• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z42
管理番号 1111334 
審判番号 無効2003-35498 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-01 
確定日 2005-01-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4555303号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4555303号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4555303号商標(以下「本件商標」という。)は、「TETSUYA」、「テツヤ」及び「てつや」の文字を三段に横書きしてなり、平成13年1月5日登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として同14年3月29日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第105号証(枝番を含む。以下、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
1 需要者間に広く認識されている商標について
商標法第4条第1項第10号及び同第15号の適用は、本件商標の登録出願時及び登録査定時の両時点において該当していることを要する。
そこで、請求人の商標が周知性を獲得していることを立証するにあたり、(a)本件商標の登録出願日前における周知性の獲得事実、(b)本件商標の登録査定時における周知性の維持事実、との項目に分けて立証し、さらに(c)本件商標の登録査定日以降の刊行物あるいはテレビ放送のうち、本件商標の登録出願日前から周知性を備えていたと推認し得る補助的な事実について証明する。
(1) 本件商標の登録出願日前における周知性の獲得事実
(ア)本件商標の登録出願日前の営業期間、営業地域及び店舗数
請求人の代表者である内海哲也は、17歳の頃から札幌、埼玉、東京のラーメン店で修行をし、平成9年6月6日に自分の名前を店名に命名した「らーめん てつや」を札幌市中央区南7条西12丁目に開店した(甲第12号証の1及び甲第25号証)。
この「らーめん てつや」の標章(以下「引用商標」という。)は、開店当時から使用されており、本件商標の登録出願日までの商標使用期間は3年6ヶ月にわたる。
開店から1年経過した頃には客及び業界取引者から相当な評判を得ていたが、確固たる信頼を得るためにラーメンの品質及びサービスの向上に一層努力し、2年6ヶ月経過後、満を持して多店舗展開を開始した。
まず、平成11年10月1日に「らーめん てつや」スープ工房店を札幌市中央区南7条西9丁目にオープンした。続いて4ヶ月後の平成12年1月28日に「らーめん てつや」北32条店を開店し、更にそれから8ヶ月後の平成12年9月30日には、「らーめん てつや」平岡店を開店した(甲第2号証の1ないし3、甲第13号証の1、甲第15号証の1及び甲第16号証の1)。
このようにわずか11ヶ月間で3店舗の「らーめん てつや」を開店し、札幌市内だけではなく札幌市近郊地域の需要者も来店し易いよう、高速道路出口から近い場所を選択して集客力の高い戦略的な店舗展開を図っている。
(イ)麺の消費玉数及び来客数
次に、「らーめん てつや」の各店舗において消費された麺の玉数を一般的なラーメン店と比較しつつ説明する。なお麺の消費玉数は来客数に換算できる値である。
一般的なラーメン店では1日100食を売ることすらできないことが多い。甲第3号証の調査報告によると、例えば夫婦若しくは若干のパートを雇って経営する小規模・零細店(全国の8割が個人経営である:甲第8号証)では、平均1日50〜70食程度にとどまる。この中華そば業界では、一般的に100食以上の販売が目標とされ、200食売れれば繁盛店といわれている(甲第3号証)。
「らーめん てつや」の第1号店(南7条店)における消費玉数は、開店から1年間は1日平均30〜40玉程度であったが、1年後の平成10年7月には102玉/日をクリアし、同年10月以降は200玉/日を超えている。
さらに、翌年の平成11年2月以降には300玉/日を超え、同年10月には一月に換算すると、11,463玉/月(麺大盛分の玉数を除いて算出した来客数は10,771人/月)を記録した。これは1日当たりに換算すると平均425玉/日(来客数398人/日)を販売したことになる。この数値は、いわゆる繁盛店の目安とされる1日200食の2倍以上の来店・販売数を記録したことになる(甲第4号証)。この来店・販売数から見ても、この時点ですでに保護に値する十分な周知性を得られていることになろう。
これは一時的な傾向ではなく、その後もほぼ1日平均380玉を販売し、開店から3年経過した平成12年10月には、13,014玉/月(来客数12,232人/月)、1日当たりに換算すると平均482玉/日(来客数453人/日)に増加しており、繁盛店の域を遥かに超えた超繁盛店となっている(甲第4号証)。
このように年々、麺の消費玉数は増加し、わずか1店舗、しかも全12席だけであるにもかかわらず、本件商標の登録出願日以前の延べ消費麺数は28万玉を超え、平成12年度の1月当たりの平均消費麺数は1万1千玉を超え、この1年間に延べ124,368人の来客があった(甲第4号証)。
ところで、札幌市は全国でも人気の高い観光地であり、観光客が全国各地から訪れる日本有数の観光都市である。特にラーメンは札幌の名物として全国的に有名である。一方、後述するように「らーめん てつや」は各種の観光雑誌によって、常に人気ランキングの上位にランクされるおいしいラーメン店として推薦されている。
このような点に鑑みれば、札幌市で獲得したラーメン店の知名度や評判は、全道及び全国的に伝わり易く、その商標の周知度は、通常の都市に比較して、より全国的な広い地域に渡って拡大し易いことになる。
以上のような「らーめん てつや」第1号店における販売・集客傾向は、飽和状態を解消すべく満を持してオープンした第2号店以降の他店では、開店当初から顕著に現れている。
仕込み専門のスープ工房店(6席のみで限定200食)は集客を目的としていなかったが、平成12年1月開店の北32条店では、開店10ヶ月後の同年10月には、14,866玉/月(麺大盛分の玉数を除外して算出した来客数14,005人/月)、1日当たりに換算すると平均550玉/日(来客数518人/日)を記録した(甲第5号証)。
