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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 全部取消 商標の同一性 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 130
管理番号 1096656 
審判番号 取消2003-31101 
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2003-08-19 
確定日 2004-04-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2546144号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2546144号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2546144号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり構成よりなり、第30類「羊かん」を指定商品として、平成2年10月26日登録出願、同5年6月30日に設定登録され、同15年2月18日に商標権存続期間の更新登録がなされたものである。その後、指定商品については、平成15年3月12日に書換の登録がなされ、第30類「ようかん」となったものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出し、さらに、参考資料として、参考資料1を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標権者若しくは使用権者によって、その指定商品「ようかん」について、少なくとも過去3年以上継続して使用された事実はない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項により、取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標は、別掲のとおり、松葉を三角状に配置し、大枝を下方に湾曲させ下部中央部分に白抜きで漢字「夏」を表記した図形部分と、これに続けて「二本松羊羹」と行書で縦書き表示した構成からなるものである。上記図形部分と「二本松羊羹」の文字部分は、同一の色彩を施すことが条件とされ、この形態を指定商品「ようかん」に使用するものである。
本件商標のうち、「二本松羊羹」の文字部分は、産地を表示するもので、商標としての顕著性を備えていない。本件商標の特徴は、松葉を三角状に配置し、大枝を下方に湾曲させ下部中央部分に白抜きで漢字「夏」を表記した図形部分にあり、この部分に縦書きで「二本松羊羹」と同一色彩で表示された様態が使用されて、初めて商標の機能が発揮されるものと思料する。
(2)登録商標の不使用
商標の要旨を変更する形態の商標は、登録商標の使用とは社会通念上、取引の経験則に基づき、登録商標の使用とはいえない(発明協会発行「商標審査基準の解説」375頁ないし386頁:参考資料1)。上記解説によれば、同一商標といえるためには、縦書きを横書きにする程度の変更が許されるのみである。
乙第1号証、乙第2号証及び乙第6号証に示された商標(以下「使用商標」という。)は、下地に色違いで薄く図形部分を表し、その上に黒で「二本松羊羹」と楷書で表示されている。そして、「二本松羊羹」は、単に商品「ようかん」の産地を表示したのみで、本件商標の形態ではない。特に、図形部分と「二本松羊羹」の色彩が異なることは、「二本松羊羹」が登録商標のような錯覚を取引者及び需要者に与えるものであって、社会通念上も、取引の経験則からも、登録商標の使用といえるものではない。
被請求人は、使用商標に関し、答弁の理由中で、「・・商標についての面白さがあり、・・当該商標が付された商品に愛着を抱くに至ると考えられるのである。」と縷々説明しているが、この説明は、まさしく登録商標の使用ではないことを述べているものである。また、登録商標の使用に該当することを誇示付けるために、「・・観念が一致する面白さがある・・」と主張するが、観念が一致する商標は、社会通念上、類似する商標に該当するものであり、登録商標の使用を逸脱する使用であるから、本件商標の使用に該当しないものである。さらに、被請求人は、図形部分の「夏」の部分が「二本松羊羹」の文字に隠れていることを認めており、これは、登録商標の構成と相違している形態で使用していることを明言しているものである。
このように、使用商標の態様は、登録商標の使用でないことは明白な事実である。
(3)乙第3号証ないし乙第5号証及び乙第7号証には、商品の表面に添付される印刷紙及び商品案内リーフレットを印刷したことが開示されているが、これらは、使用商標に係るものであり、使用商標は、上述のとおり、登録商標の使用でないことからして、本件商標のものでないことは明らかである。
(4)むすび
