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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z07
管理番号 1101647 
審判番号 取消2003-30560 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-05-01 
確定日 2004-08-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4317158号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4317158号商標の登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4317158号商標(以下「本件商標」という。)は、「Honda Soichiro Spirit」の文字を横書きしてなり、第7類「金属加工機械器具,鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,プラスチック加工機械器具,半導体製造装置,ゴム製品製造機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び「水車・風車」を除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,水車,風車,風水力機械器具,農業用機械器具,漁業用機械器具,ミシン,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,機械式駐車装置,芝刈機,食器洗浄器,修繕用機械器具,電気式ワックス磨き機,電気洗濯機,電気掃除機,電機ブラシ,電気ミキサー,電動式カーテン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,乗物用洗浄機,廃棄物圧縮装置,廃棄物破砕装置,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」を指定商品として、平成10年2月23日に登録出願、同11年9月24日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
(1)請求の趣旨及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによってもその指定商品について使用された事実がないから、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録は、取り消されるべきものである。
(2)被請求人の答弁に対する弁駁
ア 本件商標の不使用について
被請求人は、平成15年7月18日提出の審判事件答弁書第3頁(2)「本件商標が使用できる状況にないこと」の項目中の結論部分において「本件商標を使用することなど到底できない。」と述べ、また、平成15年10月23日提出の審判事件第2答弁書第8頁前半部分においても、「本件商標を使用することなど到底できない。」及び「本件商標の使用もまた不可能な状況になっているのである。」と述べている。
したがって、本件商標がその指定商品について過去3年間不使用であることを被請求人が自認していることは明らかである。
不使用についての正当な理由の存否について
(ア)商標法第50条第2項ただし書の「不使用の正当理由」とは、「地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することができない事由が発生したために使用をすることができなかった場合」に限定されているところであるが、本件では、このような「地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由、法令による禁止等の公権力の発動に係る事由等商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することができない事由」は発生していない。
(イ)被請求人は、裁判が多数提起されていることをもって本件商標が使用できなかった旨を主張している。
しかし、被請求人が提出した乙第4号証「仮処分命令申立書」、乙第5号証「訴状」、乙第6号証「仮差押命令申立書」及び乙第7号証「訴状」の記載から明らかなとおり、本件審判事件の被請求人を相手方とする訴訟は提起されていない。また、上記訴訟が多数係属していても、本件商標の使用に対し何らの関係もないのであるから、本件商標の使用にあたり何らの支障もない。
したがって、被請求人の主張には理由がない。
権利濫用について
