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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 122
管理番号 1127635 
審判番号 取消2004-31325 
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2006-01-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2004-10-07 
確定日 2005-11-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第1733569号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1733569号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和52年7月28日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同59年12月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第39号証及び参考資料1及び2を提出した(なお、請求人は、審判請求書に本件商標の商標公報及び商標登録原簿を甲第1号証及び甲第2号証として添付し、さらに、弁駁書において甲第1号証ないし甲第39号証を添付しているが、審判請求書に添付された甲第1号証及び甲第2号証を参考資料1及び2とする。)。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がない。
よって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、本件商標の日本国内での使用事実を立証するために乙第1号証ないし乙第3号証を、また、外国での使用事実を立証するために乙第4号証、乙第8号証ないし乙第10号証を、さらに、スポーツシューズの側面に表示されたライン図形は靴の登録商標の使用であるということを主張するために乙第5号証ないし乙第7号証を提出しているが、請求人は、本件審判の請求の登録(平成16年10月27日)前3年以内に日本国内において、本件商標を商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用していないことを確信したので、以下にその具体的な理由について述べる。
(2)乙第1号証ないし乙第3号証について
乙第1号証ないし乙第3号証は、真実に基づいて作成された証拠資料であるか、虚偽に基づいて作成された証拠資料であるかは、被請求人のみが知り得ることである。前者の証拠資料とすれば、あまりにも信憑性を欠いているので、まず、その点から述べる。
(ア)乙第2号証及び乙第3号証によると、カタログ(乙第1号証)を100枚作成したようであるが、このカタログは単に作成したのみで、どこにどのように配布したのか示されていない。ただ単にカタログを作成して自分で持っているだけでは登録商標の使用とはいえない。
(イ)プーマジャパン株式会社(以下「プーマジャパン」という。)の2004年春夏用のカタログ(カタログの有効期間は2003年7月1日から2004年6月30日まで:甲第1号証)と2004年秋冬用のカタログ(カタログの有効期間は2004年1月1日から2004年12月31日まで:甲第2号証)には、どこにも乙第1号証に示す商品(以下「使用商品」という。)が掲載されていなかったばかりでなく、本件商標が付された商品は一つもなかった。
(ウ)インターネットのウェブサイト(楽天市場、Yahoo!ショッピング)にてプーマの靴を検索して、その取扱い店に使用商品の有無と価格についての問い合わせの電子メールを送信したところ、使用商品の存在を確認することができず、その商品を入手することはできなかった(甲第3号証ないし甲第39号証)。
(3)乙第4号証、乙第8号証ないし乙第10号証について
乙第4号証は、なぜ写真又はカタログではなく、写真の写しなのか、本件の証拠は、商品の細部がよく分かる写真又はカタログで提出すべきである。乙第8号証ないし乙第10号証によっては、日本で本件商標を使用しているとはいえない。乙第4号証と乙第8号証ないし乙第10号証を合わせれば、乙第4号証の商品が外国で使用されているかの錯覚を持つが、外国で「kamino SFS」を使用しているとしても、本件商標であるという証拠はない。
(4)乙第5号証ないし乙第7号証について
乙第5号証中には、本件商標が付された靴はないので念のため、申し添える。
請求人は、古典的な見解であっても、靴の商標は本来いわゆるベロと呼ばれる部分や靴の内底や外底に表示されるものであるとされている見解を支持する。
(5)被請求人は、本件商標を「運動靴」について使用していると述べているが、本件審判とは別の審判事件(取消2004-31326)においては、本件審判の乙第1号証と同一の証拠(乙第1号証)を提出して、「陸上競技用靴」について使用している旨主張している。
(6)以上のとおり、乙各号証は、信憑性を欠いているので、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 使用者について
本件商標の使用者であるプーマジャパンは、被請求人の完全子会社であり、本件商標の使用について、商標権者(被請求人)より通常使用権を許諾されているものである。
2 本件商標の使用について
(1)本件商標は、使用商品であるスポーツシューズ(運動靴:商品名「カミーノSFS」)の右側面部に表示されている(乙第1号証)。すなわち、本件商標は、スポーツシューズの両側面に表示され使用されているのである。
(2)スポーツシューズの両側面に表示されたライン図形商標について、特許庁における古典的な見解では、靴の商標は、本来いわゆるベロと呼ばれる部分や靴の内底や外底に表示されるものであるとされている。しかしながら、需要者ら、特にスポーツシューズの需要者である青少年達は、これらの靴の側面に表示されたライン図形によって商品を識別している(乙第5号証ないし乙第7号証)。
したがって、スポーツシューズの側面に表示されたライン図形は商標としての使用であるから、本件商標は、通常使用権者が販売する商品「スポーツシューズ(運動靴)」に使用されているのである。
3 使用開始日について
(1)乙第1号証は、被請求人の取扱い商品である「運動靴」を販売するための広告であり、広く需要者、取引者に知らしめるものであるから、商標の「使用」について定義する商標法第2条第3項第8号の「商品若しくは役務に関する広告…に標章を付して展示し、若しくは頒布し、…提供する行為」に該当する。
乙第1号証は、その左上部の記載からわかるように、「2004年秋/冬モデル」のものである。そして、乙第2号証(納品書)及び乙第3号証(受領書)の日付が「平成16年9月20日」となっているから、乙第1号証が本件審判の請求日(平成16年10月7日)以前に制作されたことは明らかであり、本件商標を本件審判の請求の登録前3年以内にその指定商品中「運動靴」について使用していたことは明白な事実である。
(2)使用商品は、被請求人の本国であるドイツを始め、欧州共同体各地でも販売されている(乙第4号証、乙第8号証ないし乙第10号証)。
(3)以上より、被請求人は、イタリア・ドイツなど欧州共同体に加えて日本においても、本件商標を付した運動靴「カミーノ SFS」は販売されるため、乙第1号証を制作したのであり、これは、真に正当に本件商標が使用されていることを裏付けるといえるのである。
4 むすび
以上のように、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に指定商品中の「運動靴」について、通常使用権者であるプーマジャパンにより使用されているのであり、その使用態様は、商標法第2条第3項第8号に該当するものである。

