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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
管理番号 1134847 
審判番号 無効2005-89024 
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-02-22 
確定日 2006-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4797363号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4793763号商標(以下「本件商標」という。)は、「Deep Love」の欧文字を標準文字で書してなり、平成16年2月2日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同16年8月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第115号証(枝番号含む)を提出した。
請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は商標法第46条第1項第1号の規定により無効にされるべきである。以下にその理由を述べる。
(1)商標法第4条第1項第7号該当について
(ア)本件商標は、その出願時において、書籍等の作品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者間に広く認識されていた題号「DeepLove」と同一であり、著者の許諾を得ることなく出願、登録されたものであるから、被請求人が本件商標を採択、使用することは、作品「Deeplove」の名声及びその顧客吸引力に便乗し、不正の目的を持って使用するものであり、公正な商品の取引秩序、すなわち、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(イ)作品「DeepLove」の周知・著名性について
「DeepLove」は、請求人の代表取締役であるYoshi氏こと湯下善之氏が執筆した、女子高校生を主人公とした物語である。
「DeepLove」は、2000年5月に請求人である有限会社ザブンが運営する携帯サイト「ザブン」において連載が開始され、サイトヘのアクセス数が2,000万件に達した。
その後、書籍化され、2004年7月には販売部数200万部に達した。
また、ビデオ作成、そのビデオのWOWOWでの放映や劇場版映画化もされて、ビデオの販売数は2004年5月までには2万本が販売されたし、映画も盛況であった。
さらに、テレビドラマ化や漫画化もされた。
(ウ)「DeepLove」の語は、著者であるYoshi氏が自ら創案した造語であり、イミダス(2005年版)にも掲載されている。
また、本件商標の出願時において、書籍、ビデオ、映画、漫画、テレビドラマ等の作品として「DeepLove」が周知であったことは、先に述べたとおりであるから、本件商標の出願時には「DeepLove」といえば、書籍、映画等の作品を想起・観念し、その出所を著者Yoshi氏及び請求人と認識し得たといえる。
さらに、被請求人が、主として使用許諾を受けた商標を使用した商品の企画、製造、販売を行っている企業であること、本件商標と周知・著名商標「DeepLove」とは、ほぼ同一であること、被請求人が、本件商標の登録後に、同一の商標を第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類及び第25類において出願していること等から、被請求人は請求人商標の顧客吸引力にただ乗りする意図で本件商標を採択、出願したものであり、不正の目的及びひょう窃の意図を有していたと推認する。
また、周知商標である「DeepLove」には、著者及び請求人の活動に対する尊敬や信用が付加価値として備わっているため、本件商標を使用した商品は、それに接した一般消費者に、Yoshi氏や請求人を連想させ、その商品に本来は存在しなかった尊敬や信用を見いださせることで、購買意欲を誘発させる可能性があることから、本件商標をその指定商品に使用することは信義則に反するものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。
したがって、本件商標は、正当な権原を有していないものによる出願であり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当について
本件商標は、欧文字で「Deep Love」と横書きにしてなり、請求人が書籍等に使用する周知商標「DeepLove」と同一であること及び書籍等の作品「DeepLove」が、本件商標の出願時において周知となっていた事実は、前記したとおりである。
さらに、「DeepLove」に関する記事が、若者向けファッション雑誌「Cawaii!」、「SCawaii!」、「Boon」、「egg」及び「Popteen」等に掲載されている事実から、本件商標の指定商品と、「DeepLove」は指定商品において関連性がある。
また、人気を博した書籍や映画の題名や登場キャラクター等の商品化は、一般的に行われている事実も多い。