(ア)被請求人は、平成15年7月18日提出の審判事件答弁書第4頁及び同年10月23日提出の審判事件第2答弁書第9頁において、「請求人が本件商標の使用を意図しているのであれば、本件審判請求のような被請求人から本件商標を奪うに等しい行為に及ぶことなどあり得ない。」として、「本件審判請求は、いわば権利の濫用として却下されるべきものである。」と述べている。
(イ)そもそも立法趣旨(甲第6号証)に遡っても、不使用取消審判制度の公益性から商標法第50条第1項において請求人適格として「何人も」と明記されていること、及びこの趣旨を前提としてもなお「権利濫用」とする具体的な証拠に基づいた合理性のある法的根拠が何ら示されていない。
(ウ)被請求人は、「請求人が本件商標の使用を意図しているのであれば」との立論を前提とするが、請求人は、亡き父親である「本田宗一郎」の氏名を容易に想起させる「Honda Soichiro」の文字部分を構成要素とする商標の使用が、遺族である本田家又は同氏が創業した本田技研工業株式会社において、現状においてそのコントロールが及び得ない結果となっている法人によって自由にその営業行為に使用されることを阻止するために本件審判請求を遂行するものであるのである。また、上記事情は、本件審判の請求行為が不使用取消審判制度の公益性の趣旨に合致するものであり、被請求人を害することを目的とするような行為ではないことを明らかに示すものでもある。
(エ)したがって、本件審判請求が権利濫用であることを理由に本件審判請求は却下されるべきであるとする被請求人の主張自体が失当である。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
(1)本件商標が使用されるべき状況にないこと
ア 本件商標が本田宗一郎記念館事業に用いられるべきこと
被請求人は、本田技研工業株式会社(以下「本田技研」という。)の創業者である故本田宗一郎の偉業を称え、その精神を後世に伝えるための事業、具体的には、本田宗一郎に関する記念館の設立、維持及び運営等(記念館においては、自動車関連書籍の図書館や自動車の展示場、各種企画の受け入れ、刊行物発行などが予定されている。)を主たる目的として設立された会社である。そして、本件商標は、被請求人がこのような事業に関連して、例えば、来館者に販売する商品や提供する役務に付して用いるために登録を行った商標である。目下、本件商標は使用されるべき状況下にないが、このような状況に至った経緯について、以下、詳論する。
イ 廣川則男が記念館事業を思い立ったこと
廣川則男(以下「廣川」という。)は、昭和41年に本田技研に入社し、以後平成8年に至るまで、同社にて主に財務や監査に関する業務に従事していた。在職中、廣川は、フランスやイギリス、オランダに所在する本田技研の関連会社など、海外で勤務する機会が多く、本田宗一郎が出席する海外での会議では本田宗一郎自身の補助役を務めるなど、本田宗一郎と直接に接触する機会も多かった。このようにして、廣川は、永年にわたって本田技研に勤務する中で本田宗一郎の人柄に触れるうち、その挑戦を忘れない精神に心酔するようになっていった。「成功は 99%の失敗に支えられた1%であるから、失敗を恐れず、果敢に挑戦しろ。」なる言葉は本田宗一郎が本田技研設立25周年に引退するにあたって残したものであるが、この言葉は、廣川の記憶に鮮明に残っている。
平成2年ころに至り、廣川は、このような本田宗一郎の偉業を称え、その精神を後世へと伝える記念館事業を思い立つようになった。廣川は、当時勤務していたイギリス、ロンドンにて、当時の株式会社三菱銀行の関連会社であった株式会社三菱銀行ファイナンスロンドン支社長ら現地日本人駐在員のほか、本田宗一郎と縁のある外国人の友人・知人に声をかけ、週に一度ほど、食事をしながら事業の企画について話し合う同好会を組織するようになった。その後、平成5年ころになり、廣川は本田技研より帰国を命じられたが、帰国してからも廣川の情熱は冷めず、渋谷区恵比寿所在のビルの一室を借受け、そこを活動拠点に、更に旧来の、あるいは新規に加入してきたメンバーと構想を具体化していった。
ウ 廣川が被請求人を設立したこと
