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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35
管理番号 1136526 
審判番号 無効2005-89100 
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-08-05 
確定日 2006-05-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4849502号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4849502号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4849502号商標(以下、「本件商標」という。)は、「わした」の平仮名文字を横書きしてなり、平成15年10月31日に登録出願、第35類「広告,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業の斡旋,競売の運営,輸出入に関する事務の代理または代行,書類の複製,速記,筆耕,文書又は磁気テープのファイリング,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,電子計算機又はこれに準ずる事務用機器の操作」を指定役務として、同17年3月25日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。(1)本件商標は、以下に述べるように、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであり、その登録は無効とされるべきである。
請求人は、沖縄県で生産される産品の販路拡大を図るため、次の事業を営むことを目的として、平成5年2月10日に、当時の沖縄県知事・太田昌秀を代表取締役として、資本金2億5,000万円で設立された株式会社である。
1.物産展,見本市,商談会などの企画及び実施
2.県産品の卸売及び小売
3.新商品の企画,開発及び既存商品の改良
4.市場調査等流通情報の収集・分析・提供
5.県産品の宣伝紹介
6.県産品に関連する輸出入業務
7.県,市町村からの受託業務
8.通信販売事業
9.県産品のパイロットショップ,県産品関連の飲食店経営
10.上記に付帯する一切の事業
その後、県知事・太田昌秀が稲嶺恵一と交代したことに伴って代表取締役も交代したが、平成13年7月23日からは、県副知事・牧野浩隆が代表取締役に就任し、現在に至っている。
(2)請求人は、設立以来、順調に成長を遂げ、事業を開始した平成5年11月には、資本金を2億8,000万円に、平成8年7月には3億9,500万円に、同年12月には4億4,500万円に変更し、この間、店舗の名称を「わしたショップ」と名付け、平成11年3月までの間に、東京、名古屋、台北、福岡、大阪、札幌等の各地に、この名称の店舗を開店するなどして、国内のみならず広く海外にまで事業を展開した。しかして、請求人は、事業に関しては当初から平仮名の「わした」の商標を使用してきた。
ちなみに、「わした」とは、「我々の」「私たちの」を意味する沖縄方言で、後出の甲第1号証に表われているように「我した島沖縄」というような用い方がなされる。
その後、平成11年から商標権者が本件登録出願をした平成15年10月31日までの間に、請求人の「わした」の名を冠して開設された店舗が、次の9店舗ある。
平成11年5月 空港わしたショップ
同 14年6月 台北わしたショップ(リニューアルオープン)
同 14年7月 わした京都長岡京店
同 14年11月 わした川崎アゼリア店
同 14年12月 わした大阪駒川店
同 14年12月 わした大阪堂島店
同 15年1月 わした日暮里店
同 15年8月 わした神戸六甲道店
同 15年10月 わした上野店
また、その後登録査定がなされる迄の間に、次の10店舗が開設されている。
平成15年11月 わしたなんばウォーク店
同 16年5月 わした神戸三宮店
同 16年7月 わした静岡店
同 16年8月 わした大阪天神橋筋店
同 16年9月 渋谷わしたショップ(但し、本年7月閉店)
同 16年11月 わした大和店
同 16年11月 わした郡山店
同 16年12月 わした札幌川沿店
同 17年2月 わした佐世保店
同 17年3月 わした鹿児島天文館店
なお、参考までに述べると、査定時以後ではあるが次の2店舗が開設されている。
平成17年4月 わした仙台一番町店
同 17年7月 わした横須賀店
このように事業が発展的に展開し全国的に多数の店舗が開設されてきているので、新聞・雑誌その他情報誌でも頻繁に取り上げられ、「わした」の語を冠した商品・事業は日本国内で広く知られ、多くの需要者に利用されるに至っている(甲第2号証及び甲第3号証)。
(3)請求人は、「わした」の語、又は「わした」の語を冠した次の商標権を保有している。
(a)登録第3249556号商標 第33類
(b)登録第3254321号商標 第30類
(c)登録第3260430号商標 第30類
(d)登録第4347310号商標 第29類
