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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1114986 
審判番号 取消2002-31120 
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-09-24 
確定日 2005-03-31 
事件の表示 上記当事者間の登録第4307720号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4307720号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件審判請求に係る登録第4307720号商標(以下「本件商標」という。)は、「ザックス」の片仮名文字と「ZAX」の欧文字を二段に横書きしてなり、平成8年12月19日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,ずきん,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類」を指定商品として、平成11年8月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のとおり述べている。
1 請求の理由
請求人の調査では、被請求人は、いずれの指定商品についても、過去3年以上にわたって、我国において本件商標を使用していないことが判明した。 したがって、本件商標登録は、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)本件商標は、被請求人又は通常使用権者により使用されていないこと
乙第1号証たるラベルには、背面に商標「ザックス」が使用される素材の特徴が記載されていると共に、素材ザックスの提供者が「帝人ファイバー株式会社」である旨が記載されている。この帝人ファイバ一株式会社は、本件商標の商標権者ではなく通常使用権者でもない。
また、乙第6号証たる乙第1号証に係るラベルの使用についての確認書についても、「帝人ファイバ一株式会社」に対して提出されたことが明らかである。
上記両乙号証からは本件商標を「帝人ファイバー株式会社」が使用する商標であることを立証する証拠と認めることはできるが、本件商標を被請求人「帝人株式会社」が使用する商標であることを証明する証拠であると認めることはできない。
以上から、乙第1号証のラベルは、「帝人ファイバ一株式会社」の使用に係るラベルであると認定されるべきである。
次に、被請求人は、帝人加工糸株式会社が被請求人の通常使用権者である旨を述べているが、その事実を証明する書類を何ら提出していないので、帝人加工糸株式会社が被請求人の通常使用権者であるとの事実を認めることはできない。
さらに、乙第6号証において本件商標を表示するラベルを製造したスラックスに付して販売しており、現在も販売を継続しているとされる天庄衣料株式会社は本件商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者であるとする事実は存在しない。
なお、乙第2号証の1ないし4に係るラベル支給依頼書兼確約書について、ラベル等の名称として単に本件商標と同一の態様である文字「ザックス」とあるのみであり、果たして乙第1号証に係るラベルについての書類であるのか否かを確認できる証拠を被請求人は提出していない。したがって、乙第2号証の1ないし4が乙第1号証に係るラベル支給依頼書兼確約書であるとの主張を認めることはできない。
(2)本件登録商標は、取消審判の請求に係る指定商品に対して使用されていないこと。
乙第1号証においては、その裏面において「ザックスは・・・素材です。」と記載されており、乙第1号証に係るラベルの表面に記載された商標は、被服用の生地について使用するものであることが記載されている。
乙第3号証には、「生地名」として本件商標と同一でない態様である文字「ザックス」が記載されている。
乙第6号証には、単にスラックスに乙第1号証のラベルを付したことを確認するのみの記載であり、本件商標が、天庄衣料株式会社が製造したスラックスに係る商標として使用するためにラベルを付していたことを確認する記載はなされていない。
