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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Y25
審判 全部無効 観念類似 無効としない Y25
審判 全部無効 外観類似 無効としない Y25
管理番号 1126131 
審判番号 無効2004-89091 
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-27 
確定日 2005-10-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4763548号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4763548号商標(以下「本件商標」という。)は、「PIPELINE」の欧文字を横書きしてなり、平成15年8月1日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」を指定商品として、同16年4月9日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4300048号商標(以下「引用商標」という。)は、「AUSTRALIAN PIPELINE」の欧文字を横書きしてなり、平成10年6月30日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげかさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(『靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具』を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、同11年7月30日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証を提出した。
(1)請求の理由
(ア)請求の利益について
請求人は、被請求人から、本件商標の存在を理由により警告を受けているため、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(イ)無効理由について
本件商標は、「PIPELINE」の英文字を横書してなるものであるから、「パイプライン」の称呼を生じ、また、「パイプライン」、「管」若しくは「大きな波」等の観念を生ずるものである。
一方、引用商標は、「AUSTRALIAN PIPELINE」の英文字を横書してなるものであるから、英語の知識に富んだ現代の日本人は、これを直ちに「オーストラリアンパイプライン」と称呼し、また、これから「オーストラリアのパイプライン」、「オーストラリアの管」若しくは「オーストラリアにおける大きな波」等の観念を抱く。
引用商標の構成中「AUSTRALIAN」文字は、「オーストラリアの」といった地名表示にすぎないことが明らかであり、商標の類否判断の際には、あまり重要視されない(甲第5号証)。
すなわち、「PIPELINE」に「AUSTRALIAN」を付したとしても、当該語である「AUSTRALIAN PIPELINE」からは、なおも「パイプライン」のみの称呼、並びに、「パイプライン」のみの意味合いを発現すると解するのが至当である。
このような考え方は、甲第6号証ないし甲第8号証に示す判例においても採用されているところである。
してみると、本件商標と引用商標とは、称呼上及び観念上類似するものであることは明らかなところである。
そして、本件商標に係る指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似である。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、少なくとも称呼及び観念の点において類似するものであることは明らかであり、両者の指定商品も同-又は類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11条に違反して登録されたものであることは明白であるから、その登録は同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(2)被請求人答弁に対する弁駁
(ア)本件商標の称呼及び観念について
被請求人は、「パイプライン」から生ずる概念として、乙第7号証を引用して石油・ガス・水等の輸送管路、流通ルート及び情報ルートを挙げているが、これは、商標権者の意図するものではないことは明らかである。
すなわち、本件商標における「PIPELINE」の文字は、波との関係において用いられているものであり、サーフィン業界において「パイプライン」といえば、波が筒状になった状態(チューブ)を指し、また、ハワイオアフ島のノースショアーのポイントを指すことは常識的事項である(甲第9号証及び甲第10号証)。そして、商標権者が「サーフボード」等のサーフィン関連商品を指定商品とする商標登録第4525838号(乙第6号証)を有しているところからして、この事実を知らない訳がない。