この10月だけで1日600食を超えた日は9日間あり、10月の営業日は27日間であったから、北32条店は、1月の3分の1営業日において、通常のラーメン店の10倍、一般的な繁盛店の3倍以上を販売していることになっている。
ちなみに、北32条店における平成13年1月4日(本件商標の登録出願日の前日)の麺セールスは654玉、来客数は606人であった(甲第5号証)。
続いて平成12年10月開店の平岡店では、開店3ヶ月後の同年12月には、既に13,302玉(12,585食)、1日平均511玉(来客数484人)を消費するに至っている(甲第6号証)。
甲第7号証は、製麺所からの請求書であり、甲第4号証ないし甲第6号証に示す麺の消費数及び後述の甲第9号証に示す売上高を推認し得る証拠として提出する。なお麺一玉は約50円である。
(ウ)売上高
売上高は、麺の販売数に比例するものであるから、「らーめん てつや」の売上高が他店に比べて飛び抜けている。
まず、中華そば店の平均的な年間売上額を求めた統計資料によると、例えば、全国の中華そば店の一店舗当たりの年間販売額は、平成元年は平均1,562万円/年であり、平成4年は平均1,934万円/年であった。また、北海道に限定した中華そば店でみると、一店舗当たりの年間販売額は平均1,400万円/年とされる(甲第3号証及び甲第8号証)。
これらは年商に相当する額であるが、「らーめん てつや」では一ヶ月でその年商の6割〜8割を売り上げている。つまり、「らーめん てつや」の売上高は、例えば平成12年12月の1月において、南7条店が約850(消費税込890)万円であり、北32条店が約1,145(消費税込1,200)万円、平岡店が1,035(消費税込1,086)万円であった(甲第9号証の1)。
ここで、参考のため、全国的に著名といわれる他のらーめん店の集客数や月商を示す。
東京で繁盛店として著名な「麺屋武蔵」は、東京・新宿と青山の2店舗で1日1000人を集客し、青山店の月商が600万円、新宿店の月商が1,300万円であるという(甲第10号証)。
また、超人気ラーメン店として著名な「中村屋」(中村屋は2002年11月に雑誌「東京1週間」主催第3回ラーメンオブザイヤーで2年連続優秀賞、しょうゆラーメン部門で最優秀賞を受賞。麺を茄でたときの「天空落とし」の湯切りでも有名」)の2号店である「ZUND-BAR」は、40坪40席の規模で1日、昼に250人、夜に150人を集客し、月商900万円を売り上げているという(甲第10号証)。
また、黒いラーメンが人気の繁盛店「なんつッ亭」は、1日15席が25回転し450人の集客があるという(甲第11号証)。
これら各店と比較すると、「らーめん てつや」は、前述したように本件商標の登録出願日の前日の来客数が南7条店で488人、北32条店で606人であるから、2店舗の合計1,094人を集客しており(甲第4号証及び甲第5号証)、前述した有名店以上の集客数を達成していることがわかる。
また、平成12年12月の月間売上高は、「麺屋武蔵」、中村屋2号店「ZUND-BAR」、「なんつッ亭」には勝るとも劣らない売上高を達成している。
もちろん、平岡店のデータ(来客数591人、月間売上高1,035(消費税込1,086)万円)を加えれば、その差は歴然となる。
このように首都圏で周知著名なラーメン店と比較すれば、それ以上の集客数及び月商を達成している「らーめん てつや」の引用商標が相当な周知性を獲得していることは明らかである。
(エ)広告宣伝方法、回数、内容
<チラシの配付>
請求人は、宣伝広告の一手段として「らーめん てつや」のチラシを開店1ヶ月後に1万枚を配付し(甲第12号証)、その後、各店舗の開店時などに合わせて平成11年10月に1万枚、同11月に5千枚、平成12年1月に3万枚(2万9千50枚は北海道新聞折込チラシ)、同9月に4万6千枚を配付した(甲第13号証ないし甲第16号証)。これらチラシの総計配付枚数は本件商標の登録出願前において10万枚を超える。
<新聞広告・雑誌広告>
「らーめん てつや」の新聞広告は、発行部数16万部の日刊スポーツ新聞に、平成9年11月のラーメン企画の欄と、平成11年1月の年賀広告欄に掲載している(甲第17号証及び甲第18号証)。
また、「らーめん てつや」の雑誌広告は、発行部数30万部の「旅の手帖 情報版」に1回(甲第19号証及び甲第79号証)、発行部数8万2千部の「すすきのTOWN情報」に1回(甲第20号証及び甲第80号証)、発行部数8万5千部の「Yellow page」に3回(甲第21号証ないし甲第23号証及び甲第81号証)、発行部数30万部の「360(サンロクマル)」に1回(甲第24号証及び甲第82号証)、「北海道ラーメン紀行 ラーメン道」に1回(甲第48号証)掲載されている。
<雑誌の特集記事による紹介>
「らーめん てつや」は、飲食店情報誌、旅行情報誌、タウン情報誌等の各種雑誌において多数掲載されている(甲第25号証ないし甲第49号証)。
これら雑誌等の具体的な紹介内容は、例えば、「噂のラーメン鑑」では、噂のラーメン80選の1つに選ばれただけでなく、別途、テレビ局のアナウンサーが選んだ店として見開き2頁を使って紹介されている(甲第26号証)。
また、JTB発行のエリア別旅行雑誌シリーズ「るるぶ冬の北海道」「るるぶ北海道」「るるぶ札幌・小樽・富良野」「るるぶじゃぱん」は、観光客に定番の人気の高い旅行雑誌であり、発行部数は8万部〜47万部に達する(甲第79号証)。
これら各誌では、お薦めのラーメン店を紹介する特集記事が組まれており、札幌や旭川のラーメン屋が数軒選ばれているところ、「らーめん てつや」はそのうちの1軒として常に高い評価をもって紹介されている(甲第28、甲第31及び甲第37号証)。
また、発行部数20万部の雑誌である(甲第79号証)「北海道ウォーカー」では、「らーめん てつや」が本件商標の登録出願日までに3度掲載されているが、特に、「北海道ウォーカー2000No.10」の特集「ラーメングランプリ」では、人気ランキング100選のうち第4位にランクインしている(甲第32号証、甲第41号証及び甲第45号証)。
なお、平成4年時点の中華そば店数は、北海道では1,962店、全国では34,434店である(甲第8号証)。
発行部数15万部(52万読者)と人気が高い(甲第79及び甲第83号証) 「じゃらん北海道発」では、読者アンケートによる人気ラーメン店ベスト100が選ばれており、「らーめん てつや」は第8位にランクされている(甲第47号証)。
