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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Y16
管理番号 1119870 
異議申立番号 異議2003-90429 
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2005-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-25 
確定日 2005-06-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第4665823号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4665823号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4665823号商標(以下「本件商標」という。)は、平成14年1月18日に登録出願され、「ボランティア」の片仮名文字(標準文字による)からなり、第16類「雑誌,新聞」を指定商品として、同15年4月25日に設定登録(登録査定、同年2月25日)されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号
「ボランティア」を標準文字で横書きしてなる本件商標は、指定商品「雑誌、新聞」に使用しても商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、本件商標は、該商品以外に使用するときは品質の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 商標法第3条第1項第6号
本件商標「ボランティア」に関しては社会的な関心が高く公共の財産として定着しているので、本件商標は、現元号「平成」と同様に、第3条第1項第6号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号
本件商標の登録を認めると、商標権によって自由な社会貢献活動が制約されかねないという不条理な結果を招く上、社会貢献活動に便乗して利益を得る瓢窃的な行為を国家の法制のもとに保護することにもなり、社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するので、判例に照らしてみても、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 商標法第4条第1項第10号
本件商標は、本件異議申立人である「財団法人富士福祉事業団」が月刊誌に使用し需要者間に広く知られている「ボランティア」の商標と同一の商標である。
5 商標法第4条第1項第15号
全国各地のボランティア団体等の多くは題号に「ボランティア」の文字を含む雑誌、新聞等を発行しているので、「ボランティア」のみを標準文字で横書きしてなる本件商標を雑誌、新聞に使用すると、ボランティア団体等が発行又は販売している雑誌、新聞、あるいはボランティア団体等と経済的又は組織的に何等かの関係がある者が発行又は販売している雑誌、新聞と誤認し、需要者が出所について混同するおそれがあるので、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 むすび
本件商標は、上記の各条文に該当するものであるから、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきである。

第3 商標登録の取消理由の通知
当審は、平成16年6月17日付けで、商標権者に対して、本件商標についての以下の内容の取消理由を通知した。 その理由の要旨は次のとおりである。
本件登録異議申立人中の社会福祉法人大阪ボランティア協会他5名の提出に係る甲各号証を検討するに、本件商標は、「ボランティア」を標準文字で書してなるところ、該語は、「奉仕者」(広辞苑)を意味する語であると共に、平成7年1月に起きた阪神淡路大震災を契機として高まったボランティア活動の遂行者として新聞、雑誌等の記事に数多く取り上げられ社会的な関心を呼んだこと(甲第2号証及び同第3号証)、また、平成10年12月に施行された「特定非営利活動推進法」、所謂「NPO法」により、全国的にNPOの団体が創設され、各分野でのボランティア活動が盛んになっている実情(甲第5号証の1ないし97、同第6号証1ないし3及び同第8号証)にあることからすれば、現在においては、「社会奉仕活動に自ら進んで参加する人又はその行為」の意味合いで、一般に広く用いられ認識されている語とみるのが相当である。
さらに、全国各地にボランティア活動推進機関等が存在し、その多くは、「ボランティア」の語を題号に使用した機関誌等を多数発行していることが認められる(甲第5号証の1ないし97、同第6号証1ないし3、同第7号証の1及び同第7号証の2)。