乙第7号証は、天庄衣料株式会社によりラベルが商品「スラックス」に付された状態を示した写真であるが、その態様やラベルの背面にはザックスとは被服の素材についての商標であることが記載されていることから、本件商標に係るラベルは被服の素材の商標を示すに止まり、本件商標に係るラベルの背後に隠されたラベルこそが商品「スラックス」自体の商標を示すラベルであると思料される。
なお、乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証の1及び2においても本件商標を使用する商品との関係を裏付ける記載は見受けられない。
以上より、被請求人が使用したと主張する商品は、本件商標の指定商品に属する商品ではないから、本件商標の登録は、不使用を理由として取消されるべきものである。
(3)請求人の本件商標の使用は、商標法施行規則別表商品区分第24類「被服用生地」についての使用であること
ア)被請求人の本件商標の使用態様
被請求人は、使用したと主張する乙第1号証のラベルの表面にはデザイン化された「ZAX」の欧文字と「ザックス」の片仮名文字とが上下に併記されており、その背面には「ザックスは・・・素材です。」と記載されている。そして、乙第3号証は、天庄衣料株式会社がザックスと称される被服用の生地を用いてロング丈パンツを縫製した事実を立証するものであると主張し、また、被請求人は、現在も商標として「ザックス」を使用した生地を出荷していると主張している。
そして、乙第7号証において、乙第1号証のラベルと当該ラベルよりも大きくスラックス本来の商標を表示しているものと思われるラベルとが一緒に付された状態が示されている。この乙第1号証のラベルと共に付されているラベルがどのような態様のラベルであるかは乙第7号証のどの写真からも認識し得ないように撮影されているため憶測に過ぎないが、その大きさからして商品スラックス本来の商標を表示するラベルであると思われる。
イ)本件商標に係る指定商品の需要者、取引者の認識について
被請求人は、生地(素材・織物)は完成品となった場合には、スーツ、スラックス等の全体として認識し、取引をされるものであり、完成品を構成する生地(素材)の肌触り、重さ等の質感は、完成品自体の評価となるものであって、そこに使用される商標が生地(素材)を暗示させるものであったとしても、既にそれは完成品に対する認識(商標の使用)であることは社会通念や取引の実際に照らしても相当である旨主張し、本件商標の使用が生地自体(素材)についての使用ではなく、被服についての使用であると主張している。
ここで、被服類について被服自体についての真の商標を表示するラベルと共に被服の生地(素材)の商標を表示する等の複数のラベルが商品に付されて販売される態様は巷に溢れており探すに難しくない。
しかしながら、斯様な態様においても、需要者・取引者に商品(被服)の商標として認識されるラベルは、商品(被服)を示すものとして付された真の商標のラベル1つのみであり、被服の生地(素材)の商標に係るラベルが付されている場合には単に被服の生地の商標を表示しているものと認識されるにすぎないのが取引の実情であり、社会通念というべきである。
そして、商品スラックスに付されているラベルが乙第1号証に係るラベルのみであるならばまだしも、乙第7号証に示されるように商品スラックス本来の商標を示すものと思われるラベルと共に付されていることから、本件商標の使用は被服の生地(素材)として需要者・取引者に認識されるものと認定されることが妥当である。
ウ)結論
以上の被請求人の本件商標の使用態様、及び本件商標に係る指定商品の需要者・取引者の認識から総合的に判断すると、商品スラックスに付された乙第1号証のラベルからは被服(スラックス)の生地(素材)である旨が想起されるだけであり、取消審判に係る指定商品に付された商標であるとは認識できない。
このようにして被請求人は、本件商標を商標法施行規則別表商品の区分第24類に属すべき「被服の生地」に使用しているのであり、取消審判に係る指定商品について使用しているものではない。
(4)まとめ
以上述べたとおり、本件商標は被請求人により提出された商標の使用の事実を示す書類に基づいて、取消審判請求に係る指定商品についての使用を証明するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁して、その理由及び請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のとおり述べ、その証拠方法として乙第1号証ないし同第12号証(枝番を含む。)を提出している。
1 答弁の理由
本件商標は、本件審判請求に係る指定商品中「被服」に属する商品に関し、少なくとも平成12年以来、被請求人(商標権者)及び被請求人によりその使用を許諾された者(通常使用権者)等により現在に至るまで継続して使用されている。
