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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z33
管理番号 1108222 
審判番号 無効2004-89006 
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-04-12 
確定日 2004-11-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4375076号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4375076号商標(以下「本件商標」という。)は、「大魔神伝説」の文字を標準文字で書してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成11年2月23日登録出願、同12年4月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標
本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4241455号商標(以下「引用商標」という。)は、「だいまじん」の文字と「大魔神」の文字を二段に横書きしてなり、第33類「焼酎,その他の日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成9年7月25日登録出願、同11年2月19日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。
1 請求の理由
(1)本件商標と引用商標との類否にあたり、甲第5号証ないし甲第8号証に示す審決を援用する。
(2)本件商標のうち、前半の「大魔神」は、「大きな魔神」を意味する。そして、「魔神」は、広辞苑によると「魔の神、厄を与える神」を意味し実際には存在しない想像上のもの、伝説上のものである(甲第9号証)。したがって、「大魔神」と「大魔神伝説」は観念が類似する。
また、「大魔神」が「伝説」上のものであることについては殊更いうまでもないところであり、本件商標に接する需要者は、その構成中、人々に親しまれている「大魔神」の文字を捉え、これにより生ずる「ダイマジン」(大魔神)の称呼、観念をもって取引にあたる場合が少なくない。よって、本件商標は、構成全体に相応する「ダイマジンデンセツ」の一連の称呼のほかに、「ダイマジン」(大魔神)の称呼、観念も生ずるものである。
(3)本件商標及び引用商標の指定商品に関し、市場で実際に用いられている銘柄を調査したところ、「伝説」の語を用いたもの以下のとおりである。
「あさぎいろの伝説」、「維新伝説」、「やまぐち伝説」、「美女伝説」、「鶴伝説」、「楊貴妃伝説」、「博多伝説」、「虹伝説」、「姫伝説」、「ピリカ伝説」、「十酔伝説」、「蔵伝説」、「両関伝説 幻」、「両関伝説 瀧」、「両関伝説 夢」(甲第10号証ないし甲第24号証)。日本酒や焼酎は、その土地の風土や習慣、食べ物の増好などよって、地方独特の特徴を有するものとして発展してきた。このため、その地の「特産品」として扱うことで商品価値が付加されることが多い。日本酒や焼酎に「○○伝説」という銘柄を用いることが多いのはそのような商品価値の付加の一環であると考えられることより、当然の帰結である。
このように「○○伝説」という銘柄の商品が多いため、日本酒や焼酎に関し、「伝説」の部分の、自他商品識別標識としての機能は小である。
(4)前記(2)に述べたとおり、「大魔神」とは伝説上の大魔神を意味するため、商標自体が本来具える性質上、商標「大魔神伝説」の語のうち「伝説」の部分は、自他商品識別標識としての機能が小さく、かつ、(3)に述べたとおり、日本酒や焼酎の銘柄で「○○伝説」は多数見られ、指定商品との関係を考慮した場合にも、自他商品識別標識としての機能が小さいから、本件商標の要部は、前半の「大魔神」の部分にある。
そうすると、本件商標は、「大魔神」から「ダイマジン」の称呼が生ずる。一方、引用商標は、同じく「ダイマジン」の称呼が生ずる。
また、本件商標は、その要部の「大魔神」から「大魔神」の観念が生ずるものであり、「大魔神」が伝説上のものであることより、「大魔神伝説」と「大魔神」は観念が類似する。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、「大魔神伝説」と「大魔神」に関し、その観念が非類似であることの根拠として、「大魔神」は「大きな魔神」あるいは「魔神という大きな神」それ自体を示す語句である、これに対し「大魔神伝説」は「大魔神の伝説」の意味であり「伝説の大魔神」ではありえず、したがって、両者は区別できるものである旨主張する。
