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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y19
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y19
管理番号 1121688 
審判番号 無効2004-89056 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-08-10 
確定日 2005-08-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4699774号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4699774号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4699774号商標(以下「本件商標」という。)は、「エコクリーンソイル」及び「ECOCLEAN SOIL」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成15年2月14日に登録出願され、第19類「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント及びその製品,木材,石材」を指定商品として、平成15年8月8日に設定登録されたものである(同年7月18日登録査定。)。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第93号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第10号
株式会社オーシーシー(以下「オーシーシー」という。)は、商品「舗装用防草土」(真砂土と固化剤、透水剤等を混合した舗装材)を平成12年5月に開発し、その商品に付する商標を「エコクリーンソイル」(以下「引用商標」という。)として使用・販売を開始した(甲第2号証及び甲第7号証)。
そして、同年6月には、現国土交通省の「NETIS(新技術情報提供システム)」に「エコクリーンソイル」を登録し、同年11月15日に財団法人建設物価調査会が発行した「建設資材要覧」にも掲載されている(甲第9号証及び第10号証)。
また、平成13年5月29日付日本経済新聞及び同年6月9日付、同年8月30日付新潟日報に「地球に優しい舗装材」、「OCC舗装材の自社工場」として掲載されたほか、他の地方紙にも商品が紹介されている(甲第11号証)。
さらに、商品の宣伝活動の一環として建設業界向けに、引用商標を付したライター、マウスパッド等の販促品を頒布し、前記「建設資材要覧」の裏表紙の一面にも広告を掲載するなど国内の建設業者向けの宣伝活動を展開した(甲第12号証)。
なお、上記「建設資材要覧」は、発行部数が約10万部で、建設業者が必ずというほど所有し建設資材を発注する際に参考にしているものである。
以上のとおり、「エコクリーンソイル」は、オーシーシーが平成12年頃から使用を開始し、本件商標の登録出願日(平成15年2月24日)前に既に周知商標となっていたものであり、その承継人である本件請求人が継続使用をして、その周知性は現在においても継続しているものである。
また、本件商標と引用商標とは、ともに「エコクリーンソイル」の同一の称呼を生ずる類似の商標であり、さらに、商品についても、本件商標は第19類の商品を指定商品とするから、引用商標の使用商品「舗装用防草土」と同一のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号
オーシーシーは、昭和10年6月に「日本海底電線株式会社」として設立され、その後、平成11年7月に社名を「株式会社オーシーシー」に変更し、環境部門へ進出するとともに、商品「スタボーン」(舗装材)を販売、同12年には自社開発した舗装用防草土「エコクリーンソイル」を製造、販売するに至っている。
同社は、官公庁、公共機関とも取引があり、前述の新聞等への宣伝、広告を盛んに行った結果、「エコクリーンソイル」は、使用開始直後から上記官公庁、建設業界等の間に同社の商標として周知、著名となっていたことは明らかである。
ところで、本件商標の商標権者である「日本硝子工業株式会社」(以下「日本硝子」という。)は、平成12年1月15日にオーシーシーと上記商品の販売について代理店契約を締結した。