(1)乙第1号証は、被服に付される本件商標の表示されたラベルであり、該ラベルの表面にはややデザインされた「ZAX」の欧文字と、「ザックス」の片仮名文字とが上下に併記して表示されており、本件商標と同一性のある商標として表示されている。また、裏面には「『ザックス』はテイジンが新しく開発した『ポリエステル/セルロース系繊維』の組合せによるマイルドな清涼感、しなやかなドレープ性、カジュアルな表面感を持ち、ウオッシャブル性にも優れた新質感素材です。」との説明があり、「清涼感」のある素材を用いた被服であることが説明がされている。
乙第1号証のラベルは、被請求人が被服の製造者に素材を提供する際に、その製造予定の被服の枚数に応じ渡されるものであり(乙第2号証の1ないし4、「枚数」の欄参照)、契約上被請求人の提供した素材を使用した被服には縫製業者(製造業者)名の表示を明記したラベルを付すことが義務付けられているものである(乙第2号証の1ないし4、確約事項第2項)。
したがって、該ラベルは素材自体に付されることはなく、素材を使用し完成した被服に付されるものであるから、商標法第2条第3項第1号に定める使用の定義に沿うものであり、被服についての使用がなされているものである。また、乙第2号証の1ないし4は何れも本件審判請求の登録前の日付が示されており、審判請求の登録前に商標の表示されたラベルが使用されていた事実は明らかである。
商品に付された状態は、乙第7号証の写真に示されているとおりである。なお、第7号証の写真の撮影日は平成15年6月13日であり、審判請求の登録後のものであるが、春先から夏向けの季節商品であるため、継続して市場に提供されないことにより、商品の実際に流通している現在のものである。
乙第3号証は、生地としての「ザックス」が、製造元において加工される際に用いられた商品使用書であり、これのみによっては被服につき本件商標の使用がなされていたかは不明ではあるものの、少なくとも平成12年3月には生地の提供がなされていたことを示している。なお、生地名及びNo.の欄中にある「T63342」は生地を特定する品番であり、生地名「ザックス」の記載がないときにはこのNo.により商品(生地)が特定される。
乙第4号証は、生地の流通を示す請求書(請求日2002年(平成14年)2月22日)であり、帝人株式会社(被請求人)の100%子会社である帝人加工糸株式会社が生地の発注主に対し発行したものであり、生地の出荷先は縫製及び卸を行う天庄衣料株式会社とされている。請求書には品番「T63342」の記載があり、生地「ザックス」が出荷されたことを示している。
乙第5号証は、天庄衣料株式会社よりの顧客に対する納品書(納品日2002年(平成14年)3月19日)であり、納品先、単価、金額等の企業秘密に当たる事項は空白となるようにコピーしてあるが、商品名は「ザックスストレート」とされており、完成品が納品されていたことを示している。
乙第6号証は、天庄衣料株式会社により捺印された確認書であり、本件商標が表示されたラベルを商品「スラックス」につき現在使用している事実、及び、本件審判請求の登録前より毎年一定の期間内において使用されてきた事実を証明するものであり、甲第4号証及び甲第5号証の事実を証するものでもある。なお、本件商標についてはその使用に関する宣伝広告を行っておらず、また、季節商品であり使用を証明する証拠としては、取引書類、実際の取引の場におかれた商品の写真のみによらざるを得ないこともあり、縫製及び卸を行う業者による確認書によって使用を証明する。
乙第8号証は、本件商標の現在の使用者(通常使用権者)による出荷案内書である。現在も生地「ザックス」(品番、T63342)が縫製卸会社に出荷されている。
(2)以上のような使用事実よりすると、生地の流通において「ザックス」商標が本件審判請求の登録前より継続して使用されていること、及び、生地が加工された完成品(例えば、スラックス)となった場合には、本件商標を表示したラベルが付されて使用されている。
また、ラベルが完成品に付され使用されていることからすると、一般の取引者・需要者が該ラベルを目印として商品を購入することがあることは容易に想定できることであり、ラベルの表示のみによっては出所を特定することは出来なくても、ラベルの存在により一定の出所から提供されている商品であることを認識させるものとなっている。また、完成品に付されており生地自体(織物)の存在は既に認識させるものでないことから、完成品(例えば、スラックス)に付されたラベルは自他商品を識別させるものとなっており、かつ、品質を保証する機能を発揮するものともなる。