それにもかかわらず、「パイプライン」から生ずる観念として、このサーフィン用語としての意味合いを意図的に除外しているのは、この意味合いを挙げた場合には、本件商標と引用商標とが観念類似とされる蓋然性が高くなることを、被請求人が十分認識しているからにほかならない。
確かに、辞書を引けば、「パイプライン」として、被請求人が主張するような意味合いを認めることができるが、そのうち「輸送管路」の意味合いを認識する日本人は少なくないかもしれないが、日常「パイプライン」を「流通ルート」や「情報ルート」との意味で使用することはないので、「パイプライン」から、これらの意味合いを認識する人は稀と考えられる。
すなわち、請求人及び被請求人がそうであるように、サーフボード関連商品を扱う業者は、同時に、Tシャツ、パーカー等の被服をも扱っていて、商標登録も第25類と第28類について取得するのが常となっている(甲第1号証と乙第6号証、甲第3号証と乙第15号証、甲第11号証と甲第12号証、甲第13号証と甲第14号証、その他多数)。このことは、当該商品間の需要者層が共通であることをも意味する。
なお、ここに引用した商標登録の権利者は、いずれも日本プロサーフィン連盟の公認用具取扱い会社である(甲第19号証)。
してみると、本件商標の指定商品、殊に、Tシャツ、パーカー等の被服の需要者は、本件商標に接した場合に波やサーフィンを連想し、その印象を強く抱くであろうことに疑いの余地はない。
一方、引用商標は「AUSTRALIAN PIPELINE」であって、「AUSTRALIAN」を含むものの、それは国名であって強い識別力はなく、需要者の印象に強く残るのは「PIPELINE」の部分であり、引用商標に接した需要者は、本件商標と同じく波やサーフィンをイメージし、本件商標との間に密接な関連性を感取するであろうことも疑いの余地がないところである。
以上の点からして、一般需要者は、本件商標と引用商標から、やサーフィン等の共通の事項を連想し、共通の印象を抱くことは明らかであるので、本件商標と引用商標とが類似であることに疑いの余地はない。
(イ)乙第10号証(請求人への警告)及び乙第11号証(請求人による回 答書)について
被請求人は、請求人に対してなした警告(乙第10号証)に対する請求人の回答書(乙第11号証)において、「AUSTRALIAN」と「PIPELINE」を同じ大きさで表示した商標について、取引の実際において、単に「パイプライン」とされることはなく、必ず「オーストラリアンパイプライン」と把握されると認めている。
審判請求書における請求人の主張は、上記回答の趣旨と相容れないものであり、自己矛盾である。
上記回答書における回答内容と、請求人の本件における主張とは、何ら矛盾するものではない。
回答書における回答は、取引の実際において「オーストラリアンパイプライン」として取引されていることと、そこから「パイプライン」と共通の観念ないし称呼が生じ得ると考えることとは、何ら矛盾するものではない。
したがって、この点に関する被請求人の主張には理由がない。
(ウ)被請求人は、引用商標よりも先願で、引用商標と指定商品が抵触する商標「PIPELINE」についての登録第2389464号(乙第14号証)の存在を指摘し、その存在は、本件商標「PIPELINE」と引用商標「AUSTRALIAN PIPELINE」とが非類似であることを物語るとしている。
また、同様に、請求人の商標登録第4332106号(第28類 AUSTRALIAN PIPELINE)と、それより先願の被請求人の商標登録第4525838号(第28類 PIPELINE)とが並存していることを指摘し、このことも上記事実を物語るとしている。
上記被請求人の反論において挙げられている各事案において、請求人が「AUSTRALIAN PIPELINE」と「PIPELINE」とは類似であるとの立場を貫くと、引用商標においては、指定商品「仮装用衣服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)、乗馬靴」について、また、登録第4332106号においては、指定商品の全部について無効理由を含むことになる。
しかし、請求人は、上記について登録が無効とされることは承知の上で、類似であるとの立場を貫くものである。
なお、商標間における類否判断は絶対的、恒常的なものではなく、変わり得るものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める。と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人が本件審判を請求することについて、法律上の利益を有することは認める。
なお、請求人が同項において言及する「警告」については、以下のとおり、その概要を述べる。
