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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない Z25
審判 査定不服 商4条1項11号一般他人の登録商標 登録しない Z25
管理番号 1121520 
審判番号 審判1999-16937 
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-14 
確定日 2005-07-15 
事件の表示 平成10年商標登録願第 43485号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1.本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成10年5月25日に登録出願されたものである。

第2.原査定の拒絶理由の要旨
原査定は、本願商標は以下の(1)及び(2)の拒絶理由に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

(1)本願商標は、他人の所有に係る登録第1719531号商標(「VICTORY HORSE」及び「ビクトリーホース」の文字を二段に書してなり、昭和54年11月6日登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として同59年10月31日に設定登録された。その後、平成7年3月30日及び同16年9月14日に、それぞれ商標権存続期間の更新登録がなされ、さらに同年9月29日に第5類「失禁用おしめ」、第9類「事故防護用手袋,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服」、第10類「医療用手袋」、第16類「紙製幼児用おしめ」、第17類「絶縁手袋」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」、第21類「家事用手袋」、第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続している。以下「引用商標」という。)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)本願商標は、その構成中に「POLO」の文字を有するところ、該文字は米国のデザイナー「ラルフ・ローレン」がデザインした商品を表すものとして世界的に著名な標章「POLO」又は「Polo」と同一又は酷似するものであるから、これをその指定商品に使用するときは、前記デザイナー又は前記デザイナーと何らかの関連を有する者の業務に係る商品と商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第3.当審の判断
原査定は、前記第2.のとおり、本願商標が拒絶理由(1)及び(2)の両方に該当すると述べているので、それぞれについて検討する。

1.拒絶理由(1)-商標法第4条第1項第11号-について
本願商標は、別掲1のとおり、疾走する馬に騎乗した人の図柄の下に「Victory Horse」と「Polo Game V.H.P.G」の文字を二段に書してなるところ、かかる構成においては、これを常に不可分一体の商標として、全体から生ずる称呼及び観念によってのみ把握されるべきものということはできず、その一部の構成部分によって簡略に称呼、観念され、取引に資されることも少なくないものと言うべきである。そうすると、本願商標の場合、その欧文字部分全体の構成より「ビクトリーホースポロゲームブイエッチピージー」あるいは「ビクトリーホースポロゲーム」と称呼されることがあるとしても、これらはいずれも一連に称呼するには冗長であり、簡易迅速が要請される取引の場面においては、構成上上段に書されている前半部の「Victory Horse」より単に「ビクトリーホース」の称呼をもって取引に資されることも少なくないとするのが相当である。
一方、引用商標は、上記のとおりの構成よりなるところ、その構成全体より「ビクトリーホース」の称呼を生じること明らかである。
してみれば、本願商標と引用商標とは、「ビクトリーホース」の称呼を共通にする、類似の商標といわなければならず、かつ、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似するものである。

2.拒絶理由(2)-商標法第4条第1項第15号-について
(イ)当審における職権証拠調べ通知
当審において、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される「Polo」、「POLO」、「ポロ」の文字よりなる標章、「by RALPH LAUREN」の文字よりなる標章、「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形よりなる標章及びこれらを組み合わせた標章に関して行った職権による証拠調べにより、以下の事実を発見したので、その旨を請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。

(1)株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典『’84ザ・ブランド』」の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年には、アメリカのファッション界では最も権威のある「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャッツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。 ラルフ・ローレンのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字、「by RALPH LAUREN」の文字、及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形を組み合わせた標章(以下「ラルフ・ローレン標章」という。別掲2に示したものはその組み合わせの一態様を表す。)が使用され、これらは単に「ポロ」と略称されて紹介されていた。

(2)株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊『アパレルファッション店』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」、株式会社アパレルファッション発行(昭和57年1月10日)発行「月刊アパレルファッション2月号別冊 海外ファッション・ブランド総覧」の「ポロ/POLO」の項、及び昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事によれば、我が国においては、西武百貨店が昭和51年にポロ社から「Polo」の文字よりなる標章をはじめ、ラルフ・ローレン標章などの使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等の、同53年から婦人服の輸入、販売をしたことが認められる。

(3)前出「男の一流品大図鑑」(書証1)、「舶来ブランド事典『’84ザ・ブランド』」(書証2)をはじめ、株式会社講談社(昭和55年1月20日)発行「男の一流品大図鑑’81」、同社(昭和55年11月15日)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」、同社(昭和56年6月20日)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」、株式会社チャネラー(昭和53年9月20日)発行「別冊チャネラー ファッション・ブランド年鑑’80年版」、株式会社講談社(昭和60年5月25日)発行「FASHION SHOPPING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」によれば、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品について、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題のもとに紹介されていることが認められる。

(4)ラルフ・ローレンのデザインに係る被服等について使用される標章を模倣した、偽物ブランド商品が市場に出回っている事実も少なくない。例えば、1989年5月19日付朝日新聞には、「昨年二月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の・・・『Polo』の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークをつけたポロシャツを・・・売っていた疑い。」なる記事が掲載された。また、1992年9月23日付読売新聞(東京版、朝刊)、1993年10月13日付読売新聞(大阪版、朝刊)、1999年9月9日付日本経済新聞等にも同様の記事が掲載され、昭和63年には既に、我が国において「Polo」ないし「POLO」の文字、馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形などを使用した偽物ブランド商品が出回っていた事実が存在していた。

