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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z0414162021
管理番号 1096588 
審判番号 取消2002-30989 
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-08-16 
確定日 2004-04-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4443739号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4443739号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4443739号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、子持罫の間に「TWO’S」の文字を大きく書し、その下段にこれよりやや小さく「COMPANY」の文字を書し、さらに子持罫の外側に小さく「JAPAN」の文字を書した構成からなり、平成12年2月25日に登録出願、第4類、第14類、第16類、第20類及び第21類に属する以下の商品を指定商品として、平成13年1月5日に設定登録されたものである。
<指定商品>
第4類 「ろうそく」
第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう 入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・ 針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のが ま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾 品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ ・記念たて,キーホルダー」
第16類「写真立て,文房具類,印刷物」
第20類「家具,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ネームプ レート及び標札(金属製のものを除く。)」
第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),食器類(貴金属製 のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ガラス製 又は陶磁製の包装用容器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽 培器,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く 。),花瓶(貴金属製のものを除く。)」

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし第32号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、パリ条約の同盟国において、商標に関する権利を有する者である請求人の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないで、その代理人若しくは代表者又は商標登録出願の日前1年以内に代理人又は代表者であった者によってなされているため、商標法第53条の2の規定により、その登録を取り消すべきである。
(1)パリ条約の同盟国において請求人の商標に関する権利が存在する。
請求人は、米国、欧州、アジアにおいて厳選された各種の商品をカタログにより販売する会社であり、パリ条約の同盟国である米国において下記ア.及びイ.の商標登録を有し、同じく欧州共同体のオーストリア、ベルギー、デンマーク等の15カ国をカバーする下記ウ.の共同体商標登録も有する(甲第2ないし第4号証)。
ア.米国商標登録第1768609号(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「TWO’S COMPANY INC.」
(INC.の部分について権利不要求の主張を行なっている。)
商業上の最先使用年:1968年(第16類の指定商品については19 85年)
登録日:1993年5月4日
指定商品:第16類「住所録,ノートブック,鉛筆,筆入れ,帽子用の 紙製容器,ペーパーウェイト,クリップボード」
第20類「鏡,額縁,枕及び非金属製の宝石箱等の手製の刺 繍商品」
第21類「花瓶,植木鉢及び植木鉢用容器,ろうそく立て( 貴金属製のものを除く),ティッシュ及び帽子保管用の家庭 用刺繍織地製箱」