よって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に登録商標を継続して使用したことを何ら証明していない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 使用の事実
(1)乙第1号証は、商標権者(被請求人)の販売に係る商品「ようかん」の写真であり、乙第2号証は、乙第1号証に示した「ようかん」の表面に添付されている印刷紙である。
上記商品及び印刷紙には、短冊状紙面の中央に、縦一行に墨文字により「二本松羊羹」と書された文字部分と当該文字の背景に山吹色によって二本の松を描いた図形部分が表示されており、ここでの主体的表示は、上記文字部分と図形部分の組み合わせであると考えられる。また、上記短冊状紙面の下方左側に表示された「二本松市本町一ノ二〇三」、「(株)御菓子処 日夏」の文字は、上記商品の販売元であると共に被請求人を表示したものである。さらに、上記商品の裏面に貼付されたシールに記載されている「賞味期限15.8.22」は、商品の賞味期限を表示したものであり、当該表示方法は当業界においては通常に採用されているものである。なお、上記商品「ようかん」の賞味期限は、夏期について製造日から14日としていることから、上記商品は2003年(平成15年)8月9日に製造されたものであると考えられる。
(2)乙第1号証に係る商品「ようかん」が現在も使用中であることは、乙第2号証(商品の表面に添付されている印刷紙)の印刷を行った株式会社橋本印刷店から平成14年11月26日付けで被請求人宛に発行された請求書及び株式会社橋本印刷店の売上伝票等から明らかである(乙第3号証ないし乙第5号証)。
なお、上記請求書における「本柾二本松羊羹ペーパー」の文字中の「本柾」は、印刷紙の紙質を示すものである。
(3)乙第6号証は、被請求人の店頭で配布されている「商品案内リーフレット」である。該リーフレットには、使用に係る商品(「商標」の誤記と思われる。)と「ようかん」の写真が掲載されている。また、該リーフレットを作成したことを立証する平成12年7月31日付け株式会社デザインライフ発行の請求書(乙第7号証)を添付する。
以上のように、使用商標については、少なくとも平成12年7月31日以降から現在まで確実に使用されていたことが明らかである。
2 使用商標について
(1)使用商標の態様が本件商標の態様範囲を逸脱するものではないことについて言及する。
請求人は、本件商標について、「漢字『日』を表した松の枝に『夏』を表記し、これに続けて縦に『二本松羊羹』と行書で表示した」旨述べているが、その図形部分が漢字「日」を表したとする点については承服できない。すなわち、本件商標中の松の図形と使用商標中の松の図形を比較すると、使用商標中の松の図形は、対比的に縦長に表示されているが、漢字の「日」を表示したものとは到底見受けられないのであって、極めて自然な観察をすれば、左右から幹を延ばした二本の松を表現した図形であると考えられる。してみれば、商標権者(被請求人)の意図もそこにあって、使用商標中の文字部分「二本松羊羹」の「二本松」を転じて「二本の松」というように、文字部分「二本松」と図形部分「二本の松」の観念が一致するところに商標としての面白さがあり、このような面白みのある商標に触れた一般需要者、並びに取引業者は、その商標を深く脳裏に記憶し、当該商標が付された商品に愛着を抱くに至ると考えられるのである。
一方、本件商標の態様と使用商標の態様の相違点を取り上げると、上記図形部分の表示が前者においては文字部分「二本松羊羹」の上方に分離表示されているのに対して、後者においては文字部分「二本松羊羹」の背景に表示させている点であると推定されるが、上記にように、文字部分と図形部分の観念が一致するところに面白さがある商標であることを勘案すれば、両者の商標としての使用態様はその範囲を逸脱するものではないと考えられる。また、前者において「二本の松」の図形部分に表示した「夏」の文字が、後者においては「二本松羊羹」の文字部分に隠れている点についても、その相違が商標全体に与える影響は極めて軽微なものと思料される。
(2)以上のように、使用商標は、本件商標の態様範囲を逸脱するものではなく、また、少なくとも平成12年7月31日以降から現在まで確実に使用されていたことが立証できるものであるから、本件商標の指定商品「ようかん」について、少なくとも過去3年以上継続して使用されていないとする請求人の主張は失当を免れない。
3 むすび
以上のように、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品に係る商品に使用されていたというべきであるから、その登録は、商標法第50条第1項の規定には該当しない。

第4 当審の判断
本件審判に関し、使用商標が本件商標と社会通念上同一と認められる商標の範囲内のものであるか否かについて、当事者間に争いがあるので、以下検討する。
1 本件商標について
(1)本件商標は、別掲(1)のとおり、文字と図形との組み合わせよりなるものであるところ、その構成中、顕著に描かれた図形部分は、紋章の光琳松と近似した松の図形3つを、一部接するように、あるいは一部重ねるように三角形状に配し、その下に、漢字の「口」を想起させる半円状の輪郭図形を配してなるものである。そして、上記半円状の輪郭図形は、下辺部がやや太く丸みを帯び、上辺部がやや細く内側に凹みがあるもので、該下辺部の中央に、「夏」の文字を白抜きにして配してなるものである。
