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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025
管理番号 1136322 
審判番号 取消2005-30171 
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-06-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2005-02-16 
確定日 2006-04-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第3242985号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3242985号商標(以下「本件商標」という。)は、「POWER TRICK」の文字と「パワートリック」の文字とを二段に横書きしてなり、平成6年5月31日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同8年12月25日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は同17年3月7日にされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
被請求人は、本件商標をその指定商品である「被服」について継続して3年以上日本国内において使用していない。
よって、請求人は、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件審判につき、請求の趣旨通りの審決を求める次第である。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)本件審判の請求の登録日は平成17年3月7日であるから、本件商標が取り消しを免れるためには、被請求人は本件商標が同日前3年以内(以下「要証期間」という。)に同人あるいは専用使用権者または通常使用権者のいずれかが、その指定商品について本件商標を使用していたことを証明する必要がある。
被請求人は、その親会社であるエーデル産業株式会社(以下「エーデル社」という。)に、「ティーシャツ」、「パーカー」などの被服について、現在にいたるまで、本件商標を使用させている旨主張し、乙第2号証ないし乙第18号証を提出しているが、以下に詳述する通り、被請求人の主張には根拠がない。
(イ)乙第2号証は、「登録済み商標に関する約定」と題する書類であるが、約定の対象となる登録商標の登録番号すら書かれておらず、約定の対象・目的・範囲が特定できないため、乙第2号証に基づいては、被請求人とエーデル社との間に本件商標について使用許諾契約があったと認定することはできない。
したがって、エーデル社は、本件商標についての通常使用権者であるとはいえず、被請求人が提出した、エーデル社を主体とする乙各号証をもってしては、本件商標が要証期間内にその指定商品について被請求人あるいは専用使用権者または通常使用権者によって日本国内において使用されたことを証明していない。
仮に、エーデル社が本件商標についての通常使用権者であったとしても、以下に述べる理由によって、被請求人の主張は根拠がないものである。
(ウ)被請求人によれば、乙第3号証ないし乙第10号証は、株式会社パブロ・クリエーション東京店からの発注を受けてTシャツ等を納品するまでの関連取引書類であるとのことである。これら取引書類のうち、乙第3号証、乙第4号証、乙第7号証及び乙第8号証には、確かに「Tシャツ」、「パワートリック」の文字が表されており、被請求人によれば、乙第5号証にあるプリント柄見本が株式会社パブ口・クリエーションから発注を受けたTシャツに使用された商標であるとのことである。
しかし、乙第5号証にあるプリント柄見本は、一般人をして判読できないほどにデザイン化された文字あるいは他の語又は図形と結合された態様で表されており、これらプリント柄見本に表された商標が本件商標と社会通念上同一であると考えることは到底できない。乙第6号証にあるラベルも同様で、本件商標と社会通念上同一の商標ではない。
(エ)乙第3号証は、その証拠価値にも問題がある。乙第3号証は、その作成日が2004年2月27日とされており、要証期間内に作成された書類のようにも見える。しかし、乙第3号証にはその上部中央に「03S/S」とあり、アパレル関係において「S/S」とは「スプリング/サマー」を意味するので、乙第3号証の上部中央には「2003年スプリング/サマー」を意味する語が記されていることになる。とすると、乙第3号証は少なくとも2003年の春以前の発注等に関する書類であると推測されるところ、書類の作成日としては、2003年の春よりも1年近くも経過した2004年2月27日となっており時間的整合性が全く取れず、証拠としての信憑性に著しく欠けるものである。
(オ)乙第8号証についても、その証拠価値に疑問がある。乙第8号証は、エーデル社がTシャツを納品した際、納品先であるパブロ・クリエーションから受け取った物品受領書であるが、通常の取引において、物品受領書は受領の事実を確認するための受領印を納品先から受けた後に、納品の事実を証するために納品者が持ち帰る性質の書類である。とすると、乙第8号証は、Tシャツの納品者であるエーデル社が所持しているべき書類である。
しかしながら、乙第8号証は、その上部に「FROM(株)パブロクリエーション東京店 03‐3868‐1094 2005年4月12日」とあり、本件審判の請求の登録日の後に株式会社パブロ・クリエーションからいずこかにファックスされた形跡が見て取れる。以上からすると、乙第8号証は、納品先であるパブロ・クリエーンョンが所持していたと推測されるので、一般の取引の実情に照らすと極めて不自然であるといわざるを得ない。