また、雑誌「BRUTUS」の特集「2001年麺の旅」において、「らーめん てつや」が札幌のラーメンを代表する店として紹介されている(甲第35号証)。
札幌を中心に北海道中央部をエリアとする発行部数6万部の月刊タウン情報誌である(甲第81号証)雑誌「Yellow page」では、1頁全体を使って「らーめん てつや」が繁盛店であることの紹介や店主のインタビューが掲載されている(甲第25号証の2、甲第29号証、甲第33号証及び甲第42号証)。
その他、ラーメン専門誌においても「らーめん てつや」は高い評価を受けて紹介されており、例えば、「極旨ラーメン100軒」では、全道のラーメン店から厳選した100軒のうち「らーめん てつや」を第1軒目として1頁全体を使って紹介しているし(甲第30号証)、「全国おいしいご当地ラーメン厳選200選」でもカリスマラーメニストと呼ばれている大崎裕史氏が「らーめん てつや」を薦めている(甲第34号証)。また、「北海道ラーメン紀行 ラーメン道」においてもHBC(北海道テレビ)やテレビ朝日の女子アナウンサーが紹介している(甲第48号証)。
以上のように、タウン雑誌、道内及び全国における旅行雑誌・情報総合誌・ラーメン専門誌等の多地域、多分野にわたる雑誌において、「らーめん てつや」が人気店、うまい店、繁盛店として紹介されている事実は、その知名度が札幌市や北海道一円に止まらず、全国的にも拡大している事実を証明するものである。
すなわち、「らーめん てつや」が日々行列の絶えない繁盛店であることやトップクラスの名店である等の評価を受けて紹介され、人気ランキングでも上位にランクインするという結果に表れている。しかもそれは道新TODY(甲第44号証)や骨董ファン(甲第46号証)等、通常、ラーメンとは縁のない雑誌にまで「らーめん てつや」が紹介される結果にも表れている。
(オ)テレビ放映
「らーめん てつや」は、テレビ番組でも多数紹介されている(甲第87号証ないし甲第93号証)。
例えば、TBS系列の北海道放送では、「気になるパンプキン」の番組内や「爽快TV!ビタミンH」の番組内において、お薦めのラーメン店として紹介されている(甲第87号証及び甲第89号証)。また、フジテレビ系列の北海道文化放送では、「のりゆきのトークで北海道」の番組内において、西屯田通りのおいしい店として紹介され(甲第88号証)、日本テレビ系列の札幌テレビ放送では、「どさんこワイド212」の番組内において、行列のできるラーメン店として紹介されている(甲第90号証)。
さらに、全国放送のテレビ朝日では、「スーパーJチャンネル」の番組内において、札幌の人気ラーメン店特集で一番最初に紹介され(甲第91号証)、同じくテレビ朝日系列の北海道テレビでは、21世紀に残したいラーメン店として紹介されている(甲第93号証)。また、テレビ東京系列のテレビ北海道では、札幌の人気ラーメンランキングの6位として紹介されている(甲第92号証)。
(2)本件商標の登録査定時における周知性の獲得事実
次に、本件商標の登録出願日後であって登録査定時前の周知性を推認できる事実を立証することにより、本件商標の登録査定時における「らーめん てつや」の周知性を証明する。
(ア)営業地域及び店舗数
本件商標の登録出願後の平成13年10月10日、札幌市豊平区美園に5店舗目となる「らーめん てつや」美園店を開店した(甲第2号証の4及び甲第50号証の1)。
(イ)来客数(麺消費玉数)
「らーめん てつや」各店の来客数(麺消費玉数)は依然として高い。麺の消費玉数から算出した来客数は、本件商標の登録出願後の平成13年1月及び2月における各店の1日当たりの平均データを示すと、南7条店は1月が446人/日、2月が421人/日、北32条店は1月が549人/日、2月が514人/日)、平岡店は1月が489人/日、2月が458人/日である(甲第4号証ないし甲第6号証)。
このようにすべての店舗で普通の繁盛店の2倍以上の来客数があり、本件商標の登録出願後も人気を維持している。
(ウ)売上高
「らーめん てつや」各店の売上高は、登録出願後も増加している。平成13年8月及び9月の売上高を示すと、南7条店では8月が919(消費税込965)万円、9月が914(消費税込965)万円、北32条店では8月が1,305(消費税込1,370)万円、9月が1,356(消費税込1,424)万円、平岡店では8月が1,215(消費税込1,275)万円、9月が1,197(消費税込1,257)万円であった(甲第9号証の2及び3)。
このように本件商標の登録出願後の売上高は登録出願前と同等以上であり、平均的なラーメン店の年間総売上高の6割〜9割を一ヶ月で売り上げており、前述した首都圏の超繁盛店と言われているラーメン店を優に凌ぐ売上げを計上している。
(エ)広告宣伝方法、回数、内容
<チラシの配付>
請求人は、「らーめん てつや」美園店の開店に合わせて平成13年10月8日に6万5千枚(6万4千50枚は北海道新聞折込チラシ)を配付している(甲第50号証)。
<新聞広告・雑誌広告>
美園店の「らーめん てつや」を開店するにあたって10月10日開店当日の日刊スポーツ新聞に広告を掲載した(甲第51号証及び甲第50号証の2)。さらに平成13年1月25日には雑誌「Yellow page」の表紙見開き頁に小林製麺所の広告イメージモデルとして「らーめん てつや」が掲載され、同年11月25日には、雑誌「さっぽろたうん情報」を使って5店目の「らーめん てつや」美園店を開店した旨を知らせる広告を掲載した(甲第52号証及び甲第53号証)。
<雑誌の特集記事による紹介>
本件商標の登録出願日前と同様、各種雑誌に紹介されている(甲第54号証ないし甲第68号証)。
例えば、札幌の飲食・風俗情報誌である「すすきのパラダイス」では、街頭アンケートにより正油ラーメン部門で「らーめん てつや」が一番人気店として選ばれた記事が見開き2頁に渡って紹介されている(甲第54号証)。
また、発行部数が多く、人気の高い雑誌においても人気店として多数紹介されている。例えば「るるぶじゃぱん」では、特集「札幌グルメPart2」に「らーめん てつや」が人気店4軒中の1軒として紹介(甲第55号証)、「じゃらんガイド ウエルカム北海道」では特集「北海道3大グルメ人気ランキング発表」に「らーめん てつや」が第6位にランクインしたとの紹介(甲第56号証)、「SPA!週間スパ」では「今すぐ食べたい全国おすすめラーメン特集」で「らーめん てつや」が紹介され(甲第59号証)、「じゃらん」でも札幌で大人気の「らーめん てつや」として紹介され(甲第60号証)、「北海道ウォーカー」では、特集「札幌ラーメンランキング2001上半期」において「らーめん てつや」が第2位にランクを上昇させたことが紹介されている(甲第61号証)。