そして、日本硝子は、オーシーシーの製造した製品を代理販売のみをしていたのであり、前記のとおり、既に「エコクリーンソイル」がオーシーシーの著名商標であったことから、本件商標を他人が商品に付して使用した場合は、需要者をして同社の出所に係る商品であると混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号
引用商標は、前記のとおり周知著名な商標であり、かつ、本件商標と類似するものである。
そして、本件商標権者は、オーシーシーの国内代理販売人であったこと、オーシーシーが商標「エコクリーンソイル」を使用していた事実を当然知っていたこと、商標「エコクリーンソイル」が周知著名であったことを熟知していたにも拘わらず、当該商標が登録されていないことを奇貨として本件商標を出願したものであることから、かかる行為は、信義則に反し不正の目的を推認できること明白である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第11号
請求人は、登録第4122041号商標を引用する。該登録商標は、「エコソイル」の片仮名文字からなり、平成8年10月22日登録出願、第19類「建築又は構築用の非金属鉱物」ほか商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成10年3月6日に設定登録されたものである。
本件商標と上記登録商標とは、共に語頭と語尾において「エコ」、「ソイル」が一致し、本件商標の中間の「クリーン」は簡易迅速を尊ぶ商慣習上省略されるから、両者は「エコソイル」と発音され称呼が一致する。また、外観上も「エコ」及び「ソイル」の部分で一致するものである。
したがって、本件商標は、上記登録第4122041号商標と商標及び商品が類似するから商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
答弁書における被請求人の主張は、明らかに誤った見解に基づくものであって全く根拠のないものであり、また、その証拠の提出もないものである。
以下、被請求人の答弁に対する弁駁及びその理由を述べる。
(1)商標法第4条第1項第10号
(ア)被請求人は、甲第2号証(「エコクリーンソイル」の商品パンフレット)について「頒布時期、発行部数、何の資料か具体的に全く記載がない」とするが、パンフレットの左下欄に「平成12年9月発行」の記載があるから同時期に発行されたものである。
そして、同時期の発行部数は約6千部で需要者、取引者に配布されており、平成12年から現在まで約20万5千部作成され手交されている(甲第16号証の1ないし甲第18号)。
また、平成15年3月以降は「エコクリーンソイル」の特徴を紹介するCDRが1000枚作成され540枚が配布されている(甲第23号証)。
(イ)被請求人は、「エコクリーンソイル」の販売数量は微々たるものであり周知性が形成されたとは言えない旨述べている。
しかしながら、甲第27号証ないし甲第33号証により「エコクリーンソイル」がどの程度生産され、需要者、取引者にどの程度販売されたかが理解できるものである。
すなわち、「エコクリーンソイル」は、平成12年度約96,900袋、同13年度約156,500袋、同14年度約199,000袋、同15年度約190,700袋、同16年度(11月まで)約128,100袋出荷されている(甲第27号証)。また、売上実績、施工実績の一部についても甲第28号証ないし甲第33号証のとおりである。
(ウ)被請求人は、「建設資材要覧」は年一回「建設物価」という雑誌の臨時増刊号にスポット的に発行されているだけである旨主張している。
しかしながら、「建設物価」には継続的に毎年広告等が掲載されており、しかも舗装用防草土等の分野で周知であれば本号の規定に該当し、当該分野の取引者、需要者の目に留まる確率は非常に高い。まして「建設資材要覧」の裏表紙への広告掲載であるから、強く記憶されるものである。
さらに、「建設物価」と同様に「積算資料」にも継続的に掲載している(甲第62号証ないし甲第68号証)。
以上のことから、オーシーシーが「エコクリーンソイル」の宣伝広告を盛んに行った結果、舗装業者等に広く浸透しており、当該分野の需要者、取引者に周知であることは十分理解できるものである。
(エ)なお、被請求人は、日本硝子と東京福幸株式会社(以下「東京福幸」という。)で「エコクリーンソイル」を開発したのであり、オーシーシーは性能評価を行ったにすぎない、と述べているが、被請求人は販売代理をしていただけである。このことは、オーシーシーが「エコクリーンソイル」のマニュアルを作成・交付した事実、生産方法について東京福幸に技術指導をした事実等により、オーシーシーが主導的役割を果たしていたことが十分わかるものである(甲第41号証ないし甲第49号証)。
