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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z42 |
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管理番号 | 1134445 |
審判番号 | 取消2005-30489 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-05-26 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2005-04-25 |
確定日 | 2006-03-13 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4337368号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4337368号商標の指定役務中、第42類「建築物の設計,測量,老人の養護」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4337368号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成10年6月22日登録出願、第35類、第36類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同11年11月19日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求めると主張し、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。 (1)請求の理由 本件審判の請求の登録(登録日平成17年5月25日)前3年以内に、日本国内において、商標権者が、指定役務中「建築物の設計,測量,老人の養護」について、登録商標を使用した事実はない。 また、商標登録原簿上、本件商標について、専用使用権、通常使用権は登録されていない。 さらに、本件商標を使用していないことについて、何ら正当な理由が存する事実も認められない したがって、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても指定役務について、使用されていないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきである。 (2)答弁に対する弁駁 (ア)被請求人が答弁書で自認するように、「学校法人である以上、建築物の設計、測量、老人の養護の役務を直接業務内容とするものではない」から、被請求人が当該指定役務について本件商標を使用していないのは、明らかである。 (イ)「建築物の設計、測量、老人の養護」(以下「取消請求に係る指定役務」という。)のうち、「建築物の設計、測量」については、使用を立証する証拠を全く提出していない。 (ウ)「老人の養護」については、被請求人は、平成6年から夏季介護福祉セミナーを開始し、講演会やシンポジウムを行っていること(乙第9号証及び乙第10号証)及び同9年から被請求人の運営する短期大学部介護研究室に介護関連学科の卒業生を会員とする「聖徳介護福祉研究会」を発足させ、老人介護の研究を行っていること(乙第11号証及び乙第13号証)を述べた上で、それらのセミナーや当該研究会に付随して行われた実習が、役務の提供行為(被請求人のいわゆる「役務的実践行為」)であると主張する。 しかしながら、年1回または年2回程度開催されるセミナーにおいて、1時間余り実施される現場実習が、商標法で規定する役務の提供行為でないことは明らかである。 また、当該「聖徳介護福祉研究会の規約」(乙第11号証)に規定された事業は、「介護福祉発展のための調査研究」、「会員の資質の向上に関する事業」、「会員の相互福祉に関する事業」の三事業のみであって、「老人の養護」なる事業は規定されていない。 さらに、当該研究会による実習の内容が不明で、役務の提供行為を立証する証拠もないことから、その実習が役務の提供行為であると主張する根拠を欠くものである。 加えて、被請求人自身、現場実習などの活動に際しては、「被請求人や聖徳学園グループの前記シンボルマークなどをいちいち提示したり、掲げたりすることはないのが一般である」として、本件商標を使用していないことを認めている。 つまり、被請求人は、「老人の養護」に当たる役務を行っておらず、本件商標の使用もしていないのであるから、当該役務についての本件商標の使用実績がないことは明らかである。 また、乙第7号証、乙第8号証及び乙第12号証は、公開講座の案内及び研究会機関紙に本件商標が付されていることを示すものにすぎず、「老人の養護」について付されたことを立証するものではないから、本件商標の使用の事実を示す証拠とはなり得ない。 さらに、以上の証拠以外の証拠(乙第1号証ないし乙第6号証、乙第13号証の2、乙第14号証及び乙第15号証)は、使用事実の立証とは無関係であるから、ここで論ずるまでもない。 (エ)以上のとおり、被請求人は、「知識の教授」、「セミナーの企画・運営又は開催」など、無関係な役務についての立証資料を提出するのみで、取消請求に係る指定役務についての使用事実の立証を行っていない。 3 被請求人の答弁 被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証(枝番を含む。以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。 (1)本件商標を指定役務について使用している事実 (ア)被請求人のシンボルマークについて 被請求人は、昭和8年4月10日に設立された学校法人であり、首都圏(東京・千葉・茨城)において、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、専門学校、大学、大学院などを運営しており(乙第1号証)、幼稚園から大学院までを擁した総合学園である。 被請求人は、「聖徳学園の沿革」と題する資料(乙第2号証)からも明らかなように、昭和8年4月の聖徳家政学院、新井宿幼稚園の創立に始まり、子女教育女子教育に当たってきたものであるが、同63年4月には旧厚生省より、専攻科保育専攻第一部、家政学科食物栄養専攻生活福祉コースに対して、介護福祉士の授与資格の指定を受けている。 被請求人は、平成10年に新しいシンボルマーク(以下「シンボルマーク」という。)を採用することとなり、日本を代表する世界的にも著名なグラフィックデザイナー永井一正氏に依頼してデザインされたのが本件商標のマークである。 シンボルマーク は、「S」を人に見立てて、被請求人の理念である聖徳太子の十7条憲法による「和の精神」(礼節、知育、勤労)の「和」、連帯感、人間づくりを象徴しており、また、[未来・地球=青]と、[人=赤]の調和を象徴する赤みがかったブルー「ヒューマンブルー」が施されていることから、この「ヒューマンブルー」をスクールカラーとして設定したものである(乙第3号証)。 このロゴタイプは、デザイナー必携の書とされている「ロゴ スタイルブック」(乙第4号証)にも掲載されている。 被請求人は、シンボルマークを採用後、被請求人の全ての封筒、書簡用紙、電車内広告を含む全ての広告宣伝媒体などに、シンボルマークを大々的に使用し(乙第5号証)、過去5年間だけでも部門別印刷製本費/広告費は総計で約56億円を投じており(乙第6号証)、現今においては、シンボルマークを見れば被請求人を想起する程度に周知著名となっているのである。 また、「聖徳大学」では、平成4年度からは「聖徳大学オープン・アカデミー(SOA)」として各種の分野の一般向け公開講座も開いており(乙第2号証)、以後も継続している(乙第7号証及び乙第8号証)が、これらの案内文書にはシンボルマークが必ず付されている。 本件商標は、このシンボルマークを黒色表示したものである。 (イ)被請求人と取消請求に係る指定役務との関係について 被請求人は、学校法人である以上、取消請求に係る指定役務である「建築物の設計,測量,老人の養護」を直接業務内容とするものではない。 しかし、少なくとも、専門学校、大学、大学院などの各種の学部部門では、各種のセミナーの開催だけでなく、実践的に各種の実習など「役務的実践行為」が行われることがあるのである。特に平成4年頃からは、今後ますます重要視されると目された介護福祉の分野に力を注ぐべく、同6年を第1回として聖徳大学短期大学部主催の「夏季介護福祉セミナー」(乙第9号証)やシンポジウム(乙第10号証)などを開催すると共に同短期大学部介護研究室に、生活文化学科(家政学科)生活福祉専攻、専攻科福祉専攻の卒業生(介護福祉士)を会員とする「聖徳介護福祉研究会」を発足させて、老人・障害者(児)の介護の研究などをしており、現在も活発に活動している(乙第11号証)。 また、当該研究会では、年2回発行の機関誌「SOIGNER/ソワニエ」(「ソワニエ」はフランス語でお世話をするという意味)を発行しており、この「SOIGNER/ソワニエ」には前記シンボルマークが付されている(乙第12号証)。この機関誌は、会員外にも配布され(乙第13号証の2)、当該研究会や当該研究会の分科会では、各地の施設での実習が行われている(乙第13号証の3)。 これらの実習などは、役務と解すべきものである。 そして、このような活動に際しては、被請求人や本件商標をいちいち提示したり掲げたりすることはないのが一般であるが、前記のように、被請求人=シンボルマークの関係として一般に認識されるものである。 よって、本件商標は、取消に係る指定役務に現実に使用されているものと解すべきである。 (2)請求人の商標登録出願について 請求人は、被請求人の前記シンボルマークとその構成が極めて近似した商標(以下「請求人の出願に係る商標」という。)を取消に係る指定役務について登録出願しており、この登録出願に対して本件商標を引用されて拒絶理由通知を受けたため、請求人は本件審判の請求に及んだものである(乙第14号証)。 請求人の出願に係る商標の構成は、被請求人のシンボルマークと、図形形状、デザイン構成及びブルーを基調とする色彩まで近似しており、そのデザイン構成は著作物的にも酷似したものとなっている。 本件商標が現実に使用されているにもかかわらず、取消請求に係る指定役務の登録が取り消され、請求人の出願に係る商標が設定登録された場合には、被請求人のシンボルマークの著名性から、その役務について誤認、混同が生ずるおそれがあるのである。 また、インターネットの請求人のホームページ(乙第15号証)では、「ヘルパー研修」、「訪問介護員養成研修事業」が掲げられており、ここに請求人商標が表示されている。 いうまでもなく、請求人の前記「ヘルパー研修」、「訪問介護員養成研修事業」は、本件商標の指定役務第41類に属する役務であり、商標権侵害うんぬんの問題は別としても、役務上混同を生じるおそれがあるのである。 (3)以上のように、本件商標は、継続して3年以上、日本国内において、被請求人がその指定役務である「建築物の設計,測量,老人の養護」に現実に使用しているものであるから、商標法第50条第1項の規定の適用はなく、本件審判請求は理由がない。 4 当審の判断 (1)乙第1号証ないし乙第6号証について 乙第1号証は、ウエブサイトの「リクナビ:学校法人東京聖徳学園」のコピー、乙第2号証は、「聖徳学園の沿革」と題する資料、乙第3号証は、「新しいシンボルマークが聖徳学園のイメージを想像します。」