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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y05
管理番号 1134868 
審判番号 無効2005-89056 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-28 
確定日 2006-04-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第4790085号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4790085号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4790085号商標(以下「本件商標」という。)は、「オール・イブ」の文字を標準文字で書してなり、平成15年12月2日に登録出願され、第5類「薬剤」を指定商品として、同16年7月30日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第16号証(枝番を含む。)及び資料1を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号該当性
(ア)本件商標について
本件商標は上記のとおりの構成よりなるところ、構成中「オール」の文字(語)は、英語の「ALL」に通じ、「全て」、「全部」等の意味の語として、これに続く他の名詞や行為等を修飾するする言葉である。また、後半の「イブ」の文字(語)は、「EVE」に通じ、「前日」、「前夜祭」等を表す言葉として、一般に馴染まれ日本語化して使用される言葉である。したがって、発音上、「オール」と「イブ」との間に一呼吸を挟んで発音する形となるため「イブ」の部分が強く認識されるということができる。
(イ)請求人が引用する商標について
請求人が引用する商標「イブ」、「EVE」(以下「請求人使用商標」という。)は、請求人によって昭和60(1985)年12月に「鎮痛・解熱剤」に使用され、その販売を開始し(甲第9号証の1及び同号証の2、薬事日報)、2003年現在における当該商品に占めるシェアは11.9%(年商は小売価格ベースで約59億円)となっており、同業他社により多数販売されている「鎮痛・解熱剤」の中でも日本のトップ4番に入る商品となっている(店頭向医薬品市場の販売動向2003年度SDIアニュアルレポート:甲第10号証)。
また、請求人使用商標に係る広告費用は、平成10年度1億円、同11年度7300万円、同12年度1億2500万円、同13年度1億100万円、同14年度5500万円、同15年度5400万円である(甲第12号証)。
したがって、請求人使用商標は、「鎮痛・解熱剤」について長年使用された結果、本件商標が出願される前より請求人の商品を表すものとして著名商標となっている。
(ウ)「風邪薬」の使用について
請求人は、上記以外にも「風邪薬」に「エスタックイブ/S.TAC EVE」を用いているが(甲第13号証、甲第14号証)、これについて単に「イブ」といえば請求人の上記風邪薬を指すものとして認識されている。
(エ)小括
そうすると、請求人使用商標の著名性とその販売実績とを合わせ考え、また、「風邪薬」について「エスタックイブ/S.TAC EVE」を用いており、商品「薬剤」との関係において「イブ」といえば、取引者、需要者は請求人の上記商標、商品を直ちに連想するものであり、本件商標のような「イブ」に主要部があると認識される商標が「薬剤」について使用されるときは、あたかも請求人の商品であるか、あるいは請求人と何らかの業務上の関連を有する者により提供される商品であるかのごとく誤認、混同を生じることは明らかである。
(2)判決にみる「混同のおそれ」について
最高裁は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同のおそれ」の解釈について、他人の著名な商標を商品、役務等(以下「商品等」という。)に使用した場合に、その著名な商標権者の商品等との間で現実に混同が生じるおそれがある場合(狭義の混同)のみならず、著名商標の商標権者との間に何らかの営業上の関係(親子関係であるとか関連企業であるとか)があるかのように誤信されるおそれがある場合(広義の混同)も含むと判示している(平成10年(行ヒ)第85号に関する判決、平成12年7月11日言渡し)。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求人の著名引用商標と要部において共通する商標であり、請求人の著名商標・商品との間で混同(「狭義の混同」及び「広義の混同」)を生じさせるおそれのある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当するものとして、同法第46条第1項に基づき無効とされなければならない。

