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審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y25
管理番号 1111364 
審判番号 無効2004-35024 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-01-14 
確定日 2004-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4720762号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4720762号の指定商品中「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く)」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4720762号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示す構成のものであり、平成15年2月7日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,げた,草履類」を指定商品として、平成15年10月24日に設定登録されたものである。

2.請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証の5を提出した。
A.請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。
(2)無効原因
本件商標の出願時点において、本件商標の指定商品中「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」を取扱う靴業界において、既に「Sarah」の欧文字からなる商標が請求人業務にかかる「婦人靴」を表示するものとして広く認識されている。以下、証拠を提示し説明する。
請求人「株式会社オギツ」は、昭和27年5月19日に設立された、皮革婦人靴の製造販売を目的とする会社であり、全国の百貨店と専門店を主な販売先として営業し、平成9年に210億円、平成12年には230億円の販売実績を残している(甲第3号証ないし甲第5号証の4)。
請求人婦人靴のブランドとしては、「et vous」「UNTITLED」などの有名ブランドと、「ing」「Pitti」「ism」などの自社オリジナルブランドとを合わせ現在20種類以上のものを有し、製造販売してきている(甲第5号証の1ないし甲第8号証)。
商標「Sarah」は、請求人が昭和58年から市場に展開した自社ブランドの一つであり、現在に至るまで20年にわたり継続使用されているものである。
なお、本件商標「Sarah.b」と請求人商標「Sarah」とは、ともに「サラ」の称呼を生じるため、両商標が類似することは明らかである。
甲第9号証、甲第10号証は、平成13年、平成14年各年の商品「Sarah」の売上データ写しである。これによると、商品「Sarah」は、全国の百貨店と靴専門店、自社が出資する靴販売店に対し、平成13年に 227,379足、1,575,277,417円、平成14年に247,971足、1,678,808,513円販売されたことがわかる。
甲第5号証の1ないし4は、それぞれ平成8年、平成9年、平成10年、平成13年作成の請求人の経歴書であるが、これらの「商標」の欄には、請求人が販売している婦人靴の商標として「Sarah」が記載されている。
甲第7号証は、平成3年新卒者募集用の請求人の会社案内であるが、そこには、請求人の販売する婦人靴の商標として「SARAH」が記されており、また甲第8号証は、請求人が平成9年4月に作成した平成10年新卒者募集用の会社案内であるが、その第6頁から第7頁には、請求人のショールームに商標「Sarah」を使用した婦人靴が展示されていること、および「Sarah」が請求人の人気オリジナルブランドであることが記されている。
甲第11号証は、商品「Sarah」についての、平成9年8月19日付伝票・平成9年8月21日付伝票、甲第12号証は、同平成10年8月6日付伝票・平成10年8月31日付伝票・平成10年8月30日付伝票、甲第13号証は、同平成11年8月27日付伝票・平成11年8月3日付伝票・平成11年9月4日付伝票、甲第14号証は、同平成12年9月2日付伝票・平成12年8月11日付伝票、甲第15号証は、同平成13年8月13日付伝票・平成13年9月17日付伝票・平成13年9月26日付伝票、甲第16号証は、同平成14年8月7日付伝票・平成14年9月19日付伝票・平成14年8月28日付伝票、甲第17号証は、同平成15年8月11日付伝票・平成15年8月25日付伝票・平成15年8月3日付伝票であり、伝票中、品名コードのSRが商品「Sarah」の商品記号であり、これらによれば少なくとも、商品「Sarah」の平成9年から平成15年の間の継続した販売の事実が確認できる。また、伝票中の商品コードは後記甲18号証の1ないし8のデザイン一覧表と照合して商品の種類を確認することが可能である。
