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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 101
管理番号 1101686 
審判番号 取消2003-30344 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-03-25 
確定日 2004-08-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第1042362号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1042362号商標の「防臭剤」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第1042362号商標(以下「本件商標」という。)は、「エスパラ」の文字を横書きしてなり、昭和42年5月15日に登録出願、第1類「防虫、防臭剤」を指定商品として昭和48年11月12日に設定登録され、その後、昭和58年12月21日、平成5年12月22日及び平成15年7月15日の3回に亘り商標権の存続期間の更新登録がされているものである。

2 請求人の主張の要点
請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べている。
(1)被請求人は、本件商標を、指定商品中「防臭剤」について、継続して3年以上日本国内において使用していない。
また、登録原簿謄本に示すとおり、本件商標について専用使用権者又は通常使用権者の設定登録がなされていないことから、使用権者の存在及びそれによる本件商標を使用している者も存在しない。
したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品中「防臭剤」について使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定よりその登録は取消されるべきである。
(2)被請求人は、本件商標が使用されていると主張し、被請求人の販売にかかるカタログ等(乙第1及び第2号証)を提出している。
しかしながら、この乙各号証のどこにも、本件商標が取消請求にかかる防臭剤用に使用されている証拠は全く記載されていない。
却って、乙第1及び第2号証のそれぞれ5ページには、被請求人が防臭剤たるパラジクロロベンゼン製剤に「トイレ用芳香ボール」、「カラーボール」及び「ゴールドダリア」という商品名を付して販売していることが記載されている。
したがって、本件商標については、登録から3年以上防臭剤用に使用されていないことが明らかであり、取消されるべきものである。
(3)なお、被請求人は、乙第3号証を提出して、本件商標を使用した「防虫剤」と取消にかかる指定商品「防臭剤」が同じ化学成分(パラジクロロベンゼン)を含むことを理由として、本件商標が指定商品「防臭剤」において使用されていると強弁するが、かかる主張は失当である。
まず、商標とは商品に付される標識であり、その使用、不使用については、商品に当該商標が使用されているのかどうかに基づいて判断すべきであって、その主成分の異同は、そもそも問題にはならない。
被請求人提出のカタログ(乙第1及び第2号証)においても、防虫剤と芳香・消臭剤は画然と分離して掲載されており、これだけを見ても、被請求人が防虫剤と芳香・消臭剤を別異の商品として理解し、需要者に対しても、別異のものとして宣伝広告を行っていることが分かる。
また、被請求人のみならず、防虫剤、防臭剤の業界では、パラジクロロベンゼンを使用した防虫剤が、多数の異なる商品名で販売されており、このことも主成分が同じでも異なる商品として多数存在することを示している(一例をあげれば、インターネットの「http://www.medic.ne.jp/lecture/poison9904/sld031.htm」におけるパラゾール、パラホーム、ムシクワン、モスノー等の記載など)。
しかも、前記のとおり、被請求人自らが本件商標と異なる「トイレ用芳香ボール」、「カラーボール」及び「ゴールドダリア」という商品名を付して販売しながら、同じ成分を含むとはいえ、本件商標を使用しているとするのは、無理がすぎる。
(4)以上のとおり、同じ成分を含む製品であっても、被請求人自ら本件商標と異なる商品名で製品を販売しており、また商品名を異にする多くの製品が販売されている以上、本件商標を使用した「防虫剤」と取消に係る指定商品「防臭剤」が同じ化学成分(パラジクロロベンゼン)を含むことを理由として、本件商標が指定商品「防臭剤」において使用されていると主張する被請求人の主張は当を得ないものであることは明らかといわねばならない。
したがって、本件商標が使用されていると判断することはできず、本件商標の指定商品「防臭剤」については、取消を免れることはできない。

3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第3号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)本件審判請求の趣旨は、本件商標の指定商品が昭和34年法第1類「防虫、防臭剤」であるところ、その中の「防臭剤」について、不使用を理由として取消を求める、というものである。
(2)本件商標の商標権者は、本件商標を、指定商品中「防虫剤」について本件審判請求前3年内に使用している。その証拠として乙第1及び第2号証を提出する。
乙第1号証は2002年秋、乙第2号証は2003年春発行の本件商標権者の製品総合カタログである。これにより本件審判請求の3年内、しかも3月前より現在に至るまで本件商標を使用していたことが明らかである。
(3)ところで、本件審判における取消対象商品である「防臭剤」は、前記指定商品「防虫剤」とともに、パラジクロロベンゼンを原料とする製品であり(乙第3号証)、「防虫剤」は「防臭剤」の効果をも有し内容的に同一商品といえるものである。販売に際し「防虫剤」と表示するか、「防臭剤」と表示するかの相違である。
したがって、本件審判において、「防虫剤」と「防臭剤」とを同一商品とみなして取り扱うも不自然ではないと思料する。
よって、本件商標は、指定商品中「防臭剤」にも使用しているとみることが可能である。
(4)以上述べたように、本件商標権者は、指定商品中「防虫剤」にはもちろん、残りの指定商品「防臭剤」にも使用しているものといえるから、本件審判請求は、理由がない。よって、本件審判の請求は成り立たない。