このことは、ラベル表面の表示のみによっては認識されないことではあるが、乙第7号証のラベルが商品に付された状態を示す写真において、商品に付されたタッグに「ひんやり清涼感」と表示され、ラベルの裏面に「『ザックス』はテイジンが新しく開発した『ポリエステル/セルロース系繊維』の組合せによるマイルドな清涼感、しなやかなドレープ性、カジュアルな表面感を持ち、ウオッシャブル性にも優れた新質感素材です。」との記載があることから、需要者、取引者は「清涼感」を有する被服(例えば、スラックス)であることを認識するものである。そうとすると、一定の品質を認識させ、同様の品質を有する他の商品被服(例えば、スラックス)とを識別させる自他商品識別標識としての機能をラベルの表示が発揮しており、また、そのラベルの表示によりその商品被服(例えば、スラックス)の品質が一定のものであることの品質保証の機能をも発揮しているものである。
なお、本件商標の使用は、生地自体(素材)についての使用であって、被服の使用に該当しない、との考え方もあるであろうが、生地(素材・織物)は完成品となった場合には、スーツ、スラックス等の全体として認識し、取引がされるものであり、完成品を構成する生地(素材)の肌触り、重さ等の質感は、完成品自体の評価となるものであって、そこにおいて使用される商標が生地(素材)を暗示させるものであったとしても、既にそれは完成品に対する認識(商標の使用)であることは社会通念や取引の実際に照らしても相当である。
(3)以上のとおり、本件商標は指定商品について本件審判請求の登録前3年以内に使用されていることは、乙各号証により、明らかである。
2 請求人の弁駁に対する答弁
(1)本件商標は被請求人または通常使用権者による使用されていないこと、について
ア)請求人の帝人ファイバー株式会社が本件商標の商標権者、専用使用権者ではなく通常使用権者でもないとの主張を否認する。帝人ファイバー株式会社は、平成14年4月1日に帝人株式会社からポリエステル繊維事業が分社化され発足した会社であり(乙第9号証)、商標権についても帝人株式会社から帝人ファイバー株式会社に契約上の移転はなされている。したがって、帝人ファイバー株式会社は実質的には被請求人と同様の立場に立つ者であって、本件商標が移転されるまでの間は本件商標についての通常使用権を有するものである。
帝人加工糸株式会社は、帝人株式会社の100%出資の子会社であり、合成繊維加工糸及びニット生地の製造販売を行っており、生地「ザックス」の委託加工先である。
イ)請求人の天庄衣料株式会社が通常使用権者等に該当しないとの主張を否認する。天庄衣料株式会社はラベル支給依頼書兼確約書(乙第2号証の1ないし4)に基づきラベルを付すことを許諾され同時に義務づけられているのであり、一定枚数に限りその使用を認められている通常使用権者に該当する。
ウ)請求人は乙第2号証の1ないし4のラベル支給依頼書兼確約書が乙第1号証に係るラベルのものであることを認めることができないと主張するが、被請求人は、ラベル支給について管理システムを導入しており、各ラベルはラベルの名称とラベル商品コードにより特定されている。乙第10号証においてラベル名称「ザックス」のラベルは、ラベル商品コード「192Y2300」とされており、乙第2号証の1ないし4の何れにもその記載がある。したがって、乙第1号証のラベルがラベル支給依頼書兼確約書に基づき支給されたことは明らかである。
(2)本件登録商標は取消審判の請求に係る指定商品に対して使用されていないこと、について
ア)乙第1号証のラベルは、被請求人が被服の製造者に素材を提供する際に、その製造予定の被服の枚数に応じ渡されるものであり、契約上被請求人の提供した素材を使用した被服には縫製業者(製造業者)名の表示を明記したラベルを付すことが義務付けられているものである(乙第2号証の1ないし4、確約事項第2項)。したがって、該ラベルは素材自体に付されることはなく、素材を使用し完成した被服についてのみ付されるものであり、被服用の生地について使用するものではない。乙第3号証は、生地「ザックス」を用い完成品の縫製が行われていた事実を立証するものであり、本件商標が「生地」に使用されているとの主張を被請求人はしていない。
イ)乙第6号証は、商標が表示されたラベルを商品スラックスにつき現在使用している事実、及び、本件審判請求の登録前より継続して使用されてきている事実を立証するものであり、ラベルが被服に付されていた事実は存在する。したがって、被服への使用の証拠となるものであって、ラベルを付したことを確認するのみの記載であるとの請求人の主張は失当である。
