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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1104618 
審判番号 無効2003-35179 
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-02 
確定日 2004-09-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4637117号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4637117号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第4637117号商標(以下「本件商標」という。)は、「ルナ」の文字を標準文字により表してなり、平成13年12月5日に登録出願、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,その他の家庭用テレビゲームおもちゃ」及び第41類「電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供に関する情報の提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供,図書及び記録の供覧,図書及び記録の供覧に関する情報の提供,美術品の展示に関する情報の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,映画の上映の情報の提供,演芸の上演の情報の提供,演劇の上演の情報の提供,音楽の演奏の情報の提供,放送番組の制作,放送番組の制作に関する情報の提供,ゴルフの開催又は競技結果の情報の提供,相撲の開催又は競技結果の情報の提供,ボクシングの開催又は競技結果の情報の提供,野球の開催又は競技結果の情報の提供,サッカーの開催又は競技結果の情報の提供,競馬の開催又は競技結果の情報の提供,競輪の開催又は競技結果の情報の提供,競艇の開催又は競技結果の情報の提供,小型自動車競走の開催又は競技結果の情報の提供,音響用又は映像用のスタジオの提供に関する情報の提供,運動施設の提供に関する情報の提供,娯楽施設の提供,娯楽施設の提供に関する情報の提供,興行場の座席の手配,興行場の座席の予約に関する情報の提供,楽器の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与に関する情報の提供,録画済み磁気テープの貸与に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として平成15年1月17日に設定登録されたものである。

第2.請求人の主張の要点
請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第387号証(枝番を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第10号違反について
(1)引用商標
甲第8号証(パンフレットに示すように、請求人の使用する商標1(以下「引用商標1」という。)は欧文字「LUNAR」からなり、商標2(以下「引用商標2」という。)は片仮名文字「ルナ」の構成よりなる。
この引用商標1及び2は、請求人である株式会社ゲームアーツが開発し、平成4年6月26日から現在に至るまで継続して販売されている家庭用テレビゲームソフトに使用されている。
引用商標1及び2を付したソフトの発売日は平成4年6月26日であるが、ソフトの販売が予定されると、それに先立って、前年の11月より家庭用テレビゲームソフトを紹介する全国版の雑誌にたびたび掲載されていた。最初に紹介記事が掲載されたのは、平成3年11月1日発行の「BEEP!MEGADRIVE1991年11月号」(甲第3号証)である。そして、翌年の平成4年3月15日には、「メガドライブFAN1992年3月号」(甲第4号証)に紹介され、これが評判を呼び、同年5月15日発行の「メガドライブFAN1992年5月号」(甲第5号証)及び同年6月15日発行の「メガドライブFAN1992年6月号」(甲第6号証)に立て続けに掲載された。
そして、同年6月26日には、甲第7号証の1及び2に示すような形態で引用商標1及び2を付したゲームソフトのCDが発売された。この発売日には、ゲームソフトのCDの発売と同時に甲第8号証に示すようなパンフレットが全国のゲームソフトを取り扱う店で配布された。
このゲームソフトは、その後、人気を呼び国内で継続して販売されるとともに米国や欧州でも販売されロングセラーとなった。
2年後の平成6年12月22日にはシリーズ第2弾のゲームソフトのCDが国内で発売されることになり、それに先がけて、ソフトの紹介記事がまたもや雑誌にたびたび掲載された。最初は、同年3月15日発行の「メガドライブFAN1994年3月号」(甲第9号証)に掲載され、続いて、同年5月15日発行の「メガドライブFAN1994年5月号」(甲第10号証)及び同年7月15日発行の「メガドライブFAN1994年7月号」(甲第11号証)にも掲載された。
そして、発売が迫った同年12月15日には「BEEP!MEGADRIVE1994年12月号」(甲第12号証)にその内容が紹介された。発売日の平成6年12月22日には、甲第13号証の1及び2に示すような形態で引用商標1及び2を付したゲームソフトのCDが発売された。この第2弾のゲームソフトの発売日には、ゲームソフトのCDの発売と同時に甲第14及び第15号証に示すようなパンフレットが全国のゲームソフトを取り扱う店で配布された。
一般に、人気のあるゲームソフトは各出版社が競って攻略本を出すのが常であるが、引用商標1及び2の商標を付したゲームソフトも例外ではなく、平成7年4月6日にはソフトバンク株式会社より「LUNAR/公式設定資料集」(甲第16号証)が発行されている。
引用商標1及び2を付したゲームソフトはその後もロングセラーを続け、第1作が発売されてから10年以上たった現在においてもなお、日本全国で継続販売されている。
