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審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200530479 審決 商標
取消200430051 審決 商標
取消200030828 審決 商標
取消2007300404 審決 商標
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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 111
管理番号 1103298 
審判番号 取消2001-30551 
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-05-18 
確定日 2004-08-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2601053号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2601053号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2601053号商標(以下「本件商標」という。)は、「Bolero」の欧文字を横書きしてなり、平成3年2月6日登録出願、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」を指定商品として、同5年11月30日に設定登録され、その後、同15年10月28日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、平成10年5月1日以降今日に至るまで、いずれの指定商品についても、商標権者又は使用権者のいずれによっても使用されていないから、取消しを免れない。
(2)答弁に対する弁駁
(ア)平成8年改正法により、商標法第50条第1項の規定に、片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって同一の称呼、観念を生じる商標は、社会通念上同一のものと認める趣旨の括弧書きが加えられたが、この改正の趣旨は、現実の取引においては、登録された商標がそのままの態様で使用されることの方がむしろ少ないという取引実状を配慮して、従来登録商標と同一性があるものとして扱われた程度の態様のものが使用されている場合は、これを登録商標の使用とみなして取消しの対象としないということを明らかにしようとしたものと推測する。
したがって、むやみやたらに片仮名とローマ字の文字の相互変更が認められるものではなく、相互に一対一の関係をもって変更できること、並びに変更後の称呼及び観念が互いに同一であることが要件とされる。
(イ)本件商標は、「Bolero」の欧文字よりなるものであるから、これより生ずる読みが「ボレロ」になることは否定しない。
しかしながら、被請求人が使用している「ボレロ」の仮名文字は、乙各号証に表されている「VORERO/ボレロ」等の使用態様からすれば、「Voice Recognition Robust」の略語である「VORERO」の読みとしての「ボレロ」の使用であることは明らかであり、「スペイン舞曲」等を意味する欧文字「Bolero」の読みとしての「ボレロ」ではないことは明白である。被請求人の使用に係る仮名文字「ボレロ」は、本件商標「Bolero」とは全く無関係なものであり、たまたま称呼において同一となっていても、その観念を全く異にする別異の商標である。
これは、例えば「ライス」の発音を同じくする「rice」(米)と「lice」(蚤)、「ライト」の発音を同じくする「light」(光)と「right」(右)、「シンク」の発音を同じくする「sink」(流し台)と「think」(考える)、「ノー」の発音を同じくする「no」(ない)と「know」(知っている)、「ロング」の発音を同じくする「long」(長い)と「wrong」(悪い)等の言葉を同一視できないことと同様である。
(ウ)しかるに、被請求人は、「VORERO」の読みに相当する「ボレロ」の使用を示すのみであって、被請求人提出に係る乙各号証のいずれも、本件商標「Bolero」の使用を示すものではない。