甲第18号証の1ないし8は、それぞれ商品「Sarah」の平成8年春夏・秋冬、平成9年春夏・夏・秋冬、平成10年春夏・秋・秋冬、平成11年春夏・夏・秋冬、平成12年春夏・秋冬、平成13年の春夏・秋冬、平成14年の春夏・秋冬、平成15年の春夏・夏・秋冬の各コレクションのデザイン一覧表である。これによれば、本件商標が出願されたのと同時期の平成14年の春夏に62種、秋冬に52種のデザインの異なる「Sarah」を展開していたことがわかり、また、平成8年の春夏に30種、秋冬に25種、平成12年の春夏に33種、秋冬に36種、平成13年の春夏に31種、秋冬に46種、平成15年の春夏に35種、夏に20種、秋冬に50種のデザインの異なる「Sarah」を展開しており、逐年変わらず多種であることがわかる。
甲第19号証は請求人が毎年開催している「婦人靴」の新作発表会のうち、平成9年夏コレクションへの招待状であり、甲第20号証は平成9年秋冬コレクションへの招待状であるが、ここにも、展示されている婦人靴のブランドとして商標「Sarah」が記されている。
甲第21号証の1ないし3は、それぞれ、商品「Sarah」の平成13年の春夏コレクション・夏コレクション・秋冬コレクション、平成14年の春夏コレクション・秋冬コレクション、平成15年の春夏コレクション・夏コレクション・秋冬コレクションの写真の写しである。
さらに、前掲の販売の事実に加えて、請求人は、商品「Sarah」を女性向け雑誌に掲載し、広告活動を行っている(甲第22号証ないし甲第23号証)。
以上の証拠から、請求人商品「Sarah」は、数多くのデザインで展開しているものであること、その販売額、販売足数は大きな実績を残していること、継続的に販売してきたものであることは、明らかであり、本件商標の出願時においては、「Sarah」なる商標は請求人業務にかかる「婦人靴」を表示する商標として既に周知に至っていたといえるものである。
そして、その裏付けとして、全国百貨店の証明書(甲第24号証の1ないし79)、全国靴専門店の証明書(甲第25号証の1ないし127)、同業者連合会・組合・連盟の証明書(甲第26号証の1ないし5)を提出する。これらをみれば、請求人商品「Sarah」は旧くから存しており、少なくとも当業界においては周知性を獲得していることはより明らかとなる。
以上のように本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、その登録は拒否されるものである。
B.弁駁の理由
(1)一般に、商標の類否は、対比すべき両商標の全体を観察して外観、称呼、観念において共通するか否かを検討してなされるべきであり、そのいずれかにおいて相紛らわしいため、商品又は役務の出所につき誤認、混同を生ずる場合には、両商標は類似の商標とされるが、当該商標の構成中に全体としての一体性が弱く、あるいは、付加的であって、これを看る取引者、需要者の注意を惹かないと認められる部分があるときは、これを除いた要部について観察してなされるべきである。
(2)本件商標は、「Sarah.b」の文字から構成なるところ、欧文字-文字は、商品の等級や品種等を表示するための記号・符号として一般的に使用される場合が多いこと周知の事実である。本件商標において「Sarah」と「b」との間に1スペースを置きピリオドを設けた商標構成の「b」の文字もその-類型そのものであり、自他商品の識別機能は、前半の「Sarah」にあるとみるのが相当である。よって、本件商標からは、当該「Sarah」文字に照応して「サラ」の称呼を生じるものである。
さらに、本件商標は、前記のとおり、「Sarah」の文字と「b」の文字とを「ピリオド」で結んで構成するもであるから、これらは外観上まとまりよく一体的に構成されているものでなく、被請求人が主張する「サラビー」の称呼は、淀みなく一連に称呼し得るとは認められないと共に、また、その構成中のピリオドで区画表示された「b」の文字部分は、本件商標の「Sarah」と一連に称呼すべき必然性はないものである。
(3)被請求人は、本件商標と請求人使用商標とがその外観及び概念において相紛れるおそれはないと主張する。
しかしながら、請求人の「Sarah商標」は、その構成からして、これを看る取引者、需要者は、上段に極端に大きく、かつ太く表示された欧文字に注意を惹かれるものであり、当該構成部分こそが、請求人の主張する「Sarah商標」の要部と認定されるべきである。したがって、以上の理由のとおり、本件商標と請求人の「Sarah」の両商標とは、その称呼上類似するものであって、相紛れる類似の商標に該当するものである。