本件商標の指定商品の需要者には、作品「DeepLove」の主な需要者である女子高生を中心とした若者が当然含まれるため、その需要者を共通にするものである。
したがって、作品「DeepLove」と同一である本件商標をその指定商品に使用したとき、これに接する需要者は、作品「DeepLove」を容易に連想、想起し、取引者及び需要者をして、当該商品があたかも請求人又は請求人と何等かの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのごとく商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
答弁の理由
(1)作品「DeepLove」の周知・著名性について
請求人は、「DeepLove」の語が、請求人の創作した作品を表すものとして、女子高生を中心とした若者に周知・著名となっているとの主張を行っているが、本件登録の無効理由に該当するほど、「DeepLove」の語が、請求人の創作した作品を表すものとして周知・著名となってはいない。
次に、請求人は、ビデオの販売数が2万本であることをあげているが、例えば、映画「タイタニック」のDVDとビデオを合わせた販売数は約450万本である。請求人の作品の販売数が非常に少ないことがよく分かる。
また、映画にしても、上映された映画館は全国で約20館にすぎず、「タイタニック」の約263館、「千と千尋の神隠し」の約336館に比べれば、請求人の作品の映画の上映館数は、明らに少ないものといえる。
さらに、請求人は、映画公開期間には映画雑誌でメジャー映画とともに紹介されたと主張しているが、甲第39〜40号証を見ても掲載されている映画の中で知っている映画は1つもない。したがって、映画雑誌で紹介されることは周知であることの証拠にはならない。また、アンコール特別ロードショーが行われたとあるが、東京で上映されたのは1館だけであり、上映時間も夕刻からに限られている。さらに、映画の成功を示す場合には、通常、観客動員数と興行収入を示すものであるが、審判請求書及び添付された資料を見てもそのことについてまったく記載がないため、映画は、人気がなかったものと思われる。
したがって、映画が上映されたことが即、人々に広く知られたという周知性を示す証拠にはならないものと思われる。
また、請求人は、請求人の作品のテレビドラマの放映を上げているが、甲第55号証を見ると放映時間は金曜の深夜1時半からである。この時間はほとんどの人が寝ている時間であると思われるし、テレビ局も多くの人が見るであろうと考えるのであれば、せめて夜の12時までに放映するはずである。したがって、これも人々に広く知られたという周知性を示す証拠にはならないものと思われる。
なお、請求人は、あたかも請求人が「Deeplove」の語を書籍等の商品に商標として使用していたかのように記載している。
しかし、請求人が「DeepLove」の語を書籍等に使用していたのは、作品のタイトル・題号としてであって、商品や役務の識別標識としての商
標としてではない。したがって、いくら使用しても商標として周知になることはない。
(2)商標法第4条第1項第7号の該当性について
請求人は「DeepLove」の語は、自らが創案した造語であると述べているが、当該語は英語で“深い愛”を示す語であり、英和辞典の「deep」の用例に掲載されているとおり、普通に用いられている一般的な語である。被請求人が本件商標を選択し、出願したのは、「DeepLove」の語が“深い愛”という観念が生じる一般的な語であるためであり、請求人の作品の顧客吸引力にただ乗りする意図で本件商標を出願し登録を受けたわけではない。
したがって、本件商標は、不正の目的及びひよう窃の意図を持って出願されたものではなく、公正な取引秩序を乱すおそれもないため商標法第4条第1項第7号の無効理由を有していない。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
請求人は、若者向けのファッンョン雑誌に作品「DeepLove」に関する記事が掲載されているため、本件商標の指定商品「被服」と請求人の作品は関連があると主張している。しかし、掲載されているのは、単に請求人の作品「DeepLove」の書籍と作品を映画化した映画の宣伝広告である。
したがって、ファッション雑誌に請求人の作品「DeepLove」の書籍と作品を映画化した映画の宣伝広告が掲載されていれば、請求人の作品の書籍や映画の存在は、認識すると思われるが、掲載されていたからといって、これらの雑誌を読んだ者が、請求人が作品「DeepLove」に関連した被服に関する事業を行っているとは、誰も思わない。
また、仮に「DeepLove」の語が、請求人の作品を示すものとして著名になっていたとしても、それは作品の題名として著名になっているわけであり、「DeepLove」の語が、特定の商品や役務を表示する商標として著名になっているわけではない。
したがって、本件商標を商品「被服」に使用しても、請求人の作品「Deeplove」と出所の混同を生じさせるおそれはなく、商標法第4条1項15号に該当することはない。

4 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、「Deep Love」の文字を書してなり、その指定商品を第25類「被服」とするものである。