ウ)乙第7号証は、本件審判請求の登録後ではあるものの、商品スラックスにつき商標が表示されたラベルが使用されている事実を立証するものである。同様の品質を有する他の商品被服(例えば、スラックス)とを識別させる自他商品識別標識としての機能をラベルの表示が発揮しており、またそのラベルの表示によりその商品被服(例えば、スラックス)の商品の品質が一定のものであることの品質保証の機能をも発揮しているものである。
また、請求人は、あたかも本件商標に係るラベルにより他の商標を付したラベルを隠したかの如く主張しているが、既に商標として機能しているラベル(乙第1号証)を撮影したものである。
エ)乙第8号の1及び2の出荷案内書において、品名を「ザックススムース」としているが、品名よりも品番「T63342」が優先することは取引の実際に照らせば明らかである。なお、「スムース」とは「リブ(リブ編み)」や「ガータ(ガータ編み)」といった編み組織の名称の一つであり、「ザックス」と「ザックススム-ス」とは品番「T63342」で特定される同じ生地である。
オ)乙第4号証及び乙第8号証の1及び2により出荷された生地が、乙第3号証に示すような縫製使用書に基づき製造され、乙第5号証に示される完成品として販売されていた事実が示されており、この完成品に乙第2号証の1ないし4に基づき乙第1号証のラベルが付されていたことが理解され、完成品の写真が第7号証である。
乙第5号証に、商品名として「ザックスストレート9」とされているが、「ストレート9」は単にストレートタイプのものであることを示すにすぎないものであり、生地「ザックス」を用いたストレートタイプのスラックスが納品されていたことを示している。
したがって、各号証とも本件商標を使用する商品被服と直接若しくは間接に関係のあるものである。
(3)請求人の本件商標の使用は商標法施行規則別表商品区分第24類「被服用生地」についての使用であること、について
ア)被請求人の本件商標の使用態様について
(i)乙第1号証のラベルは素材自体に付されることはなく、素材を使用し完成した被服についてのみ付されるものである。ここに本件商標が使用されている。
(ii)乙第3号証は本件審判請求の登録前に、生地「ザックス」を用い完成品の縫製が行われていた事実を立証するものであり、乙第8号証の1及び2は生地「ザックス」(品番、T63342)が縫製卸会社に出荷されている事実を立証するものであって、商標として「ザックス」を生地につき使用しているものではない。
(iii)乙第7号証は、商品スラックスにつき本件商標が表示されたラベルが使用されている事実を立証するものであり、既に商標として機能している事実を立証するものである。請求人は、あたかも本件商標に係るラベルにより真の商標、本来の商標と称する商標を付したラベルを隠したかの如く主張しているが、既に商標として機能しているラベル(乙第1号証)を撮影したものであり、請求人の主張は、請求人が自ら認めるように憶測によるものであって、何らの根拠のない主張に過ぎない。
ウ)本件商標に係る指定商品の需要者、取引者の認識について
請求人は、真の商標、本来の商標、と称しており、1つの商品については1つの商標しか成立しないような暴論を展開している。被服に限らず1つの商品に複数の商標が付され、それら複数の商標が1つの商品を表彰している場合があることはここにおいて立証を要しない社会的な事実であり、需要者、取引者の認識を極めて低く捉えるものであって、真の商標や本来の商標が存在するような請求人の主張は根拠がない。
また、単に被服の生地の商標を表示しているものと認識されるにすぎない、との主張も取引の実際を無視した主張であり、本件商標の表示されたラベルにより第24類における単体では個性を発揮し得ない「被服用生地」(反物や織物)のみを想起するようなことは想像すらできない。
したがって、そこにおいて使用される商標が素材としての生地を暗示させるものであったとしても、既にそれは完成品に対する認識(商標の使用)であることは社会通念や取引の実際に照らしても相当であることに変わりはない。
