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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない 024
管理番号 1106581 
審判番号 審判1997-5902 
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-10 
確定日 2004-10-08 
事件の表示 平成7年商標登録願第59988号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおり「Valentino」と「Coupeau」の欧文字を段違いの二段に併記した構成によりなり、第24類「布製身の回り品、布団カバー、毛布、枕カバー、カーテン」を指定商品として、平成7年6月15日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、その構成中に『Valentino』の文字を有するところ、該文字は1967年にファッション業界の最高栄誉とされる『ファッション・オスカー』を受賞して以来、世界的に著名となったファッションデザイナー『ヴァレンティノ・ガラヴァーニ』がその取り扱いに係る商品に使用し世界的に著名な商標『Valentino』に酷似するものであるから、これを出願人がその指定商品に使用するときは、恰も前記デザイナーの取り扱いに係る商品または前記デザイナーと何らかの関係にある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知
当審において、要旨以下のとおりの証拠調べを行い、意見書を提出する相当の期間を指定して、平成13年10月16日付けで請求人に通知した。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されている。
(2)「EUROPE一流ブランド」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されている。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世外的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティーノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されている。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されている。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されている。
(6)雑誌「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されている。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932-)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されている。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されている。
(9)「世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933-)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されている。
同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示がある。

4 請求人(出願人)の意見等
請求人(出願人)は、審判請求書(手続補正書)及び上記3の証拠調べ通知に対し、要旨次のように述べている。
(1)本願商標は、「Valentino」と「Coupeau」の文字を上下段違いの横書きに一体的に表示してなるものであり、これより生ずる称呼も「バレンティノクーポ」のみである。また、「Valentino」は、イタリアでは一般的でありふれた氏であり、本願商標はいわゆる人名を表す固有名詞であって観念は生じない。
(2)「VALENTINO GARAVANI」の名前がイタリア・ファッション界の第1人者としての名声を博している事実は認めるが、「VALENTINO」の文字が、直ちに「VALENTINO GARAVANI」を指すことにならないことは次の登録異議の決定あるいは審決から明らかである。
甲第1号証(登録異議の決定)では、「VALENTINOなる語はイタリアの男性の氏乃至名として用いられているものであって、単にVALENTINOのみでは特定の者を指称するものとは認識し得ず、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を想起させるものとも言い得ないものである」との判断が示されている。これに基づいて「VALENTINO」の文字のみからなる商標が多数登録になっている(甲第5号証ないし甲第14号証)。
また、甲第2号証ないし甲第4号証(審決)では、商標中に「VALENTINO」の文字を配した商標についての判断が示されている。これに基づいて「VALENTINO」の文字の前後に、「GARAVANI」以外の文字を配した商標が登録になったものがある(甲第15号証ないし甲第32号証)。
(3)本件の取消理由に示された判断は、これら決定、審決の判断を否定するものである。もし、取消理由の判断が正しいとすれば、前記した甲第1号証ないし甲第4号証として提出した決定及び審決は判断を誤ったものとなる。
しかし、甲第1号証ないし甲第4号証に示す決定、審決が判断を誤ったものでないことは、甲第5号証ないし甲第31号証に示す如く、多くの「VALENTINO」の文字のみからなる商標、あるいは、当該文字を配した商標の登録が許可されていることから明らかである。特に、甲第9号証、甲第12号証及び甲第13号証は、「VALENTINO」の文字のみからなる商標であり、これらの商標は審判手続きを経て登録されていることを留意されたい。
また、「VALENTINO GARAVANI」が著名になる前に登録された「VALENTINO」の文字を含む商標はともかく、「VALENTINO GARAVANI」が著名になった後で、前記の登録異議の決定及び審決の以前、あるいは以後に「VALENTINO GARAVANI」の文字からなる商標、あるいは「VALENTINO」の文字を含む商標の登録の全てに問題が生じる。そればかりでなく、適法に登録になった商標を使用している者であっても場合によっては不正競争防止法の適用を受けることにもなりかねないという不都合が生じることになる。
本件商標は、甲第1号証ないし甲第4号証に示された判断に従って、甲第5号証ないし甲第32号証に示した登録商標に倣ってその登録は維持されるべきである。
なお、「VALENTINO」の文字あるいは該文字を構成中に有する商標は、米国、台湾、中国においても登録されており(甲第33号証ないし甲第35号証)、上記登録異議の決定及び審決で示された考え方は日本国だけで採用されたものでない。