また、被請求人は、富士ゼロックス株式会社から本件商標を譲り受け、その移転登録を完了したことをもって、仮名文字「ボレロ」の使用は、被請求人の正当な使用権原によるものであると述べているが、本件商標は、「Bolero」の欧文字よりなるものであるから、仮名文字「ボレロ」とは別異の商標であることは明らかであり、その移転の事実により仮名文字「ボレロ」についての正当な使用権原が発生しているとはいい得ないものである。
(エ)次に、被請求人は、審決例を数例挙げているが、これらは連合商標の使用によって登録が維持された審決例にすぎず、仮名商標と英語表記の商標が同一であると判示しているものではない。
(オ)甲第1号証の平成10年審判第30956号事件は、登録商標「オービス」に対する不使用を理由とする登録取消の審判事件であって、欧文字「ORBIS」の使用によっては、登録商標「オービス」と同一の商標の使用とは認められず、登録取消が成立している。その理由は、登録商標「オービス」の綴りとしては「ORBIS」の他に「OBISU」、「OHBISU」など種々考えられる他、使用商標「ORBIS」が「オービス」とのみ称呼される関係にもないため、互いに同一の称呼及び観念を生ずるということはできず、両商標の社会通念上の同一性が否定されたものである。
本件においても、「ボレロ」の仮名文字は、本件商標「Bolero」とは無関係に、単に「VORERO」の読みとして使用されているにすぎないものであり、また、本件商標「Bolero」は、被請求人商標「VORERO」とは観念を全く異にする別異の商標であることは明白である。
(カ)因みに、被請求人は、使用商標「VORERO」については甲第2号証に示すとおり商標出願してはいるが、「ボレロ」の仮名文字については商標出願すらしていない。
これに対して、請求人は、その名称「ボレロ インターナショナル リミテッド」(Borero International Limited)からも明らかなとおり、真に商標「bolero」の使用を欲しているものである。
(3)以上のとおり、被請求人提出の書類のいずれも、被請求人商標「VORERO」に係るものであり、提出書証中に表されている「ボレロ」の仮名文字は、単に「VORERO」の読みを示すために使用されているにすぎず、本件商標「Bolero」の使用を立証するようなものではない。
したがって、本件商標が商標権者、使用権者のいずれによっても、本件審判請求の取消対象商品中のいずれの指定商品についても使用されていないことは明らかであるから、本件商標は商標法第50条の規定により取消しを免れないものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判請求の予告登録日以前から現在まで使用中である。
(ア)本件商標は、英文字「Bolero」で構成され、その最も自然で素直な称呼は、「ボレロ」である。また、その意味するところは、スペインの舞踏名であったり、あるいは、婦人衣服の一種として意味・観念が明確な馴染み深い外来語である(乙第2号証の1及び乙第2号証の2)から、商標「Bolero」と商標「ボレロ」は、社会通念上同一の商標である。
(イ)被請求人が、本件商標を使用している商品、音声認識用のソフトウエアは、その指定商品中「電子応用機械器具」に属するものである。
実際の商品は、乙第3号証のとおり、「CD-ROM」の形で、現在、提供されており、乙第4号証ないし乙第6号証は、該CD-ROMに貼付されているラベルである。これらから明らかなように、被請求人は、「ボレロ」を商標として、本件商標の指定商品に使用している。
(ウ)被請求人は、平成12年3月、本件商標に係る商品の開発と供給を開始した旨を発表した(乙第7号証ないし乙第11号証)。以後、顧客に対して積極的な販売活動を継続して現在に至っており、この間、国内外の有力電子機器、情報関連事業者数十社との間に、有償あるいは無償で、商品を提供してきた。乙第12号証は、顧客からの注文書(写)、乙第13号証は、この取引に係る納品書及び請求書控(写)であり、乙第14号証は、顧客の受領書(写)である。これらの商品内容の記載からして、乙第3号証ないし乙第6号証に示す商品が取引されたことが証明されている。
乙第15号証及び乙第16号証は、本件商標を使用している商品の宣伝活動を示す説明会用資料であり、2001年2月5日及び2001年5月28日のものである。
なお、2001年6月26日には、本格販売の新聞発表も実施しており(乙第17号証ないし乙第19号証)、また、2001年7月5日発行の日経産業新聞(乙第20号証)のとおり、詳細な商品紹介がなされるまでに至っている。
