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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35
管理番号 1143451 
審判番号 無効2005-89158 
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-10-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-07 
確定日 2006-09-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4832017号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4832017号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4832017号商標(以下「本件商標」という。)は、「カインズ工房」の文字を横書きしてなり、平成16年3月5日に登録出願され、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成又は監査若しくは証明,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」を指定役務として、平成17年1月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人主張(要点)
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第140号証(枝番を含む。ただし、甲第117ないし第119及び第121号証は欠番)を提出している。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標採択の経緯
請求人は、ホームセンター「カインズホーム」を経営する小売業者である(甲第1及び第2号証)。請求人の会社名である「カインズ」は「CAINZ」と英語表記し、その語源は英語の「KIND」(さまざまの、本質の、親切な)をベースに、請求人が所属する企業グループ「いせやグループ」(現在は「ベイシアグループ」と名称変更)の企業理念である「For The Customers」の「C」を合わせ、無限の可能性を託して「Z」に繋げ、こうして「カインズ」の文字からなる商標(以下「引用商標」という。)が採択された(甲第3号証)。したがって、引用商標は請求人が考え出した造語である。
(2)引用商標の著名性
本件商標の登録出願前である2003(平成15)年7月時点において、請求人は「CAINZ HOME/カインズホーム」なるホームセンターを群馬県・栃木県・埼玉県・茨城県・千葉県・東京都・神奈川県・福島県・宮城県・長野県・静岡県・鳥取県・山梨県・愛知県・三重県の首都圏・東海・近畿地方を中心とした15都県に121店舗(フランチャイズ店舗を含む。以下同じ。)を出店していた(甲第1号証)。さらに、本件商標の設定登録前である2004(平成16)年9月においては127店舗を出店していた(甲第2号証)。
また、資本金32億6,000万円、2004(平成16)年2月期時点における売上高は2,458億円に上り、7,000名もの従業員を抱える企業である(甲第2号証)。また、請求人は、ベイシア、セーブオン、ワークマン、オートアールズ、プラグシティ、ミューエンターテイメント、カインズトラベル等、周知度の高い企業とともに「ベイシアグループ」を構成している(甲第4号証)。
請求人の名称及び店舗名は「カインズ」と略称され、小売業の商標として需要者に広く認識された商標となっている。例えば、各社新聞記事(甲第5ないし第121号証)においても、引用商標を含む記載が数多く見受けられる。特にホームセンターの最大手企業として、「最大手のカインズ」また「大手のカインズ」「ホームセンター最大手のカインズ」と掲載されていることからしても、引用商標が日本全国で著名性を獲得していることは明白である。なお、ホームセンターの最大手企業として掲載されている記事の例は、「業界最大手であるカインズ」とする甲第30号証をはじめ、甲第5、第6の3、第8の3、第10の1、第16ないし第18、第19の2、第21、第22、第33の1及び3、第36、第79、第81、第82、第84、第87、第89及び第112号証に掲げるとおりである。
このように数多くの新聞記事より、本件商標の登録出願日である2004(平成16)年3月5日は勿論のこと、設定登録日である2005(平成17)年1月14日時点においても、引用商標が日本国内における著名性を獲得していることは明白である。
さらに、テレビ番組を通じても引用商標の著名性が明白となっている。2003(平成15)年12月17日には、TBS系列の人気番組「はなまるマーケット」の主要なコーナーである「今日の目玉」コーナーにおいて、30分間に亘って、「カインズ」(前橋吉岡店)が放送・紹介され(甲第122号証)、一層の著名性を獲得するに至った。
このように新聞のみならずテレビによっても引用商標が需要者の目に留まることにより、本件商標の登録出願日は勿論のこと、設定登録日時点においても、日本国内における著名性を獲得している。
また、甲第123号証の1ないし3に示すような新聞の折込チラシについて、本件商標の登録出願時において1週あたり6,332,660部を、本件商標の設定登録時において1週あたり6,666,550部を全国において配布している。
なお、請求人は、同様のチラシを年間を通じて、ほぼ毎週同程度の部数を配布しており、これらの事実からしても、その宣伝規模が大きいことを示している。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願日及び設定登録日の時点において、日本国内における著名性を獲得していることは明らかである。
