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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y30
管理番号 1137944 
審判番号 無効2005-89080 
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-06-15 
確定日 2006-05-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第4831206号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4831206号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4831206号商標(以下「本件商標」という。)は、「ポンキー」の片仮名文字と「PONKY」の欧文字を上下2段に横書きしてなり、平成16年4月20日に登録出願され、第30類「菓子及びパン,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として、同17年1月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1327836号商標(以下「引用商標」という。)は、「POCKY」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年5月14日に登録出願され、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同53年3月16日に設定登録されたものであるが、その後、商標権存続期間の更新登録がされている。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証を提出した。
1 無効理由の根拠条文
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効にすべきものである。
2 審判請求の利益
請求人は、約40年間にわたり、商品「チョコレート、スナック菓子」について引用商標を使用しており、その結果、引用商標は、取引者、需要者において極めて著名なものとなっている。
かかる状況下において、本件商標がその指定商品について使用された場合には、本件商標は、引用商標に類似するから、その商品の出所につき混同を生じるおそれがあり、かつ、引用商標の指標力を稀釈化させるおそれもある。
したがって、請求人は、本件審判を請求することにつき利害関係を有する。
3 無効理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)指定商品の同一性
引用商標の指定商品は第30類「菓子、パン」であるところ、本件商標の指定商品中には、これと共通する第30類「菓子及びパン」が含まれている。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品「菓子、パン」とは同一のものである。
(イ)商標の類似性
(a)称呼上の類似性
本件商標は「ポンキー」の片仮名文字と「PONKY」の欧文字とを二段に横書きするものであり、これより生ずる称呼は、「ポンキー」である。
これに対し、引用商標は「POCKY」の欧文字を横書きするものであり、これより生ずる称呼は、「ポッキー」である。
ここで、「ポンキー」と「ポッキー」の両称呼を対比すると、両者はいずれも4音より構成されるものであり、それらのうち、第1音が「ポ」、第3音が「キ」及び第4音が長音「一」である点において共通するものである。
両者が相違する点は、それぞれの第2音が鼻音「ン」と促音「ッ」である点のみであるが、この差異音である鼻音「ン」と促音「ッ」は、称呼全体として聴別され難い第2音に位置するものである。
また、これらの差異音は、いずれも鼻音又は促音という弱い音であるだけでなく、これらの差異音の前に位置する「ポ」と、これらの差異音の後に位置する「キ」はいずれも強く発音される破裂音であり、さらに「キ」の音は長音を伴うものでもあることから一層明確に発音されるものである。
そのため、両者の差異音である「ン」と「ッ」は、これらの前後に位置する強い音の「ポ」と「キー」に吸収され、極めて印象の薄い音となる。
したがって、上記中間音の差異が、その称呼全体に与える影響は極めて少なく、両称呼は、その称呼全体として明瞭に聴別されることは困難というべきである。
そして、本件商標と引用商標が称呼上類似であることは、商標審査基準の第4条第1項第11号6.(II)(4)に該当する例であることも明らかである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼上、相紛れるおそれのある類似する商標である。
(b)外観上の近似性
本件商標構成中の「PONKY」と引用商標を構成する「POCKY」とは、中央に位置する文字が「N」と「C」である点においてのみ相違するものであり、その他の文字においては共通するものである。
すなわち、両者は、いずれもアルファベット5文字より構成されるものであり、その構成文字中、始めの2文字が「P」「O」である点及び後の2文字が「K」「Y」である点において共通するものである。
そして、かかる文字構成の近似性に加えて、後述のとおり、引用商標「POCKY」は「菓子」の分野において請求人の商標として極めて著名なものであるため、本件商標がその指定商品中の「菓子及びパン」について使用されると取引者、需要者をして直ちに請求人の商標「POCKY」が想起される。
その結果、本件商標「PONKY」は、時として「POCKY」と見誤られ、これと同一視されるおそれがある。
したがって、本件商標と引用商標とは、その外観において近似するものである。
(ウ)引用商標の著名性
(a)商標の類否は、対比される両商標がその商品の出所につき誤認、混同を生ずるおそれがあるかどうかによって決定されるべきものであり、かかる判断に際しては、当該商品の取引の実情が考慮されるべきである。