5 当審の判断
(1)本願商標は、別掲のとおり「Valentino」と「Coupeau」の欧文字を段違いの二段に併記した構成によりなるところ、これをその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、構成中、上段の「Valentino」の文字のみを捉え、これよりファッション関連の商品について使用され著名な商標「VALENTINO」(ヴァレンティノ)を連想、想起し、それがイタリアの服飾デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
(2)請求人(出願人)は、本願商標を構成する「Valentino」と「Coupeau」の文字は、上下いずれかの文字が特に目立つことなく、一体的に表示してなるものであるから、特に「Valentino」の文字部分のみを抽出して称呼しなければならない格別の事由はない。また、本願商標は、人名を表す固有名詞である。したがって、本願商標が構成中に「Valentino」の文字を有することをもって、ファッションデザイナーの「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」と何らかの関係ある者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれあるものとはいえないと主張している。
しかしながら、本願商標は、「Valentino」と「Coupeau」の文字を段違いの二段に併記してなる外観上の構成から、各文字を分離して認識することができるものであるばかりでなく、両文字が一体として広く知られた人名等を表すもの等の事情も窺えないものであるから、両文字は常に一体のものと認識しなければならない理由はなく、これに接する者は、構成中、上段に表した「Valentino」の文字に注意を惹かれ、該文字部分に着目することは、十分にあり得るものといわなければならない。
しかして、上記3の当審における証拠調べ通知における認定事実を総合すれば、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の文字は、単に該文字のみで、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏のデザインに係る商品について使用し紹介されている記事が多数掲載されており、かかる掲載記事からみて、「VALENTINO」の文字は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の氏名、またはそのデザインに係る商品群を表示するものとして、本願商標の登録出願時の平成7年にはわが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るところである。
そして、本願商標の指定商品中には、ファッション関連商品が多々含まれているものである。
そうとすると、本願商標をその指定商品について使用するときは、これに接する者は、その構成中、著名な「VALENTINO」の文字に着目し、その商品が「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の取り扱いに係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれあるものといわざるを得ない。
したがって、請求人のかかる主張は採用することができない。
(3)請求人(出願人)は、「Valentino」はイタリアにおいて一般的でありふれた氏名にあたるものであり、「Valentino」姓を有するイタリア人は極めて多く存在すると述べるとともに、当審においてした証拠調べ通知に対する意見書において、単に「VALENTINO」のみでは特定の者を指称するものとは認識し得ず、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を想起させるものとも言い得ないとの判断が既に示されているとして、「VALENTINO」の文字をその構成中に含む商標に係る登録異議の決定(甲第1号証)を挙げると共に、他に審決例(甲第2号証ないし甲第4号証)及び登録例(甲第5号証ないし甲第32号証)を挙げ、本願商標の取消理由は、これら登録異議の決定あるいは審決例の判断を否定するものであるから、本願商標は、同判断例にしたがって登録されるべきである旨主張している。(なお、請求人は審判請求書〔手続補正書〕においても審決例として甲第3号証ないし甲第5号証を提出している。)
しかしながら、「VALENTINO」が、イタリア人の氏又は名としてありふれたものであるとしても、そのことが、我が国において、商標としての識別力を備えることの妨げとなるとは解されないし、まして、我が国においては、「VALENTINO」はありふれた氏又は名であるとはいえず、これが使用その他の一定の事実の蓄積によって、取引者、需要者の間で周知となり、識別力を備えるようになったとしても何ら不自然とはいえない。
しかして、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の文字は、ファッション関連の商品について継続して使用された結果、著名な商標と認められるに至っていること既に説示のとおりであるから、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)に接した者は、これより容易にファッションデザイナーとして著名な「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を想起するといい得るものである。
加えるに、具体的事案の判断においては、過去の審決例や登録例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであり、たとえ、本願商標の指定商品を含めた他の商品の区分において「VALENTINO」の文字又はその文字を構成中に含む商標が登録されている事例があるとしても、本願商標は、これをその指定商品について使用した場合、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)の商標を使用した商品との間に出所の混同を生ずるおそれあること上記のとおりであるから、かかる事例をもってする請求人(出願人)の主張は、採用することができない。
このほか、請求人(出願人)の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
(4)したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとしてその出願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本願商標


審理終結日 2004-07-15 
結審通知日 2004-07-23 
審決日 2004-08-23 
出願番号 商願平7-59988 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (024)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田辺 秀三 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 鈴木 新五
山本 良廣
商標の称呼 バレンティノクーポー、バレンティノ、クーポー 
代理人 志村 正和 

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