乙第21号証は、本件商標を使用している商品について、被請求人が開設しているインターネット・ホームページをアウトプットしたものである。以上から明らかなように、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標をその指定商品について、本件取消審判請求の予告登録日前3年以内において使用しているものである。
(エ)ところで、本件商標は、乙第1号証に示されるとおり、平成13年4月19日までは、富士ゼロックス株式会社の登録名義であった。
被請求人は、平成12年12月21日対価等実質的部分で譲り受けの合意成立に至り(乙第22号証)、登録原簿記載の日をもって移転登録を完了したものであるから、その日以後は、「ボレロ」の使用は、被請求人の正当な権原による使用であるし、平成12年12月21日以後であっても、その使用は、正当な権原によるものである。乙第12号証等に示された取引においての商標「ボレロ」の使用は、正当な使用権原によるものであることも明らかである。
(オ)「ボレロ」商標の使用が社会通念上「Bolero」商標と同一の商標の使用であるとすることは、次の審決例からも支持されるべきである。
すなわち、平成10年審判第30786号における「フォーカス」に対する「FOCUS」(乙第23号証)、平成9年審判第20001号における「BIOLUX」に対する「ビオルックス」(乙第24号証)、平成9年審判第3333号における「ファーロス/FAULOS」の「FAULOS」に対する「ファーロス」(乙第25号証)及び平成9年審判第12288号における「マイン」に対する「Mine SERIES」の使用(乙第26号証)であり、乙第21号証は、構造が本件と同一である。本件において、「ボレロ」に相当する英文字は、「VORERO」と表示されているが、このことは、「ボレロ」の使用が、本件商標と社会通念上同一か否かとは関係がないものというべきである。
(2)請求人の弁駁に対する再答弁
(ア)被請求人における商標は、英文字表記された「VORERO」であって片仮名表記された「ボレロ」は、商標ではないとする主張は、単なる独断であって、採用すべきでない。
(a)乙第3号証ないし乙第7号証には「ボレロ」が「VORERO」と特別の差異もなく並記されている。乙第7号証ないし乙第10号証及び乙第17号証ないし乙第20号証の新聞記事には、商品名として「ボレロ」が紹介されている。本来、これをもって、請求人の弁駁への反論は足りる。以下、敢えて、請求人の論難には理由がないことを付言する。
(b)商標が単一に定まるべきとする理由はない。取消を請求された商標と同一とみなされるものかどうかを認定するときに、表示された商標が一個の場合もあれば、複数の場合もある。一個であるか複数であるかを決める必要はない。採択の経緯・事情のみから、英文字表記部分のみが本件の商標であると認定することはできない。商標は、音声をもって取引に供されることの一事からして明らかである。仮に英文字から商標の採択・選定が開始されたとしても、本件においては、「ヴォレロ」の表記・表音もあり得たにもかかわらず、「ボレロ」を採択したものである。一義的、固定的に本件の商標は、「VORERO」のみであって、カタカナ部分は、読み方を指示するとか付記部分であるとかいうが如き請求人の主張は無意味である。要は、英文字部分、カタカナ部分が、商標として、それぞれ時には相依存し、時には、それぞれ独立に、商標として機能しているとみることに何の不自然も不合理もない。カタカナ表記「ボレロ」をみて、英文字では「VORERO」と表記するという理解のされ方もあるのである。出願人の主観・意図とは異なるところで、商標が機能し得ることには何の不思議もない。本件にあっては、「ボレロ」も商標として使用されているのである。
(c)請求人は、「ボレロ」を出願していないことを論難するが、「Bolero」と同一とみるべきもので、その禁止権の範囲に明らかに包含されるがゆえのことであるから、出願を考慮しなかっただけのことであり、「VORERO」のみが本件の商標であるとする理由にはならない。