例えば、財団法人富士福祉事業団が発行する「ボランティア」(甲第5号証の1及び同第6号証の2)、社会福祉法人大阪ボランティア協会が発行する「月刊ボランティア」(甲第5号証の2、同第6号証の3、同第7号証の1及び同第7号証の2)、財団法人本所賀川記念館が発行する「ボランティア」(甲第5号証3及び同第6号証の1)、社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国ボランティア活動振興センターが発行する「ボランティア情報」(甲第5号証の11)、社会福祉法人港区社会福祉協議会 港区ボランティアセンターが発行する「ボランティア情報」(甲第5号証の13)等がある。 そうとすれば、「ボランティア」の語は、「新聞、雑誌」等の定期刊行物の題号または、その一部として、既にNPOを中心とした各団体で広く使用されている事情にあって、かつ、使用の結果、自他商品の識別力を獲得した等の特段の事情も認められないから、自他商品の識別機能を有しない商標であるというべきであり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわざるを得ない。
よって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反するものである。

第4 商標権者の意見(要旨)
1 本件商標の登録妥当性について
(1)商標権の効力範囲について
本件商標は、「ボランティア」そのものであって、指定商品は有料で商取引の対象とする「雑誌,新聞」である。
したがって、本件登録商標の商標権は、本件商標「ボランティア」と同一又は類似する商標を、指定商品「雑誌,新聞」又はこれと類似する商品について使用した場合にのみ、その効力が及ぶことになる。
ボランティア団体等が発行する機関誌の多くは、商標法上の商品ではないため、それらには当然にして商標権の効力は及ばない。
また、書籍の題号は、原則として商標として認識されず、「ボランティア」の語を題号とする書籍、または「ボランティア」の語を題号の一部に含む書籍にも、原則として本件商標の商標権の効力が及ばないから、本件商標が存在しているからといって、書籍の題号に「ボランティア」の語が使用できなくなるわけではない。
(2)雑誌のタイトル商標の特殊性について
特許庁「商標審査基準」は、「新聞,雑誌」の題号は、その題号が内容表示であっても、内容に関連する普通名称であっても、原則として自他商品識別力があるものと規定している。この審査基準は、指定商品「新聞,雑誌」について次のような事情があることを考慮して定められたものと考える。
(a)「新聞,雑誌」は、掲載内容が需要者にわかりやすいようにテーマ名自体又は主たるテーマを含んだタイトルを雑誌名として選択することが、一般的に行われているという特殊な実情がある。
(b)また雑誌のような定期刊行物は、毎号その記事内容が異なるため、雑誌のタイトルが直ちに内容表示になるとは言えない。
そして、乙第2号証の1の登録例、同号証の2(枝番を含む。)の審決例からも明らかなように、内容を表示する一般的な名詞が多数商標登録されているところである。
(3)本件商標を登録出願した理由
商標権者は、全国各地にボランティア活動を推進する機関・団体が存在しており、その活動の実情に鑑み、NPO法人を含むボランティア団体等の活動や情報を需要者に提供し、その活動に興味と関心とを持ってもらうために、「ボランティア」というタイトルの雑誌の発行を企画し、その活動の一環として、予め本件商標の出願を行ったものであり、商標権者が本件商標を出願して登録を受けた行為は、非難を受けるような不当な行為ではない。
2 本件商標の登録が維持されるべき理由
(1)本件商標の構成及び商標法第3条第1項第6号について
(ア)商標審査基準には、「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」と明確に記載されている。したがって、雑誌等のタイトル商標は原則として自他商品の識別力を有しているものである。
(イ)一つの語「ボランティア」が、全体商標(「××ボランティア」や「ボランティア△△」)の中に一部分含まれて多数使用されていることをもって、ただちに、その一つの語「ボランティア」が識別力を有しないという結論を導き出すことは、到底容認できない。
(ウ)需要者の雑誌・新聞等の定期刊行物のタイトルに対する注意力等の取引実情を考慮すれば、雑誌等のタイトル商標はそのわずかな違いによって明確に他の雑誌等と区別することが可能である。
(エ)取消理由通知が引用した数々の雑誌・機関誌等の多くは、商標法上の商品に該当するものではない。「ボランティア」の語を含む機関誌が多数存在していることは、本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当することの決定的な証拠にはならない。
甲第5号証の刊行物は、当該ボランティア団体等自体の活動内容の紹介、情報の提供、ボランティア活動の啓蒙・啓発、参加者の募集等を行うための機関誌、広報誌であって、市場において独立して商取引の対象として流通に供されるものであるとは考えられず、商標法上の「商品(雑誌)」には該当せず、各ボランティア団体等の活動という「役務」の「広告」に該当するものであると考えられる。
この主張は、過去の判例において支持されており(東京地方裁判所昭和36年3月2日判決 昭和32年(ワ)第5278号(乙第4号証))、過去の審決においても支持されている(乙第5号証(枝番を含む。))。