以上のような各雑誌による紹介記事によれば、本件商標の登録出願日前に獲得した周知著名性を登録査定時においても維持していることはもとより、更に増大している状況が認められる。
(オ)テレビ放映
本件商標の登録出願日後においても「らーめん てつや」がテレビ番組で紹介されている(甲第94号証ないし甲第97号証)。
例えば、テレビ東京系列のテレビ北海道では、「愛の貧乏脱出大作戦」の番組において札幌で一番人気店として「らーめん てつや」が紹介され、修業先を探すラーメン店主が店を訪れる場面が放映されている(甲第94号証)。また、同テレビ局の「旅コミ北海道」の番組では、北海道内の正油ら一めん部門第1位の店として紹介されている(甲第97号証)。さらに、日本テレビ系列の札幌テレビ放送では、「どさんこワイド212」の番組でゴールデンウィークにお薦めの店として紹介されている(甲第95号証)。
(カ)生麺やカップラーメンの監修
平成13年6月より株式会社菊水は生麺の「名店シリーズ」として「らーめん てつや」の店主による監修を受けた生麺食品の販売を開始している(甲第69号証)。
この生麺はイトーヨーカ堂やダイエー、生協等の大手スーパー、及び三越や伊勢丹等の有名デパート、千歳空港等で全国的に販売されている(甲第69号証の3)。特に、イトーヨーカ堂では、各店の陳列棚にテレビを設置し、プロモーションビデオが放映された(甲第102号証)。この「らーめん てつや」の生麺は、食品産業新聞社が主催する第32回食品産業技術功労賞のマーケティング部門を受賞した(甲第70号証)。
また、「らーめん てつや」店主監修のカップラーメンは、サンクス等のコンビニエンスストアから販売され、北海道テレビの「スクープ21」の番組において、その製作過程や店主が店内で味を厳しく吟味する様子が放映された(甲第71号証及び甲第96号証)。
このように「らーめん てつや」の味が生麺やカップラーメンにまで影響を与える程の人気を得ている事実、そして、これらが全国的に販売され、ヒット商品となっている事実を参酌すれば、引用商標は、少なくとも本件商標の登録出願日以前には保護すべき周知商標であったと推認するのがごく自然であろう。
(3)本件商標の登録査定日以降の刊行物及びテレビ放送のうち本件商標の登録出願日前から蓄積されてきた周知度を推認し得る補助事実
本件商標の登録査定日以降の刊行物及びテレビ放送であっても、本件商標の登録出願日以前から相当な期間にわたって維持されている周知著名性が推認できる補助事実を以下に示す。
例えば、「北海道ウォーカー増刊号」には、読者アンケートで選ばれた好きなラーメン店ランキング100のうち「らーめん てつや」が第2位にランクインしたことが見開き2ページに渡って掲載されており(甲第72号証)、また、「北海道ウォーカー2002 No.19」では、読者アンケートにより選ばれた人気ラーメン店がランキング形式で50軒紹介されており「らーめん てつや」は第1位に選ばれている(甲第74号証)。
そして、平成15年発行の「北海道ウォーカー増刊号」において、平成12年から平成14年までの札幌のラーメンランキングを総合したランキングが発表されており、「らーめん てつや」は総合第4位に選ばれており、少なくとも本件商標の登録出願日以前である平成12年から登録査定日の平成14年まで高い周知・著名性を得ていたことが認められる(甲第75号証)。さらに「じゃらん 北海道発新春号」には、札幌市内に5店舗を展開し、人気ランキングでも1位に輝いた行列のできる店として紹介されている(甲第76号証)。
また、「ザ・テレビジョン」には、TV番組「愛の貧乏脱出大作戦お正月スペシャル! !」の内容が紹介されており、貧乏飲食店店主の修業先として「ら一めん てつや」が選ばれている事実が紹介されている(甲第77号証)。
なお、株式会社バンダイは「ザ.ラーメントランプ」という「日本全国の有名ラーメン店52店と餃子店2店の情報とトランプになったカードゲーム」を全国の玩具店、量販店から発売しており、「らーめん てつや」もそのトランプの一枚に選ばれている(甲第78号証)。
一方、テレビ放送は、フジテレビによる「史上最大!全国民が選ぶ美味しいラーメン屋さん列島最新ベスト99」の番組内において第26位にランキングした(甲第98号証)。
さらに、平成15年元旦に放送されたテレビ東京の「愛の貧乏脱出大作戦」では、貧乏飲食店主4名の修業先として「らーめん てつや」が選ばれ、みのもんたが訪れて依頼する場面から修行の経過及び修行の成果判定まで2時間の特番として「らーめん てつや」の平岡店を中心に放映された(甲第99号証)。
その他、フジテレビによるSMAPの番組「スマ夫」では、行列のできるラーメン店をスタジオに呼び、すごろくゲーム式にらーめんを食べ進む番組が放映され、「らーめん てつや」もその一店として招待され、香取慎吾らがらーめんを食べる様子が紹介された(甲第101号証)。
(4)周知性のまとめ
以上のように「らーめん てつや」の商標の使用期間、使用地域、来客数、売上高、広告宣伝、雑誌による紹介、テレビ放映、生麺・乾麺販売の依頼等の様々な実情に鑑みれば、引用商標は、本件商標の登録出願日前から札幌市を中心とする北海道一円はもとより、全国的にもラーメンを提供する役務を表示する商標として消費者及び取引者間に広く認識されている商標であることが認められる。
2 商標の類似性
(1)引用商標
引用商標は、「らーめん てつや」を平仮名で表示した文字商標であり、「てつや」を朱色で大きく表示し、飲食物の提供に係る「らーめん」の文字を黒色で改行若しくはスペースを空けて、小さく付記して構成される商標である。
(2)本件商標と引用商標との類似性
引用商標の構成中の「らーめん」の部分は、役務の提供物を表示する文字であり、ラーメン店が慣習的に使用する「らーめん ○○」の表記に相当するため識別力が弱い。また、請求人は「てつや」の文字を際立たせるために「らーめん」の文字を黒色で小さくし、「てつや」とも距離を隔てて表記している。
このため「らーめん」の文字は商標全体の中では極めて自他役務識別力が弱く、引用商標の要部は「てつや」の部分にあることは明らかである。そして、この商標の称呼は、「テツヤ」ないし「ラーメンテツヤ」が生じる。
これに対して本件商標は、3段から構成される文字商標であるが、その三段目を「てつや」の文字とし、かつ、三段の各文字はすべて「テツヤ」の称呼を生じる。
