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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
管理番号 1139561 
審判番号 取消2005-30510 
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-08-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-04-27 
確定日 2006-06-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4402626号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4402626号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4402626号商標(以下「本件商標」という。)は、「ケップラ」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成11年8月18日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同12年6月29日に登録査定、同年7月21日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
(1)請求の理由
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べた。
請求人の調査したところによれば、商標権者である被請求人が本件商標をその指定商品について使用している事実は発見できなかった。また、本件商標に係る登録原簿上、専用使用権及び通常使用権の登録もないところである。
したがって、継続して3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが上記指定商品について、本件商標の使用をしていないと推認されるものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
被請求人は、本件商標を本件取消請求に係る「薬剤」について不使用であることを自認している。
そして、被請求人が不使用について「正当理由」に該当する理由として、(ア)「KEPPRA」なる商標を外国で使用して周知となっているから、本件商標は、その基本商標を防衛するために登録されたものであり、本件商標の不使用には「正当理由」がある。(イ)法50条の取消審判において、従来存在した連合商標の特例は廃止されたが、重要商標を防衛するための不使用商標は容認されるべきである旨述べている。
しかしながら、法50条2項但書に規定する「正当理由」は、例外的取り扱いを定めたものであるから、その該当事由としては、天災地変、放火等第三者の故意又は過失によるものなど、極めて限定的に解釈・運用されており、本件商標の不使用はそのいずれにも該当しない。
また、改正前の商標法に存在した連合商標の特例は、それによって、膨大なストック商標が存在し、第三者の商標選択の自由を制限する弊害が看過できない状況に至ったため廃止されたものである。
以上のとおり、被請求人の主張は、本件商標の不使用を正当化する根拠を有しないから、本件商標は取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第9号証を提出した。
被請求人は、請求に係る商品「薬剤」につき、本件商標が使用されていないことについては、これを争わない。しかし、本件商標が不使用であることは、以下に述べるとおり、「正当な理由」に基づくものであるから、不使用を理由としてその登録が取り消されるべきではない。
(1)現在、被請求人が製造販売する「抗てんかん薬」は、一般名称を「Levetiracetam」、販売名(商標)を「KEPPRA」といい(乙第2号証、以下「本件薬剤」という。)、世界40カ国で承認されており(乙第3号証)、商標「KEPPRA」の登録国は、110力国以上に上っている(乙第4号証)。
しかして、本件薬剤の年間売上高は、2001年度においては、米国で約9600万ユーロ、ヨーロッパで約1億2200ユーロ(乙第5号証)、2002年度上半期においては、全世界で約1億ユーロ(乙第2号証)、2003年度においては、米国で約2億900万ユーロ、ヨーロッパで約1億ユーロ(乙第6号証)、2004年度においては、米国で約2億7000万ユーロ、ヨーロッパで約1億3900万ユーロとなっている(乙第7号証)。 この結果、米国では、新世代「抗てんかん薬」の中で主導的な地位を確立し、ヨーロッパでは、強力な2番手としてトップとの差を締めている(乙第7号証)。
更に、インターネットで、「KEPPRA Levetiracetam」を検索すると、51200件ものサイトが表示され、この中には、日本語による本件薬剤の個人輸入サイトや情報提供サイト等も含まれている(乙第8号証)。
以上の事実は、商標「KEPPRA」が本件薬剤につき、外国において既に周知となっており、日本においても相当程度知られていることを示すものである。
したがって、被請求人は、第三者による商標「KEPPRA」の不当な盗用を防止するため、商品「薬剤」につき、商標「KEPPRA」(以下「基本商標」という。)の登録を受けている(登録第4402624号)。
しかし、基本商標の登録だけでかかる盗用を防止しようとしても、その禁止権の範囲が商標・商品の「類似」という抽象概念によって確定されるため、迅速・確実な救済は必ずしも容易ではない。
特に、外国周知商標が剽窃されると、商標使用者の国際的な信用が毀損され、国際的な流通秩序が混乱し、その私益公益に亘る不利益は莫大なものとなるから、迅速・確実な救済が何より必要となる。
そこで、被請求人は、基本商標に類似する本件商標につき、重ねて商標登録を受けることによって、基本商標に類似する商標を予め明確化して、かかる盗用から、基本商標を迅速・確実に保護せんとしたのである。
(2)加えて、本件商標の不使用につき、「正当な理由」が存するかどうかの判断にあたっては、参議院商工委員会において、「『正当な理由』の解釈及びその運用については、産業の実態等を考慮して弾力的におこなうこと。」とする付帯決議がなされている(昭和50年3月27日付議事録11号)ことを踏まえ、以下の事情が特に考慮されるべきである。
(ア)従来の連合商標制度(旧商標法第7条)と不使用取消審判の特例規定(旧商標法第50条第2項)の下で、連合商標は、基本となる商標を防護することに大きな効用が認められていたが、連合商標制度の廃止とともに、このような効用まで失われてしまった。しかし、現在でも、著名商標を防護するためにのみ存在している登録商標は数多く存在しており(乙第9号証)、かかる効用は産業界から依然として高く評価されている。
