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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z09
管理番号 1131294 
審判番号 不服2000-21155 
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-27 
確定日 2006-01-23 
事件の表示 平成11年商標登録願第68967号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「ワイドコンセント」の片仮名文字(標準文字)を横書きしてなり、第9類「配電用又は制御用の機械器具」を指定商品として、平成11年7月30日に登録出願、指定商品については、その後、当審において平成17年9月28日提出の手続補正書により「コンセント」に補正されたものである。

2 当審における拒絶の理由の要旨
当審において、平成17年8月16日付けで、「本願商標は、『ワイド』と『コンセント』の2文字を結合したものであることは見やすいものであるところ、その構成中『ワイド』の文字は、『幅広い』の意味を有する外来語として一般に馴染まれて用いられている語であり、また、『コンセント』の文字は、その指定商品との関係においては、『電気配線から電流を取るためプラグを差し込む器具』の名称をいうものであるから、これよりは、全体として『幅の広い形状のコンセント』といった意味合いを容易に認識させるというのが相当である。そして、コンセントのうち、口数が多く(100ボルトの場合、4個のプラグ差し込み口がある。)、必要に応じて200ボルト用の機器にも取り替えが可能な幅の広い形状のコンセントを『ワイドコンセント』と称し提供されている事実がある。そうすると、本願商標は、これをその指定商品中『コンセント』について使用した場合、その商品がプラグの差し込み口の数の多い200ボルト用の機器にも切替えが可能な幅の広い形状のコンセントを意味する、商品の品質(形状)を表示するに止まり、それ以外の商品について使用するときには、商品の品質(形状)の誤認を生じさせるおそれがあるものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨の拒絶の理由を請求人(出願人)に通知した。

3 請求人の意見の要旨
請求人は、本願商標の指定商品を上記1のとおりに補正すると共に、その意見を以下のとおり述べた。
(1)本件請求は、本願商標が登録第4396560号商標「ニューワイド/NewWide」を引用して商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶の査定がなされたもの、すなわち、「ワイド」の部分に識別力があることが認定され拒絶査定がなされたことを不服としてなされたものものである。
甲第5号証(不服2000-8022「WideTap」)は、「コンセント」と同義語の「タップ」に関するものあるところ、特許庁の審査、審判において、直ちに「コンセント間隔が広い商品」という意味合いを認識し理解するものとはいい難く、むしろ、その構成全体をもって特定の観念を生じない造語商標として商取引に資されるものとみるのが相当であると認定されており、本件において、本願商標が、その拒絶理由通知において、「全体として『幅の広いコンセント』といった意味合いを容易に認識させるというのが相当である。」とするのは拒絶査定をするための前提であって、全く誤ったものといわざるを得ず、審査の公正を欠くものである。
(2)つぎに、インターネット情報(1)ないし(8)を挙げているが、このインターネット情報を証拠とする認定には承服できない。
(a)インターネット情報(1)、(2)、(3)及び(5)は、同一主体のもの、あるい業務上の主従関係にあるものである。
すなわち、これらは単に一民間会社である関西電力株式会社が使用しているだけであり、取引業界の全体にわたって使用されている事実は全くない。商標「ワイドコンセント」がこの種のコンセントとして業界で認識されていれば、株式会社東京電力を始めとして日本全国で、あるいは関西圏であってもこれらのグループ以外のものが使用しているはずである。したがって、これらをもって本願商標が取引上普通に使用されている事実を証明する証拠とはなり得ない。
(b)インターネット情報(4)、(6)及び(8)は、いずれも個人企業のような規模であったり、あるいは「ワイドコンセント」の項目に行き着くのが困難であったり、単に証拠の数を増やすためのものであったり、アクセス数が少なく、このようなインターネット情報を引用して商標法第3条第1項第3号を適用することは考えられない。
(c)インターネット情報(7)によっては、実際に「ワイドコンセント」がどのようなものかは判断することができない。さらに、例えば1つの書物や辞書に記載されていたとしても必ずしも業界において取引上、普通に使用されていると認定されるものではない。
したがって、本願商標である「ワイドコンセント」は商品の品質を示すものではなく、商標法第3条第1項第3号に該当しないことは明白である。
(3)本件登録出願は、平成11年7月30日に出願され、平成12年7月19日に商標法第4条第1項第11号を理由として拒絶理由通知があり、平成12年12月8日に拒絶査定があった。これに対して、平成12年12月27日に拒絶査定不服の審判を請求したところ、平成17年8月16日に商標法第3条第1項第3号を理由とする拒絶理由通知に接したものである。
確かに、商標法第3条第1項第3号の登録要件の判断時は、登録査定時である。しかしながら、商標法第4条第1項第11号を理由として拒絶査定されたことを不服として審判を請求した後、5年近くも経ってから本拒絶理由に示されているように実際の取引状況に左右される証拠を用いて商標法第3条第1項第3号を適用して拒絶理由を発するのは通常の審査期間であれば拒絶理由に該当しないものであっても、例えば、本件の拒絶理由に引用されたインターネット情報のようにその後に大々的に使用されれば拒絶の理由を有することになり商標登録出願の意義はない。
争いにその後の取引社会の使用が影響する商標法第3条第1項第3号を理由とする拒絶理由を適用する場合には、他の商標登録出願との均衡を保ち、引用する証拠も審査期間程度までの使用の事実を採用すべきでないと審判を請求した意義が消失する。