しかしながら、請求人は、前記のとおり、「大魔神伝説」が「伝説の大魔神」を意味すると述べたのではない。
(2)被請求人は、本件商標の指定商品について、「おもちゃ」や「菓子」等と比較して、需要者は識別能力の高い年齢層で構成されるから、商標の類似の幅が比較的狭いとされる商品の一つである旨主張する。
しかし、需要者に幼い子供が存在しないことが識別能力が高いことの根拠となることに関し、何ら証拠が示されていないし、また、本件商標の指定商品が商標の類似の幅が比較的狭いとされるものであるについても、何ら証拠が示されていない。
(3)被請求人は、同じ指定商品に「○○」と「○○伝説」の登録商標が併存するとして、登録例を挙げている(乙第1号証ないし乙第12号証)。
しかし、本件にあっては、比較すべき商標が「大魔神」と「大魔神伝説」であることを考慮すべきである。すなわち、前記のとおり、「大魔神」と「大魔神伝説」は称呼、観念が類似するのであるから、被請求人が挙げた登録例があったとしても、被請求人のいう「○○」の部分の語によって、その判断は異なって然るべきである。本件では、「○○」の部分が元来「伝説上のもの」という観念を含んでいるので、被請求人の挙げる登録例とは異なる判断がされても、特許庁の判断に矛盾は存しないのである。
(4)請求人は、前記1(3)において、本件商標及び引用商標の指定商品の分野で「伝説」の語を用いた銘柄が多数使用されていることを立証したが、さらに、焼酎の銘柄として使用されている「星砂伝説」追加する(甲第25号証)。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号よりその登録は無効とされべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 本件商標は、これに接する人の多くが「大魔神という神にまつわる伝説」と観念する商標である。伝説であるからして、桃太郎ばなしの如く、それは確立された一編のストーリー、あるいは少なくともその断片である。ちなみに「伝説」とは「神話・口碑などの『かたりごと』を中核にもつところの古くから伝え来った口承文学。」(広辞苑第四版:岩波書店)を意味する。
これに対して、「大魔神」は、「大きな魔神」、あるいは「魔神という大きな神」それ自体を示す語句である。想像上のものではあるが、わが国の場合は、神は擬人化されて神話などに登場することが多いので、「大魔神」も人の形を模した「人格神」の一つと解釈されるものと思われる。
つまり、「大魔神伝説」と「大魔神」とは、「ある口承文学」と「その主人公」という関係にあり、「ワシントン」という「人間」と「桜の木を切った」という彼の「逸話」とは次元が異なっているのと同じ理由で、あるいは「光源氏」と「源氏物語」とが次元が異なっているのと同じ理由で、その概念に関して全く類似性というものがない。
そもそも「大魔神伝説」を、「大魔神の伝説」であっても「伝説の大魔神」ではありえないと解釈できることは極めて当然のことであり、両者を区別できることが困難であるようならば日本語を円滑に使用することは能わないと断言できる。
2 「伝説」が付された商標が、登録商標としても、あるいは実際に流通している商品に商標として付されている例が稀ではないことは、被請求人も否定しない。
但し、商品区分第33類に属する商品は、他の例えば「おもちゃ」や「菓子」等と比較して、需要者のいずれにも幼い子供が存在しない、即ち識別能力の高い年齢層で構成されるから、商標の類似の幅が比較的狭いとされる商品の一つである。
したがって、「大魔神」という語句と「大魔神伝説」という語句が混同されることは、第33類に属する商品に付される商標である限り、外観、称呼、観念いずれに関しても、皆無である。
3(1)前記1及び2に関しては、以下の登録例からも窺うことができる(乙第1号証ないし乙第12号証)。
(a)「ピリカ伝説」と「ピリカ」、(b)「吉四六伝説」と「吉四六」、(c)「なまはげ伝説」と「なまはげ」、(d)「ムー伝説」と「MU/ムー」、(e)「桃太郎伝説」と「桃太郎」、(f)「楊貴妃伝説」と「楊貴妃」
すなわち、請求人の主張に従えば、「桃太郎」の権利者とは別の権利者が「桃太郎伝説」を持つことも否定することになる。
ところが現実には、上記(a)から(f)にみられる商標権がそれぞれ併存している。同じ指定商品に「○○」と「○○伝説」という二つの登録商標が存在することを認めたということは、需要者が混乱を来すことはないと特許庁が判断したことを意味している。
