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審決分類 審判 一部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y3043
管理番号 1129448 
異議申立番号 異議2004-90434 
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2006-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2004-07-13 
確定日 2005-12-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第4772823号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4772823号商標の指定商品中「第30類 アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,おにぎり,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」についての商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4772823号商標(以下「本件商標」という。)は、「神風」の文字と「かみかぜ」の文字とを二段に横書きしてなり、平成15年9月22日に登録出願、第30類「アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,おにぎり,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、同16年5月21日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人の引用する2003年商標登録願第68266号商標(以下「引用商標」という。)は、「カミカゼ」の文字を標準文字で表してなり、平成15年8月11日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」を指定商品とするものである。
なお、引用商標は、平成16年9月17日に登録第4803379号商標として設定登録されている。

3 取消理由通知
当審が平成17年7月4日付けの取消理由通知書で商標権者に開示した本件商標の登録取消理由は、以下のとおりである。、
本件商標と引用商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、両商標は、それぞれの構成文字に相応して、「カミカゼ」の称呼及び「神風」の観念を生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において異なるところがあるとしても、その称呼及び観念を共通にする類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品(役務)中第30類「アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,おにぎり,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものと認められる。
したがって、本件商標は、その指定商品中上記商品について、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見
上記取消理由通知書に対する商標権者の意見は、次のとおりであり、これを裏付けるものとして、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標が「カミカゼ」の称呼を生じることは認めるが、「神風」の表記からは、他に自然に「ジンプー」「シンプー」「カムカゼ」の称呼も生じる。一方、引用商標は、片仮名の標準文字からなることから、「カミカゼ」以外の称呼は、生じ得ない。してみれば、本件商標から生じる複数の称呼の内のただ一つが、引用商標の唯一の称呼と共通するとするのが正確である。本件商標をどのように読むかは、商標に接した者次第であるから、本件商標の称呼を「カミカゼ」と固定して類否判断をする前提自体の適否がまず問われるべきである。
(2)本件商標のうち、一つの振り仮名として表記した「かみかぜ」を除いた、要部である「神風」の文字は、「神が吹き起こすという激しい風」「無謀で命知らずなこと」などの意味を表す。「伊勢」に係る枕詞としても用いられる。このように使われるとき、「神風」が片仮名で表記されることはまずない。片仮名は、すべて表音文字であって、これ自体に意味や感情がないことから、「カミカゼ」という無機質な文字の配列は、特定のイメージを創出しない。「カミカゼ」は、片仮名特有の超然としたインパクトを持つ造語ともいうべきで、上記「神風」の意味をなさないことはもちろん、解釈を強いるならば「髪風」「噛み風邪」「紙風」など様々に読むことができる。引用商標は、流通に置かれたとき、一定の観念を生じない中性的な記号であると見るべきである。
(3)およそ我が国の漢字は、先に見たように同音異義語が多い。したがって、漢字商標の場合は、外観上の類否が主に問われるべきである。例えば、「神風」と「仁風」とは、共に「ジンプウ」の称呼を生じても、見た目で明らかに峻別できる。これらを混同する者は、世にいない。「神風」と「髪風」とが、ともに「カミカゼ」と称呼されても同じである。
このように、もともと漢字商標は、特殊な類否判断を要し、称呼よりも外観がより重視されるべきであって、外観上の顕著な相違は、彼我相紛れないことが多い。ましてや、本件商標の指定商品は、日本人になじみの「米」であり、本件商標も使用慣習として、その米袋に大書して表示されるものである(乙第2号証、乙第3号証)。よって、漢字商標である本件商標「神風」と片仮名商標である引用商標「カミカゼ」とは、類似しない。
(4)ふたつの商標の類否は、具体的には、それらが実際の市場にあるときに、その商品の取引者及び消費者に出所の混同が生じるか否かをもって判断すべきである。本件商標の指定商品「米」は、古来から日本人にとって最もなじみ深い主食である。取引者及び消費者がこの「米」の商標に触れる場面において、商標を発声したときの「音」のみを頼りに商品を見分けたり、探し当てたり、購入の動機としたりすることが現にあるであろうか。食の安全が叫ばれ、消費者の商品選びには、自己責任が課されている今日、日々の食の基礎となる「米」についての商品差別には、敏感にならざるを得ない。一般的な消費者は、まず商品の包装など形態を見て、産地や精米日を含む商品表示を確認し、更に実際に米粒を目認し、自身が納得・信頼できるかというテストを通過させて初めて、その米の購入を決断する。このとき、商品に最も大きく表示されている商標を、彼らが軽視するはずはない。称呼のみというように記憶をあいまいにして、本件商標を他の商標と混同するはずもない。いうまでもなく、商品の識別に最も貢献しているのが商標であるからだ。
専門の取引業者は、自身の信用問題に直結するから、取引の時点での商品選別の慎重さは、消費者以上である。特に、実物を現認せずに取引をすることは、およそ考えられないから、「米」の商標においては、外観が最も重視される。「神風」は、上記のとおり由緒ある含みを持つ熟語であるから、「神風」の歴史と「米」に内在する日本人のアイデンティティーとが無意識の内に結びつき、これに触れる者は、「神風」という文字の奥にある深みまでをも即座に感じ取る。これが「カミカゼ」であれば、どうか。「米」に片仮名のネーミングがされること自体珍しい。いかにも日本らしい商品「米」と外来語のイメージが強い片仮名とは結びつき難いからである。この商標に触れる者は、まず珍しさゆえの違和感に行き当たる。「カミカゼ」が「神風」を意味するとまでは、商品を前にして、なかなか思い至らないはずである。このように、平均的な消費者の持つ注意深さは、「神風」と「カミカゼ」とを全くの別ものと認識する。こと「米」の消費者・取引者が、本件商標と引用商標との間で出所を混同する可能性は、極めて低いものである。一つの称呼が相紛らわしくとも、外観の相違、それに基づく観念の相違が、これを凌駕するから、本件商標は、決して引用商標に類似しない。
(5)さらに、本件商標は、登録されてすでに1年3ヶ月を経過した現に生きている商標であるから、現実の商取引の実情を無視して類否判断を強行することはできない。この点で本件は、使用前・出願中の商標の類否判断とは決定的に異なるのである。商標権者は、本件商標の登録査定があった平成16年4月21日以降今日まで継続して、本件商標を「米」に使用している。米袋(乙第2号証、乙第3号証)、及び、商標権者がインターネット上に開設した個人顧客向け米販売サイトの一部を示す(乙第4号証)。さらに、このインターネット商店、その他の小売店等を通じて販売した「神風」の販売実績表を示す(乙第5号証)。一方、引用商標権者が、商品「米」について引用商標を使用しているという事実はない。
(6)乙第2号証ないし乙第5号証に示されているとおり、商標権者の「神風」ブランドの米は、発売以来順調な売上げを継続しており、本件商標には着実に業務上の信用が蓄積しつつある。実店舗だけでなくインターネット商店を持つことから、広告効果は大きく、また、URLを引用するだけでリンクが容易にできるため、他人のホームページや掲示板、ブログなどにおける口コミも広がりやすい。このようにインフラが整った現代においては、ネット商店を開いて良質な商品を供給し続ける限り、商標の周知性は成長しこそすれ収縮することはあり得ない。こうしているただいま現在も、本件商標は、地域、客層に偏りのない多数の新たな潜在顧客に接触し続けているのである。一方、使用されたことのない引用商標が、信用を得たり、周知になることがあり得ようはずはない。してみれば、現在大々的に使用中の本件商標と空権の引用商標とに、実際に出所の混同が生じるおそれがみじんもないことは、実に明らかである。
(7)商標権者の代表者の陳述書を提出する(乙第5号証)。特許庁は、取引の実情を考慮し、商標の「使用をする者」の業務上の信用の維持、及び、需要者の保護を旨として、本件商標の登録を維持しなければならない。