また「てつや」の用語は通常、人名として認識されるため観念も共通する。
以上より、両商標を比較すると、商標が備える外観、称呼及び観念の各要素において同一又は類似しており、両商標は同一又は類似のものである。
3 役務の類似性
本件商標の指定役務は「飲食物の提供」であり、引用商標の使用に係る役務は「らーめんの提供」であり、飲食物の提供に該当する。したがって、両商標に係る役務は同一又は類似する。
4 混同可能性
前述のとおり、請求人によるラーメンの提供は「らーめん てつや」又は「てつや」として周知著名であり、本件商標と引用商標において「てつや」の部分は全く同一であり、かつ、上記指定役務においても飲食物の提供として同一である。
したがって、本件商標を飲食物の提供に使用する場合、請求人又はこれに関連する業者であることを印象づけ、誤認混同を生じるおそれがあることが明らかである。
5 答弁に対する弁駁
(1)称呼の類否について
被請求人が主張するような、ラーメン専門店が「ラーメン○○」と表示しなければならない実情は存在しない。既に証拠として提出した各種の雑誌に掲載されているラーメン専門店の商標を参照すれば、ラーメン専門店であっても「ラーメン○○」とせずに、「○○」のみの商標を使用しているラーメン店が多数存在することは明らかである。
したがって、ラーメン専門店が役務の出所を識別するために「ラーメン○○」と表示しなけらばならない実情が、格別に存在するものとは考えられない。また、「ラーメン○○」と表示されていないために需要者が役務提供者を誤認してしまうという事実も存在しない。
また、引用商標は、単に平仮名文字で統一的に表示しているのではない。既に述べたとおり、「てつや」を赤色で大きく表示し、飲食物の提供に係る「らーめん」の文字を黒色で改行若しくはスペースを空けて小さく付記し、構成上、「てつや」の部分が強調されているのであり、要部として認定するのが自然である。もちろん、商標の外観構成だけで要部が認定されるものではないが、この点、「らーめん」自体は飲食物の提供に係る食品の普通名称であるから識別力は極めて弱く、「らーめん」あるいはこれと結合した全体をもって要部と認定すべき積極的な理由はない。
さらに、指摘されるような「雑誌の店名検索で『ラ』の項に掲載されている」事実がわずかに存在したとしても、「らーめん てつや」中の「らーめん」の意味合いを商標上、殊更強調する必然性はない。
以上、被請求人の上記理由は、いずれも「らーめん てつや」中の「てつや」部分を商標の要部と認められないとする根拠に乏しく、認められないものである。
(2)観念の類否について
「てつや」の用語は、通常、人名として認識されると解するのが自然である。商標は、製造者、販売者、役務提供者等を表示するために使用されるものであるから、当人の名前を商標に使用することは本来的な使用態様であり、違和感がない。特に、飲食物の提供に係る商標は、店主やシェフ等の料理人との関連性が極めて強く、サービスを受ける者は料理人が誰であるかを強く意識する。それ故、その料理人の名前が店名に使用されることはしばしば見受けられる。
「らーめん てつや」に関していえば、広告、雑誌やテレビによる紹介、生麺及びカップラーメンの監修等、店主である「内海てつや」の露出度が高く、容易に「らーめん てつや」の商標と店主との結び付きが観念付けられていると認められる。
一方、本件商標は、上述の飲食店の慣習から考えれば、日本人の男性名として知られる人名をカタカナやアルファベットで変更表記し得るように構成されているものと理解され、観念するのが自然である。
したがって、両商標は「テツヤ」と称呼される人名を意味し得るものとして観念上、共通するものである。
(3)外観の類否について
被請求人自ら主張しているように、両商標は「てつや」を共通にしている。被請求人は、この点についての検討をせずに類似ではないとの結論に至っている。
本件商標は横書き三段で構成され、「てつや」の文字は最下段全体を占めており、かつ、各段は同じ称呼を生じる文字列であることから、外観構成上、「てつや」の部分は要部の1つと認定される。
一方、引用商標は、上述の如く、「てつや」の文字を朱書きで大きく表示し、「らーめん」の文字と区別されるように、改行あるいはスペースを空けて表示されており、外観構成上、「てつや」の部分が要部と認定される。
したがって、両商標は、外観上の共通する部分がいずれも各商標の要部に相当し、これらを通して商標を全体観察した場合、需要者が出所の混同を生じるおそれがあり、外観上においても類似すると認められる。
なお、被請求人は、引用商標が一連一体に称呼されれば、本件商標と類似しないかの如き主張をしているが、その前提自体に誤りがあると思われる。類否の判断にあたっては、「テツヤ」に比べて「ラーメンテツヤ」は4文字も異なるかのように杓子定規的に対比するものではない。文字の構成や態様、その文字に接する消費者・取引者がどのように認識するかという文字の意味等を総合的に勘案して判断されるべきものである。
したがって、もし仮に被請求人が主張するように「ラーメンテツヤ」の如く一連一体に称呼されるとしても、需要者は飲食物の普通名称である「らーめん」よりも店主の名前である「てつや」を強く認識するものと思料する。
(4)判例について
被請求人が指摘する判決例は、類似性を否定しているのではなく、周知性を否定しているのであるから、指摘の判例は、本件商標と引用商標とが非類似であると結論付ける根拠にはなり得ない。
(5)審査・審決例について
特許庁では、請求人が引用商標に相当する商標を出願した商願2001-21682号及び商願2001-62115号(甲第105号証の1及び2)は、本件商標を先行登録商標として引用し、類似するとの認定の下、商標法第4条第1項第11号で拒絶された。この他にも以下のような審査・審決例が挙げられる。
「マンサクラーメン」=「万咲\まんさく\MANSAKU」(甲第105号証の3)
「一番亭」=「旨さ一番\ラーメン屋壱番亭\ ICHIBANTEI」(甲第105号証の4)
「ラーメンさくら家」=「桜家」及び「さくらや」(甲第105号証の5)
「ラーメンタイム」=「タイム/TIME」(甲第105号証の6)
以上の審査・審決例は、一例であるが、いずれも「ラーメン」や「らーめん」の有無の違いを類似と認定したものである。
(6)以上、答弁理由、判例及び特許庁における審査・審決例を勘案すれば、被請求人の類似性に関する答弁は理由がなくその主張は認められるべきではない。