したがって、このような目的の登録商標に対しても、不使用の「正当な理由」を認め、その登録の維持を図っていくことが、産業界の要請に応えることとなる。
(イ)商標「KEPPRA」は、本件薬剤につき、外国において周知な商標であり、かつ、被請求人による完全な造語商標であるから、第三者がそれと同ー又は類似の商標を善意で選択し、出願することは、実際問題としてあり得ない。
したがって、商標「KEPPRA」と同一又は類似の商標が第三者に登録される可能性は、極めて低いものであるから、そもそも、本件商標が第三者の商標選択の余地を奪うことにはならず、本件商標の登録を維持しても、商標法第50条第1項の規定の趣旨を何ら没却するものではない。
(3)かくして、本件商標は、不使用ではあるが、単なるストック商標と異なり、保護の必要性が極めて高い基本商標を防護するために登録されたものであり、更には、本件商標のような防護的機能を果たす登録商標の存在意義が依然として認められていること、本件商標の登録を維持しても不使用取消審判の趣旨を何ら没却しないことを考慮すると、本件商標の不使用には、正に「正当な理由」が存すると言うべきである。
(4)被請求人は、前記2(2)の請求人の弁駁に対して、答弁するところがない。

4 当審の判断
被請求人は、本件商標が請求に係る商品「薬剤」につき使用されていないことについては争わず、本件商標が不使用であることについては正当な理由がある旨主張している。
(1)ところで、商標法第50条第2項ただし書きの登録商標の使用をしていないことについての正当な理由としては、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって、工場等が損壊した結果、その使用ができなかったような場合、許認可手続の遅延その他の公権力の発動による場合、時限立法によって一定期間(3年以上)その商標の使用が禁止されたような場合等が事例として挙げられているが、例えば、東京高裁平成9年(行ケ)第53号判決によれば、「商標法は本来、登録商標の使用を保護の前提としていること、及び、不使用取消審判制度が設けられている趣旨からすると、登録商標の不使用につき商標法50条2項ただし書にいう『正当な理由』があるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者の責めに帰すことのできないやむを得ない事情があり、不使用を理由に当該商標登録を取り消すことが、社会通念上商標権者に酷であるような場合をいうものと解するのが相当である。」と判示されている。
(2)そこで、被請求人の主張している理由が本件商標の使用をしていないことについての正当な理由に該当するか否かについて判断するに、被請求人の主張するように、「抗てんかん薬」について使用されている「KEPPRA」なる商標がアメリカ及びヨーロッパ等において周知となっているとしても、周知・著名な商標を模倣・盗用から防護するということは、上記した「正当な理由」のいずれにも該当するものとはいえず、我が国で登録されている商標の使用をしていないことの正当な理由とみることは到底困難なことといわなければならない。
この点について、被請求人は、従来存在した不使用取消審判における連合商標の特例制度について言及しているが、改正前の商標法に存在した連合商標の特例は、それによって、膨大なストック商標を存続させることになり、第三者の商標選択の自由を制限する弊害が看過できない状況に至ったこと等を理由に廃止されたものであることからみれば、このような制度趣旨に相反する被請求人の主張は採用できない。外国で周知・著名な商標あるいはこれに類似する商標が他人により出願・登録された場合には、別途、商標法中に設けられている規定により対処すべきであって、周知・著名商標の防護を理由に、不使用の「正当な理由」を例外扱いすることにはならない。
また、被請求人は、「KEPPRA」商標は造語商標であり、外国において周知な商標であるから、これと同一又は類似の商標が第三者に登録される可能性は極めて低く、本件商標の登録が維持されても、第三者の商標選択の余地を奪うことにはならず、商標法第50条の趣旨を没却することにはならない旨主張している。
しかしながら、基本商標である「KEPPRA」商標と類似の商標が第三者に登録される可能性は低いとしても、被請求人が主張するように、「KEPPRA」商標に類似する「ケップラ」なる本件商標が不使用にも拘わらずその登録が維持されることになれば、基本商標の類似範囲を超えて、本件商標と類似する商標についてまで(これは、最早、基本商標である「KEPPRA」商標とは非類似の商標となる場合も充分有り得る)、第三者の商標選択の余地を奪うことになり、これは、まさに不使用商標の弊害と言わざるを得ない。
そうしてみると、被請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)以上のとおり、商標制度及び不使用による商標登録取消制度の趣旨を併せ考えると、被請求人の主張する理由をもってしては、本件商標の「薬剤」についての不使用について、正当な理由があったものということはできず、他に本件商標の使用をすることについて特段の障害があったとする主張立証もない。
してみれば、被請求人の答弁の全趣旨及び乙各号証を総合的に判断しても、本件商標は、本件審判請求の登録(平成17年5月25日)前3年以内に日本国内において、商標権者、使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品について使用されていなかったものであり、商標法第50条第2項ただし書きにいうところの使用をしないことについての正当な理由があったものとも認められない。
したがって、商標法第50条の規定により、本件商標の登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-01-19 
結審通知日 2006-01-24 
審決日 2006-02-08 
出願番号 商願平11-74117 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
寺光 幸子
登録日 2000-07-21 
登録番号 商標登録第4402626号(T4402626) 
商標の称呼 ケップラ 
代理人 佐藤 英二 
代理人 浜田 廣士 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 鈴木 礼至 
代理人 石田 昌彦 

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