(e)登録第4588953号商標 第29類ないし第33類及び 第42類
(f)登録第4637914号商標 第29類ないし第33類及び 第42類
(g)登録第4662534号商標 第14類なしい第16類、第 18類、第20類、第21類 、第24類、第25類、第2 7類及び第28類
(h)登録第4703308号商標 第16類
(4)以上述べたようなことから、「わした」「わしたショップ」の語、更には「わした」の語を冠した営業表示は、遅くとも登録時において周知のものとなっていたので、本件商標「わした」がその指定役務に使用された場合には、それが請求人と何らかの関わりのある者の業務であると認識され、出所の混同を生じる。特に、商標権者の住所は福岡市であり、請求人が平成8年に開設した「福岡わしたショップ」は九州地方で人気の高い店舗であるから、福岡市において本件商標が使用された場合には、取引者・需要者間に混乱が生じることは、目に見えていると言わざるを得ない。
出所の混同のおそれの有無は、標章の類似性の程度、引用表示の周知著名性及び独創性の程度、商品(役務)間の性質・用途又は目的における関連性の程度、取引者・需要者の共通性、その他の取引の実情に照らし、普通に払われる注意力を基準として総合的に判断されるべきであることは、最高裁判所の判示するところである(平成10年(ヒ)第85号、平成12年7月11日言渡、民集54巻6号1848ページ)。
本件についてこれを見てみると、先ず、本件商標は請求人の周知表示と全く同一である。次に、引用表示の周知性は上記のとおりであり、また、独創性は意表をついたものである。即ち、上述のように「わした」の語は特殊な沖縄方言であり、一般に見られるような、あり触れた普通名称の中から採択されたものではないので、看者・聴者が、この語から受ける印象には独特のものがある。したがって、請求人の経営する「わしたショップ」に頻繁に来店する顧客であっても、「わした」の意味を知る者は少なく、この語そのものとして受け入れているほどである。引用表示は上述のように国内で広く知られており、現に請求人が行なっている展示会・見本市の開催等、役務間の性質等の関連性は高く、取引者・需要者は共通しているので、商標権者が、本件商標を指定役務に使用した場合には、それが、請求人の業務に係るものであると認識するであろうことは、明らかである。
(5)以上述べた理由により、本件商標の登録は無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証(枝番号を含む。)を提出した。
被請求人は、株式会社沖縄県物産公社(以下「物産公社」という。)が設立(平成5年2月10日)される以前(平成3年秋)から、福岡県の百貨店(小倉井筒屋本店、福岡岩田屋本店)において「わしたショップ」を有限会社ワーキングオフィス代表取締役池尻昭文氏(以下「池尻」という。)と共に経営していた。当時、沖縄県工業連合会専務理事である宮城弘岩氏(物産公社設立時の代表取締役専務)と将来の沖縄のあり方を論じており、それが物産公社(第3セクター)設立に発展したと思っている。その後の物産公社と池尻とのトラブルに関し、私共の弁護土との間で取り交わした書面を参考にしていただきたい。
なお、このトラブル発生後、慌てて数多くの商標登録及び店舗の展開をしており、当然、民事裁判にて無効の主張はしていく所存である。
言うまでもなく知的所有は、考え、作り出した者にしかないと確信している。また、問題多い3セクを苦労しながら配当するまでの大幅黒字にしたスタッフを解雇同然にし、予想通り3年で赤字に転落させるなど、笑止千万。
「民間でできることは民間で」これは時の流れ。沖縄では民間での成功を官が奪い、天下り先にし、既得権益と考えている所に問題がありはしないだろうか。

4 当審の判断
(1)本件審判請求の理由及び甲第1号証ないし甲第4号証(枝番号を含む。)を総合してみるに、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、沖縄県で生産される産品の販路拡大を図るため、沖縄県産品の卸売及び小売、市場調査等流通情報の収集・分析・提供、沖縄県産品の宣伝紹介、沖縄県産品のパイロットショップの経営等の事業を営むことを目的として、平成5年2月10日に、当時の沖縄県知事(太田昌秀)を代表取締役として設立された株式会社である。
(イ)請求人は、その経営に係る店舗を平成11年3月までに東京、名古屋、台北、福岡、大阪及び札幌等に開設するなど事業の展開をし、平成11年から本件商標の出願日である平成15年10月31日までの間にリニューアルオープンを含め京都、神戸及び上野等国内(海外)各地に9店舗、本件商標の登録査定時までに10店舗を開設する等、全国にその店舗を開設しており、そして、上記店舗の名称にはいずれにも、「わしたショップ」あるいは「わした」(以下、まとめて「引用使用商標」ともいう。)の語が用いられている。
(ウ)請求人は、平成10年10月に「わしたゴーヤーふりかけ」第22回沖縄の産業まつり優秀県産品工業製品の部・食品部門にて「最優秀賞」を受賞、平成12年10月に「尚和三盆糖」第24回沖縄の産業まつり優秀県産品工業製品の部・食品部門にて「優秀賞」を受賞、さらに平成14年10月に「わしたポーク」第26回沖縄の産業まつり優秀県産品工業製品の部・食品部門にて「奨励賞」を受賞する等している(甲第2号証の2)。