(7)引用商標の周知性に対する答弁について
被請求人は、引用商標が周知性を有していないとする答弁の要点は、(i)提出された証拠は、自己の宣伝広告や資料にすぎない、(ii)客観的に周知著名とされる公的機関ないし団体・同業者などによる証拠力のある証明者によってその事実が裏付けられていない、との指摘であると推測される。そこで、これらについて意見を述べることにする。
(ア)上記理由(i)について、請求人が提出した証拠は、単に自己の宣伝広告や資料だけではない。提出した雑誌に関する証拠のうち、約3割が自己の宣伝広告であり、残りの7割は雑誌社から取材の依頼を受けたものである。
それ故、雑誌中の紹介内容が、単に多くの飲食店のうちの一つとして紹介されているものではなく、既に述べたように、「らーめん てつや」が日々行列の絶えない繁盛店であることやトップクラスの名店である等の高い評価をもって紹介されており、人気ランキングでも上位にランクインするという結果に表れている。しかも道新TODAYや骨董ファン等、通常、ラーメンとは縁のない雑誌にまで「らーめん てつや」が紹介される結果にも表れている。
なお、被請求人は、「自己の宣伝広告」は周知性の獲得に役立たないかの如き答弁をしているが、このような事実は存在せず、むしろ宣伝広告は周知性の獲得に寄与すべき事実の1つである。これは特許庁の商標審査基準における周知性の判断基準の例を参酌しても明らかである。
(イ)また、被請求人は、売上日報や項目別セールス表(甲第4号証ないし甲第6号証、甲第9号証等)が自己の資料なので証拠能力がないかの如く主張する。しかし、証拠能力の有無は自己の資料か否かで判断されるものではなく、その証拠の内容や他の裏付け資料等を勘案して判断されるべきものである。そのため、請求人は、第三者である有限会社小林製麺所の麺に関する請求書を甲第7号証として提出し、上記証拠の客観性を確保しているのである。これらを比較対照すれば消費玉数の正当性が充分に確認できるであろうし、これによって来客数や売上高の正当性も容易に予測できるものと思料する。また、同時に請求人会社の代表取締役である内海哲也がその内容が真実であることを宣誓する陳述書を併せて提出しているものである。
(ウ)一方、上記理由(ii)について検討するに、周知性の有無の判断は、事実問題であり、周知性を推認し得る様々な事実を総合的に勘案して判断されるものである。公的機関ないし団体・同業者による証拠がなければ、客観的に周知著名性を獲得できないとする論理はあまりに乱暴にすぎる。したがって、請求人は、周知性を客観的に認定するのに必要な証拠を提出しているものと思料する。
以上より、被請求人が主張する引用商標が周知性を有しないとする答弁は、理由がなく認められるものではない。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その登録出願日前から需要者間に広く認識されている請求人の引用商標と同一又は類似するものであり、指定役務も同一又は類似し、混同のおそれが十分に存在するから、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項第1号に基づき無効とされるべきである

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、参考資料2点を提出している。
1 本件商標と引用商標の対比(類似性)
(1)本件商標の構成は、「TETSUYA/テツヤ/てつや」の文字よりなるものであるのに対して、引用商標「らーめんてつや」は、「てつや」の文字を大きく「らーめん」の文字をやや小さく表示してなるものである。
しかして、引用商標中の「らーめん」の文字部分のみを分離して観察すれば、「らーめん」は中華そばの意で知られているところから識別力が弱いものといえるとしても、請求人提出の各証拠によればいずれも「らーめんてつや」とみられる一体的に表示された店名として看取し得る構成態様の商標として使用されているといえるものである。
そして、引用商標「らーめんてつや」は商品商標と異なり、ラーメンという食品を提供する役務に係る店舗の名称(商標)を表示しているものであるところ、近時各地のラーメンを専門に扱う店がその店特有の味付けなどを工夫して個性にあふれた「ラーメン店○○」であることを需要者にアピールして自店の売り上げの向上を競っているのが実情である。
そうしてみると、単に「中華料理○○」という看板の表示では一般のレストランの表示と同様に特定の役務に係る食品が不明確であり、上記の実情からしてもラーメンを専門に扱う店はどちらかといえば、いずれも小規模の店舗であることからして、「ラーメン○○」の表示は構成全体を読み込んで一連一体の称呼によってラーメンを主とする飲食物の提供の役務の出所を表示する識別標識として需要者間に認識されているものとみるのが取引の実情といえる。
また、このことは、引用商標が「らーめん」(ラーメン)及び「てつや」の文字をいずれも平仮名文字で統一的に表示して一体的なものとして使用されており、また、ラーメンを扱うところの店名を掲載した雑誌などの紹介記事における店名索引の表示においてもラーメンであることを強調しているが如く「ラ」の項に掲載されており、需要者が選択し易く全体の名称で表示されていることからしても、該「らーめん」の文字部分を単に役務名(質表示)であるとして省略することなく、例えば、2003年5月1日発行、JTB「るるぶ情報版」INDEX「Eat(食べる)」の記載ページ、[ら]の項の記載に徴しても「らーめんてつや南7条店」として紹介されている事実がある(別添資料参照)。そして、このことは甲第87号証以下のビデオテープによれば、「らーめんてつや」は一体的に「ラーメンテツヤ」とのみ称呼されて使用されている事実のあることからみても、単に「テツヤ」といわれることはないものといえる。
(2)上記を基にして引用商標をみるに、「らーめんてつや」は同種類の文字をもって外観上まとまりよく一体的に表現されており、しかも、該商標全体より生ずると認められる「ラーメンテツヤ」の称呼も格別冗長ともいうべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そして、構成中の「らーめん」(ラーメン)の文字は、この種業界で屋号、店名等の語頭に採用されることの多い文字であり、「らーめん」(ラーメン)の文字を含めて一体として一つの屋号、店名等を表すものと一般に理解されていることからすると、引用商標「らーめんてつや」も、これを全体として屋号、店名等を表した一体的なものと認識されるのが相当といえるものであって、各証拠をみても構成文字全体がいずれもまとまりのある態様からなり、構成中から「てつや」の文字部分のみが独立して商標の要部を構成するものとは認識し得ないところである。
