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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) Y25
管理番号 1145265 
判定請求番号 判定2006-60025 
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2006-11-24 
種別 判定 
2006-05-16 
確定日 2006-09-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4771604号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「Tシャツ」に使用するイ号標章は、登録第4771604号商標の商標権の効力の範囲に属する。
理由 第1 本件商標
本件登録第4771604号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成15年7月14日に登録出願、第25類「Tシャツ」を指定商品として、同16年5月21日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が、商品「Tシャツ」に使用する標章として示したイ号標章は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、商品「Tシャツ」に使用するイ号標章は、登録第4771604号商標の商標権の効力の範囲に属しない、との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第3号証を提出した。
1 判定請求の理由
本件商標は、「島人」の文字を毛筆風に縦書きで記してなるものである。
そして、イ号標章は、黒地に灰色の毛筆体で「島人」の文字を右上がりの斜め配置で記し、該「人」の文字の上部に沖縄県の伊江島の概略地図図形を記し、該「島人」の漢字の文字の左側に白抜き文字で縦書きに「しまんちゅ」と記し、その「しまんちゅ」の文字の下部に白地に黒文字で縦書きに「伊江島」と記したものである。
また、本件商標にかかる指定商品、第25類「Tシャツ」とイ号標章の使用商品「Tシャツ」とは、同一商品である。
本件商標とイ号標章では、その文字及び図形の構成が大きく異なり、外観上大きく異なるものであり、称呼においても、イ号標章は、「シマビト」と称呼されることはほとんど無く、観念においても、イ号標章は、伊江島を示すことから、異なるものである。
したがって、イ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属しない。
2 判定請求の必要性
本件請求にかかる本件商標の商標権者である被請求人は、本件請求人が「島人」、「しまんちゅ」、「伊江島」の文字と伊江島地図図形とからなる標章を配置したTシャツ(甲第1号証)を以前より継続して使用していたところ、本件商標の商標権を侵害しているとの警告を発した。
本件請求人は、先使用権を有しているものとの認識もあり、その対応に苦慮しているところである。
よって、本件判定を求める次第である。
3 イ号標章の説明
本件請求人は、平成8年3月より、イ号標章を使用した「Tシャツ」(甲第1号証)を製造し、沖縄県内外で幅広く販売していた(甲第3号証)。
なお、「島人」の文字が使用されたTシャツは、沖縄県内では、ほとんどの観光土産品店や空港売店はもとより、スーパーや洋品店など以前より、多数の業者が取り扱ってきた経緯があり、沖縄県では、「海人」Tシャツと並んで、沖縄県の代表的な文字デザインのTシャツであり、その歴史は古く「海人」Tシャツの最初の発売時期(1980年代)と変わらない。
イ号標章の特徴は、外観においては、独特の毛筆書体による「島人」の文字と、伊江島の地図との組み合わせである。称呼としては「シマンチュ」と「イエジマ」であり、そして、この「島人」は、「伊江島」との組合せで表現されており、地図を含めた全体としては、「伊江島の特徴を有する人」あるいは「伊江島育ちの人」を想起させる観念を持つものである。
また、このTシャツのイ号標章は、シリーズ化されて販売されているものであり、「伊江島」の他に、「久高島」、「久米島」、「沖縄列島」(甲第2号証)などが販売されており、各々「各島の特徴を持つ人」の観念を生じるものである。
4 イ号標章が商標権の効力の範囲に属さないとの説明
本件商標は、毛筆風に「島人」の文字のみを縦書きに記してなるものである。そして、イ号標章は、黒地に独特の毛筆書体で「島人」の灰色文字を大きく斜めに配置し、その左上部に伊江島の簡略地図図形を配置し、さらに左部に縦書きで「しまんちゅ」と「伊江島」の文字が記されて構成されたものである。