(オ)また、被請求人は請求人がオーシーシーの承継人ではないと主張するが、平成16年4月1日付で請求人に正式に業務承継されており、当該事実は補足として提出する甲第25号証及び甲第26号証からも明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号
引用商標は、周知性のみならず著名性を有しているから、出所の混同の蓋然性が高く、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号にも該当する。出所の混同については、蓋然性があれば足りるものと解される。
(3)商標法第4条第1項第19号
被請求人は、オーシーシーが独立して開発したとの点は事実に反し、被請求人の日本硝子と東京福幸が開発した商品であると主張しているが、そうであるならば、被請求人が開発した証拠を自ら提出すべきである。被請求人の主張は全く根拠のないものである。
(4)商標法第4条第1項第11号
「エコクリーンソイル」と「エコソイル」の称呼は、前者の中間部分の「クリーン」を省略する現在の商取引においては、称呼上類似する商標であり、また、観念上も同一である。
(5)その他
オーシーシーが商標登録出願(商願2000-28187号 商標「エコクリーンソイル」)に対する拒絶理由に何ら手続をとらなかったこと及びその後、商標「エコクリーンソイル」の出願手続を他社に依頼したことは、何れも商標の使用を確保する手段を講じたためであり、何ら問題はない。
(6)以上、被請求人の主張は、請求人の主張や証拠を歪曲するものであり、また、被請求人の主張を裏付ける証拠は何ら提出されていないから、前述の理由により、本件商標の登録は無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のとおり述べるとともに、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第15号証を提出している。
1 審判請求の理由に対する答弁
請求人の主張は全く根拠のないものであり、以下にその理由を詳述する。
(1)商標法第4条第1項第10号
(ア)請求人は、引用商標が周知商標であるとして甲第2号証(商品パンフレット)を提出しているが、その頒布時期、部数、何の資料か等記載がなく、立証趣旨が不明で周知商標を示すものとは到底言えない。後述する甲各号証も大部分が同様のものである。
(イ)甲第7号証は、4種類の資料が混在している上にそれぞれの具体的な説明がなく立証趣旨が不明確である。
すなわち、前半部は2004年7月23日、同27日のオーシーシーのホームページのコピーであり、単に商品を短く紹介するにすぎず、どれだけのアクセスがあったかも不明であり、周知商標を立証するものとは到底言えない。
また、中部分前半は、東京福幸からオーシーシーあての請求明細書(平成12年6月29日付)及び納品書と伝票の取引書類であるから、一応、商品の売買があつたことが窺われる。しかしながら、東京福幸は製造を担っていた会社で需要者との取引を表すものではない。
さらに、その商品の取扱数量は31,255kgであつて、本件商品と競合する膨大な舗装材の取引量からすれば、全く微々たるものであり周知性を形成できるような数量ではない。
中部分後半は、オーシーシーから東京福幸宛の注文書2通であり、その取引数量は、30,375kgと29,375kgであって、上記同様に商標の周知性が立証されるものではない。
末尾部分は、商品の袋で「エコクリーン」と「ソイル」が二段に書されているが、具体的な説明は皆無で周知性が立証されるものではない。
(ウ)甲第10号証は、財団法人建設物価調査会の平成12年11月15日発行「建設物価 臨時増刊 建設資材要覧 平成13年版」であって、引用商標を使用した記事が掲載されている。
請求人は、「建設資材要覧」は発行部数約10万部で建設資材を発注する際に参考にする資料であると述べているが、本要覧は年1回「建設物価」という雑誌の臨時増刊としてスポット的に発行されているだけである。しかも1000を超える膨大なアイテムについて記載された分厚い資料の中の1つにすぎず、これによって直ちに周知性が形成されるものではない。
(エ)甲第11号証は、7種類の新聞の切り抜きが雑然と並べられているが
オーシーシーが販売開始した平成12年5月から間もない平成13年5月から10月にかけて新聞掲載されたもので、共通のニュースソースに基づくスポツト的なもので、これらにより周知性が形成されるものではない。
(オ)甲第12号証は、マウスパツド、ライターのいわゆる販促品に使用されているものであるが、その頒布数量、頒布場所、頒布日等が全く示されておらず、周知性が形成されたことは立証不可能である。