第28類「手刺繍を施した動物のぬいぐるみ」
イ.米国商標登録第2504600号(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「TWO’S COMPANY」
商業上の最先使用年:1999年
登録日:2001年11月6日
指定商品:第14類「宝飾品」
ウ.共同体商標登録第817601号(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「TWO’S COMPANY INC.」
登録日:1999年6月22日
指定商品:第21類「家庭用又は台所用器具及び容器(貴金属製及び貴 金属によるめっきを施したものを除く。),くし及びスポン ジ,ブラシ(塗装用ブラシを除く。),ブラシ製作用材料, 掃除用具,スチールウール,未加工又は半加工のガラス(建 築用ガラスを除く。),ガラス製品,他類に属さない磁器及 び陶器」
第28類「ゲーム用具及び遊戯用具,他類に属さない運動用 具,クリスマスツリー用の装飾用具」
(2)甲第5及び第6号証の請求人の商品カタログに掲載されている商品については、カタログの表紙に付された請求人の商標(本件商標の構成から「JAPAN」の文字を削除した構成よりなるもの、 以下「引用商標4」という。)が付されて米国において販売されている。米国では、商標登録がなされなくても商標の使用の事実と採択のみによってもその商標について独占排他権が認められることから、これらの商品については米国において請求人の「商標に関する権利」が発生していると考えられる(甲第7号証)。
さらに、商標法第53条の2の解釈に関し、「どのような要件を備えれば『商標に関する権利を有する者』となるかは、それぞれの国の国内法によって決定される。アメリカやイギリスのように使用地主義を採り、その商標の採択と使用で商標権が発生する国においては登録されることは要件とならない。」(『注解商標法』小野昌延編762頁、甲第8号証)とされ、「ここにいう『商標に関する権利を有する者』の中には、登録されていなくてもその使用する商標について排他的な権利を認められている者も含まれる。」(網野誠著『商標(第5版)』881頁、甲第9号証)のであるから、上記カタログに掲載されている商品については、請求人は、引用商標4に係る「商標に関する権利」を有していることは明らかである。
(3)本件商標は引用商標1ないし4と類似する。
ア.本件商標は、別掲のとおりの構成から、「トゥーズカンパニー」のみの称呼が生ずることは明らかである。なお、最下段の「JAPAN」の部分は商品の販売場所等である「日本」を示すにすぎず、自他商品識別力のない部分であるから、商標の要部たり得ず、称呼は生じない。
イ.一方、引用商標1及び3は、「INC.」の部分が有限責任会社であることを示す語であり、自他商品識別力がないから、「INC.」の部分を除いた要部たる「TWO’S COMPANY」から「トゥーズカンパニー」の称呼が生ずる。さらに、引用商標1については、出願人が「INC.」の部分について権利不要求の主張を行なっていることから、この部分については自他商品識別力はなく、称呼が生じないことは明らかである。
ウ.引用商標2は、「トゥーズカンパニー」のみの称呼が生ずることは明らかである。
エ.引用商標4は、本件商標の最下段に記載された「JAPAN」がないだけであり、本件商標と酷似する。そして、引用商標4からは「トゥーズカンパニー」のみの称呼が生ずる。
オ.以上から、本件商標からは「トゥーズカンパニー」の称呼が生じ、引用商標1ないし4からも「トゥーズカンパニー」の称呼が生ずるため、本件商標と引用商標1ないし4とは称呼が共通し互いに類似する。
(4)引用商標1ないし3の指定商品及び引用商標4が使用された商品と本件商標の指定商品は同一又は類似である。
ア.本件商標の指定商品中の第4類「ろうそく」については、甲第5及び第6号証のカタログにおいて、引用商標4が「ろうそく」について使用されており、商品は同一である。例えば、引用商標4を付して販売する商品が掲載された2001年のカタログ(甲第5号証)には、「ガーデン装飾用キャンドル5本セット」等が掲載されている(同カタログ73頁、137頁及び161頁参照)。同様に、引用商標4を付して販売する商品が掲載された2002年のカタログ(甲第6号証)には、「積み上げキャンドル3」が掲載されている。
さらに、引用商標2の指定商品である「ろうそく立て(貴金属製を除く)」と「ろうそく」は、用途、需要者、販売部門等が一致することから、互いに類似する商品である。例えば、「ろうそく立て(貴金属製を除く)」と「ろうそく」は共に甲第5及び第6号証のカタログに掲載されている。
したがって、本件商標の指定商品中の第4類「ろうそく」は引用商標4が使用された商品と同一であり、引用商標2の指定商品と類似する。