請求人は、登録第4300048号商標(引用商標)及び登録第4332106号商標の権利者であるところ、これらの登録商標は、欧文字「AUSTRALIAN PIPELINE」からなり、それぞれ、第25類ないし第28類の商品を指定商品とする(乙第3号証ないし乙第5号証)。
しかしながら、請求人が被服・サーフボード・ボディボード等の商品について実際に使用している商標は、ひどく変形されており、請求人が保有する上記2件の登録商標と同一(社会通念上の同一を含む。)のものとは認められず、むしろ被請求人が保有する本件商標及び登録第4525838号商標(乙第1号証及び乙第2号証、乙第6号証)に類似するものであり、したがって、被請求人の業務と混同を生ずるおそれがあると考えられるので、かかる変形使用の是正を求めた次第である(乙第10号証)。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、欧文字「PIPELINE」から構成され、その称呼は「パイプライン」である。
また、本件商標からは、「パイプライン(石油・ガス・水等の輸送管路)」「流通ルート」「情報ルート」の観念を生ずる(乙第7号証)。
これに対して、引用商標は、「AUSTRALIAN PIPELINE」の欧文字から構成され、その称呼は「オーストラリアンパイプライン」であり、「オーストラリアンパイプライン(オーストラリアに敷設された石油・ガス・水等の輸送管路)」「オーストラリアの流通ルート」「オーストラリアに関する情報ルート」の観念を生ずる。
よって、本件商標と引用商標を対比するに、本件商標「パイプライン」の称呼と、引用商標から生ずる称呼「オーストラリアンパイプライン」とは、彼此相紛れるおそれはない。
また、本件商標から生ずる上記の観念は、引用商標から生ずる上記の観念とは明らかに概念の異なるものであり、したがって、彼此相紛れるおそれはない。
更に、本件商標の外観も、引用商標の外観とは明らかに異なるので、かれこれ相紛れるおそれはない。
以上、本件商標は、その外観・称呼・観念のいずれから見ても、引用商標とはかれこれ相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標は、引用商標とは非類似の商標である。
(3)引用商標中「PIPELINE」を商標の要部とすべきか否かについ て
(ア)引用商標の観念のうち、「オーストラリアンパイプライン(オーストラリアに敷設された石油・ガス・水等の輸送管路)」は、例えば、「シベリアンパイプライン(シベリアに敷設された石油・ガス・水等の輸送管路)」や「アラスカンパイプライン(アラスカに敷設された石油・ガス・水等の輸送管路)」等と異なる観念であるばかりでなく、一般的・包括的な意味における「パイプライン(石油・ガス・水等の輸送管路)」とも異なる観念である。
ちなみに、オーストラリアにおけるエネルギー資源のうち、天然ガス確認埋蔵量は25,500億立方メートルであり、オーストラリアの国土にパイプライン網が敷設されている。また、オーストラリアの内陸部では水不足が恒久的な問題であり、水のパイプラインにより、問題の解決が図られている(乙第8号証の1及び2)。
すなわち、引用商標は、商標の構成文字「AUSTRALIAN PIPELINE」の全体をもって一つのまとまりのある特定の観念を生ずるものである。仮に、構成中の後半部分「PIPELINE」のみをもって取引に供されるならば、異なる観念を生じ、畢竟、引用商標とは別異の商標となってしまう。
したがって、引用商標は、常に商標の全体「AUSTRALIAN PIPELINE」をもって取引に供されるものであり、構成中の後半部分「PIPELINE」のみをもって取引に供されることはない。
また、引用商標は、同書・同大・同間隔に表示されたものであり、外観上も「PIPELINE」のみを取り出すべき特段の理由もない。
さらに、引用商標の全体から生ずる「オーストラリアンパイプライン」の称呼は、これを一気に発音することに特段の支障があるものでもない。
(イ)引用商標は、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげかさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品とするものである。
仮に、引用商標を構成する前半部分「AUSTRALIAN」の文字が、引用商標の使用に係る商品の産地等を表示するための記述的な表示にすぎないとするならば、引用商標の指定商品は、「オーストラリア産の洋服,オーストラリア産のコート,オーストラリア産のセーター類、オーストラリア産のワイシャツ類,(以下、省略)」等の限定的な記載になってしかるべきである。しかしながら、引用商標の指定商品には、かかる記載は見当たらない(乙第3号証及び乙第4号証)。
このことは、引用商標の権利者(すなわち、請求人)が引用商標について商標登録出願をした際に、引用商標の観念が答弁書に記載のものであると認識の上で指定商品の範囲を特定したことを物語るものであり、また、引用商標の審査を担当した審査官も、同様の考えの下、登録査定を下したと理解できる。