また、乙第8号証の「備考」の欄には、受領印として株式会社パブロクリエーションの押印があるが、この受領印の郵便番号は3桁となっている。旧郵便番号は平成10年2月2日に7桁の新郵便番号に変更になっているので、7年以上も3桁の旧郵便番号の社判を使用していることになり極めて不自然である。
一方で、この社判によれば電話番号は10桁となっている。東京都の電話番号が10桁となったのは、平成3年1月1日であるから、乙第8号証は平成3年1月1日と平成10年2月2日との間に作成されたものとみるのが自然である。
さらに、乙第8号証と乙第7号証にある「A No 176423」は伝票番号であると推測され、「1521399」は商品コードであるところ、これらの数字は他の乙各号証には表れておらず、対応関係がまったくもって不明である。さらに、乙第8号証ないし乙第10号証にある納品数「2592枚」は発注数「3240枚」(乙第3号証及び乙第4号証)と異なっている。
いずれにしろ、乙第8号証は、所持者、受領印、納品枚数などについても不自然な点が多数認められるだけでなく、他の乙各号証との整合性もないため、真正な書類であるとはにわかには信じがたい。
(カ)乙第9号証及び乙第10号証については、本件商標との関連が不明であり、証拠価値が認められない。
(キ)乙第11号証は、本件審判の請求の登録日の後に作成された書面であって、証拠価値が認められない。また、書類の名義人として会社名のみが記されているが、この種の書類には書類の名義人として会社名と併せて会社代表者名が記されるのが通常であることに照らせば、乙第11号証は極めて不自然な書類である。
(ク)乙第14号証も、本件商標との関連性が不明である。また、確かに乙第12号証及び乙第13号証のいずれにも「パワートリック」の文字ならびに「パーカー」など「被服」に含まれる商品名が記されている。
被請求人によれば、乙第12号証ないし乙第14号証は、カジュアルショップギャルへの商品販売関連の取引書類であり、カジュアルショップギャルに販売した「パーカー」及び「カーディガン」が乙第15号証及び乙第16号証に示されているとのことである。
確かに、乙第15号証及び乙第16号証に写されている「パーカー」と「カーディガン」に付されたタグには、乙第12号証ないし乙第14号証に表れる商品ナンバーと合致するナンバーが印字されている。
しかしながら、乙第15号証と乙第16号証とは、写真の撮影日も撮影者も不明であるばかりではなく、乙第15号証と乙第16号証のタグの下半分には商品の製造者やその連絡先など、当然記されているはずの事項が何一つ記されておらず、極めて不自然であり、証拠としての信憑性にかけるものといわざるを得ない。
(ケ)乙第18号証は、2005年3月3日の日付であり、要証期間外のものであるから、証拠価値が認められない。
(コ)以上の通り、被請求人が提出した乙各号証によっては、被請求人が本件商標を使用したと主張するエーデル社が、本件商標にかかる通常使用権者であること及び本件商標がその指定商品について要証期間内に使用されたことのいずれも証明されていない。
すなわち、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、同人、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求にかかる指定商品についての本件商標の使用をしていることを証明していない。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証を提出した。
(1)被請求人は平成16年6月15日にその名称を「株式会社ベル・フィーユ」に変更登記しており(乙第1号証)、その変更手続を行っていなかったので、本件商標について平成17年4月15日付けで登録名義人の表示変更登録申請書を提出した。
(2)被請求人は、平成11年1月20日付けで本件商標について被請求人の親会社であるエーデル社(以下「通常使用権者」という。)に通常使用権を許諾している(乙第2号証)ので、以下、エーデル社が、本件商標の使用について、本件商標の指定商品に含まれる「Tシャツ」、「パーカー」、「カーディガン」などを現在に至るまで販売していることを詳細に立証する。
(3)エーデル社は、その営業員が「Tシャツ」、「パーカー」、「カーディガン」などのサンプルを持って、卸売業者や小売店に飛び込んでこれらを売り込んでいくという営業活動を行っている。そして、注文が取れれば、中国の工場に商標を付した「Tシャツ」、「パーカー」、「カーディガン」などを生産させ、これらを卸売業者や小売店に販売しているのであるが、いずれの商標を使用するかは卸売業者や小売店の希望により選択させており、エーデル社自身の商標やエーデル社が許諾を受けている本件商標などを使用したり、あるいは卸売業者や小売店が有する商標を付して「Tシャツ」、「パーカー」、「カーディガン」などを販売する場合もある。
(4)そこで、本件商標を使用した「Tシャツ」を販売した取引書類等を提出する(乙第3号証ないし乙第11号証)。乙第3号証は、平成16年3月1日付け東京都台東区柳橋2の2の2丸一ビル所在の株式会社パブロ・クリエーション東京店からの本件商標を使用した「Tシャツ」のエーデル社への発注書である。乙第4号証は、平成16年3月4日付けエーデル社から株式会社パブロ・クリエーションへの生産進行確認レターである。乙第5号証は、株式会社パブロ・クリエーションから発注を受けたTシャツに使用する本件商標のプリント柄の見本であるが、この見本をもとにエーデル社は、平成16年4月7日付けで中国の寧波象山市所在の寧波信豪国際貿易有限公司に生産を依頼している(乙第6号証)。この乙第6号証の生産指図書をみれば判るように、「Tシャツ」のタグ・首ラベルにも本件商標を付すように指示している。そして、納品書控(乙第7号証)、物品受領書(乙第8号証)、得意先元帳(請求書控)(乙第9号証)及び出庫報告書(乙第10号証)から明らかなように、本件商標を使用した「Tシャツ」を平成16年4月30日付けで株式会社パブロ・クリエーションに販売し、株式会社パブロ・クリエーションの各店に納品している。尚、株式会社パブロ・クリエーションは本件商標を使用した「Tシャツ」を確かに買受けたという証明をしている(乙第11号証)。