そうとすれば、引用商標は、その構成文字に相応して「ラーメンテツヤ」の一体の称呼及び「らーめんてつや」という店名として一体の造語の観念を生じるものである。
これに対して、本件商標は前記構成よりして、「テツヤ」の称呼及び特定の観念を想起し得ない一種の造語というべきものである。
(3)本件商標より生ずる「テツヤ」の称呼と引用商標より生ずる「ラーメンテツヤ」の両称呼とを対比するに、後者の有する前半部の「ラーメン」の音の有無に顕著な差異を有しているものであるところから、「テツヤ」と「ラーメンテツヤ」は全体の音構成において明らかに異なるものであり、また、引用商標中の「てつや」は提出の証拠によるも、この文字部分のみが独立して使用されて周知のものであるとすべき事実は見当たらないといえるので両者は称呼上類似しないものである。
そして、観念においても「てつや」の文字は平仮名で構成されているところから直ちに特定の観念を想起し得ないので「らーめんてつや」と「てつや」はその一部を共通にするとしても観念上対比し得ない別異のものである。
また、両商標は外観上においても類似するものとみるべき要素はないところである。
してみれば、本件商標と引用商標とは指定役務において類似する場合があるとしても、両者は外観、称呼及び観念上のいずれの点においても明らかに異なる非類似の商標というべきものである。
(4)「神戸ラーメン」の文字の有無のみの違いであっても「神戸ラーメン第一旭」と「第一旭」とが非類似の商標とされている事例につき、参考資料として提出する。
2 引用商標の周知性
甲第2号証の1ないし3によれば、本件商標の登録出願前である平成13年1月3日前日迄に、同人が札幌市内で「らーめんてつや」の店舗を開店したことは認められる。
しかしながら、上記各証拠は「らーめんてつや」の提供するラーメン消費玉数は月別売上日報にみられるとおり増加しており、他店との比較において売上高が多くなっていることは「らーめんてつや」が知られるに至っていること、或いは提供するラーメンスープなどの味がよくおいしいラーメンであること、また、ラーメン店のランキングの上位に選ばれて人気のあること等を表すといっても、自己の宣伝広告や資料にすぎないものであって、これらは客観的に周知著名とされる公的機関ないし団体・同業者などによる証拠力のある証明者によってその事実が裏付けられて主張されているものとは認められないところであり、なお、請求人が上記に示す客観的な証拠を補充されたとしても「らーめんてつや」と「てつや」は商標が明らかに異なるから周知性のあるものとは認められない。
そうとすれば、請求人提出に係る各証拠は、これを総合的にみたとしても「らーめんてつや」が本件商標の登録出願時において既にラーメンを提供する役務を表示するものとして需要者間に広く認識されて周知著名なものであるとする事実は認識し得ないものである。
また、請求人は、本件商標の登録査定時においても周知度を獲得しているとの事実、或いは周知度を推認し得る補助的な事実があるとして種々述べ証拠を提出しているが、これらは商標法第4条第3項に規定されているように第4条第1項第10号及び同第15号は査定時以後の事実については本件無効審判に影響を与えるものとはいえない。
3 まとめ
本件商標と引用商標とは、上記のとおり外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といえるものであり、さらに引用商標は本件商標の登録出願前より需要者間に広く認識されているものといえないところから、本件商標はその指定役務である飲食物の提供に使用された場合、役務の出所について混同を生じるおそれのないものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものとはいえない。よって、本件商標は同法第46条第1項第1号に基づき無効とされる理由はないものというべきである。
なお、請求人は、本件審判に係る請求の理由中において、被請求人が本件商標を使用している店舗は未だ開店されておらず、本件商標は使用されていないものと推認される旨述べているので、この点についても言及する。
被請求人は、本件商標の登録出願日直後の平成13年頃より、本件商標を使用する飲食店の出店計画を具体的に行い、出店予定の候補地(例えば、開業後間もない新規、或いは将来的に開業することが確実な大規模複合商業施設における飲食店用スペース等)の選定並びに各商業施設の管理者との飲食店の出店に係る契約締結のための交渉等を現在に至るまで行っているところであり、今後も継続していく所存である。
このように出店準備に時間と多大な労力を要しているのは、本件商標を使用する飲食店は、在外国の世界的に有名な高級飲食店との提携によるものであるところ、その高級飲食店の有している品格等を害することの無いように、出店予定に係る候補地については非常に厳格な要件(商業施設自体の話題性の高さ・周辺地域の環境の良さなど)を求めていることが影響しているものである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人の代表者である内海哲也は、自分の名前を採り入れた「らーめん てつや」なる名称のラーメン店を平成9年6月に札幌市中央区南7条西12丁目に開店したのを始め、平成11年10月から同12年9月までの11ヶ月間に札幌市内に3店舗の「らーめん てつや」を開店し、さらに同13年10月には5店目の店舗を開店した(甲第2号証、甲第12号証の1、甲第13号証の1、甲第15号証の1、甲第16号証の1、甲第25号証)。
(2)「らーめん てつや」の第1号店において消費された麺の玉数は、開店から1年間は1日平均30〜40玉程度であったが、平成11年2月以降は300玉/日を超え、同12年10月には平均482玉/日になり、来客数に換算すると453人/日になる(甲第4号証)。北32条店では、平成12年10月には平均550玉/日(来客数518人)、平岡店では、平成12年12月に平均511玉/日(来客数484人)になっている(甲第5及び甲第6号証)。本件商標の登録出願後の平成13年2月の平均来客数は、南7条店が421人/日、北32条店が514人/日、平岡店が458人/日となっている(甲第4号証ないし甲第6号証)。