以上の事実からして、引用商標1及び2が我が国の取引者、需要者の間において周知、著名なゲームソフトの商標であることは明らかである。しかして、本件商標の出願日は平成13年12月5日であるところ、引用商標1及び2は、平成2年6月26日より継続使用された結果、本件商標の出願時においても、国内の需要者の間に広く知られる状態にあり、その周知、著名性は現在まで継続して維持されているものである。
(2)本件商標と引用商標の比較
本件商標は、仮名文字「ルナ」の構成よりなり「ルナ」の称呼を有する。 一方、引用商標1は欧文字「LUNAR」の構成よりなり、「ルナ」の称呼を有し、引用商標2も片仮名文字「ルナ」の構成よりなり、「ルナ」の称呼を有する。したがって、本件商標と引用商標1及び2はいずれも称呼において類似するものである。
また、「LUNAR」は英語において「月の」という意味を有し、カタカナの「ルナ」も「月」を観念する点では共通する。したがって、本件商標と引用商標1及び2はいずれも観念において類似するものである。
さらに、本件商標と引用商標2とは、片仮名文字「ルナ」という構成を共通にするため、その外観においても類似するものである。
したがって、本件商標は、引用商標1とは、称呼、観念を共通とし、引用商標2とは、外観、称呼、観念を共通とするため、引用商標1及び2のいずれとも類似する商標であるといえる。
また、引用商標1及び2はいずれも、家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラムとして使用されていたため、本件商標の指定商品中、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム」と商品が共通し、第9類「その他の家庭用テレビゲームおもちゃ」と商品が類似する。
したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、商品が同一で商標が類似するので、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号違反について
上記1で主張、立証したとおり、引用商標1及び2が本件商標の出願日に、わが国の取引者、需要者の間において周知、著名なゲームソフトの商標であることは明らかである。
しかして、近年ゲームソフトの販売方法も家庭用テレビゲームおもちや用のプログラムとしてコンパクトディスク等の記録媒体によって販売されるほか、インターネット等の電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供にまでその範囲を広げつつある。
すなわち、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,その他の家庭用テレビゲームおもちゃ」と、第41類「電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供に関する情報の提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供」とは、極めて密接な関係にあり、引用商標1及び2の周知、著名性より、本件商標をその指定役務中、第41類「電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供に関する情報の提供,電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供」に被請求人が使用した場合には、需要者、取引者が役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第19号違反について
上述したように、引用商標1及び2はわが国の取引者、需要者の間において周知、著名なゲームソフトに用いられている商標であり、請求人が各引用商標の使用により高い業務上の信用を獲得している事実は被請求人も知るところである。したがって、被請求人が本件商標を独占して使用することは、請求人の各引用商標の使用を妨げるとともに、請求人が各引用商標に対して獲得した高い業務上の信用を希釈するものであり、商標法第4条第1項第19号にいう「不正の目的をもって使用するもの」といえるものである。
したがって、本件商標は同法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
4 まとめ
以上述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであり、その登録は同法第46条第1項第1号に該当し、無効とされるべきものである。
5 弁駁の理由
(1)引用商標の周知・著名性について
ア)雑誌その他の書籍による周知性
被請求人は、雑誌についてはゲーム関連雑誌のごく一部にすぎず、掲載回数もわずかであると主張するが、いずれの雑誌も名前の知られている大手の出版社による日本全国を対象にした全国版の雑誌である。このような全国版の雑誌に少なくとも、証拠として提出した範囲でも、半年以上に亘って掲載され、掲載の内容も広告の掲載のみならず、内容の詳細な説明まで開示されているため、宣伝効果はかなり高く、購買層に周知せしめるに十分なものである。「LUNAR」シリーズの攻略本としては、甲第16号証の他に7件ある(甲第17号証)。
イ)ゲームソフトの販売の事実及び販売数量について
甲第7号証の1及び2に示す「LUNAR/THE SILVER STAR」のCDについては、1992年6月から1993年10月までの1年5ヶ月間に累計99,373個の売上実績をあげている(甲第18ないし第34号証)。
甲第13号証の1及び2に示す「LUNAR/ETERNAL BLUE」のCDについては、1994年12月から1995年3月までの3ヶ月間で44,443個の販売数と販売の事実が確認されている(甲第35ないし第189号証)。
甲第190号証は、請求人の原著作に基づいた「LUNAR」シリーズのゲームソフトの一覧表である。
「LUNAR」シリーズの第一弾である甲第7号証の1及び2に示すソフト並びに同第二弾である甲第13号証の1及び2のゲームソフトは、メガCDにおいて大変好評であったため、その後、英語版を米国及びヨーロッパで販売し大変好評で、米国ではテレビゲームソフトの売上ベスト10に入ったといわれている。
その後、請求人は株式会社セガの新型ゲーム機セガサターン(以下「セガサターン」という。)や株式会社ソニー製のゲーム機プレイステーション(以下「プレイステーション」という。)に対応すべく、これら第一弾及び第二弾のソフトを順次移植した。
