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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y30
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y30
管理番号 1123312 
異議申立番号 異議2004-90241 
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2004-04-23 
確定日 2005-08-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第4743740号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4743740号商標の登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4743740号商標(以下「本件商標」という。)は、「こぶとりだし」の平仮名文字(標準文字による)よりなり、平成15年6月12日に登録出願、第30類「だしの素」を指定商品として、平成16年1月9日登録査定、同年1月23日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
本件商標は、「昆布からとっただし」もしくは「昆布と鶏からとっただし(昆布と鶏の合わせだし)」の意味を有する「こぶとりだし」の文字よりなるものであるから、商品の品質を表示するにすぎず、また、これ以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法3条1項3号及び同法4条1項16号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由の要旨
当審は、平成17年1月11日付けで、商標権者に対して、本件商標の登録を取り消すべき旨の通知をした。その理由の要旨は次のとおりである。

登録異議申立人の提出に係る、甲各号証によれば、「昆布(こんぶ)」は、「こぶ」とも指称され、「こぶじめ(昆布締め)」、「こぶちゃ(昆布茶)」、「こぶまき(昆布巻き)」等の如く使用されていることが認められる(甲第2号証及び同第3号証)。
また、動物性、植物性の材料を煮出したり、水に浸してうま味成分を抽出したものを「煮干しだし」「こぶだし」「しいたけだし」等、材料に「だし」の文字を付加して使用されていることが認められるものである(甲第3号証)。
さらに、昆布から、うま味成分を抽出した「こぶだし(昆布出汁)」は、食品の調味料として、普通一般に使用されている事実も認められるところでもある(甲第4号証ないし同第10号証)。
そこで、本件商標をみると、本件商標は「こぶとりだし」の文字よるなるところ、「こぶとりだし」の文字は、前記した「こぶだし(昆布出汁)」の使用の実情よりすれば、本件商標に接する取引者、需要者をして、「昆布から抽出した(取り出した)だし(出汁)」を認識、理解するに止まるものというのが相当である。
そうとすれば、本件商標をその指定商品中「昆布を原材料としてなるだしの素」に使用するときは、該商品の原材料、品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
また、本件商標をその指定商品中、「昆布を原材料としてなるだしの素」以外の「だしの素」に使用するときは、恰も該商品が「昆布を原材料としてなるだしの素」であるかの如く、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法3条1項3号及び商標法4条1項16号に違反して登録されたものである。

第4 商標権者の意見の要旨
前記第3の取消理由に対して、商標権者は、つぎのように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証及び同第6号証を提出した。
1 本件商標に接する取引者、需要者がこれを商品の内容・品質を表示する言葉として認識することはない。
2 本件商標は、平仮名文字のみの6文字からなり、同じ大きさ及び同じ書体の文字を等間隔に配して外観上まとまりよく構成されている。
「こぶとりだし」の語からは、何ら特定の意味を理解しえないのであって、本件商標は全体として特定の意味を有しない造語というべきである。
3 「昆布だし」という語が使用されていることは認めうるが、だからといって「こぶとりだし」の語が特定の意味を有するということはできない。この語は辞典等に記載はなく、一般に使用されている例も見あたらない。
4 本件商標はまとまりのある一個の造語であるから、これを分離・分解し、あえて意味を与えて言葉を捉えること自体がきわめて不自然である。
5 本件指定商品との関係において「だし」の部分の識別力が弱いと解されたとしても、「こぶとり」の語からは「小太り」「瘤取り」といった意味が生じるから、直ちにこれが「昆布から抽出した」の意味で認識されることはない。もし、仮に何らかの意味で理解されるとした場合、本件商標は「小太りのだし」とか「瘤取りのだし」といった意味を有するユニークな言葉である。
6 識別性が認められ、品質誤認のおそれがないとされた事例(「ほそじゃが」、「こわれうなぎ」、「ゆばつつみ」、「ふくさしぶっかけ」、「若芽とろろ」、「うめわさ」)を乙号証として示す。本件は、これらの先行例と何ら異なるところはない。
7 本件商標をその指定商品中「昆布を原材料としてなるだしの素」に使用しても、該商品の原材料、品質を表示するものではなく、また、商品の品質について誤認を生じさせるおそれもない。