また、判例によれば、販促品への使用は商標の使用とはいえず、請求人のいう舗装材についての周知性が形成されることなどあり得ない。
(カ)甲第9号証は、NETIS(新技術情報提供システム)の記載と2000年6月28日に妨草土[エコクリーンソイル]工法が登録されたという記載があるが、具体的説明がなく、立証趣旨が不明である。
なお、「開発体制は共同研究でオーシーシー、東京福幸」との記載があり、エコクリーンソイル工法は、オーシーシー単独ではなく共同研究であることを自認している。
しかし、事実はそうではなく、前身の「スタボーン」が品質不良を起こし日本硝子と東京福幸で改良品「エコクリーンソイル」を開発したもので、オーシーシーは性能評価を行ったにすぎない。詳細は後述する。
(キ)甲第4号証ないし甲第5号証は、請求人がオーシーシーから業務を承継した立証資料であるが、何れも業務承継に関する記載は見当たらないし、甲第13号証にもオーシーシーと請求人の株式会社OCCテクノを関連づける記載は存在しない。
(ケ)以上、甲各号証は多種類の資料が断片的に雑然と並べられているものが多く、立証趣旨が不明でその目的、数量、日等も不明のものがほとんどであるから、請求人のいう引用商標の周知性を形成するものとは言えない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号
前記のとおり、引用商標は周知性すら有していない上に新たな証拠もないから、もとより著名性は有せず、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれは全くない。
甲第13号証は、オーシーシーの会社案内のホームページのコピーであるが、単に会社案内にすぎず、同社が著名な会社であるとは到底言えないし、グループ会社としての株式会社OCCテクノの記載はどこにも存在しない。
また、出所の混同についての立証もなされていないから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの主張は理由がない。
(3)商標法第4条第1項第19号
前述のように、引用商標は周知性・著名性を有していないから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。
なお、請求人は不正の目的について縷々述べているので、これについて反論する。
甲第14号証は代理店契約であり、また、甲第15号証に「エコクリーンソイルは、日本硝子及び東京福幸が開発した商品ではなく、オーシーシーが開発した商品」としているが、この記載は請求人の一方的な見解である。
事実は全く逆で、日本硝子がオーシーシーと代理店契約を締結したときは、「エコクリーンソイル」は商品、商標とも存在せず、その後「スタボーン」の改良品として日本硝子と東京福幸が開発した商品であるから、オーシーシーが独力で開発したとの主張は信憑性がない。
オーシーシーとの代理店契約解除の発端は、同社が日本硝子を経由せず日本硝子の販売代理店「高匠」に直接販売し、それ以外にも直接販売したことである。
これらのオーシーシーによる直接販売の行為は、日本硝子との信頼関係を喪失させるものであり、日本硝子は、以後取引を止め独自販売を行うことを決意し、契約解除に至ったものである。
一方、オーシーシーは、商標「エコクリーンソイル」ないし類似商標について何の防護策をとらなかったため、被請求人はこの無防備状態を解消するために商標登録出願を行ったのであって、何ら不正の目的を有するものではない。
(4)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用登録第4122041号商標(エコソイル)とは、外観、称呼及び観念の何れの点においても類似する商標でなく、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから無効であるとする請求人の主張は失当である。
(5)その他
オーシーシーは、乙第1号証に示すとおり、商標「エコクリーンソイル」を第19類に属する商品を指定商品として商標登録出願(商願2000-28187号)したが、登録第4122041号商標「エコソイル」と類似するとして拒絶理由通知を受けた。そして、意見書において「上記引用商標について不使用取消審判を請求する」としながら放置し、その後何の手続もとらなかったため拒絶査定がなされたものである。
他方、その後、オーシーシーは、平成15年5月28日付で株式会社エコテクノスとカワセインダストリー株式会社を出願人とする商標「エコクリーンソイル」を第19類「建築又は構築用の非金属鉱物等」を指定商品として、上記両社に出願の依頼をし、登録後は有償で権利譲渡を受ける旨約定している(乙第5号証)。