また、請求人は、第三弾としてゲームギア用のゲームソフト「LUNAR/さんぽする学園」を、第四弾として「LUNAR/魔法学園」をそれぞれ発売した(甲第191ないし第195号証)。これらの発売時期及び売上本数は、甲第196及び第197号証に示すインターネット上のサイトにおいて公開されている。
そして、2002年4月12日には、シリーズ最新作として「LUNAR LEGEND」が発売された(甲第198号証の1及び2、甲第199号証)。この「LUNAR LEGEND」のホームページは、本件商標の出願日前の2001年11月22日より、「LUNAR LEGEND」の内容を広く一般に広告している(甲第200号証)。甲第201号証は、本件商標の出願前の2001年11月23日に発売された週間ファミ通での「LUNAR LEGEND」の紹介記事である。この週間ファミ通は、日本で最も販売数の多いテレビゲーム雑誌であり、本件商標の出願前に日本全国にこのソフトの内容及び引用商標1及び2が広く知られる状態にあったことは明らかである。
このゲームソフトは現在も発売中であることから、本件商標の登録査定時まで周知性は維持されているといえる。
(2)商標法第4条第1項第19号違反について
甲第204号証は、請求人と被請求人が請求人の原著作権に基づいてセガサターン及びプレイステーション用に移植するソフトを作成するときの契約書であり、甲第205及び第206号証は、覚書である。即ち、被請求人は請求人の許諾を受けて移植ソフトを共に製作したわけであり、請求人が周知商標主であることを知りながら、請求人に無断で出願したわけである。この事実から被請求人に不正の目的があることは明らかである。
6 第2弁駁の理由
(1)ゲームソフトの販売数
請求人は、前述のように、当初メガCD用に開発された第一弾及び第二弾のソフトを平成8年よりセガサターン用やプレイステーション用に順次移植した。その販売数は以下のとおりである。
甲第214及び第215号証は、セガサターン用ゲームソフト「ルナ シルバースターストーリー」及び「ルナ シルバースターストーリーMPEG版」の3ヶ月おきの分配金計算書及びその支払明細表、印税計算書及びその支払明細表を示すものであり、これらに基づき1996年10月25日から1998年9月30日までの全期を合計すると、それぞれ、208,650本及び19,010本となる。第二弾のソフト「ルナ エターナルブルー」のセガサターン用に移植したソフトの販売本数は、原作印税支払計算書(甲第248ないし第252号証)によれば、123,285本である。
第一弾のソフトをプレイステーション用に移植した「ルナ シルバーストーリー」については、原作印税の計算の基となる販売本数は87,697本である(甲第254ないし第260号証)。同じくプレイステーション用「ルナ シルバーストーリー」のベスト版の販売数については、原作印税支払計算書(甲第261及び第262号証)によれば、4月度で11,683本である。同じく「ルナ シルバーストーリー」のPC版(パソコン版)の販売数については、原作印税支払計算書(甲第320号証)によれば、16,276本である。第二弾のソフトをプレイステーション用に移植した「ルナ エターナルブルー」については、原作印税の計算の基となる販売本数は59,355本である(甲第264ないし第268号証)。同じくプレイステーション用「ルナ エターナルブルー」のベスト版の販売数については、印税計算書(甲第269ないし第319号証)によれば、2003年6月30日までの全期を合計すると、31,447本となる。
(2)劇場版ビデオの販売数
第四弾として発売したゲームソフト「LUNAR/魔法学園」の劇場版「魔法学園ルナ」については、印税計算書及び支払明細表(甲第322ないし第337号証)によれば、1999年3月31日までの全期を合計すると、1,224本の出荷本数となる。
(3)書籍の販売数
甲第338号証の1ないし6は、「LUNAR」シリーズのゲームに準じたストーリーの「LUNAR〜幼年期の終わり〜」を書籍として出版したときの、請求人と株式会社角川書店との間で結んだ出版契約書であり、甲第339ないし第353号証は、その印税・支払明細表及び重版案内である。これらによれば、既刊総制作数は36,500部である。その他の書籍の発行部数は、漫画化した「LUNAR シルバースターストーリー」が25,000部(甲第354ないし第358号証)、書籍「ルナ シルバースターストーリー」初版が18,000部(甲第359及び第360号証)、書籍「LUNAR2 エターナルブルー」初版が30,000部(甲第361及び第362号証)、書籍「LUNAR2 エターナルブルー 1」第2版が3,000部(甲第369ないし第371号証)、書籍「LUNAR22 エターナルブルー 2」第2版が3,000部(甲第372号証)、書籍「LUNAR2 エターナルブルー 3」第3版が3,000部(甲第378及び第379号証)、書籍「LUNAR2 レミーナただいま」初版が30,000部(甲第380及び第381号証)、書籍「LUNAR2 ETERNALB」初版が18,000部(甲第383及び第384号証)、書籍「LUNAR2 エターナルブルー1」第4版が3,000部甲第385ないし第387号証)である。
(4)その他の書籍及びプレミアムの販売数
セガサターン用「ルナ シルバースターストーリー」の2次的利用としてテレフォンカード500枚が販売された(甲第207号証の3)ほか、セガサターン用「ルナ エターナルブルー」の公式攻略ガイド及びプレイステーション用「ルナ シルバースターストーリー」の公式攻略ガイドがそれぞれ19,950部販売され(甲第208号証の3及び第209号証の3)、書籍「ルナ エターナルブルー全集」が17,950部販売された(甲第210号証の3)。
(5)以上の事実からして、引用商標1及び2は、本件商標の出願時において我が国の取引者、需要者間において周知著名なゲームソフトの商標であることは明らかであり、その周知著名性は現在まで維持されているものである。

第3.被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べている。
1 引用商標の周知・著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠方法について
商標の使用による周知性の立証については、商標審査基準にも示されているように、下記の(A)(i)ないし(viii)の証拠方法により、下記(B)の事実を明らかにした上で、これらの事実を総合勘案して判断するのが一般的である。