甲第5号証(枝番を含む。)に示される刊行物の中には値段や購読料が示されているものが存在するが、定価が付されているものであっても実際には商品として販売されていない雑誌・機関誌等の刊行物は、商標法上の「商品(雑誌)」ではなく、上述のように各ボランティア団体等の活動の「報告」や「広告」に該当するものであると考えられる。
(2)既登録商標について
乙第7号証の1ないし同号証の10(枝番を含む。)に示すような登録例が多数ある。
本件商標のみが商標法第3条第1項第6号に該当し、識別力を有しないものであるとの判断がなされることは著しく不合理であり、判例・審決例・特許庁の判断基準と著しく相反する。
3 まとめ
以上に述べたように、本件商標は指定商品「雑誌,新聞」に対して自他商品の識別力を有するものであり、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。また、商標権者が本件商標を取得することにより、ボランティア団体等に何らの不利益が生ずるものではないし、ボランティアの発展に何ら障害となるものではないと思料する。また、当然にして申立人(ら)の主張するような事由に該当するものではない。

第5 当審の判断
当審は、本件商標は商標法第3条第1項第6号に該当するものであり、その登録は取り消されるべきであると判断する。
以下、その理由について述べる。
1 「雑誌,新聞」を指定商品とする商標の自他商品の識別力について
(1)「雑誌,新聞」を指定商品とする商標の一般的登録要件
商標の一般的登録要件を規定する商標法第3条第1項各号についてみるに、同項第1号から第5号までの規定は、自他商品識別機能を果たし得ない商標や、特定人に独占使用を認めるのを公益上適当としない商標を例示的に列挙しているものであって、同項第6号は、これ以外の、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を総括的に規定しているものと解される。
そうであれば、当該商標の一般的登録要件について総合的に検討した結果、「雑誌,新聞」を指定商品として登録出願された商標が、商標法第3条第1項第3号の適用を受けることがあるのはもとより、同号の適用がないとされる場合に、同号を除く同項各号の適用を受けることも当然あり得るというべきであって、同項の解釈適用については、「雑誌,新聞」を指定商品とする商標であっても、他の商品・役務を指定する商標と何ら変わりはない。
したがって、「雑誌,新聞」を指定商品とする商標が、一般的登録要件を有するか否かを判断するに当たっても、当該商標の構成や創作性の程度、当該商標を構成する語(図形等)に対する取引者や需要者(購読者たる一般の国民)の認識の程度、その語(図形等)が指定商品との関係で一般的に使用されている実情やその使用可能性の程度、独占適応性の有無及び当該商標が指定商品の題号に使用される場合の取引の実情等、商標法第3条第1項各号の規定の趣旨を総合的に考察することが必要であるというべきである。
(2)「雑誌,新聞」の題号に関する商標審査基準について
商標権者は、特許庁の商標審査基準には、「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」と規定されており、雑誌等の題号商標は原則として自他商品の識別力を有しているものである旨主張している。
そこで、以下、「雑誌,新聞」の題号に関する特許庁の商標審査基準について検討する。
商標法第3条第1項第3号の商標審査基準7(2)には、商標権者の主張する上記審査基準が定められている(乙第1号証)。この基準は、同号に定める構成要件の該当性を判断するに当たり、審査の統一的運用を確保するための指針の一であって、「新聞、雑誌などの定期刊行物の題号」の審査上の取り扱いについて定めたものであるが、この基準中には「原則として」との文言が含まれており、「雑誌,新聞」を指定商品とする商標について、常に、審査上、自他商品識別の標識力があるものとする取り扱いをすべきことを定めたものと解することはできない。
なぜならば、「商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。」(最高裁第三小法廷 昭和54年4月10日判決 昭和53年(行ツ)第129号 判例時報927号233頁)からであり、現行商標法第3条第1項第3号の解釈適用に関するこの法理は、指定商品が、本件のような「雑誌,新聞」である場合にも該当するというべきである。
商標権者が引用する、商標法第3条第1項第3号に関する「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」との商標審査基準は、当該商標が、定期刊行物の題号に使用されるという取引の実情を斟酌して、登録の是非を判断することが必要であるとの視点から、その審査上の指針を、上記の表現をもって審査基準に加えているのであり、この基準は、同号の他の基準に関わりなく独立して運用されるものではなく、この中にある「原則として」との文言は、同号の審査基準全体を総合的に検討して、その適用の可否を判断すべきであるという意味を含んでいるものである。
また、商標権者は、この商標審査基準が定められた理由を、