と題する資料、乙第4号証は、「ロゴ スタイルブック2003-2004」(株式会社ワークスコーポレーション発行)の表紙、93頁及び裏表紙の写し、乙第5号証は、封筒の写し及び乙第6号証は、平成12年ないし同16年の部門別印刷製本費/広告費の内訳と認められる。 これらの証拠によって、被請求人は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、短期大学、大学、大学院、専門学校を運営している学校法人であり、平成4年(1992)4月に聖徳大学オープンアカデミー(SOA)を開設したこと及び被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をシンボルマークとしていることを推認することが出来る。 しかしながら、これらの証拠は、取消請求に係る指定役務についての本件商標の使用を何ら立証するものではない。 (2)乙第7号証ないし乙第10号証について 乙第7号証は、「聖徳大学オープン・アカデミー(SOA)」と題する被請求人による平成17年度オープンアカデミーの案内書、乙第8号証は、「聖徳大学オープン・アカデミー ソア・ニュース」と題する被請求人による平成17年度オープンアカデミーの案内書、乙第9号証の1は、「平成6年度 夏期介護福祉セミナー」と題する被請求人による同セミナーのプログラムを記載した書面、乙第9号証の2は、「平成12年度 夏期介護福祉セミナー」と題する被請求人による同セミナーのプログラムを記載した書面、乙第9号証の3は、「平成15年度 介護福祉セミナー」と題する被請求人による同セミナーのプログラムを記載した書面及び乙第10号証は、「第二回年夏期介護福祉セミナー」と題する被請求人による同セミナーのプログラムを記載した書面及び夏期介護福祉セミナーのアンケート用紙と認められ、乙第7号証及び乙第8号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表示されている。 また、乙第9号証の3の2頁目には、「7.実技演習・・・13:00〜15:00 『現場で役立つ、楽しいレクリエーション』 講師 余暇問題研究所代表 山崎 律子 先生」の表示がある。 これらの証拠によって、「平成15年度 介護福祉セミナー」において、「実技演習」が行われたことは推認し得るものの、かかる「実技演習」は、「平成15年度 介護福祉セミナー」の一環として、同セミナーに付随して行われたものであり、また、具体的にどのような「実技演習」を行ったのか不明確であるから、「老人の養護」について本件商標を使用したとはいえない。 (3)乙第11号証ないし乙第13号証について 乙第11号証は、「聖徳介護福祉研究会規約(案)」と題する書面、乙第12号証は、「SOIGNER」と題する被請求人による冊子の抜粋及び乙第13号証は、「聖徳介護福祉研究会議事録 平成9〜」の写しと認められ、乙第12号証には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が表示されている。 また、乙第13号証の3には、「施設案内は 実習施設、千葉県内の施設に発送」の表示がある。 これらの証拠によって、「聖徳介護福祉研究会」において、「実技演習」が検討されたことは推認し得るものの、かかる「実技演習」が、いつ、どこの施設で、誰によって、どのように行なわれたのか、また、「実技演習」が、計画のみでなく、実際に行われたのかなどの点が不明確であるから、「老人の養護」について本件商標を使用したとはいえない。 (4)乙第14号証及び乙第15号証について 乙第14号証は、請求人の出願に係る商標の願書、拒絶理由通知書及び意見書の写し、乙第15号証は、請求人のウエブサイトの写しと認められる。 被請求人は、本件商標の登録が取り消されて請求人の出願に係る商標が登録された場合には、シンボルマークの著名性から、その役務について誤認、混同が生ずるおそれがある旨主張する。 しかしながら、請求人の出願に係る商標は本件審判の審理とは関係がないものであるから、請求人の主張は、採用しない。 (5)以上のとおり、被請求人は、本件商標を、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、取消請求に係る何れかの指定役務について使用していたことを証明したものと認めることができないものであり、また、本件役務を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、指定役務中、第42類「建築物の設計,測量,老人の養護」について、取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
審理終結日 | 2006-01-12 |
結審通知日 | 2006-01-18 |
審決日 | 2006-01-31 |
出願番号 | 商願平10-52121 |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(Z42)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田中 幸一 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
井岡 賢一 中村 謙三 |
登録日 | 1999-11-19 |
登録番号 | 商標登録第4337368号(T4337368) |
代理人 | 今井 貴子 |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 高柴 忠夫 |
代理人 | 垣内 勇 |
代理人 | 高橋 詔男 |