(A)証拠方法
(i)仕切伝票等の各種取引書類
(ii)広告宣伝等が掲載された新聞・雑誌等
(ii)商標が使用されていることを明示する写真等
(iv)広告業者等の証明書
(v)同業者組合等の証明書
(vi)取引先等の証明書
(vii)需要者の証明書
(viii)公的機関等の証明書
(A)事実
(i)実際に使用している商標並びに商品又は役務
(ii)使用開始時期
(iii)使用期間
(iv)使用地域
(v)営業の規模等
しかしながら、請求人により提出された証拠方法は、雑誌に掲載された記事(甲第3号証の1ないし3、甲第4号証の1ないし3、甲第5号証の1ないし6、甲第6号証の1ないし10、甲第9号証の1ないし4、甲第10号証の1ないし4、甲第11号証の1ないし4、甲第12号証の1ないし10)、CDジャケットの写真(甲第7号証の1及び2、甲第13号証の1及び2)、販促用パンフレット(甲第8、第14及び第15号証)、ゲーム攻略本(甲第16号証の1及び2)だけであり、上記(A)(ii)(iii)の証拠方法により、上記(B)の事実(i)(ii)だけを明らかにしているにすぎない。客観的に周知性を立証できるのに十分な証拠であれば、上記(A)の(i)ないし(viii)の一種類でも証拠方法としては問題がない。しかしながら、提出されている証拠方法は、周知性を客観的に判断できるほどに十分なものとはいい難い。したがって、請求人が提出した証拠方法に基づいて引用商標の周知性を認めることはできない。
また、(B)(iii)使用期間、(iv)使用地域及び(v)営業規模等の事実が明らかにされていないので、この点からも本件商標の登録出願時及び査定時における引用商標の周知性は何ら立証できるものではない。
(2)雑誌に掲載された記事は全8件中、6件が「メガドライブFAN」[株式会社徳間書店発行](甲第4号証の1ないし3、甲第5号証の1ないし6、甲第6号証の1ないし10、甲第9号証の1ないし4、甲第10号証の1ないし4及び甲第11号証の1ないし4)であり、2件が「BEEP!MEGADRIVE」[ソフトバンク株式会社発行](甲第3号証の1ないし3、甲第12号証の1ないし10)である。これらの雑誌はゲーム関連の雑誌のごく一部にすぎない。また、掲載回数もわずかである。したがって、これらの証拠物件は引用商標の周知性を立証するのに足るものではないと思料する。
また、CDジャケットの写真は全2件中(甲第7号証の1及び2、甲第13号証の1及び2)2件ともCDの発売年月日が確認できないものである。 さらに、販促用パンフレットについても、全3件中(甲第8、第14及び第15号証)3件ともパンフレットの配布年月日が確認できないものである。したがって、CDジャケットの写真及び販促用パンフレットも本件商標の出願前における引用商標の周知性を立証するものではない。
加えて、ゲーム攻略本(甲第16号証の1及び2)は1件提出されているのみであり、引用商標の周知性を立証するものとしてはまったくといってもよいほど不十分なものである。よって、提出された証拠物件はいずれも引用商標の周知・著名性を立証するものとしては不十分なものである。
(3)雑誌に掲載された記事及びゲーム攻略本の発行年月日は、平成3年11月1日から平成7年4月6日の間である。また、CDジャケットの写真及び販促用パンフレットについて請求人が主張しているCDの発売年月日及びパンフレットの配布年月日は、平成4年6月26日から平成6年12月22日の間である。
本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第10号、第15号及び第19号に該当するためには、本件商標の出願時及び査定時に引用商標の周知性又は著名性が立証される必要がある。本件商標の出願日は、平成13年12月5日であり、本件商標の査定日は、平成14年11月28日である。
したがって、提出された証拠物件は、上記発行年月日等からも分かるように、本件商標の出願時及び査定時における引用商標の周知・著名性を立証するものではない。また、上記(2)に述べたように、これら提出された証拠物件の発行年月日等に該当する時期における引用商標の周知・著名性も立証されていない。
以上の理由から、引用商標は請求人の商標として周知・著名性を獲得しているものではない。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項10号、第15号及び第19号に違反して登録されたものではない。
3 第2答弁の理由
請求人は、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及び平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)において、新たな証拠を提出し、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」が請求人の商標として周知・著名性を獲得しているものであると主張する。
しかしながら、これらの新たな証拠は主要証拠の追加にあたり、要旨変更に該当するものである。平成15年5月2日付審判請求書において請求人が提出した証拠は、平成4年6月26日発売のメガCD用ゲームソフト及び平成6年12月22日発売のメガCD用ゲームソフトに関する証拠のみであって、提出された証拠の発行年月日、発売日等として記載されている年月日は平成3年から平成7年にかけてのものである。これらの証拠は本件商標出願の出願時及び登録査定時における引用商標1及び引用商標2の周知性を立証するものではない。
これに対して、平成15年8月19日付審判事件弁駁書においては、平成8年(1966年)以降に発売されたゲームギア用、セガサターン用、プレイステーンョン用、PC用、ゲームボーイアドバンス用のゲームソフトについて証拠を追加提出し、これらのゲームソフトのタイトルの一部として使用された「LUNAR」「ルナ」の存在を、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」の周知・著名性の根拠として採用している。また、平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)においては、セガサターン用及びプレイステーンョン用のゲームソフト売上本数等について、証拠を追加提出し、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」の周知・著名性の根拠として採用している。