そして、引用商標が極めて高い著名性を獲得しているという事実は、商品の出所の混同のおそれを増幅させる可能性のある事情といえるから、かかる事実についても、商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情にあたるというべきである。
なお、商標の周知・著名性が商標の類否判断において参酌されるべき取引の実情にあたることは、判決においても説示されている。
ここで、引用商標は、以下に示すとおり、商品「チョコレート菓子」の商品の包装箱、宣伝、広告などに常に表示されているものである。
そして、このように請求人が永年にわたって継続使用した結果、引用商標は、我が国において、チョコレート菓子のトップブランドとなっており、請求人の商品「菓子」を指標するものとして極めて著名な商標となっているものであり、この事実は引用商標を原登録商標とする防護標章登録(登録第1327836防護第1号;甲第6号証)を受けていることからも明白である。
(b)引用商標の使用経緯
我が国で有数の菓子メーカーである請求人は、昭和41年に新しいタイプのチョコレート、スナック菓子を開発し、これを「POCKY」(ポッキー)と命名し、商標として採択したものである。このチョコレート、スナック菓子の「POCKY」(ポッキー)は、それまでにないスティックタイプのチョコレート、スナック菓子として一躍注目を集め、昭和43年に全国販売を開始し、ヒット商品となっている。
それ以来、請求人は、約40年間に亘り継続して商品「チョコレート菓子」について「POCKY」商標を使用しており、その分野における圧倒的なシェアを維持し続けている。
この間の経緯については、添付の「江崎グリコ70年史」(甲第7号証)、「会社案内」(甲第8号証)において紹介されている。
(c)宣伝、広告
請求人は、この「POCKY」(ポッキー)をシリーズ化して、多様な商品展開を図ることにより幅広い需要を喚起している(甲第9号証;「グリコ商品ガイド」、甲第10号証;「ホームページ」)。
1970年代には、タレントの「岡田奈々」を起用した「ポッキー、オンザロック」というキャンペーンを展開し、「チョコレート菓子」を洋酒のつまみにするという「POCKY」(ポッキー)の新しい食べ方を提案するなど、年齢や性別を超えた需要を生み出し、世代を超えて愛好される商品になっている(甲第7号証)。
さらに、1980年代には、歌手の松田聖子をはじめとする有名タレントを起用したコマーシャルを全国的に大々的に展開することによって、「POCKY」(ポッキー)を有名ブランドに育てている(甲第7号証)。
そして、少し前では、「つんく♂」プロデュースとして話題となり、爆発的なブームを巻き起こしたタレントの「モーニング娘。」を起用した宣伝広告を行っており(甲第11号証及び甲第12号証)、また最近では、「ALL NEW ポッキー」をキャッチフレーズとして、10代、20代に幅広い人気の「仲間由紀恵」、若い女性の憧れ「なりたい顔」No.1の「柴崎コウ」、圧倒的な知名度で個性がキラリと光るトップアイドルの「松浦亜弥」及び昨年度の新人賞を総ナメの「石原さとみ」といった話題性の高い4人のタレントをコマーシャルに起用するなど常に注目度の高い宣伝、広告活動を実施している(甲第13号証及び甲第14号証)。
(d)売上高
チョコレート菓子の「POCKY」(ポッキー)は、約40年の永年にわたってわが国の市場に浸透しているヒット商品であり、その売上高は、次の通りであり莫大な額に達している。
2000年 340億円
2001年 320億円
2002年 285億円
2003年 260億円
2004年 200億円
(e)新聞、雑誌記事
「POCKY」(ポッキー)の商品及び商標(ブランド)は、菓子のブランドの成功事例として、また圧倒的なシェアを有する有名ブランドとして評価されている。
そのような評価を示す事例として、以下(甲第15号証ないし甲第28号証)の新聞、雑誌などにおける紹介記事が存在する。
(f)阪神甲子園球場の看板広告
野球中継の放送において、阪神甲子園球場のバックネット下の回転式看板に「glicoポッキー」の広告が写し出されている。
この回転式看板は、野球中継の放送中、常時放映されているものであり、宣伝、広告効果の高いものである(甲第29号証)。
(g)引用商標と防護標章登録
請求人は、引用商標を原登録商標とし、その指定商品中に第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,糖類を主原料とする粉状、粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」を含む防護標章登録(登録第1327836号防護第1号;甲第6号証)を所有している。
したがって、本件商標の著名性は、特許庁の審査においても、認められているものである。
以上の事実よりすれば、引用商標は、商品菓子について永年にわたり、かつ大々的に使用された結果、本件商標の出願時以前から今日に至るまで、極めて著名な商標となっていることは明白である。
そして、このように高い著名性を備えている引用商標と、その称呼において類似し、かつ、その外観においても近似する本件商標が、その指定商品について使用されると、これに接する取引者、需要者をして商品「菓子」の分野において極めて馴染みのある引用商標の称呼と聞き誤り、また、その外観を見誤るおそれがある。
(エ)まとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その商標において類似するものであって、その指定商品中の「菓子及びパン」において同一のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)引用商標の著名性
前記(1)(ウ)において述べたとおり、引用商標は、請求人が商品「チョコレート菓子」について永年にわたって使用してきた結果、我が国におけるブランド構築の成功例としてブランド論を語るうえでモデルケースとして頻繁に引用される(甲第18号証及び甲第19号証)など、チョコレート菓子のトップブランドとしての確固たる地位を築いているものであり、請求人の商標として極めて著名なものとなっている。
(イ)引用商標と本件商標との類似性
前記(1)において述べたとおり、本件商標と引用商標とは類似性を有するものであり、取引者、需要者は両者から共通した印象ないしはイメージを感受するものである。