記念館の構想が徐々に具体化するにつれ、廣川は、資金集め等、その準備を組織的に行う必要があることを感じるようになった。そこで、廣川は、イギリス、ロンドンにて同好会のような形で記念館の構想を温めていた当時から使っていた「本田宗一郎の精神」を意味する「本田宗一郎スピリッツ」という表現を用いて会社を設立することとしたのである。ただ、廣川は、当初、「本田宗一郎スピリッツ」(注:Honda Soichiro Spirit)という表現を、アルファベットを用いて略した「エッチ・エス・エス・シー(注:Honda Soichiro Spirit Corporationの頭文字)」を会社の商号とすることとした。廣川が、本田宗一郎の名前を会社の商号に用いると、記念館事業が万一失敗に終わった場合、その事業の失敗そのものにより本田宗一郎の名が傷つけられることになってしまいかねないと考えていたからである。こうして、廣川の出資により、株式会社エッチ・エス・エス・シーが設立されるところとなった(乙第1号証)。なお、平成10年11月16日、廣川が構想していた記念館は、本田宗一郎の未亡人である請求人の母親及び請求人の強い希望により、本田宗一郎が死亡するまで住んでいた自宅にて仮オープンすることとなるが、それに先立つ平成9年末ころ、廣川らは、この仮オープンの告知を兼ねた新年の挨拶状を作成することとし、その挨拶状には本田宗一郎の名を明記したいと考えていた。また、平成9年5月31日には、廣川の構想に賛意を示した請求人が既に被請求人の代表取締役に就任しており、記念館事業の見通しも立って来ていた。
そこで、同社の商号は、平成9年11月7日、「エッチ・エス・エス・シー」から「本田宗一郎スピリッツ」へと変更された(乙第1号証)。
エ 記念館が仮オープンに漕ぎ着けたこと
請求人は、自動車エンジンの製造や販売等を目的とする株式会社無限(以下「無限」という。)の代表取締役を務めていたが、平成5年ころから廣川が本田技研から無限に監査役として派遣されたため(乙第2号証)、役員として顔を合わせることが多くなり、やがて親しく付き合うようになっていった。このような親交の中で、廣川が記念館事業構想に論及すると、請求人はこれに強烈に興味を示し、自らがこれに関わることを熱望した。廣川からすれば、請求人の参加に格別の期待をしていたわけではなかったが、本田宗一郎の直系が本田宗一郎の精神を継ぐこの記念館事業に参加することによってなお一層その趣旨が明解になるとも言えるし、格別これを峻拒する理由もなかったことから、請求人の希望を容れることとした。こうして、請求人は、廣川が持っていた記念館事業に関与することとなったのである。また、この後、本田宗一郎の未亡人もこの記念館構想を聞き及び、これに参加する意思を表明してこの構想に関与することとなったが、本田宗一郎が住んでいた家から記念館事業をスタートしたいとの要望を持っていた。こうして、平成10年11月16日、同地にて本田宗一郎記念館が仮オープンするところとなったのであった。なお、仮オープンに際しては、本田宗一郎に縁のある国内外の著名人が招聘された。
この仮オープンの後も、記念館本オープンに向けての準備は着々と進められ、平成12年7月31日には、被請求人とともに記念館事業に関与していた株式会社ヒロ・コーポレーションが、記念館用地として、港区南麻布所在の土地を取得した(乙第3号証)。
オ 請求人が廣川を捩じ伏せようとしていること
このようにして記念館事業に参加した請求人であったが、実のところ、請求人は純粋に記念館事業の趣旨に賛同したわけではなかった。請求人は、記念館事業を一つの契機として、記念館事業の実現に邁進する廣川を利用し、本田家が有する財産の管理会社である本田興産の株式を取得するなどして、その思惑を実現していった。
ところが、平成12年の終わりころ、廣川が記念館の企画等について相談をするために何度連絡を試みても、請求人との間で連絡が取れなくなってしまった。そして、突然、請求人は、廣川や廣川が所有する会社などに相当数の民事保全の申立や民事訴訟の提起を行い始め、その後も、刑事告訴などを行ったのである。また、請求人が関与したとしか考えられないマスコミ報道も出始め、廣川は日常生活もままならない状態に追い込まれてしまった。このような請求人による一連の行動は、自らの責任を免れるために、全ての責任を廣川に擦り付けようとしたものと強く推認される。事実、これまでにも、請求人は、廣川に海外での資金調達等を委託しておきながら、これを一方的に中止してしまったという経緯がある。請求人は、いわば、法的手続やマスコミなどを利用して、廣川に強烈かつ不当なプレッシャーを加え、廣川をねじ伏せて事実を隠蔽しようとしているとしか考えられない。本件審判請求もまた、このような一連の行動の一環に他ならないのである。
カ 被請求人の株主権が争われていること
このような一連の法的手続の中で、請求人は、自らが被請求人の株主であると主張し、平成14年9月17日付けにて、被請求人の株券の執行官保管及び処分禁止を命ずる仮処分の申立を行い(東京地方裁判所平成14年(ヨ)第3824号仮処分命令申立事件、乙第4号証)、更には、株券の引渡を求める訴えを提起した(東京地方裁判所平成14年(ワ)第27633号株券引渡請求事件、乙第5号証)。また、請求人は、ヒロ・コーポレーションが記念館建設用地として取得した港区南麻布の土地に対して仮差押を申立て(平成13年(ヨ)第694号仮差押命令申立事件、乙第6号証)、株式会社ヒロ・コーポレーション等に対し、当該物件の所有権移転登記手続等を求める訴えを提起している(東京地方裁判所平成14年(ワ)第14146号土地所有権移転登記等請求事件、乙第7号証)。このような状況の下では、被請求人が記念館事業を進展させることなど到底できず、したがって、本件商標を使用することなど到底できない。