これらの行為は不可解であり、請求人の商標が周知であるならば、自ら出願して周知性を主張すべきであり、他人に「エコクリーンソイル」の出願を依頼し登録後に譲渡を受けるということは、自己の周知・著名性を自ら否定していることにほかならない。
2 請求人の弁駁書に対する答弁
(1)請求人の平成16年12月24日付け弁駁書における主張は、大部分が審判請求書の主張の繰り返しであり、新たに補足された証拠と合わせても本件登録商標を無効とする理由とはならない。
すなわち、請求人が無効理由とする商標法第4条第1項第10号については、提出された証拠物件中に本件商標の出願日後の日付のものを多数含み、同法第4条第3項に照らし証拠能力がないものである。
また、販売出荷した商品の数量は、該当する需要分野においては全く微々たる量にすぎず、当該商品が掲載されたホームページのアクセス数も不明であるから、これらに基づいて引用商標の周知性が立証されるものではなく、よって、本件商標は同第10号には該当しない。
上記のとおり周知性が立証されない以上、著名性も認められないから、同第15号、同第19号に該当しないものであるし、さらに、請求人が同第11号に該当するとして引用する「エコソイル」と、本件商標とは非類似であるから同条項にも該当しない。
(2)以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第11号の何れにも該当するものではないから、同法第46条第1項第1号により無効とすべきであるとの請求人の主張は理由がないものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知性
(ア)使用に係る商標及び商品
オーシーシーの使用に係る商標は、「エコクリーン」、「ソイル」の各文字を大きく二段に横書きしたもの(甲第2号証 商品パンフレット及び甲第7号証 商品の包装用袋)、「エコクリーンソイル」の文字からなるもの(甲第7号証 商品の包装用袋及び取引書類 甲第10号証 業界誌)等であり、何れも「エコクリーンソイル」の文字から成るものであるから、引用商標とほぼ同一のものと認められる(一部、「ECO CLEAN SOIL」の英文字を併記したものも存在する。)。
また、使用商品は「舗装用防草土」であり、これは「真砂土と固化剤、透水剤等を混合した舗装材」と認めることができる。
(イ)使用開始時期
甲第7号証は、オーシーシーあて又は東京福幸あての平成12年7月4日付けほかの請求明細書、納品書、注文書などであり、これらの取引書類に「エコクリーンソイル」の記載があるところから、同時期に使用が開始されたことが窺われる。
また、甲第2号証(商品パンフレット)の左下には「平成12年9月発行」の記載があるから同時期にパンフレットが発行され、頒布されたものと推認でき、上記認定を覆すに足りる証拠はない。
(ウ)使用期間
上記のとおり、平成12年7月頃から使用を開始し、その後、同12年11月15日及び同13年11月15日発行の「建設物価 建設資材要覧」(甲第10号証及び同第56号証)、2002年(平成14年)「積算資料 2002建設資材データベース」(甲第62号証)、同13年から14年にかけての施工実績表(甲第33号証)、「建設資材情報」2003年6月版(平成15年6月1日発行 甲第59号証)等々から、平成12年7月頃から現在まで継続して使用していることが認められる。
(エ)使用地域
甲第42号証には「エコクリーンソイル施工実績表」が示され、これによれば東北から九州まで広範囲にわたる国道等に舗装用防草土「エコクリーンソイル」を用いた施工が行われたことが窺われ、そうとすれば、上記商品は、ほぼ全国各地で販売されたものと推認できるものである。
(オ)生産又は販売数量
甲第27号証ないし甲第33号証によれば、前述の「2 被請求人の答弁に対する弁駁」(1)(イ)に記載のとおり、平成13年度及び同14年度の「エコクリーンソイル」の販売実績は、約15万6千袋及び約19万9千袋と認められる(1袋は25kg。以下同じ。)。
(カ)広告宣伝の方法・回数
広告・宣伝の方法、回数については、パンフレット(甲第2号証)及び前述の「建設資材要覧」に毎年掲載しているほか、当該雑誌の裏表紙にも掲載されていることが窺われ、また、商品紹介用のCD-ROMも配布している(甲第22号証)。さらに、上記パンフレットの頒布数は20万5千部と認められる(甲第16号証の1)。
