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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を取消(申立全部取消) Z24 |
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管理番号 | 1104942 |
異議申立番号 | 異議1999-90797 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2004-11-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-06-14 |
確定日 | 2004-09-01 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第4241273号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4241273号商標の商標登録を取り消す。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4241273号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年5月7日に登録出願、別掲のとおり、図形と「VALENTINO」の文字及び「COUPEAU」の文字(「V」と「C」の文字とは重なりあっている。)とを二段に横書きしてなり、第24類「織物(畳べり地を除く。),ふきん,敷き布,布団,布団側,織物製壁掛け,織物製ブラインド,テーブル掛け,シャワーカーテン」を指定商品として、同11年2月19日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 これに対し、登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、異議申立ての理由を要旨次のように述べ、証拠方法して、甲第1号証ないし甲第62号証、参考資料1及び参考資料2(枝番を含む。)を提出した。 (1)本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含むものであり、同人の承諾を得たものでないから、その登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものである。 (2)本件商標は、申立人の引用する「VALENTINO」、「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTIN/ヴァレンティノ」の文字よりなり、指定商品をそれぞれ被服、台所用品、家具等として登録された商標登録第852071号、同第1415314号、第1304792号及び同第1276291号の各登録商標と類似し、指定商品も抵触するものであるから、その登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。 (3)申立人は、上記の各引用商標の指定商品以外の商品についても「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」の文字よりなる登録商標を多数有しており、そして、これら多数の商標も被服、バンド、バッグ類、靴、ライター等に使用し、本件商標の出願前すでに著名なものとなっていたものであるから、本件商標をその指定商品について使用した場合、需要者がその出所について混同を生ずるおそれがあり、したがって、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものである。 3 取消理由の通知 登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして、平成13年9月10日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨次のとおりである。 (1)申立人の主張の趣旨及び甲第7号証、同第13号証ないし同第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。 「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(FashionOscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。 わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。 昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノブティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品はわが国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏はわが国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。 以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年5月7日当時には、既にわが国においても著名であったものと認められる。 同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。 そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連商品は、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」の商標(以下「引用商標」という。)をもってわが国の取引者、需要者の間に広く知られている事実が認められる。 (2)さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。 (3)以上の事実よりすると、申立人は、引用商標よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、引用商標は、本件商標の登録出願の時には、既にわが国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。 (4)本件商標は、別記に示すとおり、図形と「VALENTINO」の文字及び「COUPEAU」の文字(「V」と「C」の文字とは重なりあっている。)とを二段に横書きしてなるところ、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、前記認定したとおり、「VALENTINO」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。そして、本件商標の指定商品「織物(畳べり地を除く。)、ふきん、敷き布、布団、布団側、織物製壁掛け、織物製ブラインド、テーブル掛け、シャワーカーテン」は、引用商標が使用されている被服等の商品と関連のあるファッション関連商品である。 (6)そうすると、商標権者が、本件商標をその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)又は同人と組織的、経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 4 商標権者の意見 商標権者は、上記の取消理由に対し、その意見を要旨次のように述べている。 なお、商標権者の提出にかかる各証拠は「甲」号証をもって表示しているが、以下「乙」号証として取り扱う。 (1)「VALENTINO GARAVANI」の名前がイタリア・ファッション界の第1人者としての名声を博している事実は認めるが、「VALENTINO」の文字が、直ちに「VALENTINO GARAVANI」を指すことにならないことは次の登録異議の決定あるいは審決から明らかである。 乙第1号証(登録異議の決定)では、「VALENTINOなる語はイタリアの男性の氏乃至名として用いられているものであって、単にVALENTINOのみでは特定の者を指称するものとは認識し得ず、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を想起させるものとも言い得ないものである」との判断が示されている。これに基づいて「VALENTINO」の文字のみからなる商標が多数登録になっている(乙第5号証ないし乙第14号証)。 また、乙第2号証ないし乙第4号証(審決)では、商標中に「VALENTINO」の文字を配した商標についての判断が示されている。これに基づいて「VALENTINO」の文字の前後に、「GARAVANI」以外の文字を配した商標が登録になったものがある(乙第15号証ないし乙第32号証)。 (2)本件の取消理由に示された判断は、これら決定、審決の判断を否定するものである。もし、取消理由の判断が正しいとすれば、前記した乙第1号証ないし乙第4号証として提出した決定及び審決は判断を誤ったものとなる。 しかし、乙第1号証ないし乙第4号証に示す決定、審決が判断を誤ったものでないことは、乙第5号証ないし乙第31号証に示す如く、多くの「VALENTINO」の文字のみからなる商標、あるいは、当該文字を配した商標の登録が許可されていることから明らかである。特に、乙第9号証、乙第12号証及び乙第13号証は「VALENTINO」の文字のみからなる商標であり、これらの商標は審判手続きを経て登録されていることを留意されたい。 (3)また、「VALENTINO GARAVANI」が著名になる前に登録された「VALENTINO」の文字を含む商標はともかく、「VALENTINO GARAVANI」が著名になった後で、前記の登録異議の決定及び審決の以前、あるいは以後に「VALENTINO GARAVANI」の文字からなる商標、あるいは「VALENTINO」の文字を含む商標の登録の全てに問題が生じる。そればかりでなく、適法に登録になった商標を使用している者であっても場合によっては不正競争防止法の適用を受けることにもなりかねないという不都合が生じることになる。 本件商標は、乙第1号証ないし乙第4号証に示された判断に従って、そして、乙第5号証ないし乙第32号証に示した登録商標に倣って、その登録は維持されるべきである。 5 当審の判断 (1)当審において通知した取消理由に対する商標権者の意見を検討してもなお、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中上段の「Valentino」の文字のみを捉え、これよりファッション関連の商品について使用され著名な引用商標(「VALENTINO」「ヴァレンティノ」)を連想、想起し、それがイタリアの服飾デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。 (2)商標権者は、意見書において、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)はイタリア・ファッション界の第1人者として著名であることは認められるとしても、「VALENTINO」の文字が直ちに同人を指すものとはいえないとし、その根拠として、「VALENTINO」の文字はイタリアの男性の氏又は名として用いられているものであって、単に「VALENTINO」のみでは「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏を想起させないとした登録異議の決定(乙第1号証)、及び他に審決例(乙第2号証ないし乙第4号証)、登録例(乙第5号証ないし乙第32号証)を挙げ、本件商標の取消理由はこれら登録異議の決定、審決例の判断を否定するものであるから、本件商標の登録は、同判断例にしたがって維持されるべきである旨主張している。 しかしながら、「VALENTINO」の文字がイタリア人の氏又は名として用いられているものであるとしても、そのことが、我が国において、商標としての識別力を備えることの妨げとなるとは解されないし、これが使用の蓄積によって、取引者、需要者の間で周知となり、識別力を備えるようになったとしても何ら不自然とはいえない。 そして、甲第7号証、甲第8号証ないし甲第13号証、甲第15号証、甲第16号証、甲第22号証、甲第25号証、甲第30号証、甲第33号証、甲第36号証、甲第46号証、甲第48号証、甲第55号証及び上記3に記した当審における調査によれば、引用商標が、単に該表示のみで、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係る商品について使用し紹介されている記事が多数掲載されており、その事実からみて、「VALENTINO」の文字は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の氏名、またはそのデザインに係る商品群を表示するものとして、本件商標の登録出願時の平成8年にはわが国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るところであり、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。 してみると、本件商標についてした上記3の取消理由は妥当であって、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。 また、具体的事案の判断においては、過去の審決例や登録例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであり、たとえ、本件商標の指定商品を含めた他の商品の区分において「VALENTINO」の文字又はその文字を構成中に含む商標が登録されている事例があるとしても、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合、引用商標を使用した商品との間に出所の混同を生ずるおそれあること上記のとおりであるから、商標権者のかかる事例をもってする主張は、採用することができない。 このほか、商標権者の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。 (3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたというべきであるから、その登録は、同法第43条の3第2により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
異議決定日 | 2004-07-15 |
出願番号 | 商願平8-48721 |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Z
(Z24)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 田中 亨子 |
特許庁審判長 |
柴田 昭夫 |
特許庁審判官 |
鈴木 新五 山本 良廣 |
登録日 | 1999-02-19 |
登録番号 | 商標登録第4241273号(T4241273) |
権利者 | ジェイ・エム・エス株式会社 |
商標の称呼 | バレンティノクーポー、バレンティノ、クーポー |
代理人 | 志村 正和 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 末野 徳郎 |