また、上記した「夏」の文字を含む図形部分(以下「本件図形部分」という。)の下には、行書で縦書きにした「二本松羊羹」の文字を配してなるものである。
(2)上記構成よりなる本件商標にあって、その構成中の本件図形部分は、黒塗りで上段に圧倒的大きさで表されているばかりでなく、見方によっては構成全体として松の木を表したと理解される場合があるとしても、その態様は極めて奇抜なものであり、かつ、松の木とは、およそ関連性を見出せない「夏」の文字を有しているものであるから、看者は、本件図形部分の特異な表現方法に極めて強く注意を引きつけられ、印象づけられるというのが相当である。
これに対して、本件商標中の「二本松羊羹」の文字部分は、そのうちの「二本松」が「福島県北部、阿武隈川に臨む市。もと丹羽氏10万国の城下町。」(広辞苑第5版)であり、江戸時代から羊羹をはじめとする菓子の産地(例えば、東洋経済新報社(昭和52年10月17日)発行「日本の名産事典」、二本松市のホームページhttp://www.bpf.or.jp/kita/nihonma/nihonma.html参照)として、一般に知られているものであり、また、「羊羹」の文字部分は、指定商品を表すものであるところからすると、文字全体として、自他商品の識別機能を有しないものであるということができる。
(3)そうすると、本件商標にあって、自他商品の識別標識としての機能を発揮する部分は、本件図形部分にあるというのが相当である。
2 使用商標について
(1)乙第1号証、乙第2号証及び乙第6号証によれば、商品「ようかん」に使用される商標は、別掲(2)のとおり、中央に大きく「二本松羊羹」の文字を楷書で縦書きし、その上にやや小さく「登録」と「商標」の各文字を2行に縦書きしてなり、該「二本松羊羹」の文字部分の左に小さく「二本松市本町一ノ二〇三」と「(株)御菓子処 日夏」の各文字を縦書きしてなるものである。さらに、商標中の右肩と左下には、朱色の矩形状輪郭内に、同色の朱色で隷書風の文字が書されている(なお、これら、朱色で書された隷書風の文字部分は、菓子の主たる需要者である一般の消費者には、判読が困難なものといえるから、識別機能を有するものとはみられない。)。
そして、「二本松羊羹」の文字部分中の「本松羊」の部分並びに被請求人の住所である「二本松市本町一ノ二〇三」の一部及び右肩の隷書風の文字の一部は、薄い黄色で配色された、三角形状に配した3つの松の図形(該3つの松は、光琳松にやや近似したものであるが、それぞれ分離して配してある。)、及びその下に上部に凹みのある円状輪郭よりなる図形を背景とするように、これらの図形の上に黒色で書されているものである。
(2)上記した使用商標の構成からみると、3つの松の図形とその下に配された円状輪郭よりなる図形部分は、黒字で大きく縦書きされた「二本松羊羹」の文字部分に覆われるように、極めて目立たない態様で表され、その全体の構成すら明確に把握することができないばかりでなく、本件図形部分中に書された「夏」の文字部分も「二本松羊羹」の文字に覆い隠されているものである。
(3)上記(1)及び(2)で認定した事実によれば、本件商標中、強い自他商品の識別機能を有していた本件図形部分は、使用商標にあって、その配置、構成態様を大きく変更することにより、構成全体として極めて印象の薄いものとして看取されるばかりでなく、「夏」の文字部分の存在も判然としないものであるから、使用商標の図形部分は、それ自体、自他商品の識別標識としての機能が薄弱なものとなったというべきである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる範囲を大きく逸脱している商標といわなければならない。
3 以上のとおりであるから、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国において、請求に係る指定商品について、本件商標を使用していたことを証明したものとは認めることができない。また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標



(2)使用商標


(色彩については、本件審判における乙第2号証を参照のこと)
審理終結日 2004-02-24 
結審通知日 2004-02-27 
審決日 2004-03-11 
出願番号 商願平2-121155 
審決分類 T 1 31・ 11- Z (130)
最終処分 成立  
前審関与審査官 茂木 静代 
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 井岡 賢一
瀧本 佐代子
登録日 1993-06-30 
登録番号 商標登録第2546144号(T2546144) 
商標の称呼 ナツ、ニホンマツヨーカン、ニホンマツ 
代理人 須山 佐一 
代理人 南 敦 
代理人 南 一清 
代理人 本名 昭 

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