加えて、引用商標は、特定の観念を生じさせない造語であり、独創性の高い商標である。
このように、造語より構成される創造商標については、一般に強い識別力が認められ、他人がその商標と類似するような商標を使用した場合には、既成語から構成される商標よりも、出所の混同が生ずる幅は広いというべきである。
(ウ)引用商標を使用する商品と本件商標の指定商品との関連性
本件商標の指定商品は第30類に属する前記のとおりの商品であるところ、これら商品と請求人が引用商標を使用する商品「菓子」とは、いずれも食品であり、その生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者層などにおいて一致する関連性の高い商品である。
そして、食品の分野における需要者層は、子供から老人に至るまでの幅広い一般消費者であり、その注意力が必ずしも高くない者を含んでいるため、商品の出所につき混同する可能性が高い。
(エ)引用商標を使用する商品のシリーズ化
請求人は、引用商標について多様なシリーズ商品を展開しているため(甲第8号証)、本件商標がその指定商品に使用された場合には、それがあたかも請求人の「POCKY(ポッキー)」商標に係るシリーズ商品であるか、または、これと何らかの関連性を有する商品であるかのごとく誤認され、或いは、その商品の出所について、組織的又は経済的に何らかの関係がある者の商品であるかのごとく混同されるおそれもある。
(オ)引用商標の信用力の希釈化
被請求人が本件商標をその指定商品について使用する行為は、請求人が永年に亘る莫大な宣伝、広告費用と営業努力によって培ってきた著名商標「POCKY(ポッキー)」の信用力(ブランド価値)にただ乗りするものであり、かかる信用力(ブランド価値)を希釈化させるものであるから、競業秩序の維持の観点からも容認されるべきでない。
(カ)まとめ
以上のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして極めて著名なものであるから、本件商標がその指定商品について使用されると、これに接する取引者、需要者をして、請求人の業務に係る商品であると誤認されるおそれがあり、商品の出所につき混同が生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
4 結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきものである。
よって、請求人は、請求の趣旨のとおりの審決を求めるものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標の類否
本件商標は「ポンキー」の文字と「PONKY」の文字とを併記してなり、また、引用商標は「POCKY」の文字を書してなるものであるから、それぞれの構成文字に相応して、本件商標からは「ポンキー」、引用商標からは「ポッキー」の各称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標の「ポンキー」の称呼と引用商標の「ポッキー」の両称呼は、前者における撥音「ン」と後者における促音「ッ」の差異を有するにすぎないものであり、しかも両称呼を構成する共通音である「ポ」及び「キー」の各音の子音はいずれも破裂音であるところから、その中間に位置する上記の差異音は必ずしも明確には聴別され難く、該差異音が両称呼を比較する上で称呼全体に及ぼす影響は極めて小さいといわなければならない。
してみれば、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、語韻、語調が近似したものとなり互いに聞き誤られるおそれがあるものといわざるを得ない。
(2)引用商標の著名性
甲第7号証ないし甲第29号証によれば、請求人(江崎グリコ株式会社)は、昭和41年に新しいタイプのチョコレート、スナック菓子を開発し、この新商品に引用商標「POCKY」(ポッキー)を採択したことが認められる。そして、このチョコレート、スナック菓子「POCKY」(ポッキー)は、それまでにないスティックタイプのチョコレート、スナック菓子として一躍注目を集め、昭和43年に全国販売を開始し、ヒット商品となり、以来、その時々の有名タレントを起用するなどして宣伝、広告にも力を入れ、各種の新聞、雑誌にも紹介記事が掲載されるなどして、この間40年以上に亘り「チョコレート菓子」に「POCKY」商標を継続して使用してきた結果、この菓子分野における圧倒的なシェアを維持し続けていることが認められる。
そうとすれば、引用商標は、昭和41年に使用が開始され、その後、ヒット商品として現在に至るまで、請求人の取り扱いに係る商品「チョコレート菓子」に使用する商標として、取引者、需要者の間に広く認識され著名性を獲得するに至ったことが認められる。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標と称呼において類似する相紛らわしい商標であり、また、引用商標は、「菓子」について著名な商標と認められ、さらに、本件商標の指定商品は、請求人の使用する商品「菓子」と同ー又は類似の商品を含む密接な関連を有する商品に使用するものである。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合は、取引者、需要者をして、引用商標を容易に連想、想起し、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるといわなければならない。
3 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-03-28 
結審通知日 2006-03-31 
審決日 2006-04-11 
出願番号 商願2004-37542(T2004-37542) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 中村 謙三
井岡 賢一
登録日 2005-01-07 
登録番号 商標登録第4831206号(T4831206) 
商標の称呼 ポンキー 
代理人 佐藤 英二 
代理人 石田 昌彦 
代理人 長谷川 芳樹 

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