イ.本件商標の指定商品中の第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ・記念たて,キーホルダー」は、引用商標2の指定商品「宝飾品」とは、原材料、用途、需要者、販売部門等が一致することから互いに類似する商品である。特に、本件商標の指定商品のうちの「身飾品」及び「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品」については、引用商標2の指定商品「宝飾品」と類似するものである。例えば、「宝飾品」と「貴金属製のナプキンリング」は共に甲第5及び第6号証のカタログに掲載されている(甲第6号証のカタログの81頁及び135頁参照)。さらに、同カタログにおいては、引用商標4が本件商標の指定商品中の第14類の上記商品と同一又は類似する商品について使用されている(甲第5号証のカタログの66頁及び125頁参照)。
したがって、本件商標の指定商品中の第14類の上記商品と引用商標2の指定商品又は引用商標4が使用された商品とは類似する。
ウ.本件商標の指定商品中の第16類「写真立て,文房具類,印刷物」は、引用商標1の指定商品「住所録,ノートブック,鉛筆,筆入れ,帽子用の紙製容器,ペーパーウェイト,クリップボード」と、原材料、用途、需要者、販売部門等が一致することから互いに類似する商品である。特に、本件商標の指定商品中の「文房具」については、引用商標1のこれらの指定商品と類似するものである。例えば、「写真立て」と「ノートブック」は共に甲第5及び第6号証のカタログに掲載されている(甲第6号証の162頁及び208頁参照)。
エ.本件商標の指定商品中の第20類「家具,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器,ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。)」は、引用商標1の指定商品「鏡,額縁,枕及び非金属製の宝石箱等の手製の刺繍商品」と、用途、需要者、販売部門等が一致することから互いに類似する商品である。特に、本件商標の指定商品のうちの「家具」については、引用商標1のこれらの指定商品と類似するものである。
また、本件商標の指定商品中の「木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器」は、引用商標3の指定商品「家庭用又は台所用器具及び容器(貴金属製及び貴金属によるめっきを施したものを除く。)」にも類似する。
オ.本件商標の指定商品中の第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),食器類(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ガラス製又は陶磁製の包装用容器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶(貴金属製のものを除く。)」は、引用商標1の指定商品「花瓶,植木鉢及び植木鉢用容器,ろうそく立て(貴金属製のものを除く),ティッシュ及び帽子保管用の家庭用刺繍織地製箱」と同一又は類似の商品である。特に、本件商標の指定商品のうちの「植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶(貴金属製のものを除く。)」については、引用商標1のこれらの指定商品と類似する。
また、本件商標の指定商品のうちの「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),食器類(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ガラス製又は陶磁製の包装用容器」は、引用商標3の指定商品「家庭用又は台所用器具及び容器(貴金属製及び貴金属によるめっきを施したものを除く。),くし及びスポンジ,ブラシ(塗装用ブラシを除く。),ブラシ製作用材料,掃除用具,スチールウール,未加工又は半加工のガラス(建築用ガラスを除く。),ガラス製品,他類に属さない磁器及び陶器」と類似するものである。
(5)被請求人は、本件商標登録出願の日前1年以内に請求人の代理人若しくは代表者であった。
ア.甲第10号証に示すように、本件商標登録出願の日前の平成12年(2000年)1月19日付で、請求人と被請求人との間には「海外販売代理店独占契約」(INTERNATIONAL DISTRIBUTOR EXCLUSIVE AGREEMENT)(以下「独占契約」という。)が締結されている。同契約に基づき被請求人は本件商標出願の日前1年以内に請求人の「海外販売代理店」、即ち請求人の「代理人」であったことは明らかである。