キ 小括
以上のとおり、被請求人は記念館事業の実現に向けて現実に活動をしてきたところ、近時になって請求人が一連の騒動に被請求人を巻き込み、被請求人は事業の進展を中断せざるを得ない状況となってしまっており、したがって、本件商標の使用もまた不可能な状況になっているのである。このような状況は請求人が引き起こしているものであり、被請求人の責に帰すことはできないものである。
(2)請求人の申立が権利濫用であること
このような請求人による一連の行動は、自らが本田宗一郎の唯一の後継者であることを内外に認めさせ、自らの責任を免れるために、全ての責任を廣川に擦り付けようとしたものと強く推認される。事実、これまでにも、請求人は、廣川に海外での資金調達等を委託しておきながら、これを一方的に中止してしまったという経緯があった。請求人は、廣川らに対して多数の民事保全及び民事訴訟を提起している上、刑事告訴までも行っているし、一方では、請求人が関与したとしか考えられないマスコミ報道が行われている。結果として、廣川らは、日常生活さえままならない状況に陥れられてしまっているのである。請求人は、いわば、法的手続やマスコミなどを利用して、廣川に強烈かつ不当なプレッシャーを加え、廣川をねじ伏せて事実を隠蔽しようとしているとしか考えられず、本件もまたその一環であると考えざるを得ない。請求人は、訴訟という手続に訴えてまで被請求人が自らの所有する会社であると主張しているが、仮に、請求人が本件商標の使用を意図しているのであれば、本件審判請求のような被請求人から本件商標を奪うに等しい行為に及ぶことなどあり得ない。
以上のとおり、本件審判請求は、いわば権利の濫用として、却下されるべきものである。

4 当審の判断
(1)商標法第50条は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる、と規定しており、同条による商標登録の取消審判の請求があったときは、被請求人は、その取消請求に係る指定商品について当該商標を使用していることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取消を免れないものである(同条第2項)。
(2)本件商標の使用の有無について
被請求人は、本件商標の使用の事実について、何ら主張立証するところがない。かえって、本件商標の不使用について正当な理由がある旨を主張している。
したがって、本件審判請求の登録がなされた平成15年5月28日前3年内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていた事実は、認められない。
(3)不使用についての正当な理由の存否について
商標法第50条第2項ただし書きにいう登録商標の不使用についての「正当な理由」あるといえるためには、登録商標を使用しないことについて当該商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の責に帰することのできない事情がある場合、例えば、地震、水害等の不可抗力、放火、破壊等の第三者の故意又は過失による事由等が発生したために使用することができなかった場合をいうものと解するのが相当である(平7(行ケ)124 平8.11.26判決、平9(行ケ)53 平9.10.16判決、平14年(行ケ)50 平14.9.20判決、特許庁編逐条解説14版1087頁末行ないし1088頁3行)。
これを本件についてみるに、被請求人が本件商標の不使用についての「正当な理由」として主張する事由は、要旨次のとおりである。
被請求人代表者廣川は、本田宗一郎の挑戦を忘れない精神(成功は 99%の失敗に支えられた1%であるから、失敗を恐れず、果敢に挑戦しろ。)に心酔し、本田宗一郎の偉業を称え、その精神を後世へと伝える記念館事業を思い立ち、本田宗一郎に関する記念館の設立、維持、運営等を主たる目的として被請求人を設立した。被請求人は、これらの記念館事業に関連して本件商標を使用する予定であったところ、平成8年10月17日株式会社エッチ・エス・シー設立(乙第1号証)、平成9年11月7日被請求人の現在の商号に商号変更(乙第1号証)、平成10年11月16日本田宗一郎記念館を未亡人宅で仮オープン、平成12年7月31日株式会社ヒロ・コーポレーション記念館用地取得(乙第3号証)等記念館事業が進展していた。