(イ)請求人が挙げる「rice」、「lice」、「light」、「right」、「sink」、「think」、「no」、「know」、「long」、「wrong」等は、請求人の使用する商標が「VORERO」のみであるとする主張による例示にしかすぎない。甲第1号証及び甲第2号証も同様である。被請求人は、「ボレロ」も商標として採択・使用しているのである。「Bolero」に音楽用語や衣服用語があるにせよ、これの日本語としての発音は、「ボレロ」のみであり、逆に「ボレロ」は、「Bolero」であって、「VORERO」ではない。たまたま、先進技術分野での商標採択という事情があって、世界を意識して英文字表記が先行するにしろ、日本において使用する以上、その日本文字表記をも商標として意識することは、被請求人において当然であり、市場における需要者・消費者の基本部分が日本語を用いると考えるのが通常というものである。片仮名「ボレロ」のみが請求人主張の本件で唯一特定されるべき商標としての「VORERO」の「読み方」を説明した注記であるなどとは到底認識される筈もないことなのである。
(ウ)請求人は、被請求人が援用した審決例は、すべて連合商標として使用を認めたものであると主張するが、乙第23号証を除き事実に反する。また、乙第23号証の理由が、連合商標としての使用であるにせよ、英文字表記と片仮名表記のものとの社会的同一性を考えるうえでは同じ内容のものである。
(エ)請求人は、被請求人が商標「Bolero」「ボレロ」の正当な使用権利を取得した時期を云々することは、本件に無関係とする。さらに、請求人が「Bolero」商標の「真の」使用希望者であるとする言説は、商標が同一又は類似という「ふくらみ」があることを無視したものである。請求人が使用を希望する「Bolero.net」にしろ、被請求人の使用に係る「ボレロ」にしろ、先登録の「Bolero」からすれば、それぞれが実質同一、あるいは、極めて酷似の商標であることに何ら差異はない。これにつきさらにあえて付言する。
請求人は、先願関係にあることが比較的明白であった登録商標に係る商標権につき考慮・配慮をすることなく機械的に出願し、それを引用して拒絶されてはじめて、譲り受け交渉、不使用取消などに着手しているにすぎない。その時には、既に被請求人は、権利者との間で円満裡に本件商標の使用を可能とする段階に到達していたのである。複数の「希望者」がいて、そのいずれかが保護されるべきかは極めて明白であると信ずるものである。請求人の主張を認めるならば、日本において通常よく利用される確実・迅速・平穏を重視する商標実務を根底から覆す結果をもたらすことを意味する。
(オ)以上から明らかなとおり、請求人の主張には理由がない。

4 当審の判断
(1)商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、被請求人において、審判請求の登録前3年以内に日本国内において、取消請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを証明し、または使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、同条第2項の規定により、その登録の取消しを免れない。
(2)そこで、被請求人提出の乙各号証について、以下、検討する。
(ア)乙第3号証ないし乙第6号証
被請求人は、本件商標と社会通念上同一と認められる「ボレロ」の文字よりなる商標を、音声認識用のソフトウエアに使用しており、該ソフトウエアは、CD-ROMの形態(乙第3号証)で提供し、それに貼付したラベルは、乙第4号証ないし乙第6号証に示すとおりであると主張する。
しかしながら、上記乙各号証中で被請求人が使用する商標は、「VORERO/ボレロ」(以下単に「使用商標」という。)であって、「ボレロ」ではない。
すなわち、被請求人は、本件商標「Bolero」を片仮名文字に変更表記した場合「ボレロ」と表記し得ることから、使用商標の構成中の「ボレロ」の表記をもって、本件商標と社会通念上同一の商標を音声認識用のソフトウエアに使用していると主張するが、被請求人の使用商標は、上記のとおり、欧文字「VORERO」と片仮名文字「ボレロ」とをスラッシュを介し一体として表した「VORERO/ボレロ」の構成よりなるものである。
そして、かかる使用商標にあって、その構成中の片仮名文字「ボレロ」は、欧文字「VORERO」の読みを特定したものと容易に理解されるから、使用商標はその構成態様と相俟って、これに接する者をして、一体不可分のものと認識せしめるというのが相当であり、また、該「VORERO」の欧文字は、「VOice REcognition RObust」の各文字の語頭部の2文字を結合し表した、特定の意味合いを有することのない造語と認められるものであるから、上記構成よりなる使用商標よりは、直ちに特定し得る観念は生じないというべきである。