すなわち、引用商標に関する審査経過を斟酌するならば、引用商標の構成文字中、前半部分の「AUSTRALIAN」の文字は、引用商標の使用に係る商品の産地等を表示するための記述的な表示として用いられていないことが明らかである。
なお、仮に、引用商標中の「AUSTRALIAN」が産地表示であると認識すべきものであるならば、「オーストラリア産の洋服,オーストラリア産のコート,オーストラリア産のセーター類、オーストラリア産のワイシャツ類,(以下、省略)」以外の商品を指定商品に包含する引用商標は商品の品質の誤認を生ずるおそれがあると認められるべきであり、商標法第4条第1項第16号を理由とする無効理由を包含する。
ちなみに、「AUSTRALIAN」の文字と他の語が結合することにより、一つのまとまりのある言葉となることは、数多く見受けられることである(乙第9号証)。
これらの事例のいずれも、「AUSTRALIAN」の文字は、産地表示として用いられてはいない。
また、これらの事例のいずれも、前半部分の「AUSTRALIAN」を省略して、後半部分の語のみを抽出して用いたのでは、本来の意味合いを表現することができないため、常に、全体をもって一連に用いられるべき言葉である。
以上、引用商標の前半部分の「AUSTRALIAN」の文字は、答弁書に記載の観念を生じせしめるための語であって、引用商標の使用に係る商品の産地等を示すための記述的な表示ではない。
したがって、引用商標は、常に商標の全体「AUSTRALIAN PIPELINE」をもって取引に供されるのであって、「PIPELINE」のみをもって取引に供されることはない。
(ウ)請求人は、請求書において、次のとおり、陳述している。
引用商標中の「AUSTRALIAN」は、「オーストラリアの」といった地理表示にすぎないことが明らかであり、商標の類否判断の際には、あまり重要視されない(甲第5号証)。すなわち、「PIPILINE」に「AUSTRALIAN」を付したとしても、当該「AUSTRALIAN PIPELINE」からは、なおも「パイプライン」のみの称呼、並びに「パイプライン」のみの意味合いを発現すると解するのが妥当である。
この陳述は、請求書において言及された「警告」に対する請求人の回答と矛盾するものである。
すなわち、請求人は、この警告(乙第10号証)に対する回答書(乙第11号証)において、次のとおり述べている。
「・・・また、依頼会社の使用するロゴには種々のものがあり、『AUSTRALIAN』の部分と『PIPELINE』の部分とが全く同じ大きさのものや、前者が後者より少し小さいものもあります。そして、その取引に際しても、単に『パイプライン』とされることはなく、必ず『オーストラリアンパイプライン』として取引されています。・・・」
回答書中の上記部分の趣旨は、次のとおりであると理解できる。
(a)使用に係る商標の中には、「AUSTRALIAN」と「PIPELINE」を同じ大きさで表示したものがある。
(b)また、「AUSTRALIAN」を小さく、「PIPELINE」を大きく表示したものもある。
(c)そして、いずれの場合も、取引の実際において、単に「パイプライン」とされることはなく、必ず「オーストラリアンパイプライン」として取引されている。
すなわち、請求人は、回答書において、「AUSTRALIAN」と「PIPELINE」を同じ大きさで表示した商標について、取引の実際において、単に「パイプライン」とされることはなく、必ず「オーストラリアンパイプライン」と把握されると認めている。
請求書における請求人の主張は、上記回答の趣旨と相容れないものであり、自己矛盾である。
付言するに、被請求人は、上記の通知書(警告書:乙第10号証)において、請求人が使用する種々の商標中、「AUSTRALIAN」を小さく表示し、「PIPELINE」の部分を殊更大きく目立つように表示した商標は、変形の程度がひどいため、請求人が保有する登録商標の使用とはいえず、むしろ被請求人が保有する登録商標に類似するものであると指摘したのであり、この指摘は、引用商標(すなわち、「AUSTRALIAN」と「PIPELINE」を同等のバランスで表示している。)が本件商標に類似しないとする被請求人の主張と齟齬するものではない。なお、請求人の使用に係る商標の一部は、同人のウェブサイト(乙第12号証)にも示されている。
(d)上記(ア)において述べたように、「PIPELINE」のみをもって取引に供した場合には、引用商標とは全く異なる商標となってしまい、需要者は、引用商標を想起することができない。また、引用商標は、同書・同大・同間隔に表示されたものであり、外観上「PIPELINE」部分のみを取り出すべき特段の理由もない。更に、称呼上引用商標の全体を一気に発音することに特段の支障はない。
上記(イ)において述べたように、引用商標の指定商品の表示に照らし「AUSTRALIAN」部分は、産地表示とは認識されていない。また、「AUSTRALIAN」と他の語とが結合した言葉において、「AUSTRALIAN」の部分は、必ずしも産地を意味するものとして用いられるわけではない。