(2)請求人は、「楊貴妃伝説」(甲第15号証)、「ピリカ伝説」(甲第19号証)を挙げ、「伝説」の部分の自他商品識別標識としての機能が小さいことを立証しようとしているが、被請求人は同じ例を自他商品識別標識としての機能が充分にあることを立証するために用いた。それぞれが独立した登録商標であるから、「楊貴妃」「ピリカ」の商標権者がそれらの商標を使用した場合、「楊貴妃伝説」、「ピリカ伝説」の商標権を侵害することにならない。そして、「大魔神」と「大魔神伝説」との関係もこの理論を踏襲すべきであり、「大魔神伝説」だけがこれとは別の理論で判断されるはずがない。
(3)すなわち、乙第1号証ないし乙第12号証にて示す事実は、清酒や焼酎等を商品として取り扱う者は当然として、これを購入する需要者にとっても、本件商標と引用商標との識別は容易であり、混同されるおそれがない、と考えるのが最も合理的であることの何よりの証左である。

第5 当審の判断
1 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標は、「大魔神伝説」の文字よりなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって同一の大きさ、同一の間隔で書されているものであるから、外観上一体のものとして看取されるばかりでなく、これより生ずると認められる「ダイマジンデンセツ」の称呼もよどみなく称呼し得るものである。加えて、本件商標は、構成する文字全体から、「大きな魔神に関する言い伝え」なる観念を想起させるものということができる。
そうすると、本件商標は、構成文字全体をもって、一体不可分のものを表したと理解されるというのが相当である。他に、本件商標は、その構成中の「大魔神」と「伝説」とを分離して観察しなければならない特段の理由は見出せない。
したがって、本件商標は、これより「ダイマジンデンセツ」の称呼のみを生ずるものであって、「大きな魔神に関する言い伝え」の観念を生ずるものといわなければならない。
(2)引用商標は、「大魔神」の文字を書してなるものであるから、その構成文字に相応して、「ダイマジン」の称呼及び「大きな魔神」の観念を生ずるものである。
(3)してみれば、本件商標より生ずる「ダイマジンデンセツ」の称呼と引用商標より生ずる「ダイマジン」の称呼とは、「デンセツ」の音の有無の差異を有するものであるから、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤られるおそれはないものである。
また、本件商標と引用商標は、それぞれ前記した観念を有するものであるから、観念上も相紛れるおそれはない。
さらに、両商標は、前記したそれぞれの構成よりみて、外観上も区別し得るものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても非類似の商標といわなければならない。
2 請求人は、本件商標に関し、観念上及び取引の実情からみれば、その要部は「大魔神」である旨主張する。
しかしながら、「大魔神」が想像上のものであるとしても、これと一体不可分に結合された「伝説」の文字は、「言い伝え」などを意味する語として、広く知られている語であることからすれば、これが「大魔神」の語に吸収され、全く意味をなさない語として理解されるものとは到底考えられないところである。
また、「伝説」の語は、上記のとおり、「言い伝え」などを意味する語であるから、他の語と結合して、結合された語とともに全体として一定の意味が生ずるものである。したがって、他の語と結合した「伝説」の文字よりなる商標を使用した酒類が市場に多数存在するとしても、それぞれの文字が、構成全体をもって特定の意味をなし、商標として機能しているというべきである。してみれば、酒類の分野において、「伝説」の語が多数使用されていることをもって、自他商品の識別機能が弱いとする請求人の主張は、採用することができない。
3 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-09-17 
結審通知日 2004-09-21 
審決日 2004-10-05 
出願番号 商願平11-15572 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Z33)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 内山 進
津金 純子
登録日 2000-04-14 
登録番号 商標登録第4375076号(T4375076) 
商標の称呼 ダイマジンデンセツ 
代理人 河野 昭 
代理人 穂坂 道子 
代理人 永田 久喜 

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