4 当審の判断
被請求人は、本件商標を指定商品中「防臭剤」と実質的に同一商品といえる「防虫剤」について使用しているとして乙号証を提出しているので、提出に係る各乙号証について検討する。
(1)乙第1号証は2002年秋版の、乙第2号証は2003年春版の被請求人の製品総合カタログであると認められるところ、両者の4頁には、いずれも防虫剤の表示の下に本件商標を付した商品の包装箱の写真及び本件商標が、<パラジクロルベンゼン製剤>、「特長●ハンガータイプの洋服ダンス用防虫剤のお得な詰替タイプです。」の文字と共に掲げられていることが認められる。そして、上記商品カタログは、本件審判の請求の登録前3年以内に発行され頒布されたものと推認できるものである。
してみれば、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において被請求人によって商品「防虫剤」について使用されていたものとみて差し支えない。
(2)しかしながら、本件審判において登録の取消を求めている商品は、「防虫剤」ではなく、「防臭剤」である。この点に関し、被請求人は、取消対象商品である「防臭剤」は「防虫剤」と共にパラジクロロベンゼンを原料とする製品であり、「防虫剤」は「防臭剤」の効果をも有し内容的に同一商品といえるものであるから、両者を同一商品とみなして取り扱うも不自然ではないとして、本件商標は指定商品中「防臭剤」にも使用しているといえる旨主張している。
ところで、岩波書店発行「広辞苑第5版」によれば、「防臭剤」は、「悪臭を消す薬剤。木炭・石炭など臭気を吸収するものと、石炭酸・樟脳油・芳香油など強い芳香で臭気を感じにくくさせるものとがある。臭気止め。」とされ、同じく「防虫剤」は、「害虫を防ぐ薬剤。樟脳・ナフタレンの類」とされており、用途、効能等を全く異にする別異の商品といえる。
そして、原料が同じであっても、商品の用途、効能、取引形態等により別異の商品として取り扱われる商品は存在するのであって(例えば、化学品としての「硫酸アンモニウム」と肥料としての「硫安」は、実質的に同じ商品でありながら、用途の違いにより別異の商品として取り引きされている。)、原料が同じだからといって直ちに同一商品とみることはできない。むしろ、被請求人の提出に係る乙第3号証の1において、「パラジクロロベンゼン等を含む商品中のダイオキシン類濃度」の欄に掲げられているように、毒性等量が「防虫剤」では「0〜27」とされ、「トイレ防臭剤」では「0〜0.065」とされており、原料が同じであっても、その用途により成分濃度等を異にし別異の商品として扱われているといえる。
仮に、防臭効果のある防虫剤ないしは防虫効果のある防臭剤が存在するとしても、それぞれの効果はいわば副次的なものであって、需要者は、その副次的効果を期待して商品を求めるものではなく、自己の用途、目的に応じて、「防虫剤」又は「防臭剤」としての商品を求めるというべきであり、当該業界においてもそのように取り引きされているとみるのが自然である。
現に、被請求人の提出に係る上記商品カタログ(乙第1及び第2号証)においても、「防虫剤」と「防臭剤」「芳香・消臭剤」とは画然と分離して掲載されており、これに接する取引者、需要者は、これらの商品を別異の商品として理解し認識するとみるのが自然である。そして、上記商品カタログに掲載された「防虫剤」の欄には、上記のとおり、本件商標が表示されているものの、「防臭剤」の欄には本件商標の表示はなく、「トイレ用芳香ボール」、「カラーボール」及び「ゴールドダリア」の表示があるのみである。
その他、本件商標が商品「防臭剤」について使用されていることを認めるに足る証拠の提出はない。
以上からすると、本件商標は、本件取消請求に係る商品「防臭剤」については使用されていなかったものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その請求に係る指定商品「防臭剤」について使用されていないものであり、また、使用されていないことについて正当な理由があるともいえないから、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-05-21 
結審通知日 2004-05-25 
審決日 2004-06-24 
出願番号 商願昭42-28496 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (101)
最終処分 成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 富田 領一郎
小川 有三
登録日 1973-11-12 
登録番号 商標登録第1042362号(T1042362) 
商標の称呼 エスパラ 
代理人 松田 省躬 
代理人 石津 義則 

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