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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z2021
管理番号 1127646 
審判番号 取消2004-31376 
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-01-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-10-19 
確定日 2005-11-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第4256112号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4256112号商標(以下「本件商標」という。)は、「勝ちぬき守」の文字を縦書きしてなり、平成9年11月11日に登録出願、第20類「葬祭用具,うちわ,せんす,額縁,つい立て,びょうぶ,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。),旗ざお」及び第21類「貯金箱(金属製のものを除く。),ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),風鈴,香炉,お守り」を指定商品として、同11年3月26日に設定登録されたものであるが、その後、指定商品中「葬祭用具」については、商標権一部取消審判(2004年審判第31375号)があった結果、登録を取り消す旨の審決がなされ、その審判の確定登録が同17年4月6日になされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中第21類「お守り」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の要旨を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
(ア)本件商標は、登録原簿(甲第1号証)より明らかなように、平成11年3月26日に登録されたものである。したがって、その登録の日から本件審判請求の日まですでに5年数ヶ月が経過しているものである。しかるに、本件商標の商標権者は本件商標を、その指定商品中「お守り」に使用している事実がない。
このことは、請求人が、本件商標の使用状況を、本件商標の商標権者の住所地及び埼玉県、東京都、千葉県などの関東地方各所の神社、仏閣を現実に調査した結果、いずれからも本件商標の付された「お守り」を見いだすことも、入手することもできなかったことからも明らかである。これは、少なくとも商標権者が、本件商標の登録後今日までの3年以上にわたって、その指定商品中「お守り」に本件商標を使用していないことを如実に示しているものである。このことから、本件商標の商標権者は、日本国内において継続して3年以上にわたって、本件商標をその指定商品「お守り」について使用していないものであることは明らかである。
(イ)本件商標には、その登録原簿から明らかなように、登録された専用使用権者、通常使用権者、質権者等の記載がないので、これらの者が存在するとは認められない。ただ考えられるのは、未登録の通常使用権者の存在である。しかし、請求人が調査した範囲においては、指定商品「お守り」について、本件商標の付された商品は皆無であった事実からして、本件商標がその指定商品「お守り」に使用されていないことは、明らかである。これゆえ、未登録の通常使用権者が存在するとは考えられない。
したがって、商標権者以外の者が、指定商品「お守り」について本件商標を使用している事実は全くないものである。
(ウ)また、本件商標を、その指定商品中「お守り」について使用しないことについて正当な理由があるとも思われないし、指定商品「お守り」について使用することが法令によって禁止されている訳でもないし、天変地異のために使用することができなかったという事実もない。これにより、不使用についての正当理由の利益を受けることもできないものである。
(エ)これらのことから明らかなように、本件商標は、法の認める例外の規定の適用を何ら受けることもできないのみならず、本件商標を商標権者を始めとして、他の何人も、日本国内において3年以上にわたって、指定商品「お守り」について、使用している事実もないのである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「お守り」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきものである。
(オ)請求人は、商願2004-28772号を出願したものであるが、本件商標を引用商標とされ拒絶される可能性があるものである。これゆえ、本件商標に対し、不使用取消の審判を請求したもので、法律上の利害関係を有するものである。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、株式会社アイ・クリエーション(以下、単に「会社」という。)の代表取締役をしているから、本件商標の通常使用権を会社に許諾していると主張し、その証として乙第5号証を提出している。
しかし、この乙第5号証のみでは、会社に本件商標の通常使用権があるとは認められない。乙第5号証の示すごとく、被請求人は、会社の取締役である。取締役が自己のために会社と取引する場合は、取締役会の承認が必要であるとされている(商法第265条)。被請求人が会社に本件商標の通常使用権を認めることは、明らかに会社との取引である。