このように、エーデル社は本件商標を使用しており、その使用は本件審判請求予告登録前3年以内であることは明らかであり、請求人の主張は認められないものである。
(5)本件商標を使用した「パーカー」、「カーディガン」などを販売した取引書類等を提出する(乙第12号証ないし乙第16号証)。乙第12号証は、平成16年8月26日付け大阪市平野区瓜破2-6-13所在のカジュアルショップギャルからの本件商標を使用した「パーカー」、「カーディガン」などのエーデル社への発注書である。乙第13号証及び乙第14号証は、平成16年9月30日付けエーデル社からカジュアルショップギャルへの納品書控及び得意先元帳(請求書控)である。そして、乙第15号証及び乙第16号証は、カジュアルショップギャルへ販売した本件商標使用の「パーカー」及び「カーディガン」である。それぞれの商品の写真から明らかなように、本件商標をタグ及び首ラベルに付している。また、それぞれの商品ナンバーは乙第12号証ないし乙第14号証の各伝票と一致している。
このように、エーデル社は本件商標を使用しており、その使用は本件審判請求予告登録前3年以内であることは明らかであり、請求人の主張は認められないものである。
(6)現時点でも本件商標を使用した商品取引が継続していることを示す取引書類等を提出する(乙第17号証及び乙第18号証)。乙第17号証は、エーデル社が平成17年2月23日付けで中国の寧波国際コンベンションセンター所在の寧波保税区三豪国際貿易有限公司に生産を依頼している生産指図書である。これは上記カジュアルショップギャルからの本件商標を付した「パーカー」の発注依頼によるものであり、カジュアルショップギャルからは平成17年3月3日正式に発注書を戴いている(乙第18号証)。
このように、エーデル社は本件商標を更に継続して使用しており、請求人の主張は全く認められないものである。
(7)以上詳述したとおり、本件商標は、本件審判請求予告登録前3年以内に、本件指定商品について、エーデル社が日本国内において使用している事実が明らかに存在するので、請求人の主張事実を認める理由がないものである。

4 当審の判断
請求人は、乙第2号証は「登録済商標使用に関する約定」と題する書類であるが、約定の対象となる登録商標の登録番号すら書かれておらず、約定の対象・目的・範囲が特定できないため、乙第2号証に基づいては、被請求人とエーデル社との間に本件商標について使用許諾契約があったと認定することはできない旨主張しているので、まずこの点について検討するに、通常使用権は、商標権者が他人にその商標権について使用の許諾をすることにより発生するものである。そして、被請求人が、本件商標について被請求人の親会社であるエーデル社に通常使用権を許諾している(乙第2号証)旨主張していることから、乙第2号証の「登録済商標使用に関する約定」に登録番号が書かれていないことをもって、エーデル社(以下「通常使用権者」という。)が本件商標に関する通常使用権者でないとまではいい得ない。
次に、被請求人は、乙第1号証ないし乙第18号証を提出し、通常使用権者が、本件商標の使用について、本件商標の指定商品に含まれる「Tシャツ」、「パーカー」、「カーディガン」を現在に至るまで販売している旨主張している。
そこで、被請求人の提出に係る前記証拠についてみるに、乙第3号証は、平成16年3月1日付け株式会社パブロ・クリエーションから通常使用権者への「Tシャツ」の発注書である。乙第4号証は、平成16年3月4日付け通常使用権者から株式会社パブロ・クリエーションへの生産進行確認レターである。乙第6号証は、通常使用権者が見本をもとに、平成16年4月7日付けで中国に「Tシャツ」の生産を依頼していること、乙第7号証の納品伝票(控)、乙第8号証の物品受領書、乙第9号証の得意先元帳及び乙第10号証の出庫報告書は、通常使用権者が「Tシャツ」を平成16年4月30日付けで株式会社パブロ・クリエーションに納品していることがそれぞれ認められる。また、乙第11号証によれば、株式会社パブロ・クリエーションは本件商標を使用した「Tシャツ」を確かに買受けたという証明をしている。そして、乙第3号証、乙第4号証、乙第7号証及び乙第8号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が記載されている。
してみれば、本件商標は、被請求人が提出した証拠を総合勘案すれば、通常使用権者により、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を、継続して本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中「Tシャツ」について使用していたものといわなければならない。
なお、請求人は、乙第8号証が所持者、受領印、納品枚数などについて不自然な点が多数認められるだけでなく、他の乙各号証との整合性もないため、真正な書類であるとはにわかには信じがたい旨主張しているが、納品数と発注数が異なること、受領印が不自然であること等をもって、真正な書類ではないとまではいい得ないから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-11-16 
結審通知日 2005-11-22 
審決日 2005-12-07 
出願番号 商願平6-53975 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩浅 三彦板垣 健輔 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 小川 有三
岩崎 良子
登録日 1996-12-25 
登録番号 商標登録第3242985号(T3242985) 
商標の称呼 パワートリック 
代理人 西川 惠清 
代理人 森 厚夫 
代理人 西元 勝一 
代理人 加藤 和詳 
代理人 中島 淳 

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