(3)混同を生じるおそれ
(ア)引用商標と本件商標の類似性
引用商標は「カインズ」の片仮名を書してなるものであるのに対し、本件商標は引用商標と同一の片仮名である「カインズ」の文字と漢字で書される「工房」とを結合した「カインズ工房」の文字とからなる。商標の構成に明らかな相違があるため、「カインズ」と「工房」は分離判断され、「カインズ」が単独で認識されることになる。
本件商標の要部認定において、「工房」部分は「美術家や工芸家などの仕事場や、アトリエ」等を意味し、指定役務との関係において、その役務が提供される場所を表す記述的商標であり、識別力を有さない商標である一方、「カインズ」部分は上述のように請求人が作った造語であり、自他商品識別力が認められる。
したがって、本件商標の要部は「カインズ」部分にあり、引用商標と同一であるため、両商標は類似する。
(イ)狭義及び広義の混同が生じるおそれ
引用商標は、本件商標の登録出願日及び設定登録日の時点において、ホームセンターの最大手企業として著名性を獲得していることは上述のとおりである。また、請求人はホームセンターを経営し、多種多様な商品を販売するとともに、提供する役務も多様化しており、多角経営を営む会社である。
したがって、被請求人が、引用商標と類似する本件商標をその指定役務に使用することは、請求人の提供する役務であると誤信されるおそれがあるのみならず、被請求人が請求人と親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係にあると誤信されるおそれがある。
被請求人は埼玉県飯能市に所在しているが、甲第126号証に示すとおり、該地域に請求人店舗「カインズホーム」があることからすれば、被請求人所在地域においても引用商標は著名であることが明白であり、被請求人の使用により混同が生ずるおそれは十分に考えられる。
2 商標法第4条第1項第8号について
(1)著名な略称
(ア)引用商標の著名性
上述したように、引用商標が、本件商標の登録出願日及び設定登録日において、請求人の業務である小売業を示すものとして、日本国内において著名性を有していることは明白である(甲第5ないし第123号証)。
また、引用商標は、請求人の名称「株式会社カインズ」の略称であるとともに、請求人の店舗名の略称である。
(イ)引用商標と指定役務の関連性
上記のとおり、請求人の名称の略称である引用商標は、小売業として著名であり、請求人は小売業の一業務として「広告、トレーディングスタンプの発行、経営の診断又は経営に関する助言、職業のあっせん、書類の複製、複写機の貸与」等について当該著名な略称「カインズ」を使用している(甲第127ないし第133号証)。したがって、引用商標は本件商標の指定役務の分野において著名であり、相当の関連性があることは明白である。
(2)「他人の承諾」の有無
本件商標は、引用商標と同一の文字を含むものであるが、その登録出願時及び登録査定時までに被請求人から請求人に対し本件商標の出願・登録についての承諾をした事実も、さらには申し入れの事実もない。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の周知著名性及び本件商標との類似性
上述したとおり、本件商標の登録出願日及び設定登録日の時点において、日本国内における引用商標の小売業における著名性の獲得は明白であり、引用商標と本件商標とは相互に類似する。
(2)不正の目的
被請求人は、請求人の本社が存在する群馬県の隣接県である埼玉県に所在する者であり、また、請求人の会社案内(甲第1及び第2号証)に示すように、2004(平成16)年の時点において請求人の店舗は1都14県、127店舗に及び、埼玉県内にも17店舗が存在している。また、被請求人の所在地である埼玉県飯能市においても、請求人店舗「カインズホーム飯能店」が存在する(甲第126号証)。したがって、被請求人が著名な引用商標を知っていたことは明白である。
さらに、請求人は「木材」を購入した者に対し、工具を貸し付け、自由に加工可能とするべく、店舗内に工作場所を設け、「カインズ工房」と付している(甲第134号証の1ないし8)。
したがって、請求人が現実に使用している「カインズ工房」と同一の商標を採択し登録出願をしたことを考慮すれば、請求人による「カインズ工房」の使用事実を知りつつ、請求人の著名な引用商標と本件商標を誤認混同させる不正の目的をもって、「トレーディングスタンプの発行」等をはじめとする引用商標が著名となっている役務と抵触する指定役務について本件商標を登録出願したと推認される。
4 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知著名性
引用商標は、上述のとおり、本件商標の登録出願日及び設定登録日の時点において、日本国内において小売業の商標として著名性を獲得している。
また、引用商標は「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,職業のあっせん,書類の複製,複写機の貸与」等の第35類に属する役務について使用するものであり、当該役務の分類についても著名性を獲得している。
(2)引用商標と本件商標の類似性
上述したように、引用商標と本件商標は類似する商標である。
また、引用商標は「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,職業のあっせん,書類の複製,複写機の貸与」等の第35類に属する役務について使用するものであり、当該役務についても著名性を獲得していることからしても、本件商標の指定役務と類似するものである。
したがって、本件商標は、需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であって、その指定役務について使用するものである。