そうであれば、当然取締役会の承認が必要であり、本件商標の通常使用権許諾に関する取締役会議事録などが存在するはずである。すなわち、客観的に本件商標の通常使用権の存在を証明できるはずであるが、それがなされていない。このことは、会社に本件商標権の通常使用権が存在しないことを如実に示している。会社の本件商標の使用は不当使用であって、何ら通常使用権に基づく使用とは認められない。
また、乙第5号証によれば、会社の目的は、同証の目的欄に記載された業務を行うと表示されている。
そこで、会社の目的の欄を確認すると、目的欄のどこにも「お守り」類を製造販売することは記載されていない。直接的製品としては、「貴金属宝飾品、装身具、時計、計量器、計測器、日用雑貨」の表示はあるが、「お守り」類の製造販売については、全く記載されていない。
通常、定款の目的の欄は、普通の日本人であれば普通に認識することができるように、具体的かつ明確に、そして適法で営利を求めるものであることがわかるように記載されなければならないとされている。例えば、「お守り」類の製造・販売を業務とする場合は、その目的の欄に「神社仏閣授与品及び木製、金属製、プラスチック製などの神社仏閣記念品の製造販売」という具合に、「お守り」類であることが明確に理解されるように表示されるものである(甲第2号証)。
しかるに、会社の目的の欄には、このような記載は皆無である。このことから、会社が仮に「お守り」の製造販売を行っているとすると、会社は、事業目的以外の事業を行っていることになり、会社の業務範囲を逸脱していることになる。即ち、会社の目的の範囲外であるにもかかわらず、本件商標の通常使用権を取得して事業目的範囲外の事業を不法に行っていることを意味する。これ故、会社には、本件商標の通常使用権が無いといわなければならない。
さらに、会社の事業目的の範囲を超えた行為は、無効であるとされている(最高裁S30.10.28,民集9-11-1748)。あるいは、事業目的の直接的範囲を超えた事業の全てが無効なのではなく、事業目的遂行に必要な行為は無効とされないが(最高裁S30.3.22,判時56-17)、その行為は客観的、抽象的に定められなければならないとされている(最高裁S45.6.24,判時596-3)。
これらの判例から見ても、会社が事業目的の範囲内の行為として、本件商標の通常使用権を得ているとは思われない。なぜなら、会社の目的事業の中に初めから「お守り」類を製造販売することが表示されていないし、目的事業の遂行上の行為として「お守り」を製造販売しなければならない理由もないからである。
これらのことから明らかなように、被請求人は、会社に対し、何ら本件商標の通常使用権を許諾しているとされる理由はなく、会社にも通常使用権があるとは認められない。さらに、通常使用権を許諾した日時も何ら証明されていない。
(イ)被請求人は、本件商標の使用を証明するための証拠として、乙第1号証、乙第2号証及び乙第4号証を提示している。
しかし、乙第1号証は、単にひも付きのアクセサリーを表示しているもので、この商品に本件商標が使用されているとは認められないものである。
次に、乙第2号証(証拠の表示では数字の2が欠けているが短冊状印刷物表示を乙第2号証と推察した。)を本件商標を使用している証拠として提示しているが、これは、紙に単に本件商標を一部に含む短冊状印刷物を表示したのみであって、何ら「お守り」の商品を表示しておらず、かかる札をもって商品「お守り」に本件商標を使用している証拠とは認められない。
さらに、被請求人は、京都市の清水寺で販売された商品「お守り」の使用を証明する証拠として乙第4号証を提示しているが、現実に清水寺ではこのような「お守り」は販売されていない。販売されているのは、乙第4号証のごときひも付きではなく、ネックレスチェーンのついたもので、「金」製のものと「銀」製のものがあり、「金」製は1個2500円、「銀」製は1個5000円で販売されているのみである。したがって、被請求人が乙第4号証として提示したものは、本件取消審判請求後に作成されたものではないかと考えられる。
しかも、以上の乙各号証は、単に商品あるいは短冊状印刷物を本件審判請求後に撮影したものにすぎず、審判請求前に本件商標が使用されていたことを証明するものではない。
被請求人は、更に本件商標使用の事実を証明する証拠として乙第3号証(納品書控)を提出している。
しかし、まずこの乙第3号証は、被請求人が通常使用権を与えたという会社が発行したものかどうかも不明である。それは、会社の名称のほかにもう一つ「株式会社ボロン」の名称があり、また、納品書番号も3139と4887と各々異なるものが記載されているからである。通常、納品書には、注文書があって、商品を納付する時に発行するもので、発行者が2名いたり、納品書番号が2つもあったりすることは考えられない。
さらに、納品書の「商品」の欄を見ると、「シルバー原石入り勝ちぬき守チェーン付」と表示されているのに、この納品書で清水寺に納品し、同寺で販売されているとされる、乙第4号証で示される「お守り」は、この納品書で納品された商品とは全く異なるものである。前記のごとく、乙第4号証は、ひも付きの「お守り」であり、乙第3号証に表示されたものとは明らかに異なるものである。このことから、むしろ乙第3号証に記載された本件商標を付した商品は、全く納品されなかったことを示すものである。
このように、発行元も定かでない控書類わずかに1枚を乙第3号証として提示するのみで本件商標の使用を客観的に証明していると主張することは失当であるといわなければならない。
これらのことから明らかなごとく、乙第1号証ないし乙第4号証は、矛盾があったり、発行元が不明であったりで、証拠能力を欠くものであると言わなければならない。これ故、乙第1号証ないし乙第4号証をもって本件商標を使用しているとする証明にはならないと確信する。