さらに、請求人との戦略的なパートナーシップを締結すること、請求人の日本における販売代理店となるための要件について交渉(甲第11ないし第13号証)の末、請求人との間で甲第10号証の独占契約を締結し、請求人の代理人となったものである。
イ.また、甲第14号証のインボイスは、被請求人と請求人との間において実際に取引が行なわれていたことを示すものであり、これらのインボイスは、請求人と被請求人との間の取引を示す一例にすぎない。
以上から、被請求人が、本件商標登録出願の日前1年以内に請求人の代理人であったことは明らかである。
(6)被請求人は、正当な理由なく請求人の承諾を得ないで本件商標登録出願を行った。
ア.請求人と被請求人の間において、請求人の商標「Two’s Company」に関しては、甲第10号証の独占契約の第4条第12項において「Two’s Companyは、Two’s Companyのロゴがすべての販促用資料に掲載されている限り、本契約の条件に基づいて、販売代理店名に関連して自己の名称を使用するライセンスに同意する。」と規定するのみであり、請求人が被請求人に対して被請求人自らが日本において本件商標の出願を行い、登録することを承諾したことは一度もない。また、甲第15号証の2001年4月20日付のメール中の「3)商標」の部分には、被請求人は(本来の)商標権者である請求人に商標の所有権を移転し、契約に従い、請求人に商標の使用権を設定する旨を述べていることから、請求人が被請求人の本件商標の出願を承諾し、登録を所有することを許可したということはあり得ない。
イ.さらに、甲第16号証の2001年8月16日付のメール中の「6)契約」の部分においても、請求人は、契約が成立している間に被請求人に請求人の商標を貸しただけであり、請求人が請求人の商標の本来の権利者である旨を伝えている。このようなメールからも請求人が、被請求人の本件商標の出願を承諾したということはあり得ないことは明らかである。
ウ.以上のとおり、被請求人が正当な理由なく請求人の承諾を得ないで、本件商標の登録出願を行ったことは明らかである。
2 弁駁の理由
(1)請求人が、引用商標4の「商標に関する権利」を有するかどうか明らかではないとする被請求人の主張について
ア.甲第17号証は、甲第5及び第6号証のカタログと同様の2000年度の商品カタログである。このカタログに掲載された商品についても、引用商標4と同じ商標が付されて米国において販売されたものである。したがって、本件商標の出願時点である2000年2月において請求人が引用商標4を米国において使用していたことは明らかであるから、請求人は上記カタログに掲載された商品について引用商標4の「商標に関する権利」を有していたことは明白である。
イ.甲第17号証のカタログには、引用商標4が「ろうそく」、「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,時計,記念カップ・記念たて,キーホルダー」と同一又は類似する商品に使用されている。したがって、本件商標の出願時においても、請求人が上記「ろうそく」等の商品について、引用商標4の「商標に関する権利」を有していたことは明らかである。
(2)本件商標の最下段の「JAPAN」部分にも称呼がある、引用商標1及び3の「INC.」の部分からも称呼が生ずるとする被請求人の主張について
ア.特許庁商標課編の「商標審査基準」(以下「審査基準」という。)に照らせば、本件商標が「使用により識別力を有する」状態、即ち、著名となっていない限り本件商標の「JAPAN」の部分から称呼は生じず、「トゥーズカンパニー」の称呼のみが生ずる。
さらに、この審査基準と同様の基準に基づいてなされた審決例の一部を甲第18ないし第22号証として示す。
イ.また、審査基準に照らせば、引用商標1及び3の「INC.」の部分は、我が国の「株式会社」に相当する語として英語により表示される商号の一部に通常に使用されるものであるから、この部分を除外して商標の類否を判断すべきである。
さらに、この審査基準と同様の基準に基づいてなされた審決例の一部を甲第23ないし第28号証として示す。
ウ.以上によれば、本件商標からは「トゥーズカンパニー」の称呼が生じ、引用商標1ないし4からも「トゥーズカンパニー」の称呼が生ずるため、本件商標は、引用商標1ないし4とはいずれも称呼が共通するから類似する。
(3)本件商標の指定商品中「ネームプレート及び標札(金属製のものを除く)」は、引用商標1の指定商品「鏡,額縁,枕等」とは非類似の商品であるとの被請求人の主張について
「陶器や木製のネームプレート及び標札」と「鏡,額縁,枕等」は共に一般家庭内で使用される商品であり、その取引の実情に鑑みれば、用途、需要者、販売部門等が一致するものである。例えば、甲第29号証のカタログには「陶器のネームプレート」と「鏡」が共に掲載されている。したがって、「陶器や木製のネームプレート及び標札」と引用商標1の指定商品「鏡,額縁,枕等」は類似する商品である。