第4 当審の判断
1 乙第1号証ないし乙第3号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証は、「Footwear」、「Fall/Winter 2004」、「sport lifestyle」の表題のある1枚紙よりなるカタログであるところ、中央に大きく靴(右足のみ)の写真が掲載され、該靴の右側側面には、猫科の動物と思しき図形と「PUMA」の文字が小さく表示され、これらの下に、本件商標を左右に反転させたものときわめて近似した図形が大きく表示されている。また、靴の写真の下には、「running」、「342135 03 カミーノ SFS¥9,240(本体価格 ¥8,800)」などの文字が記載され、該カタログの下段には、猫科の動物と思しき図形、「PUMA」、「puma.com」、「プーマ ジャパン株式会社」、「東京 〒163-0407 東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル」などの文字が記載されている。
(2)乙第2号証は、株式会社明企画がプーマジャパンに宛てた平成16年9月20日付け「納品書」であるところ、品名欄には「カミーノSFS カタログ」と、数量欄には「100」と記載され、納入日は「16年9月20日」、納品場所は「東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル14F」である。
(3)乙第3号証は、株式会社明企画が作成したと認められるプーマジャパン宛の平成16年9月20日付け「受領書」であるところ、品名・数量・納入日・納入場所の各欄には、乙第2号証と同一のものが記載され、受領印の箇所には、サイン風の文字と「20/09/04」の数字が記載されている。
2 そこで、前記1で認定した事実を総合すれば、本件商標の通常使用権者と認められるプーマジャパン(プーマジャパンが本件商標の通常使用権者であることについては当事者間に争いがない。)は、本件商標と外観上同視される商標を靴の外側側面に表示した「スポーツシューズ(運動靴)」についてのカタログを本件審判の請求の登録(平成16年10月27日)前3年以内に作成したものと推認することができる。そして、該カタログは、100部作成されたものと認められるところ、「100」という数字は、商取引一般においては、カタログの作成部数としては決して多いものとはいえないとしても、日本国内において頒布されたと推認するに難くないものというのが相当である。
また、通常使用権者が使用する商品「スポーツシューズ(運動靴)」は、本件請求に係る指定商品に含まれるものと認められる。
そうすると、本件商標の通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「スポーツシューズ(運動靴)」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたものと推認し得るところである。
なお、付言すれば、靴について使用される商標は、一般的には、いわゆるベロと呼ばれる部分や靴の内底や外底に表示される場合が多いといえるが、「スポーツシューズ(運動靴)」についてみれば、使用商品に表示される商標のように、靴の外側側面にデザイン的に表示して、自他商品の識別標識としての機能を果たしている場合が多いというのが実情であり、その需要者は、靴の外側側面にデザイン的に表示された商標をもって、商品の取引に当たる場合も少なくないというのが相当であるから、このような取引の実情に照らせば、靴の外側側面にデザイン的に表示された商標の使用をもって、登録商標の使用でないということはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、乙第1号証について、どこにどのように配布したのか示されていないから、登録商標の使用とはいえない旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、乙第1号証の文面・作成数量からすれば、日本国内で頒布されたと推認されるところであり、カタログにおいて「使用に係る商品」及び「使用に係る商標」との関係が明確に把握できるものであるから、商標法第2条第3項第8号でいう「商品に関する広告に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」に当たるものといわざるを得ない。
(2)請求人は、甲第1号証ないし甲第39号証を提出し、プーマジャパンの2004年春夏用のカタログ及び2004年秋冬用のカタログには、使用商品は掲載されていないし、被請求人の靴を取り扱う店に使用商品の有無と価格について問い合わせの電子メールを送信しても、その存在を確認すること及び入手することはできなかったから、乙第1号証ないし乙第3号証は、信憑性に欠けるものである旨主張する。
確かに、甲第1号証及び甲第2号証には、使用商品はなく、また、本件商標を使用した靴も見あたらない。しかし、必ずしも被請求人の取扱いに係るすべての商品が請求人の示したカタログに掲載されるとは限らないばかりでなく、どの商品をどのカタログに掲載するかなどについては、被請求人の自由意思に任されるものであるから、請求人の示したカタログに使用商品がないことをもって、直ちに乙第1号証ないし乙第3号証が信憑性に欠けるものと断定することはできない。
仮に甲第3号証ないし甲第39号証で示した店舗において、使用商品を取り扱っていないとしても、前記認定のとおり、乙第1号証ないし乙第3号証をもって、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、「商品に関する広告に標章を付して展示し、若しくは頒布する行為」をしたものと推認されるものであり、乙第1号証ないし乙第3号証が本件取消審判を免れる目的をもってのみ作為的に作成されたとものと認めるに足る証拠は見出せない。
(3)したがって、上記に関する請求人の主張は、いずれも採用することができない。他に前記認定を覆すに足る証拠の提出はない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が請求に係る指定商品中の「スポーツシューズ(運動靴)」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものと認めざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲

本件商標


審理終結日 2005-09-16 
結審通知日 2005-09-26 
審決日 2005-10-07 
出願番号 商願昭52-53210 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (122)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成合 清 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
寺光 幸子
登録日 1984-12-20 
登録番号 商標登録第1733569号(T1733569) 
代理人 廣江 武典 
代理人 小谷 武 
代理人 木村 吉宏 

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