しかしながら、これらの平成8年(1996年)以降に発売されたゲームソフトについては、平成15年5月2日付審判請求書において一切言及されていなかった。本件商標が引用商標との関係において、商標法第4条第1項第10号第4条第1項第15号及び第4条第1項第19号に該当するためには、本件商標の出願時及び登録査定時における引用商標の周知性又は著名性が立証される必要がある。本件商標の出願日は、平成13年12月5日であり、本件商標の査定日は、平成14年11月28日である。本件商標が商標法第4条第1項第10号第4条第1項第15号及び第4条第1項第19号に該当するという請求人の主張を立証するためには、平成15年5月2日付審判請求書において提出された、平成4年6月26日及び平成6年12月22日発売のゲームソフトに関する平成3年から平成7年にかけての証拠よりも、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)において追加提出された、平成8年(1996年)以降に発売されたゲームソフトに関する証拠の方が主要な証拠であることは明らかである。このような主要証拠の追加は要旨を変更する補正に相当するものであるから認められるべきではない。また、後に詳述するが、請求人によって追加提出された証拠には被請求人の商標「角川書店」(「角川書店」は被請求人の旧名称である。)が多数記載されている。つまり、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」は、本件商標の出願時及び登録査定時には、被請求人の商標として需要者に認識されており、被請求人の商標として周知・著名となっていたのである。請求人もその事実を認めていたからこそ、平成15年5月2日付審判請求書において、平成8年(1996年)以降の証拠を提出しなかったものと推測する。いずれにせよ、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及び平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)で提出された証拠は主要証拠の追加であって、請求の理由の要旨を変更する補正に相当するものである。また、これらの証拠を審判請求時に提出できなかった合理的な理由はなかったものと思料する。なお、仮に、要旨の変更がないとした場合であっても、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及び平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)で提出された追加の証拠は、本件商標が商標法第4条第1項第10号第4条第1項第15号及び第4条第1項第19号に該当することを立証するものではない。念のために、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及び平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)の主張及び証拠に対して、以下に答弁する。
請求人は平成15年5月2日付審判請求書において提出した証拠のうち、雑誌「メガドライブFAN」及び「BEEP MEGADRIVE」について、「両者とも、出版社としては名前の知られている大手の出版社であり、いずれの雑誌も日本全国を対象にした全国版の雑誌である」と主張している(平成15年8月19日付審判事件弁駁書)。しかしながら、雑誌名が示すように「メガドライブ」という特定のハードウエアを使用する需要者をターゲットとした雑誌がゲーム業界全体においてどの程度の影響を与えていたものであるかは疑問である。この点、ゲーム業界における当該雑誌の影響力を示すような雑誌の発行部数等、客観的な証拠は一切提示されていない。また、平成15年7月2日付答弁書において被請求人が述べたように、これらの雑誌を含め、平成15年5月2日付審判請求書において提出された証拠は、平成3年から平成7年にかけてのものであって、本件商標の出願時及び登録査定時における引用商標の周知性を立証するものではない。加えて、平成15年8月19日付審判事件弁駁書において、請求人は、平成4年6月26日発売のメガCD用ゲームソフト及び平成6年12月22日発売のメガCD用ゲームソフトについて、売上本数等種々述べている。しかしながら、この主張も同様に、本件商標の出願時及び登録査定時における引用商標の周知性を立証するものではない。乙第1号証はインターネット上のサイト情報である。乙第1号証に示されるように、メガCDの国内出荷台数は、プレイステーションやスーパーファミコンの国内出荷台数と比較すると、極めて少ない。 このような出荷台数の少ないハードウエア専用のゲームソフトについて、本件商標の出願時及び登録査定時まで、その周知性が持続していたものとは到底認められない。また、その立証もなされていない。さらに加えて言えば、請求人は引用商標1「LUNAR」は英語において「月の」という意味を有し、引用商標2「ルナ」は「月」を観念すると述べている(平成15年5月2日付審判請求書)。つまり、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」は造語ではなく一般的に使用される言葉である。乙第2号証の1は民間の商標調査データベース「BRANDY」を利用して検索した商標一覧である。この商標一覧には、メガCD用ゲームソフトの第1弾が発売された平成4年6月26日以前に出願された商標出願及び登録商標が表示されている。この商標一覧からも分かるように、メガCD用ゲームソフトの第1弾が発売された平成4年6月26日頃において、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」と同一の商標、又は引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」と共通の観念及び称呼を生じる商標は、多数の者によって自己の商標として採択されている。また、乙第2号証の2及び乙第2号証の3は登録商標の書誌情報である。コンピュータ上で作動するコンピュータゲームソフト、いわゆるPC用ゲームソフトは、商標法上第9類に属し、類似群コード「11C01」が付与されるものである。