例えば、乙第11号証及び乙第12号証は鉄道車両のデッキ広告媒体を面積1/2に縮小したものであるが、乙第11号証においては1種類の図形商標と、「MUNSINGWEAR」「サーモαパンツ」「THERMOCOMPO」及び「サーモコンポ」の文字商標が表示されている。また、乙第12号証においては3種類の図形商標と、「DESCENTE」「ION-BODIES」「W-BARRIER」「ウインドバリア」「TEIJINTEX」「ANTISTRESS」及び「イオン・ボデイズ」等の文字商標が表示されている。これらは何れも1つの商品につき複数の商標が宣伝広告されているものであるが、何れの商標も被服の出所表示や品質保証をする商標として認識されるものである。
エ)結論について
請求人は、本件商標の使用態様、及びに本件商標に係る需要者、取引者の認識から総合的に判断すると、商品スラックスに付された第1号証のラベルからは「被服(スラックス)の生地(素材)」である旨が想起させるだけであり、と主張しているが、この主張が需要者、取引者の認識を極めて低く捉えるものであって、商標が素材としての生地を暗示させるものであったとしても、既にそれは完成品に対する認識(商標の使用)であることは社会通念や取引の実際に照らしても相当である。
4 結論
以上のとおり、本件商標を指定商品について本件審判請求登録前3年以内に使用していたことは、乙各号証により、明らかであるから、本件商標の登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
被請求人は、本件審判請求に係る指定商品「被服」について本件商標を使用していると主張しているので、その点について検討する。
1 乙第1号証ないし同第8号証(枝番を含む。)における事実
(1)ラベルの見本である乙第1号証、天庄衣料株式会社が作成した確認書である乙第6号証及びスラックスの商品写真である乙第7号証によると、乙第1号証のラベル(以下「本件ラベル」という。)は、表面に、別掲のとおりの構成からなる商標が表示されていて、その裏面に「『ザックス』はテイジンが新しく開発した『ポリエステル/セルロース系繊維』の組合せによるマイルドな清涼感、しなやかなドレープ性、カジュアルな表面感を持ち、ウオッシャブル性にも優れた新質感素材です。」、さらに<取扱注意点>として「この素材は、多少色落ちの傾向がありますので、他のものと分けてお取り扱いください。」と記載、その下に、「素材提供 帝人株式会社」と記載されていて、さらに「販売元」の欄(当該二次製品の発売者を表示する欄と認められる。)が設けられている。そして、天庄衣料株式会社が作成した確認書である乙第7号証には、本件ラベルを「スラックス」に付して、平成12年3月から同年8月まで、平成13年3月から同年8月まで、及び平成14年3月から同年8月まで、それぞれ販売していたことが記載されている。その本件ラベルがスラックスに付されていることが乙第7号証で認められる。
(2)ラベル支給依頼書兼確約書(13年11月、14年1月23日、同年4月3日及び同年7月18日付けの4件)である乙第2号証の1ないし4には、左上に「帝人株式会社 御中」と記載、その下に、「確認者及びラベルの支給依頼者」(「天庄衣料(株)」等と会社名を記載)、「ラベル等の名称」(「ザックス」と記載)、「ラベル商品コード」(「192Y2300」と記載されていて、本件ラベルを指すものと認められる。)、「添付する二次製品名」(「Tシャツ」又は「パンツ」と記載)、「枚数」(「200枚」又は「2000枚」と記載)がそれぞれ記載されていて、その下に「確約事項」の欄があり、そこには、支給を受けた本件ラベル等の使用に際して遵守すべき確約事項として、例えば、以下の内容が記載されていることが認められる。
○ラベルは日本国内で使用し、その使用に際しては家庭用品品質表示法等の関係法規を遵守する。
○支給を受けたラベルの製造発売元が空欄の場合は当社(ラベルの支給を受けて会社)の社名を表示する。
○ラベル以外に、容易に取り外しできない織りネーム等に家庭用品品質表示法に基づき、「製造発売元」及び「法定品質表示」を表示すること。
○ラベルの受払いについては正確に記帳し、被請求人の要求があれば使用状況を報告する。
○不要なラベルは返却する。
○ラベルは本ラベル支給依頼書兼確約書に記載の商品に限り使用するとともに、添付間違いを起こさないよう十分に注意する。
○ラベルを間違って添付した場合は、被請求人の指示に従い直ちに是正措置をとり、その結果につき書面で報告するとともに、ラベル添付間違いにより被請求人が損害を受けたときはその損害を賠償する。
○確約事項のいずれかに違反したときは被請求人の要求により直ちにラベルを返却する。
○この場合被請求人が損害を受けたときはその損害を賠償する。
(3)商事会社宛の帝人加工糸株式会社発行の請求書(請求日、2002年2月22日)である乙第4号証は、品番「T63342」(織物「ザックス」の品番)、出荷日「02/02/18」、出荷先名「天庄衣料(株)南部工場」、数量、単価、金額等が記載されている。