(ア)「新聞,雑誌」は、掲載している内容が需要者にわかりやすいようなタイトルを雑誌名として選択することが、一般的に行われている。
(イ)雑誌のような定期刊行物は、毎号その記事内容が異なるため、雑誌のタイトルが直ちに内容表示になるとは言えないという特殊な事情があるからとしている。
確かに、このような事情も勘案されて、商標審査基準が定められていることは否定されるものではないが、上記の二点の理由をもって、「雑誌,新聞」に使用する商標の登録が認められるならば、「雑誌,新聞」に使用される商標は、自他商品識別力の有無とはかかわりなく「早い者勝ち」的に登録されることとならざるを得なくなる。商標権の効力、差止請求権、侵害の推定などを規定した商標登録制度の趣旨に照らせば、現行商標法が、「雑誌,新聞」に使用される商標の自他商品識別力について、これを無条件に認めていると解することができないのは明らかである。
なお、商標審査基準における「原則として」との語の解釈については、商標の類否判断の事例ではあるが、「特許庁審査基準が、原告の主張するように、同数音からなり、相違する1音が母音を共通にするときは、称呼上類似すべきものとすべきことを定めているとしても、それはあくまでも『原則として』のことであつて、必らず類似するものとすべきことを定めているものとすることはできないから、原告が前記審査基準をその主張の根拠とすることは意味がない。」と判示している裁判例もある(東京高裁 昭和58年3月31日判決 昭和57年(行ケ)第217号 「特許と企業」1983年5月(173)号65頁)。
そして、これまでの審査・審判例における事例も、商標法第3条第1項第3号の商標審査基準にしたがって、これらを総合的に検討し個別具体的に認定・判断された結果、登録されているのである。
したがって、商標権者が引用する商標審査基準及びこれが定められた理由についての商標権者の上記解釈、並びに他の登録例の存在をもって、本件商標の登録は維持されるべきであるとの商標権者の主張は、採用することができない。
2 本件商標の自他商品識別力について
(1)本件商標の構成と創作性の程度
本件商標は、「ボランティア」の文字を標準文字(平成9年2月24日付で特許庁長官が指定したもの。特許庁公報公示号(9(1997)-17(7071)号)89頁 平成9年3月25日発行)により表してなり、その指定商品は「雑誌,新聞」である。
しかして、標準文字よりなる本件商標の外観上の特徴は、決して顕著とはいえず、その視覚上の印象力は強いとはいえないものである。
しかも、「ボランティア」の語は、商標権者の創作に係る語ではなく、取消理由通知に記載した意味合いを有する語として国民各層において広く知られ、使用されていることは、登録異議申立人らが提出した甲各号証によるまでもなく明らかといえるものである。
(2)「ボランティア」の語が取引者・需要者により自他商品の識別標識として認識される程度について
前記のような実情を有する、本件商標「ボランティア」に接する取引者・需要者、とりわけ購読者たる一般の国民は、社会奉仕活動に自ら進んで参加する人若しくはその行為又はこれらの団体である「ボランティア」を一義的に想起し、当該「雑誌,新聞」の主たる内容を表したものとの認識を抱くとみるのが相当であって、これを、他者の「雑誌,新聞」と識別するための標識として認識する程度は極めて低いものといわなければならない。
その際、本件商標が、商標審査基準のいう「原則として、自他商品の識別力がある」ものとしても、それは、あくまでも「原則」なのであるから、取消理由通知に記載した実情がある本件の場合、当該商標が自他商品の識別力を発揮しうる商標であるか否かについて、さらに進んで認定・判断をする必要があるというべきであって、ここで止まって、本件商標の識別力を認めることは、商標の一般的登録要件に関する規定である商標法第3条第1項の趣旨に悖るものといわなければならない。
(3)「ボランティア」の語が定期刊行物の題号の一部に使用されている実情
「ボランティア」の語は、取消理由通知に示したように、これに関することを内容とする「雑誌,新聞」等の定期刊行物や書籍の題号の一部として、既にボランティア団体等や、各出版社間で広く使用されている事情にあり、このほかにも、例えば、紀伊国屋書店の書籍検索サイト(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/)や日本書籍出版協会の書籍検索サイト(http://www.books.or.jp/)によれば、「ボランティア活動研究 第10号(1999年6月)」、「ボランティア白書2003(2003年4月)」及び「月刊ボランティア合本8(1998年10月)」などの雑誌類が取り扱われていることが認められ、また、国立国会図書館の書籍検索サイト(http://opac.ndl.go.jp/Process)によれば、「ボランティア情報福岡(1号〜9号 1979年〜1982年)」、「ボランティアけいじばん(No1〜No96 1984年〜1998年)」、「ボランティアだより(152号〜232号 1991年4月〜1998年3月)」、「ボランティアの広場(32号〜43号 1977年2月〜1979年2月)」、「ボランティアニュース(1990年1月〜1991年3月)」、「ボランティア便利帳(1995年)」、「ボランティア学研究(2003年4月)」、「ボランティアポスト(1987年3月)」、「勤労者ボランティア情報(No7〜No24 1997年2月〜2001年3月)」などの雑誌類が蔵書されていることが認められるところである。