乙第2号証の2に示す登録商標は、現行法の第9類「電子応用機械器具及びその部品」(類似群コード:11C01)に該当する指定商品を指定しており、乙第2号証の3に示す登録商標は第9類「電子応用機械器具及びその部品(大規模集積回路・電子応用扉自動開閉装置・電子式卓上計算機・ワードプロセッサを除く。)」(類似群コード:11C01)を指定している。したがって、PC用ゲームソフトと同一又は類似する指定商品に対して、登録商標「ルナ」及び「LUNAR」がメガCD用ゲームソフトの第1弾が発売された平成4年6月26日以前から、請求人以外の権利者が所有する登録商標として存在しており、現在も存続しているのである。PC用ゲームソフトはメガCD用ゲームソフトと非常に密接な関係にあるものと思料する。このことは、ルナシリーズのPC用ゲームソフトが1999年12月8日に発売された事実が請求人により指摘されている(平成15年8月19日付審判事件弁駁書)ことからも裏付けられているものと思料する。このように、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」は造語ではなく、多くの者に商標として採択される辞書に載っている語であり、且つ、メガCD用ゲームソフトと極めて密接な関係にあるPC用ゲームソフトと同一又は類似する指定商品に対しても請求人以外の登録商標「ルナ」及び「LUNAR」が、平成4年6月26日以前から現在に至るまで存続している状況下において、平成4年6月26日及び平成6年12月22日発売のメガCD用ゲームソフトのタイトルとして使用された「LUNAR」「ルナ」の語が、本件商標の出願時及び登録査定時に至るまで、請求人の商標として周知性を獲得し且つ維持してきたとは到底認められない。
また、請求人は、平成15年5月2日付審判請求書において言及しなかったゲームソフトとして、1996年1月12日発売のゲームギア用ゲームソフト「LUNAR/さんもまする学園」(甲第191号証の1及び2)に言及している(平成15年8月19日付審判事件弁駁書)。しかしながら、商品の表側と裏側を示した写真が証拠として提出されているのみであって、引用商標の周知性につながる客観的証拠は一切提示されていない。
加えて、請求人は、平成8年(1996年)以降発売されたプレイステーンョン用及びセガサターン用のゲームソフトの商品写真を甲第192号証の1ないし甲第195号証の2に示している。ここに提示された商品写真にはすべて、商標「角川書店」が記載されている。また、甲第192号証の1、甲第193号証の1、甲第194号証の1、甲第195号証の1にはゲームソフトCDジャケットの表側が示されている。需要者の注意が最も引き付けられる商品の表側において、「LUNAR」「ルナ」等のタイトルを示す語と共に商標「角川書店」が大きく表示されており、請求人を示す名称等は表示されていない。したがって、これらのゲームソフトに接する需要者は、引用商標1「LUNAR」及び引用商標2「ルナ」を「角川書店」の商標として認識するものである。請求人は、甲第192号証の1ないし甲第195号証の2に示された商品について、平成15年8月19日付審判事件弁駁書及び平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)でその売上本数等に言及している。
甲第192号証の1及び甲第192号証の2に示されたセガサターン用ゲームソフト「ルナ シルバースターストーリー」の売上本数は平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)において、208,650本となっている。
また、甲第193号証の1及び甲第193号証の2に示されたプレイステーンョン用ゲームソフト「ルナ シルバースターストーリー」の販売本数は、同弁駁書において、87,697本となっている。また、甲第194号証の1及び甲第194号証の2に示されたセガサターン用ゲームソフト「ルナ2 工夕一ナルプルー」の販売本数は、同弁駁書において、123,285本である。また、甲第195号証の1及び甲第195号証の2に示されたプレイステーンョン用ゲームソフト「ルナ2 エターナルプルー」の販売本数は、同弁駁書において、59,355本となっている。したがって、甲第192号証の1ないし甲第195号証の2に示された「角川書店」が出所であると認識される商標「ルナ」「LUNAR」が使用されたゲームソフトの販売本数は、請求人が提示した数字によれば、478,987本である。これに対し、メガCD用ゲームソフト「LUNAR/THE SILVER STAR」の販売数量については、平成15年8月19日付審判事件弁駁書において、「1992年6月から1993年10月までの1年5ヶ月の間に累計99,373個の売上実績をあげている」との記載がある。また、メガCD用ゲームソフト「LUNAR/ETERNALBLUE」の販売数量については、同弁駁書において、「1994年12月から1995年3月までの3ヶ月間で、44,443個の販売数」との記載がある。請求人が時系列に指摘するゲームソフトの売上本数からも分かるように、ゲームソフトの販売本数は発売月から1〜2月間においてピークを迎えることが一般的であると言える。例えば、平成15年9月9日付審判事件弁駁書(第二回)において、請求人が指摘するセガサターン用「ルナ シルバースターストーリー」の売上本数は、発売日から約2年間の売上本数総計208,650本に対し、発売日から約2ヶ月間で203,030本売り上げている。よって、請求人が平成15年8月19日付審判事件弁駁書において述べた前述のメガCD用ゲームソフトの販売数量は、販売数量の総計に近いものであると考える。請求人が平成15年8月19日付審判事件弁駁書において言及する前述のメガCD用ゲームソフトの販売数量の合計は、143,816本である。この本数は、商標「角川書店」が商品の表側に大きく付され、被請求人の商標として「ルナ」「LUNAR」が認識される甲第192号証の1ないし甲第195号証の2に示されたゲームソフト(セガサターン用、プレイステーション用)の販売本数478,987本の3分の1以下でしかない。前述のように、平成4年6月26日及び平成6年12月22日に請求人がメガCD用ゲームソフトのタイトルとして「ルナ」「LUNAR」の語を使用しているとしても、メガCD用ゲームソフトに使用されていた引用商標は本件商標の出願時及び登録査定時において周知ではない。また、セガサターン用、プレイステーション用ゲームソフトは被請求人の宣伝・販売力、営業努力等によって、メガCD用ゲームソフトを大きく上回る販売実績を上げたのであり、請求人が提出する甲第192号証の1ないし甲第195号証の2によっても明らかであるように、商標「ルナ」「LUNAR」はこれらのゲームソフトにおいて被請求人の商標として認識されるものである。したがって、商標「ルナ」「LUNAR」は請求人の商標としてではなく、被請求人の商標として広く需要者に認識されているのである。