また、本件商標にかかる指定商品である、第25類「Tシャツ」と、イ号標章の使用商品「Tシャツ」とは、同一商品である。
ここで「島人」という語は、沖縄県では、「シマンチュ」と称呼され、その場合には「沖縄出身の人」、「島出身の人」を示す言葉として、一般的に古くから使用されているものである。そして、この「島人(しまんちゅ)」の称呼は、沖縄県でのみ使用されている独特の言葉であり、沖縄の方言である。
すなわち、本件商標では、一般的な「島人」、すなわち公開データ(特許庁電子図書館によるデータ)に記載されている称呼のように、「シマビト,トージン,シマジン,シマンチュ」などの多くの称呼が認識される。
これに対して、イ号標章の場合には、沖縄県の伊江島地図と「しまんちゅ」の文字とが含まれており、この場合の「島人」は、単に一般的に広く使用されている「島に住む人」を示すものではなく、沖縄県の方言である「しまんちゅ」を示すことは明らかであり、その島に愛着があり、その伊江島の人の特徴を持った島育ちの人を示す、沖縄の方言である「うちなー口」で表現されたものである。
また、本件商標の登録出願の時点(平成15年7月14日)においては、Tシャツのデザインとして「島人」は、沖縄県ではごく一般的に使用されている文字デザインである。
よって、この「島人」Tシャツは、Tシャツ業者全体の積極的な営業努力により、著名性が確立されたものであるという周知の事実があり、現時点において、1業者が商標としてその権利を独占することは、商業取引において問題を生じるものといわざるを得ない。
本件商標とイ号標章を外観において比較すると、本件商標は、あくまでも、毛筆書体風に縦書きされた「島人」の外観に特徴があるものであり、これに対してイ号標章は、独特の毛筆体文字による「島人」の文字と伊江島簡略地図図形との組み合わせで構成され、明らかに外観上の差異がある。
称呼においては、本件商標は、一般的には「シマビト」と称呼されるのに対して、イ号標章は、「しまんちゅ」文字や沖縄県の伊江島の図形が記されており、「シマンチュ」、「イエジマ」と称呼されるので、明らかに異なる。
観念においては、本件商標は、その「島人」の文字から、「島に住む人」との観念が生じる。これに対してイ号標章は、伊江島の簡略地図が示され、「島人(しまんちゅ)」が記されているため、「伊江島育ちの伊江島らしい特徴を有する人」との特別な観念が生じるものである。
また、本件商標が表示されたTシャツと、イ号標章が表示されたTシャツとでは、実際の商取引において、同じ商品に使用されたとしても、消費者が誤認、混同することはないものと思われる。
以上より、イ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属しない。
5 被請求人の答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁書に対して、次のとおり弁駁し、証拠方法として、甲第4及び第5号証を提出した。
(1)答弁の理由において、「甲第3号証の販売時期を見ても平成8年からとなっているが、昨年から伊江島には納品されている。私も、伊江島との取引は、昭和55年頃から始めているが、その間、イ号標章の商品は昨年以前に見たことはない。」との答弁であるが、甲第4号証の納品書控に示すように、CHIP.CHIPCo;Ltd(請求人の経営する会社)により、平成10年11月5日に島人Tシャツを42枚、納品している。また、甲第5号証の納品書控に示すように、REKIO GORES CO.LTD(請求人のデザインのTシャツの販売会社)により、同12年4月19日に「Tシャツ島人」を5枚、また、同年6月25日に「プリントTシャツ島人」を10枚、納品している。
一般的に納品書は、過去3〜5年分程度までについては、保管されているが、それ以前のものは、ほとんどが廃棄処分されており、上記の納品書は、その一部が僅かに残っていたものである。
しかし、これらの納品書に示すように、請求人は、以前より「島人Tシャツ」を販売しており、伊江島においては、平成13年から販売していた。
また、沖縄県において「島人Tシャツ」は多くのTシャツ業者により、同14年、同15年頃をピークに販売されていたことはTシャツ業者であれば周知の事実である。
したがって、被請求人の「イ号標章の商品は昨年以前に見たことはない。」という答弁は明らかに事実と異なるものである。
(2)答弁の理由の中で「イ号標章(Tシャツ)が類似でないと判定されるのであれば、商標の意味なすことなく誰もが少々の図形を変え生産してくる可能性がある」について
商標は、出所表示機能、品質保証機能、広告・宣伝機能を有するものであり、特に、誰がそのTシャツを製造したかという出所表示が認識できる程度に識別性を有する必要がある。
Tシャツという商品は、さまざまなデザインが簡単に作成できる商品であり、特に文字をデザインする場合には、単に文字を表すものから、図形化されたものまで非常に幅広いデザインが可能となっている。