してみれば、他の文字を付加するなどの構成ではない「ボランティア」の文字のみからなる本件商標を、その指定商品に使用しても、商標のもつべき本質的機能である自他商品を区別し、それが一定の出所から流出したものであることを一般的に認識させる機能が極めて弱い商標とみるのが相当である。
この当審の認定・判断は、「本件商標は,簡単でありふれた文字である『ベアー』のみから成る標章であり,これを『被服,履物』について商標として使用しようとしても,少なくとも平成11年6月(登録査定時のこと。:本件合議体が注記。)における上記のような商標登録及び取引の実情を考慮すれば,被告による使用の結果,自他商品識別力を獲得した等の特段の事情のない限り,自他商品識別機能を有しない商標である,というべきである。」として、当該商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとした裁判例(東京高裁 平成15年11月27日判決 平成15年(行ケ)第42号 最高裁ホームページ)に照らしても相当というべきである。
商標権者は、「『ボランティア』の語が、全体商標(「××ボランティア」や「ボランティア△△」)の中に一部分含まれて多数使用されていることをもって、ただちに、その一つの語『ボランティア』が識別力を有しないという結論を導き出すことは、到底容認できない。」と主張するが、「ボランティア」の語が定期刊行物や書籍の題号の一部として広く使用されていることは上記のとおりであり、かつ、このことは、本件商標の識別力の有無を判断する考察要素の一つなのであって、題号に「ボランティア」の語を含む定期刊行物が多数使用されていることのみをもって本件商標の識別力が判断されるのではないから、上記の商標権者の主張は取消理由通知の内容を一面的にみるもので、これを正解していないものである。
(4)「ボランティア」の語の独占適応性
「ボランティア」の語を巡る社会的実情については、取消理由通知で示したとおりであり、この語は、商品である「雑誌,新聞」の主な内容を表示記述する標章であって、ボランティア団体等であれば、その活動上必要な表示として使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないというのが相当である。
(5)本件商標が使用される指定商品に係る取引の実情
上記の「(1)」ないし「(4)」によれば、「新聞、雑誌等の定期刊行物の題号は、原則として、自他商品の識別力があるものとする。」との商標審査基準を考慮しても、本件商標は、自他商品の識別機能が極めて弱いものと判断するのが相当である。
しかるところ、商品「雑誌、新聞」の題号に使用される商標については、自他商品の識別力が弱いものであっても、使用された結果、識別力が発揮される事例が多いことは取引の経験則に照らし明らかである。
しかして、本件においては、「ボランティア」の語が、指定商品である「雑誌,新聞」に使用された結果、自他商品識別力を獲得しているなどの特段の事情は認められず、商標権者も、本件商標が登録査定時において、使用された結果、自他商品の識別力を獲得していたとの主張、立証はしていない。
(6)本件商標の商標権の効力と識別性との関係について
商標権者は、「ボランティア団体等が発行する機関誌(の多くは、商標法上の商品ではないため、それら)には当然にして商標権の効力は及ばない。」、「書籍の題号は、原則として商標として認識されず、『ボランティア』の語を題号とする書籍、または『ボランティア』の語を題号の一部に含む書籍にも、原則として本件商標の商標権の効力が及ばない。」旨主張している。
商標権者の上記主張の是非を置くとしても(印刷物であるガイドブックの題号としての使用であっても商標の使用ではないということはできないとした裁判例がある。東京高裁 平成12年4月27日判決 平成11年(行ケ)第183号 最高裁ホームページ)、商標権の効力の範囲の問題と、当該商標が自他商品の識別力を有するか否かの問題とは、次元が異なるものであって、商標権の効力が及ばないことをもって当該商標が識別力を備えているとの理由とはなり得ず、この点についての商標権者の主張は失当というべきである。
(7)甲第5号証の機関誌、広報誌等は商品性を有しないとの商標権者の主張について
商標権者は、甲第5号証(枝番を含む。)に示すような、機関誌、広報誌等は、市場において独立して商取引の対象として流通に供されているものであるとは考えられず、定価が付されているものであっても実際には商品として販売されていない雑誌・機関誌等の刊行物は、商標法上の「商品(雑誌)」には該当しない旨主張している。
しかるところ、商標法は「商品」についての定義規定をおいていないから、甲第5号証(枝番を含む。)に示された機関誌等の定期刊行物が商標法上の商品ではないと解すべき法的根拠はない。他方、商標権者は、上記主張をするものの、これらの定期刊行物が商標法上の商品には該当しないとの証拠を示してはいない。