乙第3号証の1ないし乙第3号証の13は、インターネット上のサイト情報である。
これらのサイト情報においては、「ルナ」シリーズのゲームソフトの出所表示として「角川書店」が明示されており、商標「ルナ」「LUNAR」が請求人の商標としてではなく、被請求人の商標として需要者に広く認識されていることが裏付けられている。乙第4号証の1ないし乙第4号証の3は民間のデータベース「G-Sechar」による新聞記事情報である。これらの新聞記事においても、「ルナ」シリーズのゲームソフトの出所表示として「角川書店」が明示されている。また、乙第5号証の1ないし乙第5号証の2はゲームソフトの売上本数が掲載されている
「オリコン年鑑」の抜粋(写し)である。乙第5号証の1ないし乙第5号証の2においても、「ルナ」シリーズのゲームソフトの発売元として「角川書店」が明示されており、請求人を表示する名称等は一切記載されていない。
さらに、請求人が提出する甲第197号証の1ないし甲第197号証の3においても、セガサターン用、プレイステーション用ゲームソフト「ルナ シルバースターストーリー」及び「ルナ2 工ターナルプルー」の発売欄に「角川書店」と明記されており、需要者がこれらのゲームソフトの出所を被請求人であると認識する表示となっている。加えて、甲第192号証の1ないし甲第195号証の2に示されたゲームソフト以外のゲームソフト「LUNAR SILVER STAR STORY The Best版」「LUNAR SILVER STAR STORY MPEG版」についても発売欄に「角川書店」と明記されており、これらのゲームソフトの出所が請求人であると認識されるものではない。加えて、乙第3号証の1のサイト情報に示されるように、2000年9月7日に、プレイステーション用ゲームソフト「ルナ2 エターナルブルー(kadokawa The Bestt)」が「角川書店」より発売されている。
以上に示す、その出所が被請求人であると需要者が認識しているゲームソフトの他に、請求人は、「LUNAR/魔法学園」を株式会社エンターテインメント・ソフトウエア・パブリッシンングから発売したと述べている(平成15年8月19日付審判事件弁駁書)。また、1997年11月20日発売「魔法学園LUNAR!」(セガサターン用)の初週売上本数を記載している。しかしながら、乙第3号証の3、乙第3号証の4、乙第3号証の10、乙第3号証の12及び乙第3号証の13に示すインターネット上のサイト情報、乙第4号証の3に示す新聞記事情報において、1997年11月20日発売「魔法学園LUNAR!」(セガサターン用)の出所表示に「角川書店」の記載がある。また、乙第3号証の3及び乙第3号証の10に掲載されている商品の表側写真には、商標「角川書店」が記載されていることが認識できる。よって、かかるゲームソフトの発売をもって、引用商標が請求人の商標として、本件商標の出願時及び登録査定時に周知であったことを立証することにはならない。また、2002年4月12日発売のゲームボーイアドバンス用ゲームソフト「LUNARLEGEND」について、甲第199号証及び甲第200号証でホームページ情報を、甲第201号証において雑誌の紹介記事を提出している。しかしながら、先に述べたように、商標「ルナ」「LUNAR」は被請求人の商標として広く需要者に認識されている。その状況下において、甲第199号証及び甲第200号証で示されたホームページ情報及び甲第201号証において示された雑誌記事により、商標「ルナ」「LUNAR」が、本件商標の出願時に、請求人の商標として需要者に広く認識されているとは到底認定できない。また、本件商標の登録査定時に、引用商標が請求人の商標として周知であったという主張も、甲第202号証及び甲第203号証において示された雑誌記事をもって立証されているとは到底認められない。
以上に示すように、請求人が引用商標として挙げた商標1「LUNAR」及び商標2「ルナ」は、本件商標の出願時及び登録査定時において、被請求人の商標として周知であったものであり、請求人の商標として周知であったものではない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号及び商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
引用商標が請求人の商標として本件商標の出願時及び登録査定時に周知性を獲得していない以上、本件商標が商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号及び商標法第4条第1項第19号に該当するものではないことは明らかであるが、さらに、加えて言えば、本件商標は不正の目的をもって出願されたものでは決してない。前述のように本件商標「ルナ」は、商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」に対して、商標「角川書店」と共に使用され、その出所は被請求人であると広く需要者に認識されているものである。また、乙第3号証の1に示すように、本件商標を付した商品は被請求人の商品として現在も販売されている。自己の業務にかかる商品に使用する商標について商標権による保護を求めることは、被請求人が自己の業務を安全に遂行するために当然の行為であって、不正の目的によるものではないことは明白である。
以上の通り、本件商標は商標法第4条第1項第10号第4条第1項第15号及び第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
よって、本件審判請求は成り立たないとの審決を求める。

第4.当審の判断
1 引用商標1及び2の周知性について