(キ)以上を総合勘案すれば、オーシーシーは、「エコクリーンソイル」の文字からなる商標を商品「舗装用防草土」について、平成12年7月頃から使用を開始したこと、上記商標は、毎年発行される業界誌の「建設資材要覧」等に掲載・使用されていたこと、上記商標が記載されたパンフレットは約20万部以上頒布されていたこと、新聞等にも掲載されたこと、上記「舗装用防草土」は、ほぼ全国各地において使用され、平成13年度及び同14年度の販売実績は約15万6千袋及び約19万9千袋であること等を認めることができる。
ところで、上記「舗装用防草土」は、土木施工業者等の特定分野を対象とする商品であって、アスファルト、コンクリート等と同じく舗装材ではあるが、専ら雑草対策や水はけ等を目的として中央分離帯、路肩、植樹帯等に用いられる用途が限定された特殊な商品ということができる。
そうすると、上記のような特殊な商品にあっては、毎年の販売数量が、たとえ約15万6千袋から約19万9千袋であるとしても、その数量は決して少ないとはいえないものとみるべきである。
さらに、需要者の資材調達などのために日常的に利用される「建設物価 建設資材要覧」等に毎年掲載されていたこと等を考え併せれば、引用商標は、本件商標の登録出願日(平成15年2月14日)前に、既に取引者、需要者間において周知著名となっており、その状態は、本件商標の登録査定時(同年7月18日)においても継続していたものと判断するのが相当である。
なお、被請求人は、答弁書において(a)引用商標が周知であるとして請求人提出の甲各号証は、本件商標の出願後のものが多数含まれ証拠能力がない。(b)商品の出荷袋数は信憑性がなく、その数量も他の舗装材に比べればトン数で0.1%にすぎないから周知性は認められない。(c)被請求人の名において販売したものが多数含まれる等々述べ、引用商標の周知性は認められない旨主張している。
しかしながら、本件商標の出願日前に係る引用商標の使用の事実を推認させる証拠として、例えば、甲第2号証、甲第7号証、甲第10号証、甲第55号証、甲第56号証、甲第62号証、甲第69号証、甲第70号証等の多数を挙げることができ、これらを裏付ける新聞記事(甲第11号証)も存在する。
また、商品の出荷数量についても、前述のように当該商品は特殊な商品であり、それ自体重量のあるコンクリート、アスファルト等の他の舗装材料と比較し、単にその重量比が少ないからといって、引用商標の周知著名性が否定される根拠とはなり得ないというべきである。
さらに、被請求人の名において販売したものが多数含まれる旨述べているが、被請求人はオーシーシーの代理販売を行っていたのであるから、被請求人の名で販売されたものも含まれることは当然のことである。
なお、被請求人は、請求人が引用商標の出願を他社に依頼をしたことは、引用商標の周知性を自ら否定するものである旨主張しているが、かかる出願行為が引用商標の周知性の認定判断に直接影響を及ぼすものともいえないし、上記出願前に、請求人自らも引用商標の出願(商願2003-15314)を行っているものである。
以上を総合すると、引用商標は、前述のとおり、本件商標の登録出願前、既に取引者、需要者間において周知著名となっていたものと判断するのが相当であり、引用商標の周知著名性が認められないとする被請求人の主張は、何れも採用することができない。
一方、被請求人は、舗装用防草土「エコクリーンソイル」は自ら開発した商品であると主張しているが、これを立証する何らの証拠の提出もないものであるし、甲第9号証(新技術情報 NETIS)によれば、「技術名称 防草土『エコクリーンソイル』工法」、「開発会社 株式会社OCC 東京福幸」等と記載されており、オーシーシーと東京福幸との共同開発であることが認められるものである。
また、被請求人は、請求人がオーシーシーの正当な承継人ではない旨主張しているが、本第10号(同第15号、同第19号についても同様)の判断基準時は、本件商標の出願時及び登録査定時であり(商標法第4条第3項)、同時期に無効事由が存在すれば無効とし得るものであるから、請求人が正当な承継人であるか否かは上記判断に影響しないものというべきである。
したがって、被請求人の上記主張は何れも採用できない。
(2)本件商標と引用商標の商標の類否
本件商標は、前述のとおり「エコクリーンソイル」及び「ECOCLEAN SOIL」の各文字を二段に横書きしてなり、他方、引用商標は「エコクリーンソイル」の文字よりなるものであるから、両商標は、共に「エコクリーンソイル」の称呼を共通にする類似の商標ということができる。
また、両商標は、その片仮名文字部分において、その綴り字を同じくし、外観上近似する商標であり、さらに観念については、共に造語と認められるから比較すべくもないものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、その片仮名文字部分において外観上近似し、「エコクリーンソイル」の称呼を同一にするものであるから、全体として商品の出所の誤認混同を生じるおそれのある類似の商標というべきである。