(ウ)被請求人は、本件商標を商品「お守り」に平成11年3月から通常使用権者が使用していると主張している。
しかし、前記したごとく、被請求人が許諾したと言う本件商標についての会社への通常使用権は、実質的にも形式的にも認められないものである。通常使用権があるとすれば、それは不適法に成立したものであって、法の認めるものではないといわなければならない。したがって、被請求人が通常使用権の許諾があると主張することは失当である。
さらに、本件審判請求前3年以内に本件商標が使用された事実は、主観的な主張のみで証明できるものではなく、客観的に証明されなければならないところ、被請求人は、本件審判請求前3年以内に本件商標が使用された事実を客観的に証明していない。私的に作成した「納品書控」の提出のみで本件商標の使用が証明されたと主張するのは、失当であるといわなければならない。
(エ)結論
以上から明らかなごとく、被請求人の答弁には、本件商標の使用を客観的に認める何らの理由も証拠も示されておらず、立証もなされていない。
したがって、請求の趣旨のごとくの審決を求めるものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
(1)通常使用権者の存在と、本件商標の使用
被請求人は本件商標につき、通常使用権を被請求人が代表取締役である株式会社アイ・クリエーション(東京都中央区八丁堀三丁目13番1号)に許諾している(乙第5号証)。
そして、通常使用権者である株式会社アイ・クリエーションは、本件商標を使用した商品「お守り」を平成11年3月より発売し、現在もその使用を継続している。
(2)本件商標の商品「お守り」についての使用態様
乙第1号証は、その商品「お守り」の写真であり、この「お守り」は「勝ちぬき守」の標章が明示された札(乙第2号証)と共にアクリル製の箱に入れて、多数の寺院に販売しており、各寺院ではこれに祈とうを行って参詣者に販売している。
乙第3号証は、件外清水寺(京都府京都市東山区清水1-294)に本件商標を付した商品「お守り」を通常使用権者が販売した「納品書控」であり、その日付は平成15年12月10日である。
乙第4号証は、前記清水寺が販売した商品「お守り」の写真である。
(3)上記に述べたとおり、本件商標は、商品「お守り」に平成11年3月から通常使用権者が使用しており、少なくとも本件審判請求の登録前3年以内に使用された事実がある。したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当せず、請求人の主張は失当である。
よって、答弁の趣旨通りの審決を求める次第である。

4 当審の判断
請求人は「被請求人は、株式会社アイ・クリエーションに対し、何ら本件商標の通常使用権を許諾しているとされる理由はなく、株式会社アイ・クリエーションにも通常使用権があるとは認められない。また、通常使用権を許諾した日時も何ら証明されていない。」旨主張しているので、まずこの点について検討するに、通常使用権は、商標権者が他人にその商標権について使用の許諾をすることにより発生するものであり、例えば、商標登録原簿に登録されることが効力を生ずる要件とはなっていない。
そして、被請求人が「被請求人は本件商標につき、通常使用権を被請求人が代表取締役である株式会社アイ・クリエーション(東京都中央区八丁堀三丁目13番1号)に許諾している(乙第5号証)。」旨主張していることから、被請求人が株式会社アイ・クリエーションに通常使用権を許諾していることについて、証拠を提出していないとしても、株式会社アイ・クリエーションは、本件に関する通常使用権者でないとはいい得ない。
次に、本件に関する通常使用権者と認められる株式会社アイ・クリエーション(以下「通常使用権者」という。)による本件商標の使用について検討するに、被請求人の提出に係る乙第3号証の納品書控によれば、通常使用権者は、清水寺に対して、乙第4号証の商品「お守り」を平成15年12月10日に販売した事実を認めることができる。
そして、乙第4号証の商品「お守り」の写真によれば、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることが認められる。
そうすると、被請求人が提出した証拠を総合勘案すれば、通常使用権者によって、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件審判の請求の登録(平成16年11月4日)前3年以内に日本国内において請求に係る商品「お守り」について使用したものといわなければならない。
なお、請求人は、「乙第1号証ないし乙第4号証は、矛盾があったり、発行元が不明であったりで、証拠能力を欠くものであるといわなければならない。これ故、乙第1号証ないし乙第4号証をもって本件商標を使用しているとする証明にはならない。」旨主張しているが、本件については、前記認定のとおりであるから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-09-20 
結審通知日 2005-09-27 
審決日 2005-10-11 
出願番号 商願平9-175558 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z2021)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 鈴木 新五
柳原 雪身
登録日 1999-03-26 
登録番号 商標登録第4256112号(T4256112) 
商標の称呼 カチヌキマモリ、カチヌキ 
代理人 稲木 次之 
代理人 丸山 幸雄 
代理人 加藤 和彦 

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