請求人の提出に係る甲各号証によれば、請求人が開発し販売している家庭用テレビゲームソフトには引用商標1及び2が付されており、該ゲームソフトは、平成4年6月26日の発売に先立つ平成3年11月頃から各種雑誌に紹介されたほか、その後も該ゲームソフトがシリーズとして発売される度に雑誌に掲載され、該ゲームソフトのパンフレットが作成配布されたこと、該ゲームソフトはコンパクトディスク等の記録媒体によって販売され、平成4年6月から平成5年10月までの1年5ヶ月間に99,373個、平成6年12月から平成7年3月の3ヶ月間に44,443個の販売数になるなど好評を博し、該ゲームに係る攻略本も多数発行されたこと、該ゲームソフトはセガサターン用やプレイステーション用に移植されると共に、「LUNAR」又は「ルナ」シリーズとして第4弾まで発売され、2002年4月にはシリーズ最新作が発売されていること、これらのシリーズはいずれも「LUNAR」又は「ルナ」の名称が冠されており、相当数の販売実績があったこと、該ゲームソフトに準じたストーリーの各種書籍が相当数販売されていることが認められる。
以上の事実によれば、引用商標1及び2は、請求人が開発し販売している家庭用テレビゲームソフトに使用する商標として盛大に使用された結果、本件商標の登録出願時には既に取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたというべきであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものというべきである。
2 本件商標と引用商標1及び2との対比
本件商標は、上記のとおり、「ルナ」の文字からなるものであり、「ルナ」の称呼を生ずるものである。
一方、引用商標1は、「LUNAR」の文字からなり、「ルナ」の称呼を生ずるといえるから、本件商標とは称呼上類似するものである。引用商標2は、「ルナ」の文字からなり、本件商標とは社会通念上同一といえるものである。
また、本件商標の指定商品の第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム」は、引用商標1及び2が使用されている家庭用テレビゲームソフトと同一又は類似する商品といえるものである。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、上記2の認定のとおり、取引者、需要者間に広く認識されている引用商標1及び2と類似するものであり、その指定商品中の第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム」と引用商標1及び2が使用されている商品とが類似するものである以上、本件商標は、その指定商品中の「家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム」については、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標法第4条第1項第15号について
引用商標1及び2は、上記2の認定のとおり、本件商標の登録出願時はもとよりその登録査定時においても取引者、需要者間に広く認識されていたものであり、本件商標と同一又は類似するものであること、本件商標は引用商標1及び2が使用されている商品と密接な関係を有するものというべき「その他の家庭用テレビゲームおもちゃ」及び「電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供に関する情報の提供、電子計算機端末による通信を用いて行うゲームの提供」等を指定商品とするものであることからすれば、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は直ちに引用商標を連想、想起し、該商品又は役務が申立人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものというのが相当である。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
5 被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人が弁駁書において新たな証拠を追加したことは、請求の理由の要旨変更である旨主張している。
しかしながら、本件審判事件において、請求の理由を立証するための新たな証拠の提出であって、請求の理由である無効理由の根拠条文を追加又は変更したものではないことから、請求の理由の要旨変更とは認められないので被請求人の主張は採用できない。
(2)被請求人は、本件商標「ルナ」は、商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」について、商標「角川書店」と共に使用され、その出所は被請求人であると広く需要者に認識されていると述べている。
しかしながら、被請求人提出の乙各号証によっては、使用時期、販売実績等が不明であり、到底本件商標「ルナ」が商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」に対し、商標「角川書店」の文字が、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたと認め得ることはできないことから、被請求人の主張は採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項(第1号)の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-07-20 
結審通知日 2004-07-22 
審決日 2004-08-05 
出願番号 商願2001-108628(T2001-108628) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (Z09)
T 1 11・ 271- Z (Z09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 2003-01-17 
登録番号 商標登録第4637117号(T4637117) 
商標の称呼 ルナ 
代理人 末野 徳郎 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 杉村 興作 
代理人 廣田 米男 

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