(4)帝人ファイバー株式会社作成の「出荷案内書」(2003年5月14日付及び30日付の2件)である乙第8号証の1及び2によると、契約先、品番「T63342」(織物「ザックス」の品番)、規格、品名「ザックススムース」(2件とも同様の品名)、出荷明細として、色柄コード、仕上長、疋(反)数、出荷先住所名称、出荷元名等が記載されている。
(5)天庄衣料株式会社作成の縫製使用書である乙第3号証には、「品名」として「ロング丈パンツ」、「生地名及No.」として「T63342 ザックス」、「使用個所」として「本体」及び「生地幅」が記載され、その下の欄に、「品質表示」として「ポリエステル65%、レーヨン35%」、「デザイン画」としてロング丈パンツの形状、寸法等を図示し、さらに「縫製要領」、「縫製工程」、「副資材品番及品名」、「出来上がりサイズ」等が記載されている。
(6)上記乙号証における事実及び被請求人の主張よりすると、帝人加工糸株式会社が、2002年2月18日に、商標「ザックス」に係る品番「T63342」の織物(以下「使用商品」という。)を天庄衣料株式会社に出荷し、また、2003年5月14日及び30日に、帝人ファイバー株式会社が、使用商品(品名「ザックススムース」)を出荷し、販売したものと認められる。
また、被請求人は、縫製業者に使用商品を販売するに際し、その縫製業者に対して、「ラベル支給依頼書兼確約書」の提出を求め、被請求人が支給する本件ラベルの使用や管理について遵守すべき事項の確約をさせて、使用商品を販売すると共に本件ラベルを支給しているものである。そして、その使用商品を生地としてTシャツやパンツ等を製造した縫製業者は、被請求人との間の確約事項に従い、被請求人から支給された本件ラベルを自己の製造した二次製品に付しているものと認められる。
(7)しかして、その被請求人が支給する本件ラベルは、その表面に、別掲のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されていて、その裏面に、その生地(織物)について「ザックスは、・・・新質感素材です。」と特徴及び生地(織物)の取扱注意点、及び生地(織物)の提供者として「素材提供 帝人株式会社」が記載されていて、さらに、その下段に「発売元(当該二次製品の発売者名)」を表示することとなっている。
その本件ラベルに関しての使用、管理について、被請求人は、織物(生地)である使用商品を購入する縫製会社に対し、前記(2)のとおり、確約事項として、被請求人の要求があれば支給したラベルの使用状況を被請求人へ報告させ、また確約事項に違反した場合は、ラベルを返却すること等の義務を課している(乙第2号証の1ないし4)。
(8)以上からすれば、使用商標は、織物(生地)である使用商品の商標として使用されたものであり、使用商標を表示した本件ラベルが二次製品に直接付され、その本件ラベルの裏面に「素材提供 帝人株式会社」の他「発売元(二次製品の発売者名)」が表示されるとしても、そのラベルに記載されている説明、また縫製業者である天庄衣料株式会社作成の縫製仕様書(乙第3号証)中の「生地名及No.」の欄に「T63342 ザックス」と記載されていること、さらに、繊維業界においては、需要者のニーズに合った被服を作るための品質・特性をもつ新素材(織物等)の開発が進められ、繊維メーカーの開発した素材を用いた被服であることを表示し、そして同時に当該被服の製造者又は販売者が、独自の商標を表示した別のラベルや衿ネーム等も付することは一般的に行われていることをも考慮すると、取引者、需要者は、本件ラベルに表示されている使用商標を当該二次製品の生地(織物)に係る商標と認識するものとみるのが相当といえる。
また、使用商標に係る使用商品を出荷した帝人ファイバー株式会社は被請求人(商標権者)のポリエステル衣料繊維部門を分離独立させた会社であること(乙第9号証)、そして帝人加工株式会社は被請求人の100%出資の子会社であることからすると、帝人ファイバー株式会社及び帝人加工株式会社は、被請求人とは業務上密接な関係にあり、使用商標における通常使用権の許諾がされていることは推認できるものである。
