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審決分類 審判 査定不服 商64条防護標章 取り消して登録 Z01032930
管理番号 1118432 
審判番号 不服2002-12200 
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-07-03 
確定日 2005-06-29 
事件の表示 商願2000- 12590拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の標章は、登録第2644518号の防護標章として登録をすべきものとする。
理由 第1 本願標章

本願標章は、別掲のとおりの構成よりなり、第1類、第2類、第3類、第5類、第29類、第30類及び第31類の願書記載のとおりの商品を指定商品とし、登録第2644518号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、平成12年2月16日に登録出願されたものである。その後、指定商品については、当審において同17年3月18日付け手続補正書により、第1類「人工甘味料」、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」、第29類「乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと」並びに第30類「コーヒー及びココア,茶,調味料,香辛料,菓子及びパン,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」と補正されたものである。

そして、原登録商標は、本願標章と同一の構成よりなり、平成3年7月30日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同6年4月28日に設定登録されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由

原査定は、「本願防護標章は、他人がこれを本願指定商品に使用しても、商品の出所について混同を生じさせる程に需要者間に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断

1.本願標章と原登録商標との関係について
本願標章と原登録商標とが同一であること、及び本願出願人と原登録商標の商標権者とが同一人であることは、出願書類及び商標登録原簿の記載に照らし、これを認めることができる。

2.原登録商標の著名性について
請求人の提出した参考資料及び各号証並びに当審において職権で調査した資料を総合すると、以下の事実が認められる。

(1)請求人は、工業製品の卸売業として明治44年創業、昭和13年に会社設立された。昭和6年に国産第1号の食用色素を製造するなど、食用色素の分野における先駆者としての技術・実績を背景とし、以来、香料、ゲル化剤、増粘安定剤、調味料等の食品添加物をはじめ、食品、食品原料、医薬部外品等の製造販売を扱う企業として成長してきた。請求人の平成16年3月期の売上高は595億円であり、特に、食品添加物については、国内市場の10パーセントを超えるシェアを有する業界最大手として長年の実績を有している。また、その事業活動の拠点も国内のみならず、海外の主要都市にも拡大されている(平成13年4月16日付け手続補足書に係る第1号証、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社「COMPANY PROFILE」)。

(2)本願標章は、平成4年に、請求人が商号を現在のものに変更した際に、請求人のCIマークとして創作され、使用開始されたものである。提出された資料(参考資料1乃至14、上記手続補足書に係る第2号乃至第12号証)によれば、該標章は、遅くとも平成5年以降、請求人の商標として、請求人の製造・販売に係る商品の包装に表示され広く全国に販売されているほか、相当数の商品カタログ・情報誌(主に食品メーカー向け)、一般紙・業界紙・食品関係雑誌・会員名簿・大学祭・展示会等への広告において継続的に使用され、また、自社の名刺・事務用品・制服等にも統一的に表示されている。

(3)平成14年10月7日付け手続補足書に係る第14号証及び同17年3月25日付け手続補足書に係る第1号証によれば、原登録商標は、請求人が1991年(平成3年)以来、その製造・販売に係る商品等に継続して使用してきたことにより、化学品業界において周知著名の商標として認識されていることを、関連業界の主要企業(計12社)がそれぞれ証明している。

以上の認定事実に照らせば、請求人は、原登録商標に係る指定商品の「化学品」としての食品添加剤を中心に、別掲標章を請求人のCIマーク及び商標として長年使用し、広告宣伝してきたことにより、これが請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く認識されるに至ったものと認め得るものである。

3.出所の混同のおそれについて
上記2.の認定を踏まえ、本願標章に係る指定商品について、他人が原登録商標を使用した場合、取引者、需要者が、それが請求人の取り扱いに係る商品であると出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについて検討する。

本願標章はいわゆるCI(コーポレートアイデンティティ)マークとして使用されているものであり、いわば請求人の社名と同様に、請求人の取り扱いに係る商品全般に使用されてきたということができる。請求人の原登録商標の使用に係る主要商品である食品添加剤は、一般の需要者を対象とした商品ではないから、その著名性には一定の限界があるといわなければならないが、前記のとおり、原登録商標は、食品添加剤の主たる需要者である食品メーカーや同業者間においては、広く認識されているものと認め得るところである。

ところで、食品添加物あるいは食品添加剤の範疇に属する商品は、実際上、その種類・用途ともに広範多岐であるところ、そのうち、原材料を化学的合成品とするものの多くは、原登録商標に係る指定商品の「化学品」に属するものということができる(例えば、グルコン酸化合物等の強化剤、過酸化水素等の殺菌料、エステル類・エーテル類等の着香料、安息香酸等の保存料、ゲル化剤、漂白剤、など)。また、近年においては、従来の化学的合成品のほか、天然物も増加傾向にあるところである(東洋経済新報社「現代商品大辞典 新商品版」713〜714頁参照)。

そして、本願指定商品中「人工甘味料」及び「調味料」はそもそも食品添加物の範疇に含まれるものであり、また、例えば、着香料、着色料、保存料などは、食品添加剤である一方、食品以外の商品(例えば、せっけん類、化粧品類等)にも広く利用されていることは、顕著な事実である。
したがって、昨今の企業経営の多角化の状況において、食品添加剤の製造者・販売者が、これら原料や製造技術、販売ノウハウを利用して食品添加剤以外の関連商品(例えば、化学品、化粧品、工業薬品、食品)などの分野に事業を拡大することも十分にあり得ることであり、実際に請求人自身も前記のとおり、食品、食品原料、医薬部外品、工業薬品の製造・販売を事業としており、また同業者間においてもこれらの商品を取り扱っている企業も少なくないということができる(平成17年3月25日付け手続補足書に係る第2号証)。

してみれば、本願標章を他人がその指定商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者をして、その商品が請求人若しくは請求人と組織的あるいは経済的に何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当である。

4.まとめ
したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備するものと認められるから、同条の要件を具備しないとして本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。

その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。


別掲(本願標章)


審決日 2005-06-14 
出願番号 商願2000-12590(T2000-12590) 
審決分類 T 1 8・ 8- WY (Z01032930)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 岩崎 良子
青木 博文
代理人 三枝 英二 
代理人 掛樋 悠路 
代理人 中川 博司 

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