(4)被請求人の本件商標登録出願には、正当な理由があるとする点について
ア.被請求人が日本における請求人の独占販売店であるにもかかわらず他の販売者も併存するという問題や、そのような他の販売者が請求人の商品を被請求人よりも安い価格で販売しているという問題が存在したのであれば、甲第10号証の独占契約上の問題として、請求人に対して、被請求人の日本における独占販売店である地位を確保するよう要求をして解決すべきであり、自らが本件商標の出願を行って解決すべきではない。現に、被請求人は、日本において請求人の商品を安い価格で販売していたヨーロッパ地域の請求人の独占販売店「Magnum」(以下「Magnum」という。)との間で、乙第70号証の合意書を締結して、日本における自らの独占販売店としての地位を確保しており、本件商標の出願を行い商標登録を得ることによって解決すべき問題でないことは既に承知しているはずである。したがって、本件商標の出願をしたのは契約上の問題を解決するためという「正当な理由」が存在したという旨の被請求人の主張は詭弁にすぎない。
イ.被請求人は、請求人が日本で商標登録を行い、被請求人にライセンス提供する義務(責任)を果たさなかったから、被請求人が自ら商標出願をしたことは正当な理由に基づくものであると主張する。
しかしながら、請求人は、被請求人から商標登録を行うことを要求されたことは一度もなく、通常使用権専用使用権の設定登録を要求されたこともない。仮に、被請求人が法的に保証された独占販売店の地位を希望したのであれば、請求人に対して商標登録の取得と被請求人に対する通常使用権専用使用権の設定登録をまず求めるべきであり、自ら本件商標の出願を行うことによって解決すべきものではない。この点、甲第10号証の独占契約にも、被請求人が本件商標の出願をすることに合意したとは規定していないから、被請求人に本件商標の出願が許容されていないことは明らかである。
ウ.被請求人は、甲第10号証の独占契約において商標登録出願に関する禁止規定がなく、本件商標の出願をすることは当然許される裁量の範囲に含まれると考えて疑わなかったと主張する。
しかし、もしこれを許容するのであれば、独占契約において、どちらの名義で出願すべきか、契約解除の時には商標権をどのように返還すべきか等の詳細について明示的に規定するのが通常であるが、そのような規定は全く存在しない。それにもかかわらず、明示的に禁止されていなければ暗黙に許容されていたと考えるのは、被請求人の一方的な都合の良い解釈にすぎない。したがって、請求人が日本で商標登録を行い、被請求人にライセンス提供する義務(責任)を果たさなかったから、被請求人が自ら商標登録出願をしたことは「正当な理由」に該当するとの被請求人の主張は的外れである。
エ.被請求人は、過去の商標権侵害事件の経験から商標については慎重に、万全を期して対処したいという考えを持って本件商標の出願を行ったのであるから「正当な理由」に該当すると主張する。
しかし、被請求人の言及する第三者との紛争は、請求人とは直接何の関わり合いもないものである。そもそも「商標については慎重に、万全を期して対処」するのであれば、契約上規定されていない事項なのであるから、本件商標の出願を行う前に、請求人に直接確認をすべきである。被請求人は請求人に対して本件商標を出願した事実を全く告げず、請求人は、被請求人による本件商標の出願から約1年が経過した時に初めて、しかも、第三者から本件商標の出願の事実を知らされたのである(甲第30号証の2001年2月21日付の米国の法律事務所からのレター)。したがって、被請求人が「商標について慎重に、万全を期して対処」するために、本件商標の出願を行ったということは、全くの作り話としか考えられない。
オ.被請求人は、本件商標の出願は、全く他心がなく、決して自己の利益の為だけに出願したものではないと述べている。
しかし、被請求人が本件商標の出願を行い、商標登録を取得してしまったことによって、例えば、本件商標に係る商標権の効力により請求人は新たな日本での販売者との契約が制限され、商品の販売も自由に行なうことができず、請求人の日本市場への参入が阻害される等、多大な不利益を被ることは、乙第68及び第69号証の被請求人の過去の商標権侵害事件の経験からもよく知っていたはずである。
また、被請求人は、乙第72号証の米国の法律事務所から請求人の社長に宛てた「社長との軋轢を避けるため」に出した手紙を提出する。
