件商標を構成する文字でもある「Anne of Green Gables」を被請求人が商標権化する旨の許諾を得たと認め得る記載は認められない。
そして、これらの契約が被請求人主張の、著作物「Anne of Green Gables」に関するある種の著作権契約であるとしても、一般に、著作物の題号は著作物から独立した著作物性を持ちえないと解するのが相当であって(昭和60年9月26日 昭和59年(ネ)第1803号 大阪高等裁判所判決 最高裁ホームページ参照)、本件の場合、「Anne of Green Gables」の文字(語・題号)についてわが国及びカナダ国において著作権が発生しているとすべき特別の事情は認められないから、上記乙第1号証の1及び同第2号証の1の契約をもって、被請求人が本件商標の、著作権契約に基づくわが国における登録出願の正当な権利者であった(る)とすることはできない。
(3)被請求人は、同人が本件商標をわが国で登録出願し、これを権利化したことについて、「被請求人は、日本での『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)を上映するに先立って、カナダ、アメリカで上映或いはテレビ放映し、それが大ヒットしたという実績を有する権利主体である。」(答弁書13頁8行ないし10行)、「本件商標が現在問題となるきっかけは、被請求人が存在し、本件商標に関し被請求人による『映画』というメディアによって、日本人にすばらしく良好な影響を与えた事実が存在していたのである。そうであるからこそ『本件商標』が全ての点で周知・著名化されて来ているのである。」(答弁書(第二回)5頁1行ないし5行)などと述べ、この行為に不正の目的はない旨主張している(このほか答弁の全趣旨による)。
しかしながら、被請求人のこの旨の主張は、本件商標の採択の経緯が国際信義に反するものか否かとは関わりのない主張であり、また、前記「(2)」で認定・判断したように、被請求人は、本件商標の取得に関する正当な権利主体あるいは許諾を受けた者であるといえないところである。
他方、被請求人は、答弁書の「商標法3条1項柱書の非該当性」との項目において、「現在、日本に限らず世界中が厳しい経済状況下にあるなか、使わない商標を取得することなどあり得ない」として(答弁書9頁8行ないし10行)、本件商標について使用する意思を有して登録出願した旨を述べている。
また、被請求人は、本件著作物「Anne of Green Gables」の原作者の遺産相続人、プリンス エドワード アイランド州政府及び「AGGLA」等から承諾を得ることなく、我が国において本件商標を出願し、登録を受けたこと明らかである。
しかして、本件商標を構成する「Anne of Green Gables」の文字(題号)は、前記「1」で認定・判断したように、請求人らを含めたカナダ国の文化資産的性格を有するものというべきである。
そうであれば、被請求人が「Anne of Green Gables」の文字よりなる本件商標をわが国で独占排他的に使用する意思を持って、上記の関係者等の承諾(許諾)を得ず、無断で登録出願し登録を得た行為は、仮に被請求人に不正の目的がなかったとしても、これを客観的にみれば、上記関係者等との信義誠実の原則に反し、穏当を欠くものであって、かつ、本件商標を日本国の商標として登録することは、わが国と請求人を含むカナダ国政府との間の国際信義に反するものといわなければならない。
(4)してみれば、本件商標は、商標法4条1項7号に違反して登録されたというべきであるから、同法46条1項の規定により、請求の趣旨のとおり、その指定商品中、第9類「眼鏡,レコード,メトロノーム,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,家庭用テレビゲームおもちゃ」の登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
なお、請求人は、口頭審理の申立て、また、証人尋問を申し出ているが、本件は書面により審理することは可能と判断され、また、本件の結論に照らせば、証人尋問を行う必要はないものと判断されるから、証人尋問の申し出は採用しない。
別掲 【別掲】
(本件商標)

審理終結日 2004-06-24 
結審通知日 2004-06-29 
審決日 2004-07-13 
出願番号 商願2000-68588(T2000-68588) 
審決分類 T 1 12・ 22- Z (Z09)
最終処分 成立 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2001-04-27 
登録番号 商標登録第4470684号(T4470684) 
商標の称呼 アンオブグリーンゲイブルズ、アン、グリーンゲイブルズ、ゲイブルズ 
代理人 水谷 安男 
代理人 島田 義勝 
代理人 角田 昌彦 
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