第5 当審の判断
本件商標は、上記したとおり、「こぶとりだし」の文字を標準文字により表してなり、指定商品を第30類「だしの素」とするものである。
1 「だし(出汁)をとること」について
だし(出汁)を取り出すことについて、辞典類、インターネット情報、新聞記事等によれば、以下の事実が認められる。
(1)広辞苑第五版には、「だし【出し】」として、「5.『出し汁』の略。『昆布で―をとる』」との記載が認められる(「出し汁」については、「鰹節・昆布・椎茸などを煮出した汁」との記載がある。)。
(2)大辞林には、「だし【出し】」として、「1.『出し汁』のこと。『昆布で―をとる』」との記載が認められる(「出し汁」については、「鰹節・昆布などを煮出した、うまみのある汁。」との記載がある。)。
(3)「和食の出汁」との表示のもと、「● 出汁のとりかたについて・・・このサイトでも紹介していますが、『出汁のとりかた』は色々なところで紹介されています。・・・『出汁のとりかた』はあくまで目安。・・・」「● 何の料理に使うかというのは、出汁をとるのにとても大事なポイントだと思います」「● 野菜も魚貝も昆布も鰹節も煮干しも全て自然のもので、その全てから出汁はとれます。」「● まず、自分で出汁をとると、最後まで『せっかく美味しい出汁をとったのだから』という気持ちで作ります。」との表示がされていること(http://www.e-dashi.com/contents/kihon.html)。
(4)「ふるさとの魚食・日本の魚食」との表示のもと「三大出汁を巡る和食を支える縁の下の海の幸・・・出汁をとるための三大素材といえば鰹節(含む雑節)、煮干し(イリコ)、コンブで、すべて海に由来し、漁業者なくして作ることはできない。・・・やはり上質の素材からとった出汁は、深いこくがあり一味も二味も違う。・・・」との表示がされていること(全漁連ホームページ http://www.zengyoren.or.jp/sea_fish/furusato/furusato.html)。
(5)「おいしさの秘密の方程式」との表示のもと、「和食の基礎であり、味の決め手にもなる、『出汁』。これさえマスターすれば、家庭でもプロの味が楽しめること間違いなし!そのおいしさの秘密を、野崎先生にたっぷりと教えていただきました。まずは、出汁のとり方から。昆布や削り節は、たくさん入れれば味が良くなるというものではないそうで、きちんと適量を使うのが失敗しないポイントだとか。和食のプロである先生は、出汁のとり方も見事。アッという間にカツオと昆布のほのかな良い香りが会場に広がりました。」との表示がされていること(キッコーマン株式会社ホームページ http://www.kikkoman.co.jp/kcc/report/9809_rp.html)
(6)清涼飲料について、「ミネラル、ビタミン、フコイダン、多糖類(海藻食物繊維)などいっぱいの昆布から取り出した抽出物に、天然醸造のりんご酢、クコエキス、ヨモギエキスを加えて飲みやすくした清涼飲料水です。」として、「昆布から取り出した抽出物」との表現が使用されていること(http://www.kensyokuputi.com/page055.html)。
(7)ドレッシングについて、「有機たまねぎの甘味と風味を充分に生かした和風タイプのドレッシングです。・・・だしは自社で北海道産の昆布から取り出した本格派です。・・・」として、「昆布から取り出した」との表現が使用されていること(http://www.gensen.co.jp/dressing.htm)。
(8)めんつゆについて、「マルキン忠勇・・・は、・・・めんつゆでは、『無添加そうめんつゆ』(三四〇ミリリットルストレート、四〇〇円)=写真上(左)=を新発売。化学調味料無添加、だしは醸造蔵醤油に枕崎産と焼津産の鰹節、熊本産と愛媛産のウルメ節から取り、北海道の昆布から取ったうまみを合わせた。・・・鰹節と煮干しを増やし、だしの抽出時間を長め、だし感を増した。」として、「昆布から取ったうまみ」との表現が使用されていること(2004年3月24日付 日本食糧新聞)。
2 以上、取消理由通知で示した事実及び前記「1」に示すような「だし(出汁)をとること」に関する実情に照らせば、本願商標を構成する「こぶとりだし」の文字からは、その指定商品との関係においては、「昆布から抽出した(取り出した)だし(出汁)」を認識、理解させるというのが相当である。
商標権者は、「本件指定商品との関係において『だし』の部分の識別力が弱いと解されたとしても、『こぶとり』の語からは『小太り』『瘤取り』といった意味が生じるから、直ちにこれが『昆布から抽出した』の意味で認識されることはない。」と主張するが、上記した事実に照らせば、取引者・需要者は、本件商標構成中の「こぶとり」の語については、「昆布からとる」の意味合いを認識するというのが自然であって、その主張は採用することができない。
また、商標権者が乙各号証をもって示す審決例は、商標の構成及び指定商品との関係において、本件と事例を異にするものであって、これが本件の判断を左右するものということはできない。
3 まとめ
してみれば、本件商標をその指定商品中「昆布を原材料としてなるだしの素」に使用するときは、該商品の原材料、品質を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
また、本件商標をその指定商品中、「昆布を原材料としてなるだしの素」以外の「だしの素」に使用するときは、該商品が恰も「昆布を原材料としてなるだしの素」であるかの如く、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法3条1項3号及び商標法4条1項16号に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法43条の3第2項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-07-11 
出願番号 商願2003-48612(T2003-48612) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (Y30)
T 1 651・ 272- Z (Y30)
最終処分 取消  
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2004-01-23 
登録番号 商標登録第4743740号(T4743740) 
権利者 富士食品工業株式会社
商標の称呼 コブトリダシ、コブトリ 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 中村 稔 
代理人 大島 厚 
代理人 熊倉 禎男 

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