上記(ウ)において述べたように、請求人も「AUSTRALIAN」と「PIPELINE」を同じ大きさで表示した商標を使用する際には、「オーストラリアンパイプライン」としてのみ取引されると述べている。
これらを総合して検討するに、引用商標は、その全体「AUSTRALIAN PIPELINE」をもって取引に供されるものであり、「PIPELINE」部分のみを取り出し、商標の要部と解すべきものではない。
(4)請求人所有の登録商標と他人名義の登録商標
(ア)引用商標と被請求人名義の登録第1533895号商標
被請求人を登録名義人とする登録第1533895号商標は、欧文字「PIPELINE」から構成され、旧第17類(昭和34年法)「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」)を指定商品として、昭和53年8月27日設定登録、一回の更新登録を経て、平成14年8月27日に権利消滅したものである(乙第13号証の1及び2)。
他方、請求人が所有する引用商標は、平成10年6月30日登録出願、平成11年7月30日設定登録である。したがって、引用商標について登録査定が下された時点では、登録第1533895号商標は、有効に存続していた。
また、引用商標の指定商品は、被請求人が登録名義人であった登録第1533895号商標の指定商品と同一又は類似の商品を多数含む。
かかる状況にもかかわらず、引用商標の登録が認められたのは、引用商標に関する審査において、引用商標は、登録第1533895号商標と非類似の商標であると判断されたことを物語る。
ちなみに、本件商標は、登録第1533895号商標の存続期間満了後に、同登録商標の登録名義人が同一商標をほぼ同一の商品(第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,履物」)について再出願し登録を得たものである。
(イ)引用商標と第三者名義の登録第2389464号商標
第三者名義の登録第2389464号商標は、欧文字「PIPELINE」からなり、昭和60年4月30日登録出願、平成4年3月31日設定登録に係るものであり、二度の更新登録を経て、現在も有効に存続する。
そして、書換登録後の指定商品に第25類「仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」」を含む(乙第14号証)。
他方、請求人が所有する引用商標は、第三者の登録第2389464号商標が現に有効に存続しているにもかかわらず、登録を認められたのであり、また、引用商標の指定商品には登録第2389464号商標の指定商品と同一又は類似の商品を多数含む。
かような状況において、引用商標の登録が認められたのは、引用商標に関する審査において、引用商標は、登録第2389464号商標と非類似の商標であると判断されたことを物語る。
(ウ)請求人が保有する登録第4332106号商標と被請求人名義の登録 第4525838号商標
被請求人を登録名義人とする登録第4525838号商標は、欧文字「PIPELINE」及び図形からなり、第28類に属する商品を指定商品として、平成8年10月29日登録出願、平成13年11月30日設定登録されたものである(乙第6号証)。
他方、請求人が所有する登録第4332106号商標は、欧文字「AUSTRALIAN PIPELINE」からなり、第28類「オーストラリア製のサーフボード,オーストラリア製のスノーボード,オーストラリア製のスケートボード,その他のオーストラリア製の運動用具,オーストラリア製のスキーワックス,オーストラリア製の釣り具,オーストラリア製のおもちゃ,オーストラリア製の人形」を指定商品として、平成10年7月3日登録出願、平成11年11月5日設定登録されたものである(乙第5号証)。
すなわち、請求人の同登録商標は、被請求人の登録第4525838号商標と同ー又は類似の商品を数多く含み、かつ、先出願である被請求人の登録第4525838号商標が出願商標として審査・審判に係属中であるにもかかわらず、登録を認められたものである。
かような状況において、請求人の登録第4332106号商標の登録が認められたのは、同登録商標に関する審査において、同登録商標は、登録第4525838号商標と非類似の商標であると判断されたことを物語る。
(エ)請求人が保有する登録第4332106号商標と第三者名義の登録第 2389464号商標
第三者名義の登録第2389464号商標は、上記(4)(イ)において述べたとおりである。
請求人が所有する登録第4332106号商標は、第三者の登録第2389464号商標が現に有効に存続しているにもかかわらず、登録を認められたのであり、また、請求人が所有する登録第4332106号商標の指定商品には、第三者名義の登録第2389464号商標の指定商品と同一又は類似の商品を多数含む。
かような状況において、請求人の所有する登録第4332106号商標の登録が認められたのは、同登録商標に関する審査において、同登録商標は、登録第2389464号商標と非類似の商標であると判断されたことを物語る。
