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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない Y37 |
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管理番号 | 1134631 |
審判番号 | 不服2004-18293 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-05-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-03 |
確定日 | 2006-03-31 |
事件の表示 | 商願2003-85143拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、後掲のとおりの構成よりなり、第25類及び第37類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成15年9月30日に登録出願されたものである。 そして、その指定商品及び指定役務については、当審における同16年9月3日付けの手続補正書により、第37類「靴の修理,靴の形状寸法の修正」に補正されたものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、「本願商標は、図形とその右隣に『靴調整士』の文字を横書きしてなる結合商標であるが、一般に『○○士』は『義肢装具士』のように国等が行う試験に合格した者が取得できる資格を表すものとして使用されているものである。してみれば、その構成中の『靴調整士』を一私人たる出願人が自己の商標として指定商品及び指定役務について使用した場合、該商品及び役務があたかも前記資格の一種を有する者の商品又は役務であるかのごとく、需要者に誤認され、商取引の秩序をみだすおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 本願商標は、後掲のとおりの構成よりなり、その構成中に「靴調整士」の文字を含んでなるものである。 しかして、末尾に「士」の付された語の通常の意味は、「広辞苑」第5版(1998年11月11日発行)や「講談社カラー版日本語大辞典」(1995年7月3日発行)によれば、「一定の資格・役割をもった者」、「特別の資格・職業の人」などといったものであり、その用語例として、「弁護士」、「栄養士」、「学士」、「代議士」、「公認会計士」等が挙げられていることが認められる。ここにいう一定の資格に何が含まれるかについては、格別の制限が付されていないから、形式的には、国家資格(法令に根拠を有するもの)、民間資格(それ以外のもの)のいずれをも含み得ることになる。 しかし、末尾に「士」の付された名称の中で、一般国民にとって接する機会が多く、一般国民にとって知られている度合いの大きいものの多くは、上記「弁護士」、「栄養士」、「公認会計士」を始め、税理士、建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士など国家資格に係るものであり(なお、前記「代議士」は、衆議院議員の俗称であって、法令に基づく名称ではないが、衆議院議員が法令に基づく地位であることは明らかであるから、国家資格に係る名称であることに変わりはない。)、しかも、その状態が古くから続いてきていることは、当審において顕著である。 また、末尾に「士」の付された名称のうち、国家資格に係るものは、国家が、公共の福祉その他政策上の目的のために、国民の職業選択の自由を制限してでも、一定の能力を有すると判定された者に限って一定の地位ないし権限を付与する必要があると認めて、法令をもってそのように定めたものであり、そのために、国家資格に伴う地位ないし権限は、必然的に対世的かつ排他的なものとなる。これに対して、民間資格は、上記のような必要に基づくものでも、法令に根拠を有するものでもなく、対世的かつ排他的な地位ないし権限の付与を伴うものでもない。このように、国家資格と民間資格とでは、一般国民に対して現実に果たしている役割の重要性において比較にならない相異がある。 これらの事情の下では、一般国民は、末尾に「士」の付された名称に接した場合、一定の国家資格を付与された者を表していると理解することが多いとするのが相当である。 これを本願商標について見るに、その構成中の「靴調整士」の文字部分については、これに接する取引者、需要者は、その構成文字よりして、例えば「靴の調子を整え過不足をなくし、程よくするための資格を有する者」のごとき意味合いを、認識、把握するとみて差し支えなく、もって本願指定役務に係る業務を含む請求人(出願人)の業務の内容と関連づけて認識すると見るのが相当である。 ところで、我が国には、靴の調整に関する公的資格というものは存在しないが、足に関する基礎知識と靴合わせの技能を習得し、足の疾病予防の観点から、個人の正しく合った靴を販売する専門家について、「シューフィッター」と称される民間資格があり、該資格は「靴調整士」と称されていることが、新聞記事及びインターネットのサイトの情報からうかがい知ることができる。 また、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする「義肢装具士」という厚生労働省所管の国家資格があるところ、該資格を有する者は、個人の身体の症状や状態に合わせて義肢装具の製作適合等を行うものであって、その職種の特性にかんがみ、医学的見地から靴の製作に関する業務を担当する義肢装具士が存在している実情もある。そして、該資格の名称は、義肢装具士法によって、その資格名称独占となっているものである。 以上のことからすれば、その構成中に「靴調整士」の文字を有してなる本願商標に接する需要者、取引者は、これよりは、上記国家資格である「義肢装具士」のほかに、身体と装着物の適合に関連した国家資格あるいは公的職業資格が存するかの如く誤信する場合があることは、否定できないところである。 してみれば、一私人である請求人(出願人)が、本願商標をその指定役務に使用するときは、正しい資格名称及びその内容を具体的に認識していない一般の国民にとって、あたかも該役務が国家資格を有する者の取り扱いに係る役務であるかのような印象を抱かせるものであり、一般世人をして誤信せしめ、国家資格等の制度に対する社会的信頼を失わせることにもなり、ひいては社会公共の利益に反するおそれがあるものといわざるを得ない。 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。 なお、請求人は、過去の「○○士」からなる商標の登録例を挙げ述べるところあるも、本件とは事案を異にするものであって、その主張は採用できない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本願商標 |
審理終結日 | 2006-01-12 |
結審通知日 | 2006-01-20 |
審決日 | 2006-02-07 |
出願番号 | 商願2003-85143(T2003-85143) |
審決分類 |
T
1
8・
22-
Z
(Y37)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 薩摩 純一、原田 信彦 |
特許庁審判長 |
柳原 雪身 |
特許庁審判官 |
小出 浩子 山本 良廣 |
商標の称呼 | クツチョーセーシ |
代理人 | 中谷 武嗣 |