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審決分類 |
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない Y12 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y12 |
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管理番号 | 1127526 |
審判番号 | 不服2003-20482 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2006-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-21 |
確定日 | 2005-11-10 |
事件の表示 | 商願2002-84144拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、「シリカ結合カーボン」の文字を標準文字により書してなり、願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成14年10月3日に登録出願、その後、指定商品については、同15年7月7日付けの手続補正書をもって、第12類「自動車用タイヤ」に補正されたものである。 2 原査定の拒絶の理由の要点 原査定は、「本願商標は、「シリカ材を結合させたカーボン」の意を表した「シリカ結合カーボン」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるから、これを本願指定商品中、航空機のタイヤ,自動車のタイヤ,二輪自動車・自転車のタイヤ,並びにそれらに使用されるその他のゴム製品に使用するときは、単に商品の原材料・品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 本願商標は、前記したとおりの構成文字よりなるところ、その構成中の「シリカ」の文字は「二酸化珪素の俗称」の意味を、「結合」の文字は「結び合うこと。結び合せて一つにすること。その結びつき。」の意味を、「カーボン」の文字は「炭素」の意味をそれぞれ有する(いずれも「広辞苑第五版」株式会社岩波書店)ものである。 ところで、本願商標の指定商品である「自動車用タイヤ」との関係からすれば、「シリカ」及び「カーボン」がタイヤの原材料、補強剤として普通に使用されており、これらが新しいタイヤの研究開発にとって重要な素材であることは、タイヤメーカー、その原材料メーカー及び自動車業界において広く知られているところである。 そうすると、上記実情からして、本願商標からは「シリカを結合させたカーボン」の意味合いが看取されるものであり、これをその指定商品「自動車用タイヤ」に使用したときは、取引者、需要者は、「シリカを結合させたカーボンを原材料とする自動車用タイヤ」というほどの意味合いを容易に理解するものであるから、これよりは、商品の原材料、品質を表示するにすぎないものというべきである。 そして、以下の新聞記事やインターネット情報をみても、自動車用タイヤの素材等の研究開発がなされ、タイヤの原材料、補強剤として「シリカ」及び「カーボン」が使用されている事実が認められることは明らかである。 (1)2004年2月19日付け化学工業日報 9頁には、「自動車材料 低燃費のあくなき追求・タイヤ(企画記事)」の見出しの下に「住友ゴム工業が開発したタイヤ材料シミュレーション技術は・・・数十ナノメートルの微粒子であるカーボンブラック、シリカなどのフィラー(補強材)配合ゴムについて、分子構造まで考慮したモデルをコンピューター上に構築し・・・新素材「LRRカーボン」を開発、今月発売の新タイヤに採用している。」の記載がある。 (2)2000年11月24日付け化学工業日報 1頁には、「日本ゼオン、新規の乳化重合技術を確立、シリカタイヤ向けSBR」の見出しの下に「乗用車用タイヤ分野で、省燃費化や高性能化に向けてシリカ成分を配合した次世代タイヤ需要が本格化しつつある。補強材としてカーボンブラックに加えてシリカを配合することで転がり抵抗を大幅に低減、省燃費化を実現できる。」の記載がある。 (3)2001年2月22日付け化学工業日報 7頁には、「自動車材料 基盤技術の革新相次ぐ・タイヤ(企画記事)」の見出しの下に「ここ数年、自動車タイヤの開発競争は激しさを増してきた。高度なシミュレーション技術をベースに、新材料の積極的な採用と配合技術を駆使し、大幅な性能向上を実現した新製品投入が相次いでいる・・・各社の動向をみると、ブリヂストンの確立した新タイヤ基盤技術・・・シリカ配合量を抑制できるアクアパウダー(アルミ酸化物系材料)など新規補強剤を実用化したほか・・・。横浜ゴムは、補強剤にシリカ結合カーボン粒子を配合したDNAシリーズに両末端変性タイプの合成ゴムを採用した「DNAエコス」を市場投入した。」の記載がある。 (4)2000年6月26日付け化学工業日報 6頁には、「ホワイトカーボン、一般タイヤ向けに本格展開(企画記事)」の見出しの下に「シリカタイヤは・・・カーボンブラックの一部に代替してシリカを配合することにより、転がり抵抗を低減でき、燃費向上に寄与するほか、濡れ路面でのグリップ力が向上する。このため省エネ、地球温暖化防止、そして安全性向上に大きく貢献する。」「タイヤメーカーのなかで最もシリカタイヤをアピールしているのが九六年からシリカ配合タイヤ生産を開始している横浜ゴム・・・シリカタイヤ製造で最も困難なのがシリカ混合技術だが・・・新たな発想によりカーボンにシリカをあらかじめ結合させた「合体ゴム」を開発・・・高性能タイヤ向けに戦略展開している。」