(オ)上記(4)(ア)ないし(エ)において指摘したように、請求人が保有する引用商標及び登録第4332106号商標「AUSTRALIAN PIPELINE」は、被請求人ないし第三者名義の先願商標ないし先願先登録商標「PIPELINE」の存在にもかかわらず登録に至っており、このことは、両商標が非類似であると認定されたことにほかならず、被請求人の主張に適うものである。
(5)請求人の主張に対する再答弁(平成17年2月21日付け)
請求人は、登録第4332106号商標に関する審査の中で、意見書において、第28類ないし第25類の商品如何を問わず、商標「AUSTRALIAN PIPELINE」は、「PIPELINE」と非類似であると主張している(乙第15号証の1ないし7)。
しかるに、本件審判事件において、請求人は、自己の出願について登録を得るために行った上記の陳述と相反する主張をしている。かかる主張は、自己矛盾であり、許されるべきものではない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
したがって、本件審判の請求は根拠がないものであるから、「答弁の趣旨」に記載のとおりの審決を求める。

5 当審の判断
当事者間に利害関係について争いがないので、本案に入って検討するに、本件商標は、前記1のとおりの構成よりなるものであるから、その構成文字に相応して「パイプライン」の称呼を生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、前記2のとおり「AUSTRALIAN PIPELINE」の欧文字よりなり、構成各文字が外観上まとまりよく、同じ書体、同じ大きさで一体的に表わしてなるものであり、全体の構成文字から生ずると認められる「オーストラリアンパイプライン」の称呼もやや冗長にわたるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。また、観念上も「オーストラリアのパイプライン(石油・天然ガスなどを送るための管路)」のごとき一つの熟語的意味合いを把握することのできるものであるから、引用商標は、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識し把握されると見るのが自然である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「オーストラリアンパイプライン」の称呼のみを生ずるものと認められる。
しかして、本件商標より生ずる「パイプライン」の称呼と引用商標より生ずる「オーストラリアンパイプライン」の称呼とは、その音構成及び音数に明らかな差異が認められるものであるから、両称呼は、容易に区別し得るものである。
また、本件商標は、「パイプライン」(石油・天然ガスなどを送るための管路)の観念を生ずるものと認められるから、前記のとおり「オーストラリアのパイプライン」の観念が生ずるものと認められる引用商標とは、観念上も区別し得るものである。
さらに、本件商標と引用商標とは、その外観においても十分区別し得る差異を有するものである。
その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき特段の理由は、見いだし得ない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
なお、請求人は、判決例(甲第6号証ないし甲第8号証)を援用しているが、いずれも本件と事案を異にするものであるから、この点に関する請求人の主張は、採用することができない。
また、請求人は、甲第1号証、甲第3号証、甲第9号証ないし甲第14号証及び甲第19号証を提出し、一般需要者は、本件商標と引用商標から波やサーフィン等の共通の事項を連想し、共通の印象を抱くことは明らかである旨主張しているが、本件については、前記認定のとおりであるから、この点に関する請求人の主張も採用することができない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-08-25 
結審通知日 2005-08-31 
審決日 2005-09-13 
出願番号 商願2003-65062(T2003-65062) 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (Y25)
T 1 11・ 263- Y (Y25)
T 1 11・ 261- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三澤 惠美子 
特許庁審判長 大場 義則
特許庁審判官 鈴木 新五
柳原 雪身
登録日 2004-04-09 
登録番号 商標登録第4763548号(T4763548) 
商標の称呼 パイプライン、パイプ 
代理人 小林 久夫 
代理人 安島 清 
代理人 大村 昇 
代理人 高梨 範夫 
代理人 齋藤 晴男 
代理人 木村 三朗 

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