5 当審の判断
本件商標は、上記のとおり、「神風」の漢字と「かみかぜ」の平仮名文字とを上下二段に横書きしてなるものであるから、該構成に照らして「カミカゼ」の称呼のみを生ずるものであり、商標権者が述べるような「ジンプー」「シンプー」「カムカゼ」の称呼は、生じないものというのが相当である。
そして、商標権者が述べるように「神風」は、「神が吹き起こすという激しい風」「無謀で命知らずなこと」などの意味を表すものであるから、本件商標からは、「神が吹き起こすという激しい風」「無謀で命知らずなこと」などの観念を生ずるものである。
これに対し、引用商標は、上記のとおり、「カミカゼ」の片仮名文字を標準文字で表してなり、該「カミカゼ」の文字に照応する日本語の熟語は、「神風」のみであることから、これよりは、「カミカゼ」の称呼、及び、本件商標と同様に「神が吹き起こすという激しい風」「無謀で命知らずなこと」などの観念を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において異なるところがあるとしても、その称呼及び観念を共通にする類似する商標である。
そして、本件商標の指定商品又は指定役務中の第30類「アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,おにぎり,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」は、引用商標の指定商品、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」と同一又は類似するものと認められる。
商標権者は、本件商標の指定商品又は指定役務中の第30類に属する商品「米」以外の商品を放棄し、「『米』の消費者・取引者が、本件商標と引用商標との間で出所を混同する可能性は、極めて低いものである。」と述べているが、「米」についての取引のみが特殊であるとは認められないし、登録後の事情変更が結論に影響を及ぼすものでもない。
また、商標権者は、代表者の陳述書を提出し、るる述べるところがあるが、本件商標の使用を継続することを認める必要があるとする立場はあり得るとしても、それ以上に,引用商標の存続を前提にしながら,その出願に遅れて出願された本件商標の商標登録まで認め、類似する2商標の併存状態を維持しようとすることを、商標制度の目的に合致するものとすることはできない〈東京高裁 平成14(行ケ)第377号判決参照。 〉。
さらに、商標権者は、取引の実情を考慮すべきである旨述べているが、商標法第8条第1項における考慮すべき取引の実情は、商品についての取引の実情〈最高裁判所第3小法廷 昭和39年(行ツ)第110号判決参照。〉であって、上記のとおり、その商標の固有の事情は、考慮すべきでない。
したがって、本件商標は、その指定商品中、結論に記載したとおりの商品について、違反して登録されたものであるから、同法第42条の3第2項の規定により、その申立に係る当該指定商品について、登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-10-31 
出願番号 商願2003-82044(T2003-82044) 
審決分類 T 1 652・ 4- Z (Y3043)
最終処分 取消  
前審関与審査官 平山 啓子 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 柳原 雪身
鈴木 新五
登録日 2004-05-21 
登録番号 商標登録第4772823号(T4772823) 
権利者 日本ライス株式会社
商標の称呼 カミカゼ、シンプー 
代理人 石川 義雄 
代理人 小出 俊實 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 折寄 武士 

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