また、判決においても、「我が国において、遅くとも昭和59年までには既に、引用標章(Polo)がラルフ・ローレンのデザインに係る被服等及び眼鏡製品を表す標章であるとの認識が広く需要者及び取引関係者の間に確立していたものということができる。」旨認定している(東京高等裁判所 平成2年(行ケ)第183号 平成3年7月11日判決言渡)。
そのほか、東京地方裁判所 平成8年特(わ)第1519号(平成9年3月24日判決言渡)、東京高等裁判所 平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日判決言渡)、平成11年(行ケ)第268号、同第289号(以上平成11年12月21日判決言渡)、平成12年(行ケ)第5号(平成12年9月28日判決言渡)、平成12年(行ケ)第453号(平成13年4月19日判決言渡)、最高裁判所 平成12年(行ヒ)第172号(平成13年7月6日判決言渡)等々、ラルフ・ローレンの「Polo」、「POLO」、「ポロ」標章の著名性を認定した一連の判決が存在する。

(ロ)請求人の意見の要旨
上記証拠調べ通知に対し、請求人は、要旨以下のように意見を述べている。

本願商標は、聖火をかざした人が馬にまたがって疾走する図形と、その図形の下に「Victory Horse」の文字及び「Polo Game V.H.P.G」の文字からなるもので、証拠調べ通知に示されたラルフ・ローレンのデザインに係る標章のいずれも使用するものではない。本願商標中「Victory Horse」の文字の直訳は「勝馬」で、上記図形と当該文字の意図するところは、団体競技の勝利を祈念する聖火ランナーを乗せた馬であると解される。従って、本願商標はラルフ・ローレンの標章と外観を異にする。「ポロ」の称呼も生じない。また、同標章と紛らわしい観念を生ずるものではない。

(ハ)「ラルフ・ローレン標章」の著名性について
上記(イ)の(1)乃至(4)の事実及び上記判決を併せ考慮すると、「ラルフ・ローレン標章」は、遅くとも本願商標の商標登録出願前にはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものとして極めて高い自他識別力及び顧客吸引力を発揮する著名な商標となり、本願商標の出願時(平成10年5月25日)及び拒絶査定時(同11年9月17日)はもとより、その後においても著名な商標であることが認められる。

(ニ)本願商標及びその指定商品について
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成中に、前記(イ)で認定したラルフ・ローレンのデザインに係る紳士用品、婦人用品等について使用され、我が国においても取引者、需要者の間に広く認識されている標章と同一綴り文字よりなる「Polo」の文字を有しているものである。
さらに、その図形部分も、進行方向に向かい前足を上げて疾走する馬に帽子や着衣などの騎乗装備をしたプレーヤーが乗り、右手を掲げている点において、著名なラルフ・ローレン標章の馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形とその構成を共通にするものというのが相当である。尤も、本願商標の図形の細部を見れば、請求人主張のとおり、騎手が右手に所持するものはマレットではなく聖火と覚しきものであり、馬の向きも右向きではあるが、構成の全体においてその差異は大きいとは言い難いものである。また、本願商標の文字部分に顕著な「Polo」の文字があることや、本願指定商品の需要者も通常は特別の専門知識を有するものではない一般消費者であって商品購入時の注意力はさほど高くないことをも考慮すれば、本願商標の図形部分をもって、一見、疾走する馬に騎乗したポロ競技プレーヤーの図形と認識される場合も少なくないものというのが相当である。

そして、本願の指定商品は、主として、洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類等の被服類等であるところ、これら商品は、前記(イ)で認定のとおり、ラルフ・ローレン標章が特に使用され著名と認識されている商品分野であり、また、上記以外の本願指定商品についても、いずれも上記商品に関連した商品で、ファッション製の強いアクセサリー的要素を持つものであり、このようなものは、被服等と統一された商標・ブランドの下で、同一のファッションメーカーにより製造・販売される場合も少なくないものということができる。

(ホ)商品の出所の混同について
前記(ハ)及び(ニ)で認定した事情よりすれば、本願商標をその指定商品について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、「Polo」の文字部分及び馬に騎乗し右手を掲げたプレーヤーの図形部分に強く印象付けられ、「Polo」、「ポロ」とも呼ばれるラルフ・ローレンの商標・ブランドを連想、想起することは明らかであり、これがラルフ・ローレン本人、もしくはそれと経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。

(ヘ)したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものというべきである。

3.以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものであるから、これらを理由として本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。


別掲1(本願商標)




別掲2(ラルフ・ローレン標章)



審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-27 
出願番号 商願平10-43485 
審決分類 T 1 8・ 26- Z (Z25)
T 1 8・ 271- Z (Z25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 純一 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 青木 博文
岩崎 良子
商標の称呼 ビクトリーホースポロゲームブイエイチピイジイ、ビクトリーホース、ポロゲームブイエイチピイジイ、ポロゲーム、ブイエイチピイジイ、ブイエッチピイジイ 
代理人 志村 正和 

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