(4)請求人は、請求人提出の甲第21号証及び第24号証ないし第26号証(いずれも枝番を含む。)に関して、証拠として否定している。その理由、根拠として撮影者、撮影年月日、撮影場所も不明であること、及び請求人の提出の「Sarah商標」の表示が請求人の業務「婦人靴」を表示する商標として既に周知に至っている事実の「証明書」について、「当該証明書は、一定の書式の下に依頼人が依頼した事項を単に証明者が事実に相違ない旨を証明しているに過ぎない」と主張している。
しかしながら、請求人である株式会社オギツは、昭和27年に創立され、皮革婦人靴の製造販売を目的として、全国の百貨店と専門店を主な販売先として営業活動を継続し、平成9年には210億円、同12年には230億円の販売実績を有する我が国婦人靴業界を代表する最大手企業である。
そして、当該「Sarah商標」は昭和58年から市場に展開してきた自社ブランドの一つで、現在に至るまで20年にわたり継続使用されてきたものである。この長年にわたる継続的婦人靴販売の実績に基づく事実の証明を到底否定できるものではない。ましてや、当該各証明者は、百貨店及び靴販売専門店業界を代表するといっても過言でない優良企業各社であり、販売実績に基づかぬ取引、使用事実を証明するはずがない点を再認識すべきである。

3.被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べた。
(1)請求人が自己の業務に係る「婦人靴」を表示するものとして広く認識されていると主張する商標「Sarah」(以下「Sarah商標」という。)は、提出された甲第5号証(枝番を含む。)、同第8号証、同第18号証(枝番を含む。)、同第20号証、同第22号証及び同第23号証を総合してみても、「Sarah」の欧文字が単独で使用されているのは極めて少なく、僅かに甲第7号証において「Sarah商標」が使用されているが、これとても他の商標と共に使用されているところから、このうちの「Sarah商標」のみが格別需要者間に広く認識されていたものとは到底認めることができないところである。
甲第21号証(枝番を含む。)は、撮影者、撮影年月日、撮影場所も不明であり、証拠として成立しない。
甲第24号証ないし同第26号証(いずれも枝番を含む。)は、一定の書式の下に依頼人が依頼した事項を単に証明者が「上記について、事実に相違ない。」旨を証明しているに過ぎず、証明者がいかなる権限により、いかなる資料に基づいて証明したものか明らかでない。
その他、「Sarah商標」が需要者間において広く認識されていたことを認めるに足る証拠は見出すことができない。
したがって、「Sarah商標」が本件商標の出願時において、請求人の取り扱いに係る婦人靴を表示するものとして、需要者間に広く認識されていたものということができないため、請求人による商標法第4条第1項第10号に基づく無効理由の主張は失当である。

4.当審の判断
(1)請求人が使用する商標「Sarah」について
甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証の1ないし4、甲第7号証、甲第8号証ないし甲第20号証、甲第22号証ないし甲第26号証の5によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、昭和27年に設立の革婦人靴の販売及び製造事業を行って来た会社であり、全国各地の百貨店と専門店を主な販売先として営業し、平成9年に210億円、平成10年に230億円、平成11年に210億円、平成12年に230億円の販売実績があったこと(甲第3号証ないし甲第5号証の4)。
(イ)請求人は、他社ブランドの婦人靴と「ing」「Pitti」「ism」などの自社オリジナルブランドの婦人靴を扱ってきたこと。
(ウ)請求人は、「Sarah」の文字の下に小さく「DAZZLING」の文字を表した商標(以下「請求人Sarah商標」という。)を遅くとも平成8年には婦人靴の自社ブランドとして使用していたこと。また、甲第7号証(株式会社オギツ会社案内(平成3年新卒者募集用)写し)に「SARAHA」の文字を籠字で表した商標が記載されていること。
(エ)甲第9号証、甲第10号証は、平成13年、平成14年各年の商品「Sarah」の売上データ写しとされるものであるところ、これによれば、商品「Sarah」は、平成13年に227,379足、1,575,277,417円、平成14年に247,971足、1,678,808,513円販売されたことになること。