5 商標法第4条第1項第11号について
引用商標は、本件商標の登録出願日前の平成10年4月15日に第35類又は第42類に属する役務を指定して登録出願し、それぞれ商標登録第4129948号及び同第4104209号として登録を受けた(以下、これらをまとめて「登録引用商標」という。)。
また、上述のとおり、登録引用商標と本件商標とは、類似する商標であり、指定役務についても、本件商標の指定役務中「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与」及び「求人情報の提供,自動販売機の貸与」に関しては、登録引用商標の指定役務とそれぞれ同一又は類似である。
6 商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、引用商標は、日本国内において著名商標であることは明白な事実である。このため、引用商標と類似する本件商標を、不正の目的をもって剽窃的に登録出願する行為自体、商取引の秩序をいたずらに混乱させるものであるから、まさに公序良俗を害する行為というべきである。
7 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項15号、同第8号、同第19号、同第10号、同第11号及び同第7号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
本件商標は、上記第1のとおり「カインズ工房」の文字を書してなり、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,財務書類の作成又は監査若しくは証明,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与」を指定役務とするものであるところ、請求人は、引用商標は同人の名称「株式会社カインズ」の著名な略称であるから、本件商標には、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたとする無効事由があると述べているので、その当否について判断する。
1 請求人の略称について
請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人である「株式会社カインズ」は、資本金32憶6,000万円、売上高2,458億円、従業員7,000名を擁する企業であり、「カインズホーム(CAINZ HOME)」なる名称のホームセンター(日曜大工用品や生活雑貨、電化製品などを扱う大型店:学習研究社発行「パーソナルカタカナ語辞典」)を首都圏・東海・近畿地方を中心とした15都県に127店舗(平成16年9月現在)出店しているほか、ベイシア、セーブオン、ワークマン等の企業と共に「ベイシアグループ」を構成している(甲第1、第2及び第4号証)。
(2)請求人の会社説明書等において、請求人は常に「カインズ」と表記して説明している(甲第1、第2及び第4号証)。
(3)請求人及びその経営に係るホームセンターの名称中の「カインズ」は、英語の「kind」とグループの企業理念から採択した「CAINZ」に由来するものであり、請求人による造語である(甲第3号証)。
(4)請求人は、「最大手のカインズ」、「ホームセンター最大手のカインズ」、「ホームセンター大手のカインズ」、「ホームセンターのカインズ」等として、あるいは単に「カインズ」として、2002年3月から2005年1月にかけて、各種新聞において広く報道され、テレビ番組においても「カインズ」(前橋吉岡店)が放送・紹介されている(甲第5ないし第116、第120及び第122号証)。
(5)請求人は、「カインズモール」と称して、グループ企業と共に大規模商業集積地を形成しており、その旨の新聞広告も行っている(甲第2及び第123号証の3)。
(6)まとめ
以上の認定事実によれば、「カインズ」は、請求人の名称ないしはその経営に係るホームセンターの名称の略称として、本件商標の登録出願時には、既に取引者・需要者間に広く認識され著名になっていたものというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
2 本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、片仮名と漢字の組合せからなることから、片仮名部分と漢字部分とが視覚上分離して看取され、常に一体不可分のものとして認識し把握されるものとはいい難く、「カインズ」の文字を含むものとして認識し理解されるものである。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、請求人の名称の著名な略称を含むものというべきであり、かつ、請求人の承諾を得ているものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものであるから、請求人が主張するその余の無効事由について検討するまでもなく、本件商標の登録を無効にすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-06-29 
結審通知日 2006-07-06 
審決日 2006-07-21 
出願番号 商願2004-25699(T2004-25699) 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (Y35)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 井岡 賢一
中村 謙三
登録日 2005-01-14 
登録番号 商標登録第4832017号(T4832017) 
商標の称呼 カインズコーボー、カインズ 
代理人 羽鳥 亘 

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