3.被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

4.当審の判断
(1)請求人使用商標について
甲第9号証ないし同第12号証(枝番を含む。)に徴すれば、以下の事実が認められる。
(ア)昭和60(1985)年12月14日及び同17日付け薬事日報(甲第9号証の1、の2)によれば、請求人は、請求人使用商標を昭和60年12月に販売を開始した「鎮痛・解熱剤」に使用したことが認められる。
(イ)「2003年度 SDIアニュアルレポート」(甲第10号証)における薬効別上位銘柄の販売状況によれば、請求人が販売する「鎮痛・解熱剤」(イブ)は、本件商標の登録出願前である2001年度ないし2003年度において、57億円前後の販売額、そのシェアは約12%であり、各メーカーの「鎮痛・解熱剤」の売上順位中第4位にランクされていること及びその右欄の「主要メーカー手持ち商品一覧」には「【エスエス製薬】イブ(A錠)」と記載されていることがそれぞれ認められる。
(ウ)「鎮痛・解熱剤」の商品カタログ(甲第11号証)によれば、請求人は、「EVE」、「イブ(小さく○内にR)A錠」及び「イブA錠」の文字よりなる商標を使用していることほか、「イブA錠の確かな効きめと安全性」との見出しの下「イブA錠は、1990年9月の発売以来市販後における有効性及び安全性の調査を実施してまいりました結果、痛み、熱に対してすぐれた効果を発揮することが確認されています。… 」との記載が認められる。
(エ)請求人の宣伝課長作成になる「イブA錠」の宣伝広告費として、平成10年度1億円、同11年度7300万円、同12年度1億2500万円、同13年度1億100万円、同14年度5500万円、同15年度5400万円との記載がされていること(甲第12号証)。
(オ)そうすると、請求人使用商標は、上述の甲号各証を総合的に勘案して検討すれば、少なくとも本件商標の登録出願時である平成15年末には、取引者、需要者間において、請求人の取り扱いに係る商品「鎮痛・解熱剤」に使用する商標として広く認識され著名性を獲得し、これが現在も継続しているということができる。
(2)「風邪薬」の使用について
また、請求人は、「風邪薬」について「イブ」の文字部分を顕著にした「エスタックイブエース」を使用し、「イブ」の文字を含む商標を上述以外の薬剤に展開していることが認められる(甲第13号証、同第14号証)。
(3)本件商標について
本件商標の構成は、前記したように、「オール・イブ」の文字よりなるところ、前半部に位置する「オール」の文字は、「すべて、全部」を意味する英語「all」の片仮名表記として一般に親しまれ使用されている文字(語)であり、後半部の「イブ」の文字は、そもそもは「前夜祭」「旧約聖書に登場する人類最初の女性」等の意味合いを有する語であるから、「オール」と「イブ」の文字を結合してなるものと容易に理解でき、かつ両文字を常に一体不可分に認識しなければならない格別の事情も見出すこともできない。そうすると、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「イブ」の片仮名文字部分に着目し、当該文字部分を自他商品の識別標識としての取引に当たることがあるといえる。
(4)出所の混同について
請求人使用商標は、上述のように「イブ」または「EVE」文字からなる商標を「鎮痛・解熱剤」に使用し、高い著名性を得ているものである。
加えて、本件商標の指定商品「薬剤」は、請求人使用商標が使用され、著名性を獲得している商品を含むものであるから、両者の需要者、取引者も共通にしているということができる。
これらの事情を総合的に判断すると、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者をして、構成中の「イブ」の文字に着目し、上述の既成語の意を越えて、請求人使用商標ないしは「イブ」を顕著に表した風邪薬に使用される商標を連想、想起させて請求人の業務に係る商品との出所について誤認を生じさせるか、いわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品か事業を営みグループに属する関係にあると誤信させ、出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
(5)むすび
したがって、本件商標は、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-02-10 
結審通知日 2006-02-16 
審決日 2006-02-28 
出願番号 商願2003-111579(T2003-111579) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y05)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高野 義三
特許庁審判官 中村 謙三
井岡 賢一
登録日 2004-07-30 
登録番号 商標登録第4790085号(T4790085) 
商標の称呼 オールイブ 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 石川 義雄 
代理人 小出 俊實 

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