(3)「らーめん てつや」の各店舗における売上高は、例えば平成12年12月の1ヶ月間で3店舗計3,030万円であり、全国の中華そば店の一店舗当たりの年間販売額1,934万円(平成4年度)を優に超えている(甲第8号証及び甲第9号証)。本件商標の登録出願後の平成13年9月の1ヶ月間の売上高は、南7条店が914万円、北32条店が1,356万円、平岡店が1,197万となっている(甲第9号証の2及び3)。
(4)請求人は、宣伝広告手段として「らーめん てつや」のチラシを各店舗の開店時などに合わせて配布し、その配布枚数は本件商標の登録出願日までに10万枚を超えるほか、平成9年11月から同12年12月までに発行された新聞、雑誌、すなわち「日刊スポーツ新聞」、「旅の手帖情報版」、「すすきのTOWN情報」、「Yellow page」、「360(サンロクマル)」等に広告を掲載している(甲第13号証ないし甲第24号証及び甲第48号証)。これらの広告の殆どにおいて、「らーめん てつや」の商標は、「らーめん」の文字が小さく、「てつや」の文字が大きく目立つように表されている。「らーめん」の文字と「てつや」の文字の色彩を異にしたものや二段に書したものも多いが、書体はいずれも殆ど同一といえる。
チラシの配布及び新聞・雑誌への広告は本件商標の登録出願後においても行われている(甲第50号証ないし甲第53号証)。
(5)「らーめん てつや」は、平成10年7月から同12年12月までに発行された飲食店情報誌、旅行情報誌、タウン情報誌等の各種雑誌、すなわち「噂のラーメン鑑」、「るるぶ情報板 ’99るるぶ冬の北海道」、「Yellow page」、「極旨ラーメン100軒」、「るるぶ情報板 ’99〜’00るるぶ北海道」、「北海道ウォーカー」、「全国おいしいご当地ラーメン厳選200店」、「BRUTUS」、「旅とグルメのガイドブック 札幌」、「るるぶ情報板 るるぶ札幌・小樽・富良野 ’00〜’01」、「BIGRUN北海道2000」、「すすきのTOWN情報」、「道新TODAY」、「じゃらん北海道発12月号」、「北海道ラーメン紀行ラーメン道」、「AMUSE アミューズ」等において、おいしい店、ラーメン通に人気の高い店、繁盛店等として紹介されている(甲第26号証ないし甲第49号証)。
これら各種雑誌の特集記事における紹介は、本件商標の登録出願後にも行われている(甲第54号証ないし甲第61号証)。
(6)「らーめん てつや」は、北海道放送、北海道文化放送、札幌テレビ放送、テレビ朝日、北海道テレビ及びテレビ北海道の平成10年8月から同12年12月までに放映された番組内においても紹介されている(甲第87号証ないし甲第93号証)。テレビ番組での紹介は、本件商標の登録出願後にも行われている(甲第94号証ないし甲第97号証)。
(7)「らーめん てつや」の店主の監修を受けた旨を謳い、「らーめん てつや」の商標を付した生麺及びカップラーメンが全国的に販売されている(甲第69号証及び甲第71号証)。
(8)「らーめん てつや」は、平成14年4月から同15年3月までに発行された各種雑誌の読者アンケートにおいて、人気ラーメン店として上位にランキングされている(甲第72号証ないし甲第76号証)。
以上の事実によれば、「らーめん てつや」が、開店から短期間に急速に顧客の人気を得て来客数を伸ばし、新聞、雑誌及びテレビ番組でラーメンの人気店、繁盛店等として頻繁に紹介されたことや盛大に宣伝広告されたことにより、引用商標は、「らーめん てつや」が役務「ラーメンの提供」について使用する商標として、遅くとも本件商標の登録出願時には、少なくとも札幌市を中心とする北海道一円の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるのが相当である。そして、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
2 本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、その構成文字に相応して「テツヤ」の称呼を生ずること明らかである。
これに対し、引用商標は「らーめん てつや」の文字からなるところ、チラシ、雑誌広告等において実際に使用されている態様が、「らーめん」の文字を小さく、「てつや」の文字を朱色で大きく書してなり、両者間にやや間隙を設けたもの又は両者を二段に表したものであって、「てつや」の文字部分が看者の注意を惹き易いものとなっているほか、その構成中の「らーめん」の文字は役務の提供に係る料理を示すものであり、自他役務の識別力がないか極めて弱いものであるから、引用商標は、「てつや」の文字部分のみを捉え、これより生ずる「テツヤ」の称呼をもって取引に資される場合が少なくないものというべきである。
してみれば、引用商標は、「ラーメンテツヤ」の一連の称呼のみならず、単に「テツヤ」の称呼をも生ずるものというのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、「テツヤ」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。
3 役務の類似性について
本件商標の指定役務は、「飲食物の提供」であり、引用商標が使用されている役務「ラーメンの提供」を包含するものであるから、両商標に係る役務が同一又は類似であることは明らかである。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る役務「ラーメンの提供」を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標に類似するものであって、かつ、その指定商品と引用商標が使用されている役務とは同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-09-14 
結審通知日 2004-09-15 
審決日 2004-09-30 
出願番号 商願2001-109(T2001-109) 
審決分類 T 1 11・ 252- Z (Z42)
最終処分 成立 
前審関与審査官 馬場 秀敏 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
三澤 惠美子
登録日 2002-03-29 
登録番号 商標登録第4555303号(T4555303) 
商標の称呼 テツヤ 
代理人 磯野 道造 
代理人 佐川 慎悟 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