(3)本件商標の指定商品と引用商標の使用商品との類否
本件商標の指定商品は、第19類に属する商品であり、金属製でない建築材料を主とするものである。
ところで、商品の類否については、商品の生産部門、販売部門の同一性、原材料、品質の同一性、用途の同一性、需要者の範囲の同一性等を総合的に考慮して判断すべきものと解される。
そこで、引用商標の使用商品である「舗装用防草土」についてみるに、該商品は、前述のとおり、「真砂土と固化剤、透水剤等を混合した舗装材」であり、強固な保護層を形成して施工部を保護し、雑草の生育を防止する効果がある舗装材と認められる。
そうすると、本件商標の指定商品中、「アスファルト、アスファルト製舗装材、リノリューム製舗装材」等の商品とは、共に舗装材として、その使用目的、用途等を共通にし、また、これらの商品を含む「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」とも、その用途、原材料、生産部門、販売部門、取引系統等を同じくするから、互いに類似する商品とみるのが相当である。
他方、上記指定商品以外の商品、すなわち、「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,セメント及びその製品,木材,石材」と「舗装用防草土」についてみるに、両者は、それぞれ、商品の生産部門、販売部門、原材料等を異にするところから、非類似の商品と判断するのが相当である。
(4)してみれば、本件商標は、その出願前に周知著名となっていた引用商標と類似する商標であって、かつ、本件商標の指定商品中、引用商標の使用に係る「舗装用防草土」と類似する指定商品については、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものと言わざるを得ない。
2 商標法第4条第1項第15号について
次に、本件商標を引用商標の使用商品「舗装用防草土」と非類似の商品と認められる「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,セメント及びその製品,木材,石材」について使用した場合、オーシーシーの業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあるか否かについて判断するに、引用商標は、「舗装用防草土」について使用された結果、取引者、需要者間に周知著名な商標となっていたものであること前記のとおりである。
そして、本件商標と引用商標とは、ともに「エコクリーンソイル」の称呼を同一にする極めて近似する商標であること、及び「舗装用防草土」と上記指定商品とは、非類似の商品であるとしても、何れも建築又は構築用に使用される商品であって、その使用目的、用途等において極めて関連性の高い商品ということができる。
してみれば、本件商標を上記指定商品について使用した場合、取引者、需要者は、オーシーシーの業務に係る商品であるかの如く商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標の指定商品中、上記指定商品については、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものと言わなければならない。
3 むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、請求人のその余の理由について検討するまでなく、同法第46条第1項により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-06-15 
結審通知日 2005-06-16 
審決日 2005-06-28 
出願番号 商願2003-11299(T2003-11299) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y19)
T 1 11・ 25- Z (Y19)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 清治
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 2003-08-08 
登録番号 商標登録第4699774号(T4699774) 
商標の称呼 エコクリーンソイル、エコクリーン、エコ、イイシイオオ 
代理人 平山 俊夫 
代理人 堀 城之 

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