そして、甲第5号証(枝番を含む。)の機関誌には、「定価4000円(年間)」(甲第5号証の2)、「定価¥105円」(甲第5号証の11)、「定価200円」(甲第5号証の25)、「定価50円」(甲第5号証の52)のように価格が表示されているものがあり、この事実によれば、これらの各書証に係る定期刊行物が商標法上の「商品」でないとは一概にいいきれないものである。
してみれば、甲第5号証(枝番を含む。)の機関誌が商標法上の商品に該当するか否かは、これらが商品として取引流通過程におかれるか否かにより、個別具体的に判断されるものというべきである。
この点について、「商標法上の商品とは,商標制度の目的に照らすと,流通性があり市場で取引の対象となり得るもののことであると解するのが相当である。これを『印刷物』についていえば,一般の書店において販売されるものでなくとも,インターネット等の通信販売,その他何らかの販売経路を通じて,不特定多数の需要者に対し,譲渡する対象となり得るものであれば,これを商標法上の商品ということができると解すべきである。」とした裁判例(東京高裁 平成15年5月20日判決 平成15年(行ケ)第14号 最高裁ホームページ)も存するところである。
本件における上記の甲各号証の場合、価格を明示し、発行者(団体)等を明らかにして刊行されている以上、不特定多数の購入希望者が当該刊行物を購入することができるというべきであって、これを商標法上の商品ではないとすべき理由はない。
なお、乙第4号証の裁判例は、被告が会員及び一般人に配付した月刊パンフレットが被告の営業の宣伝の目的で配布商品と共に無料で配布されていることなどを理由として当該パンフレットの商品性を否定した事例であり、本件には妥当しない。
そして、仮に、甲第5号証(枝番を含む。)の定期刊行物の中に、商標法上の商品とはいえないものが含まれていたとしても、当該刊行物の題号の一部に「ボランティア」の語が使用されていることは明らかな事実であって、商標の識別力の有無が争われている本件においては、この事実が、取引者・需要者による本件商標の自他商品識別力についての認識の程度を低めこそすれ、その程度を高めることとなるとはいえず、甲第5号証(枝番を含む。)の定期刊行物中に商標法上の商品とはいえないものが仮に存在したとしても、本件取消理由を否定することにはならないというべきである。
3 結論
以上のとおり、本件商標は、標準文字よりなるものであり、その外観上の印象力及びこの語の有する意味からみて、創作性に欠け、指定商品の主たる内容を表示記述するものであって、取引者・需要者によって「雑誌,新聞」の自他商品識別標識と認識される程度が極めて低く、この語を含む題号の、ボランティア団体等の発行に係る定期刊行物等が多数存在する実情が認められ、また、この語について特定人に独占使用を認めることは公益上適当とはいえず、かつ、本件商標が使用された結果、自他商品識別力を獲得していた等の特段の事情もないことよりすれば、これをその指定商品である「雑誌,新聞」に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標である、というべきである。
そして、本件の取消理由の通知に対する商標権者の意見・主張は、いずれも妥当なものとはいえず、取消理由通知を覆すに足りないものである。
したがって、取消理由の通知で示した理由のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号に違反してなされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
なお、異議申立人は、平成15年8月25日付の上申書で口頭審理を行うように申立てているが、本件は、これを開催せずとも審理を進めることができると判断されるので、その申立ては採用しないこととした。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2005-05-11 
出願番号 商願2002-2676(T2002-2676) 
審決分類 T 1 651・ 16- Z (Y16)
最終処分 取消  
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2003-04-25 
登録番号 商標登録第4665823号(T4665823) 
権利者 株式会社角川ホールディングス
商標の称呼 ボランティア 
代理人 山本 俊則 
代理人 三木 秀夫 
代理人 山本 俊則 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 三木 秀夫 
代理人 三木 秀夫 
代理人 三木 秀夫 
代理人 平野 和宏 
代理人 山本 俊則 
復代理人 那須 智美 
代理人 山本 俊則 
代理人 平野 和宏 
代理人 山本 俊則 
代理人 平野 和宏 
復代理人 那須 智美 
代理人 三木 秀夫 
復代理人 那須 智美 
復代理人 那須 智美 
代理人 三木 秀夫 
代理人 平野 和宏 
代理人 山本 俊則 
代理人 平野 和宏 
復代理人 那須 智美 
復代理人 那須 智美 
代理人 平野 和宏 

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