してみれば、被請求人(商標権者)又は通常使用権者は、その使用商品の販売に際し、仮に使用商標を使用商品又はその包装自体に直接付さなかったとしても、その使用商品に係る取引書類やラベル支給依頼書兼確約書において使用商標がその使用商品の商標として使用されていると認められるものである。そして、使用商品を購入した縫製業者に、その本件ラベルの取り扱いを、使用商標に係る使用商品を生地とする二次製品に限り付すことを確約させているものであるから、その使用商品が二次製品として別の商品に加工され、その新たな商品に本件ラベルによって使用商標が表示されたとしても、その使用商標は生地(織物)である使用商品の商標であることに変わりなく、二次製品に付した新たな商標ということはできない。
2 使用商標及び使用商品について
(1)本件商標は、前項第1で述べたとおり、「ザックス」の片仮名文字と「ZAX」の欧文字を二段に横書きしてなるところ、被請求人が使用していると認められる使用商標は、別掲のとおり、図案化されているとしても容易に「ZAX」の欧文字からなるものと認識され得る構成態様で表され、その下段に「ザックス」の片仮名文字が表示されていることから、その構成全体からして、使用商標は、「ZAX」の欧文字及び「ザックス」の片仮名文字からなるものであって、本件商標と社会通念上同一の商標とみるのが相当である。
そして、使用商標は、Tシャツ、パンツ又はスラックス等の被服の織物生地(使用商品)について使用されているものである。
(2)この点について、被請求人は、使用商標は、スラックスに直接付しているので(乙第5号証ないし同第7号証)、スラックスの商標として使用しているものである旨主張、また、出荷された織物生地(使用商品)が、縫製使用書(乙第3号証)に基づき製造され、完成品として販売されていて、その商品に「ザックスストレート9」と表示していた事実は乙第5号証の納品書に示されているとおりであり、この完成品に乙第1号証のラベルが付されていたもので、完成品の写真が第7号証である旨主張する。
しかしながら、使用商標は、被請求人(商標権者)又は通常使用権者が使用商品について使用をしていること上記認定のとおりである。また、乙第5号証以外の乙号証よりすると、上記認定のとおり、使用商標は使用商品に使用されている商標といわざるを得ないものであり、また、乙第5号証の納品書中の「品番・商品名」の欄に「15461 ザックスストレート9」と記載されていることのみをもって、使用商標が「被服」(スラックス)に使用されたものとみることはできないので、その被請求人の主張は採用できない。
(3)してみれば、本件商標と社会通念上同一とみられる使用商標は、被服の生地、すなわち、織物について使用しているものであって、本件審判請求に係る指定商品に含まれるスラックス等の被服について使用されていたものということはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人(商標権者)又は通常使用権者は、審判請求に係る指定商品中の「被服」について本件商標の使用をしていたということはできない。
その他、被請求人は、審判請求に係る指定商品のいずれかについて使用していた証拠の提出はない。また、本件商標の使用をしていなかったことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
以上よりすると、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、審判請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標の使用をしていたということはできない。また、本件商標の使用をしていなかったことについて正当な理由があるものと認めることはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定に基づき取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
<使用商標>

審理終結日 2004-07-01 
結審通知日 2004-07-05 
審決日 2004-07-30 
出願番号 商願平8-142259 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (025)
最終処分 成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 富田 領一郎
田中 亨子
登録日 1999-08-20 
登録番号 商標登録第4307720号(T4307720) 
商標の称呼 ザックス、ゼットエイエックス 
代理人 山口 朔生 
代理人 網野 友康 
代理人 初瀬 俊哉 

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