の記載がある。 (5)2000年3月8日付け化学工業日報 6頁には、「自動車材料 省燃費と高機能両立へ・タイヤ(企画記事)」の見出しの下に「国内メーカー各社は、カーボンブラックとシリカを最適配合し、特性の制御幅が広いS・SBR(溶液重合スチレン・ブタジエンゴム)やポリマー末端変性技術などを導入して、性能向上と低転がり抵抗や軽量化、長寿命といった、静粛・快適性能新製品開発が相次いでいる。横浜ゴムは、シリカ結合カーボン粒子を補強材として配合した省燃費タイヤ「DNAシリーズ」を開発、製品展開を推進している。」の記載がある。 (6)インターネットの「http://toyotires.jp/mailmaga/backno_09/tirekun/tirekun_09.html」のホームページには、「■「雨の日にも強い味方“シリカ”」」の項目の下に「タイヤの色はなぜ黒いか知っていますか?実は、黒色はタイヤをつくるときに配合されるカーボンの色なんです。カーボンという材質はゴムの強度を高めるために使われます。そして最近、このタイヤの配合材として注目されているのがシリカという物質です・・・開発者のタイヤへのこだわりは、タイヤの形状ばかりでなく、その材質にも及んでいるわけですね。」の記載がある。 (7)インターネットの「http://www.michelin.co.jp/news/product/p1235.htm」のホームページには、「■ミシュランならではのシリカ配合技術を駆使」の項目の下に「また、コンパウンドには補強材としてカーボンブラックが広く使われてきましたが、ミシュランはカーボンブラックに代わる補強材としてシリカを配合する「シリカ・コンパウンド」をいち早く開発しました。シリカは、カーボンブラックと同等の耐摩耗性、耐紫外線性を持ちながら、低温の路面でのグリップも向上させます。」の記載がある。 (8)インターネットの「http://www.dunlop.co.jp/tyre_d/wt/tyre/degit/degit3.html」のホームページには、「デジタイヤでより進化した、デジタイヤシリカ撥水ゴム」の項目の下に「サマータイヤ用撥水ゴムに補強材として、ウエットに強いシリカとドライに強い微粒子カーボンをデジタイヤにより絶妙に配合。いちだんと高いウエット路面との性能差を小さくし、安全性を向上させました。」の記載がある。 (9)インターネットの「http://www.yrc.co.jp/recruit/dna/03/」の請求人のホームページには、「シリカ入りのタイヤは以前から存在していた。しかし、天然鉱物を原料とするシリカはカーボンと混ざりにくいという難点があった。そこで、あらかじめシリカとカーボンを結合させて、シリカの特性を充分に引き出すことに成功したのが、ECOタイヤに使用されている合体ゴムだ。」の記載がある。 なお、請求人は、現時点において、「二酸化珪素を結合した炭素」として「シリカ結合カーボン」という表記が一般に使用されている事実は存在しないこと、及び本願商標は、指定商品である「自動車用タイヤ」との関係が不明瞭であり、直ちに指定商品の原材料として使用されることを認識させるものではなく、出願人の造語であること、などを主張するものであるが、「自動車用タイヤ」の原材料(素材)というような関係にある「シリカ」「カーボン」について、先に掲げた新聞記事等の内容からすれば、本願商標は、上記したとおり「シリカを結合させたカーボンを原材料とする自動車用タイヤ」というほどの意味合いで取引者、需要者に容易に認識されるものと認められるのであって、その商品の原材料、品質を表示するにすぎないものと理解、認識されるといわなければならないから、請求人の上記主張を採用することはできない。 また、請求人は、審決及び登録商標の事例を提示し、本願商標も登録すべきである旨主張するが、これらは事案を異にするといわざるを得ないものであり、しかも、審決、商標登録の事例の有無によって、取引者、需要者が本願商標をいかに認識するかが左右されるとも考え難いことから、この点の請求人の主張は採用することはできない。 以上のとおり、本願商標は、その指定商品「自動車用タイヤ」に使用したときは、「シリカを結合させたカーボンを原材料とする自動車用タイヤ」という商品であることを認識させるものであり、その商品の原材料、品質を表示するにすぎないものというべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記した原材料、品質以外の自動車用タイヤに使用したときは、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するといえる。 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であり、取り消すことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2005-08-04 |
結審通知日 | 2005-08-26 |
審決日 | 2005-09-07 |
出願番号 | 商願2002-84144(T2002-84144) |
審決分類 |
T
1
8・
272-
Z
(Y12)
T 1 8・ 13- Z (Y12) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 久保田 正文、半田 正人 |
特許庁審判長 |
小林 薫 |
特許庁審判官 |
寺光 幸子 井出 英一郎 |
商標の称呼 | シリカケツゴーカーボン |
代理人 | 吉田 精孝 |