請求人は、廣川や廣川が所有する会社などに、平成14年9月17日被請求人の株券の執行官保管及び処分禁止を命ずる仮処分の申立(東京地方裁判所平成14年(ヨ)第3824号仮処分命令申立事件、乙第4号証)、平成14年12月18日株券の引渡を求める訴えを提起(東京地方裁判所平成14年第27633号株券引渡請求事件、乙第5号証)、平成13年2月26日株式会社ヒロ・コーポレーションが記念館建設用地として取得した港区南麻布の土地に対して仮差押を申立て(平成13年(ヨ)第694号仮差押命令申立事件、乙第6号証)、平14年7月2日株式会社ヒロ・コーポレーション等に対し、当該物件の所有権移転登記手続等を求める訴えを提起(東京地方裁判所平成14年(ワ)第14146号土地所有権移転登記等請求事件、乙第7号証)等民事保全の申立や民事訴訟を提起し、刑事告訴等を行った。また、請求人が関与したとしか考えられないマスコミ報道が行われた。
このように、被請求人は、記念館事業の実現に向けて現実に活動をしてきたが、近時になって請求人が引き起こした一連の騒動に巻き込まれたため、同事業の進展を中断せざるを得ない状況となり、本件商標の使用もまた不可能な状況になっているものである。
しかしながら、被請求人は、同人の主張する記念館事業に本件商標の使用を予定していたものであるとしても、同人が主張する民事保全の申立や民事訴訟の提起は、請求人によってなされたものではないばかりか、本件商標が設定登録された平成11年9月24日から相当期間経過しているのに上記主張以外に本件商標の使用状況または準備状況についての具体的主張立証はなく、その妨げになったとの事実は認められないものであるから、これらの主張事由が本件商標の不使用につき商標権者の責に帰することのできない事由が発生した場合に該当するものとは到底いえず、その他の主張事由について「正当な理由」に該当すると認めるに足りる証拠はない。
したがって、被請求人が主張する上記事由は、いずれも商標法第50条第2項ただし書にいう「正当な理由」に該当するものとはいえないものである。
(4)本件審判請求の権利濫用の該当性について
被請求人が本件審判の請求を権利濫用であるとして主張する事由の要旨は、請求人は、廣川らに対して多数の民事保全及び民事訴訟を提起していること、刑事告訴までも行っていること、請求人が関与したとしか考えられないマスコミ報道が行われていること、廣川らは、日常生活さえままならない状況に陥れられてしまっていること、にある。
商標法第50条の審判の請求人適格については、平成8年の商標法改正で上述したとおり、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる、と規定しており、請求人適格を「何人」に認められるとしても、当該請求が被請求人を害することを目的としていると認められる場合には、その請求が権利濫用として認められない可能性があると解される(特許庁編逐条解説14版、1087頁10行ないし11行)。
しかしながら、被請求人の主張する上記事由については、本件全証拠から権利の濫用とすべき事実を認めることができず、他に権利の濫用と認めるに足る証拠がない。
したがって、本件審判の請求を権利の濫用とすることはできない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定商品のいずれかについて使用をしている事実が認められず、かつ、本件商標の不使用について商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかに正当な理由があるとも認められないものであり、本件審判の請求が権利の濫用とは認められないものであるから、商標法第50条の規定により、本件商標の登録は、取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-08 
結審通知日 2004-06-10 
審決日 2004-06-23 
出願番号 商願平10-13463 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Z07)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 茂木 静代
野本 登美男
登録日 1999-09-24 
登録番号 商標登録第4317158号(T4317158) 
商標の称呼 ホンダソーイチロースピリット、ホンダソーイチロー 
代理人 高橋 健一 
代理人 井上 雄樹 
代理人 石戸 久子 
代理人 牛島 信 
代理人 渡邉 弘志 
代理人 橋場 満枝 
代理人 山口 栄一 

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