そうすると、「スペインの舞踊及び舞曲」の意味合いを有する本件商標「Bolero」と使用商標「VORERO/ボレロ」とは、たとえ、本件商標の片仮名文字による変更表記(「ボレロ」)と使用商標の構成中の片仮名文字部分(「ボレロ」)とが共通にするとしても、両者は、使用商標においてその構成中に、本件商標とは綴りの異なる「VORERO」の欧文字を有してなるものであり、しかも、両者はそれぞれより生ずる観念も異にするものといわなければならない。
したがって、使用商標の構成中の片仮名文字部分「ボレロ」のみを分離抽出し、かかる文字部分の表記をもって、本件商標と社会通念上同一の商標を音声認識用のソフトウエアに使用しているとする被請求人の主張は、これを採用することができない。
(イ)乙第7号証ないし乙第14号証
本件商標は、その商標登録原簿の記載に徴すれば、平成13年4月20日付けで、富士ゼロツクス株式会社(以下「前権利者」という。)から被請求人への商標権の移転登録がなされているところ、乙第7号証ないし乙第14号証は、いずれも上記移転登録前における被請求人の業務に係る商品に関するものであり、この時期において、被請求人が前権利者より通常使用権又は専用使用権を許諾されていたことを証明する証拠の提出もなく、登録原簿上もその旨の登録がされていない。
そうすると、被請求人は、本件商標の使用権者と認めることができないから、上記乙各号証は、被請求人が通常使用権者又は専用使用権者として本件商標を使用していたとすることを何ら証明する証拠とはなり得ないものといわなければならない。
この点について、仮に、乙第22号証の被請求人と前権利者との間での本商標権の譲渡に関する合意の確認(2000年12月21日付)と共に、それ以降、前権利者により被請求人に対し本件商標の使用権が承諾されていたとしても、乙第7号証ないし乙第11号証は、同合意の確認の日前の作成(発行)に係るものであるから、これら証拠は被請求人による使用権者としての本件商標の使用の証拠とはなり得ないこと上記と同様である。
また、被請求人は、「乙第12号証等に示された取引において商標『ボレロ』が付された商品は、正当な使用権原によるものであることも明らか」と主張するが、乙第12号証ないし乙第14号証よりは「ボレロ」の文字を見出すことができないばかりでなく(乙第12号証では「VORERO」の文字が使用されている。)、乙第3号証ないし乙第6号証(乙第12号証による取引の対象商品とみられる。)及び乙第11号証(被請求人による件外ARM社プロセッサ向け音声認識ソフトウエアの供給に関する新聞発表文。)の文中「2 今回開発した製品 ARMプロセッサ向け音声認識ソフトウエア『VORERO(ボレロ)』と音声モデル」の記載に徴すれば、上記一連の取引で使用されている商標は、むしろ、「VORERO/ボレロ」、「VORERO(ボレロ)」の文字よりなる商標と推認し得るものであるから、これら商標の使用をもってしては本件商標の使用には当たらないこと上記(ア)のとおりである。したがって、乙第12号証ないし乙第14号証をもってして本件商標の使用の事実を証明し得るものということはできない。
なお、乙第8号証及び乙第9号証は、被請求人作成の新聞発表文(乙第11号証)に基づき、各紙に掲載された新聞記事と認められるところ、その記事中には「ボレロ」の文字が単独で使用されている例が見受けられるが、新聞記事は、情報を伝達する利便性を目的として編集されるものであるから、そこに掲載された商標が実際の使用の商標と異なることは当然あり得ることであり、しかも、乙第7号証、乙第10号証及び乙第11号証を勘案すれば、被請求人の使用する商標は「VORERO(ボレロ)」といい得るものであるから、これをもって本件商標の使用の事実を証明するものということはできない。加えるに、被請求人は、乙第8号証及び乙第9号証の各新聞の発行の時期においては、本件商標の使用権を有していないものであること上記のとおりである。
(ウ)乙第15号証及び乙第16号証
乙第15号証及び乙第16号証は、本件商標の使用商品の宣伝活動を示す説明会用資料であるとするが、乙第15号証はその作成日(「2001年2月5日」及び「2001年1月31日」の2つの日付が確認できる。)が、本商標権の被請求人への移転登録前(但し、被請求人と前権利者との間での本商標権の譲渡の合意の確認日『2000年12月21日』以後。)のものであるばかりでなく、これら両資料において使用する商標は、「VORERO」と「(ボレロ)」の両文字を上下二段に一体として表示した態様よりなるものであるから、その構成中「ボレロ」の片仮名文字は「VORERO」の欧文字の読みを表したものと理解されるものといわざるを得ず、そうすると、かかる商標の使用によっては、本件商標の使用に当たらないこと上記(ア)と同様である。