(オ)平成9年8月から平成15年8月の間に、請求人から全国各地の百貨店等に婦人靴の納品がなされたこと(甲第11号証ないし甲第17号証)。当該納品伝票又は仕入伝票に記載された品名欄の記号又は商品コード欄の記号が、甲第18号証に掲載された靴のデザインのナンバーの数字と一致すること。同デザイン一覧表の左上には、「BRAND」との表示に続けて請求人Sarah商標が表示されていること。そして、これらを併せみると、請求人Sarah商標に係る婦人靴が前記期間に請求人より継続的に販売(納品)されたと推認されること。
(カ)女性向け雑誌(2002年12月号及び2003年4月号)に婦人靴の写真とこれの宣伝文が掲載されており、そこに「サラ/オギツ」との記載があること。そして、この「サラ/オギツ」は、請求人Sarah商標を示しているものと無理なく推定できること。

上記事実からすると、請求人は、遅くとも平成3年には「SARAH」の文字を籠字で表した商標を自社製造の婦人靴に使用していたが、遅くとも平成8年には「Sarah」の文字の下に小さく「DAZZLING」の文字を表した商標(すなわち「請求人Sarah商標」)に変更して、以来、同じく自社製造の婦人靴に使用して来たものと推定できる。そして、請求人Sarah商標を使用した婦人靴は、全国各地の百貨店と専門店で相当数量販売され、また、女性向け雑誌にも宣伝され、その結果、請求人Sarah商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、婦人靴の分野で取引者・需要者の間に広く認識されるに至っていたものというのが相当である。
(2)本件商標と請求人Sarah商標との類否
本件商標は、別掲に示すとおり、一連に「Sarah.b」と表してなるものである。そして、「.」(ピリオド)の前後の「Sarah」と「b」の部分が分離して看取され、また、「Sarah」の部分は外国人女子名の一であるSarah(サラ)として認識されることが少なくないといえるが、これに続く「.b」と一体となった標章がよく知られた語であるとは認められない。
一方、請求人Sarah商標は、上記(1)認定のとおり、「Sarah」の文字の下に小さく「DAZZLING」の文字を表した商標であるところ、上段の「Sarah」が下段の「DAZZLING」の文字より遙かに大きく目立ち、下段の文字は格段に小さく表されており目立たないものである。また、その上段の「Sarah」の部分は本件商標と同様に外国人女子名の一であるSarah(サラ)として認識されることが少なくないといえるが、その下段の「DAZZLING」の文字は、「まばゆい、きらびやかな」という意味の英語であり、ファッション関連の商品についてその品質を想起させる語ということができ、その意味合いからも本来的に商標としての識別機能が強いとはいえない。
そうしてみると、本件商標と請求人Sarah商標は、いずれも「Sarah」の文字部分が、主要な識別標識として認識されるものと認められ、この文字部分から共通して外国人女子名の一であるSarah(サラ)が観念され、かつ、「サラ」の称呼を生じるものというべきである。
してみれば、本件商標と請求人Sarah商標は、称呼及び観念を共通にする類似の商標といわなければならない。
(3)請求人Sarah商標の使用商品「婦人靴」と本件審判請求に係る指定商品の類否
請求人Sarah商標を使用する商品「婦人靴」と本件審判請求に係る指定商品である「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」とは、同一又は類似の商品と認めることができる。
(4)結び
したがって、本件商標は、その指定商品中、本件審判請求に係る指定商品である「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」について、商標法第4条第1項第10号に違反して商標登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
本件商標


審理終結日 2004-09-30 
結審通知日 2004-10-04 
審決日 2004-10-18 
出願番号 商願2003-9083(T2003-9083) 
審決分類 T 1 12・ 25- Z (Y25)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田口 善久安達 輝幸 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 富田 領一郎
小川 有三
登録日 2003-10-24 
登録番号 商標登録第4720762号(T4720762) 
商標の称呼 サラビイ、サラ、サラー 
代理人 岩崎 幸邦 
代理人 中村 政美 
代理人 三好 秀和 
代理人 川又 澄雄 

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