4 当審の判断
(1)本願商標は、前記のとおり、「ワイドコンセント」の文字を書してなるところ、その構成中、「ワイド」の文字は「幅広い」の意味を有する外来語として一般に馴染まれて用いられている語であり、また、「コンセント」の文字は補正後の指定商品の名称であるから、これよりは、全体として「幅の広い形状のコンセント」といった意味合いを容易に認識させるものというべきである。
そして、本願商標は、上記拒絶理由にも示すとおり、コンセントにおいて、口数が多く(100ボルトの場合、4個のプラグ差し込み口がある。)、必要に応じて200ボルト用の機器にも取り替えが可能な幅の広い形状のものを「ワイドコンセント」と称し提供されている実情が認められるものである。
そうすると、本願商標は、これを補正後の指定商品について使用するときには、単に該商品が、口数が多く、200ボルト用の機器にも適応の可能な幅の広いコンセントであることを容易に認識、理解させる、すなわち、商品の品質(形状)を表示するに止まる、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
(2)請求人(出願人)の主張について
(ア)請求人(出願人)は、本件商標の識別性の有無について、審決例を挙げて述べるところがあるが、商標の識別性に関する登録の可否の判断は個別具体的になされるべきものであり、必ずしも過去の判断例に拘束されるべき理由はないから、かかる請求人の主張は採用することができない。
なお、「ワイド」の文字については、本願商標に止まらず、例えば、2003年7月2日発行の「日刊工業新聞」(17頁)によれば、「現場百景(48)クロノス町田<ニチモ>ユニバーサル規格前面に」との見出しのもと、「・・・玄関には腰掛けベンチを設けた。操作面が大きいワイドスイッチは・・・」の如く、配線器具のスイッチ類においても商品の品質(形状)を表す語として普通に使用されている実例を多数認めることができる。
(イ)請求人(出願人)は、上記拒絶理由通知で示したインターネット情報は、同一主体のものであったり、業務上主従関係にあるもの、あるいは個人企業の規模のもの等であるから、これによっては本願商標が取引上普通に使用されている事実を証明する証拠とはなり得ないと主張する。
しかしながら、例えば、同インターネット情報の(3)で示した「快適電気配線住宅推奨基準」を見出しとするホームページ(http://www.naniwa.com/KDAI/kaiteki_3.html、同ホームページには、「ワイドコンセントについては1箇所取付につき100V、200Vコンセントをそれぞれ1箇所と計上する。」等の記載と共に、100V4個のプラグ差し込み口の付いたコンセント等の写真が掲載されている。)によれば、「快適電気配線住宅推奨基準」は、関西電気協会内(大阪市北区堂島浜2-1-25)に事務局を置く「関西電気安全委員会」(及び関西電力株式会社)の所管に係るものとみられるところ、「関西電気安全委員会」は、電気事故を防止し安全を図ることを目的として近畿経済産業局をはじめ関西電力やメーカー(松下電工株式会社、シャープ株式会社等)、工事業者その他電気保安にかかわる関係者で組織されているものと認められることから、関西圏に重きがおかれているとはいえ、係る「快適電気配線住宅推奨基準」は、多くの公的機関、関係団体、あるいは関連企業の関与のもと策定されているものということができ、特にメーカーや電気工事事業者等はその内容を十分熟知しておくべき必要のあるものということができる。
そうすると、この一事のみをもってしても、「ワイドコンセント」の文字は、上記認定の意味合いをもって、本願指定商品を取り扱う業界において広く認識されているといい得るものである。
(ウ)また、請求人(出願人)は、本件において、商標法第3条第1項第3号を理由とする拒絶理由を適用する場合には、他の商標登録出願との均衡を保ち、引用する証拠も審査期間程度までの使用の事実を採用すべきであると主張する。
しかし、同号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当とせず、多くの場合、自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものであり、しかして、拒絶査定不服の審判においては、同号の該当性は、審決時を基準として判断されるべきであるから、そうである以上、請求人(出願人)の係る主張も採用することができない。(東京高裁 平成12年8月29日判決 平成11年(行ケ)第442号参照)
(3)したがって、先の拒絶理由は、妥当なものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-11-18 
結審通知日 2005-11-25 
審決日 2005-12-08 
出願番号 商願平11-68967 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 俊晶柳原 雪身中村 謙三 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 岩崎 良子
田中 亨子
商標の称呼 ワイドコンセント、ワイド 
代理人 橋本 克彦 
代理人 橋本 京子 

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