(エ)また、請求人のインターネットホームページの「わしたショップ」には、「わした」あるいは「わしたショップ」の文字をその見出し中に用いて、沖縄県産の商品の販売に関する情報や「わしたショップ」に関連する以下の如き様々な情報が掲載されている。
例えば、甲第2号証の4及び6には、「わしたのオンラインショップ」と称し、「[健康食品]ウコン|もろみ酢|シークワーサー・・・」、「[加工食品]沖縄そば・その他麺類|レトルト・即席食品|・・・」、あるいは「[お酒]琉球泡盛|地ビール|泡盛焼酎」等の商品を紹介した記事が掲載されている。「わしたスタジオ」と称し、「沖縄の県産品製造メーカーをご紹介・・・」との記事と共に、瓶入りの商品を紹介している写真が掲載されている。「わしたアニメ」と称し、「『わした』のオススメ商品を画面で紹介します!!ぜひぜひご覧下さい。」との記事が掲載されている。そのほか「わしたのお得なサービス一覧」と称し、「メルマガ 購読無料! わしたの情報満載!!」、「わした通販ポイン」等の記事、新たに開店予定の店舗情報「わした新ショップオープン! 横須賀上陸!」との記事、特約店募集のための「わしたショップ特約店募集中!!」の記事等が掲載されている。
甲第2号証の5には、「銀座わしたショップ」に関する「銀座わしたショップは、これまでの1階だけから、地下1階まで売り場を広げ扱い品数も3,500から4,000・・・一階フロアーは、お客様とのコミュニケーションで賑わい活気あふれる沖縄のマチグァー(市場)を・・・沖縄の事をもっとしりたい・・・。」等の記事が掲載されている。
なお、上記インターネットホームページは、2005年8月4日(本件商標の出願の後約2年)に画面コピーしたものと認められるが、上記(ア)ないし(ウ)の請求人の事業の内容、事業展開の状況等からみて、本件商標の出願前より既に同様の実情にあったことを推認し得るところである。
(2)以上の事実からみれば、請求人は、その設立以来、引用使用商標を使用し、国内はもとより海外においてもその店舗や通信販売あるいはインターネットホームページ等様々な手段を通じて沖縄県産の商品の販売を行うとともに、同商品の販売に関する情報の提供をするなどして、沖縄県産の商品の市場開拓と供給体制の確立のための事業を行ってきており、そして、平成10年、平成12年及び平成14年には、同人自身、沖縄の産業まつり優秀県産品の「最優秀賞」、「優秀賞」や「奨励賞」等の賞を受賞する等の実績があったことを認めることができる。
そうすると、取引者、需要者は、請求人の展開する「わしたショップ」、あるいはその関連事業である沖縄県産の商品(販売)、同商品の販売に関する情報の提供等に強い関心を寄せていたであろうことは十分に推認し得るところであり、したがって、請求人の使用する引用使用商標は、請求人の取扱いに係る商品及び役務について使用する商標として、さらには同人の事業を表彰する標章として、本件商標の登録出願時(平成15年10月31日)はもとより、登録査定時(平成17年2月15日)を経て今日に至るまで、継続して、取引者・需要者の間に周知、著名となっていたことを認めることができる。
しかして、本件商標は、「わした」の文字よりなること前記のとおりであるところ、該文字は請求人の使用する「わした」とは同一であり、また、同「わしたショップ」の構成文字中に有するものであり、後者の場合、「わした」の文字に強い自他商品、自他役務の識別標識としての機能を有すること明らかであるから、結局、本件商標と引用使用商標とは、互いに同一又は類似する商標よりなるものといわなければならない。
してみれば、本件商標を引用使用商標の使用に係る役務と同一の役務である「商品の販売に関する情報の提供」等を含むその指定役務について使用した場合、これに接する取引者・需要者は、周知、著名な「わしたショップ」あるいは「わした」の引用使用商標を連想、想起し、その役務が請求人又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
なお、被請求人は、引用使用商標が請求人によって採択、使用されるに至った経緯について種々述べるところあるが、本件は、本件商標の登録が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かが検討されるべきものであるところ、かかる観点において、本件商標は上記のとおり判断するのが相当であるから、被請求人の同主張は採用することができない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-02-21 
結審通知日 2006-02-27 
審決日 2006-03-15 
出願番号 商願2003-101938(T2003-101938) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y35)
最終処分 成立  
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 2005-03-25 
登録番号 商標登録第4849502号(T4849502) 
商標の称呼 ワシタ 
代理人 新垣 盛克 

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