そして、該構成文字中の「Deep」の文字は「深い」を意味し、同じく「Love」の文字は、「愛」を意味する平易な英語として、ともに我が国において広く知られている語であるから、本件商標よりは、「深い愛」の観念を生ずるものである。
請求人は、「DeepLove」の語は、請求人代表者が自ら創案した造語であると主張しているが、請求人代表者が、作品の題号として考え、採用したとしても、上記のように、「Deep」及び「Love」の語は、一般に広く知られているものであり、「deepLove」の語が「深い愛」を意味する語として英和辞典にも掲載されている「乙第1号証:新英和中辞典(株式会社研究社・第3刷・1998年発行)」ことからすると、直ちに親しまれた意味合いを認識させることのないような造語であるとはいうことができない。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
(ア)請求人の提出に係る甲各号証によれば、「DeepLove」(以下「引用標章」という。)は、請求人の代表者が執筆した、女子高校生を主人公とした物語の題号であり、2000年5月に請求人である有限会社ザブンが運営する携帯サイト「ザブン」において連載が開始され、その後、書籍、ビデオ、映画、漫画、テレビドラマ等に作品化され、その書籍及び映画化に関連する記事が、各種新聞、雑誌において紹介されたことが認められ、本件商標の出願時及び査定時には、上記作品の題号として、女子高校生を中心として相当程度知られていたものと認めることができる。
しかしながら、本件商標の上記した指定商品と引用標章が題号として使用される上記書籍、ビデオ等の商品は、一般消費者をその需要者とするものの、それぞれの商品の生産者、販売者、取扱い系統、用途等において明確な差異を有するものと判断するのが相当である。また、引用標章が題号として使用される商品の需要者は、女子高校生を中心とする若者と認められ、本件商標の指定商品の需要者は、若者に限られるものではないから、両者の商品の取引者及び需要者についても、共通性は、相当弱いものというべきである。
請求人は、人気を博した書籍や映画の題名や登場キャラクター等の商品化は、一般的に行われていることから、本件商標をその指定商品に使用した場合、その取引者及び需要者に、当該商品があたかも請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある旨主張しているが、人気を博した書籍等について、常に商品化されるとは限らないし、本件作品の特定のキャラクター等を商品化し、それが知られているというような特段の事情も認められないから、請求人の主張は、採用できない。
(イ)上記(ア)で認定したとおり、引用標章は、本件商標の出願前より、請求人代表者による著作の題号として、書籍、ビデオ、映画等に使用され 本件商標の出願時及び査定時において、女子高校生を中心とする需要者に相当程度知られていたことは、認められるものの、引用標章の独創性の程度は、本来的に「深い愛」の意味合いを認識させるにすぎず、相当低いといわざるを得ないものであって、本件商標の指定商品と引用標章が題号として使用されている商品との関連性の程度もそれほど強いものとはいえないことなどを総合すると、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、その商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に、何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当について
本件商標は上記した構成よりなるところ、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な印象を与えるような文字又は図形からなるものでなく、また、本件商標を指定商品について使用することが、社会公共の利益・一般道徳観念に反するものとすべき事実は認められず、さらに、他の法律によってその使用が禁止されている事実も認められないから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
(3)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2006-02-09 
結審通知日 2006-02-15 
審決日 2006-03-01 
出願番号 商願2004-12750(T2004-12750) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Y25)
T 1 11・ 22- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 善久 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
内山 進
登録日 2004-08-27 
登録番号 商標登録第4797363号(T4797363) 
商標の称呼 ディープラブ 
代理人 小林 彰治 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 藤沢 正則 
代理人 鳥海 哲郎 

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