したがって、決められた書体を用いて表現された文字の場合と、デザインされた文字の場合とでは、消費者の受ける印象は大きく異なるものであり、さらに図形と組み合わされる場合には、さらに異なる認識となるものである。
商標審査基準における類否判断にあたっては、当該指定商品または役務の取引の実情を考慮し、需要者の通常有する注意力を基準とされているが、本件商標とイ号標章とでは、類似商品(Tシャツ)において、イ号標章を使用しても、本件商標との関係において商取引上、誤認を生じることはない。
以上のとおりであるから、イ号標章のTシャツは、本件商標権の効力の範囲に属しないものとの判定を求めるものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第3号証を提出した。
誰もがイ号標章を見ても、Tシャツ一杯に島人と書き左上部に地図が小さく入っているだけであり、配列は問題でなく、このTシャツは島人を強調している。
警告を発したのは、昨年より私が販売していた伊江島(沖縄の離島)へ甲第2号証の島人を納品されたためである。
なお、甲第3号証の販売時期を見ても、平成8年からとなっているが、昨年から伊江島には納品されている。
私も、伊江島との取引は、昭和55年頃から始めているが、その間、イ号標章の商品は昨年以前に見たことはない。
よって、甲各号証の主張は理屈としか理解できない。
もし、このイ号標章(Tシャツ)が類似でないと判定されるのであれば、商標の意味なすことなく誰もが少々の図形を変え生産してくる可能性がある。
又、他業者に対しては、お互いが理念を厳守することを条件に5社に対しては、契約のもと許諾を承認している。
現在のところ問題もなく、それぞれが販売している。

第5 当審の判断
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、「島人」の筆書き風文字を縦書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して、「シマビト」又は「トウジン」の称呼及び「島に住む人」の観念を生ずるものである。
これに対し、イ号標章は、別掲(2)に示すとおり、極めて大きく右上から左下へ斜めに配した灰色の「島人」の筆書き風太文字、該「島人」の文字の左横に小さく配された灰色の「しまんちゅ」の縦書き文字、該「しまんちゅ」の文字の下に極めて小さく配された灰色に塗りつぶされた長方形状内の「伊江島」の縦書き文字及び該「島人」の「人」の文字の上に配された伊江島の概略図と思しき白色の図形を、黒地の上に配してなるものである。
しかして、イ号標章の構成中の「島人」の文字部分は、灰色と白色とで陰影が施され、立体的に、かつ、他の文字及び図形に比して圧倒的顕著に表されてなるものであるから、該文字部分が特に看者の注意を惹くものである。
そうすると、イ号標章は、「島人」の文字とともに、「しまんちゅ」及び「伊江島」の文字と、伊江島の概略図と思しき図形をも一緒に捉え、「シマンチュ」の文字に相応して「シマンチュ」の称呼が生じ、「伊江島に住む人」の如き観念が生ずる場合があるとしても、簡易迅速を旨とする取引の場においては、圧倒的顕著に表された「島人」の文字より生ずる「シマビト」又は「トウジン」の称呼をもって取引にあたるものとみるのが相当であり、これより単に「島に住む人」の観念をも生ずるものである。
してみれば、「島人」の文字からなる本件商標は、「島人」の文字が圧倒的顕著に表されているイ号標章と、「島人」の文字を共通にするものであり、これより生ずる「シマビト」又は「トウジン」の称呼及び「島に住む人」の観念を共通にするから、類似するものであり、かつ、本件商標の指定商品「Tシャツ」とイ号標章を使用する商品「Tシャツ」とは、同一の商品である。
したがって、商品「Tシャツ」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 別掲(1) 本件商標



別掲(2) イ号標章(色彩については原本参照。)



判定日 2006-09-15 
出願番号 商願2003-64842(T2003-64842) 
審決分類 T 1 2・ 1- YB (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門倉 武則 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 久我 敬史
岩本 和雄
登録日 2004-05-21 
登録番号 商標登録第4771604号(T4771604) 
商標の称呼 シマビト、トージン、シマジン、シマンチュ 
代理人 島袋 勝也 

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