(エ)乙第17号証ないし乙第21号証
乙第17号証ないし乙第19号証は、被請求人と件外ソフト開発・販売会社アクセスとが共同で音声の指示でインターネットの閲覧ができる携帯端末向け音声認識ソフトを開発したことを報じた新聞記事(2001年6月27日刊)、乙第20号証は、「旭化成の音声認識ソフト」と題した技術開発情報に関する新聞記事(2001年7月5日刊)、乙第21号証は、「第4回組み込みシステム開発技術展 ESEC2001」(2001/6/27〜6/29)に関する被請求人のインターネットホームページ情報である。
しかして、新聞記事は、情報を伝達する利便性を目的として編集されるものであるから、商標の実際の使用と異なることは当然であり、新聞記事でどのように扱われたかということと、実際の使用に係る商標の態様とを同列に論ずることはできない。
したがって、これら新聞記事中(乙第17号証、乙第18号証及び乙第20号証)には、被請求人の音声認識用ソフトについて「ボレロ」の文字が単独で用いられている事例もみられるが、これをもって本件商標の使用ということはできないばかりでなく、乙第20号証及び乙第21号証中の「VORERO(ボレロ)」、「VORERO/ボレロ」の文字の使用によっては、本件商標の使用に当たらないこと上記(ア)と同様である。
以上、被請求人の提出した乙各号証を検討するも、これらをもって、本件商標と社会通念上同一の商標を音声認識用のソフトウエアについて使用していたということを認めることはできない。
(オ)なお、被請求人は、商標の使用について「要は、英文字部分、カタカナ部分が、商標としてそれぞれ時には相依存し、時にはそれぞれ独立に、商標として機能しているとみることに何の不自然も不合理もない。」「本件にあっては、『ボレロ』も商標として使用されている」等と述べている。
しかしながら、商標法第50条不使用を理由とした商標登録の取消しの審判において判断されるべき対象は、登録商標と使用に係る商標との同一性であるから、かかる場合、使用に係る商標はその構成要素の全体を一体のものとして把握し、その上で登録商標との同一性を判断すべきであることはむしろ当然といわなければならない。
本件において、使用商標は、「VORERO/ボレロ」あるいは「VORERO」(ボレロ)、「VORERO(ボレロ)」の如く、いずれも欧文字「VORERO」と「ボレロ」の片仮名文字とを併記、併用してなるものであり、構成中片仮名文字「ボレロ」は欧文字「VORERO」の読みを表したものと容易に認識、理解できるものであるから、このような場合、使用商標は、欧文字部分と片仮名文字部分とを一体不可分のものとして把握し、本件商標との同一性を判断すべきである。
してみると、本件商標が、たとえ「ボレロ」の片仮名文字表記において使用商標と共通する要素があるとしても、これをもって両者が社会通念上同一の商標とみることはできないこと前述のとおりであるから、かかる理由をもってする被請求人の上記主張は、採用することができない。
(3)その他、答弁書の全趣旨及び提出に係る全証拠を総合して勘案するも、これよりは、本件商標をその指定商品について使用しているとする事実を発見することができないから、これによっては、被請求人が本件商標をその指定商品について、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において使用した事実を客観的に立証したものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-16 
結審通知日 2004-06-17 
審決日 2004-07-20 
出願番号 商願平3-10299 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (111)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 斎内山 進 
特許庁審判長 柴田 昭夫
特許庁審判官 鈴木 新五
山田 正樹
登録日 1993-11-30 
登録番号 商標登録第2601053号(T2601053) 
商標の称呼 ボレロ 
代理人 神林 恵美子 

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