しかし、この手紙が請求人に送付される前に、甲第31号証に示す2001年11月28日付の請求人の社長から被請求人のトモヨ、ミノ及びコーワに宛てたメールにおいて、請求人の社長は、被請求人のニーズを満たして満足できる仕事上の関係を築くことはできないと考えているので、契約関係を段階的に解消することを考えているが、被請求人の考えを聞きたい旨をビジネス倫理に則り、誠実に被請求人に伝えている。しかしながら、乙第72号証の手紙は、自己の保身を図るかのように、以前問題となった「Magnum」の合意書(乙第70号証)を添付して、被請求人の日本における独占販売店の地位を請求人に強引に確認させるべく、請求人が被請求人との契約を解除して被請求人以外の販売者と新たな契約を締結する等して、日本でその商品を販売することを阻止することを暗に意図しているかのような内容になっている。甲第31号証のメールに対する回答は全くなかったため、請求人は、甲第32号証の2002年1月29日付の手紙を被請求人に送り、被請求人側に重大な契約違反が存在するため、被請求人が請求人の代理店を続けていくためには、これらの契約違反を治癒するための措置を直ちに講じ、そのための30日間の猶予期間を与える旨を伝えたものである。そして、この手紙に対する回答も現在に至るまで被請求人からは一切ない。したがって、被請求人が本件商標の登録出願を行ったのは、このように自己の利益のためだけであるといえるから、「正当な理由」に該当するはずがない。
カ.被請求人は、請求人から被請求人への販売価格が他の代理店よりも高いという問題及び請求人の商品の品質が悪く被請求人の倉庫には欠陥商品の在庫が存在するという問題が存在することを述べて、乙第1ないし第65号証の欠陥商品の在庫の写真を提出した。
しかし、被請求人が本件商標の出願を行なうことによって、請求人の被請求人への販売価格が安くなるわけはなく、被請求人の倉庫から欠陥商品の在庫が一掃されることもなければ、請求人の商品の品質が改善されるわけでもない。これらのビジネス上の問題は、被請求人と請求人が話し合いによって解決を探るべきものであって、これらの問題が存在することを主張して、被請求人による本件商標の出願を正当化することは全く的外れである。
(5)被請求人が請求人の承諾を受けているとする点について
ア.被請求人は、2001年4月16日に請求人の社長が来日した際の被請求人とのミーティングにおいて、「社長は商標の件を持ち出した際『(株)宏和が日本の独占販売店を辞める時は、宏和が商標取得にかかった費用は米国TWO’S社が支払うから、その時は米国TWO’S社に商標を返して欲しい』と話された。」と述べ、そのミーティングが友好的な雰囲気であったことを示す乙第71号証の写真を提出する。
しかし、上述の内容を請求人の社長が被請求人に話したことを示す証拠は一切提出されていない。請求人にとって本件商標を含む請求人の「TWO’S COMPANY」の商標は、自己の権利に属する非常に重要な財産であり、このように重要な財産の1つである本件商標の取得を事後的にでも口約束のみで被請求人に許可し、しかも有償で買い取ることを約束することは常識的に考えられない。しかも、もし許可したのであれば、甲第10号証の独占契約の第4条第12項の内容とは異なる事項を許可したのであるから、何らかの書面により許可した記録を残すはずである。しかしながら、そのような書面は被請求人から一切提出されていない。したがって、請求人が事後的に被請求人による本件商標の出願を承諾したことは一切ない。
イ.そもそも、請求人は、日本で「TWO’S COMPANY」の商標登録を取得しようと思ったところ、甲第30号証に示すレターによって初めて被請求人が本件商標の登録を既に取得していることを知ったものであり、本件商標の出願時である平成12(2000)年2月25日の時点では、被請求人が本件商標の出願を行なっていたことは全く知らなかったのである。したがって、本件商標の出願時点で、被請求人に本件商標の出願を承諾したということもあり得ない。
ウ.乙第71号証のメールは、単に日本の旅行中にお世話になったことについての礼を述べ、写真を送っているにすぎず、ビジネス上のメールではない。したがって、乙第71号証のメールが存在することを理由に、甲第15号証に記載された、本件商標に係る商標権を請求人に移転せよ、という請求人の要求が変更されて、被請求人の本件商標の出願を事後的に承諾することなど絶対にあり得ない。
また、被請求人は「甲第15号証のメールに返事をしなかったことに、商標に関する契約や交渉を拒むなどの意図は全くない。」と述べる。
しかし、他方で、現に、甲第16号証のメールについては「合意を全く無視して急に命令口調に変わってしまったのは納得できないことである。」と述べており、納得できないから、本件商標にかかる商標権を請求人に返還する意思は被請求人側にないことを自ら明らかにしている。なお、被請求人はあたかも有償で買い取る旨の「合意」が存在したかのように述べるが、前述のとおり、請求人の権利に属する重要な財産の1つである本件商標の商標登録の取得を、事後的にでも口約束のみで被請求人に許可し、後日、有償で買い取ることを約束することはあり得ないことであり、しかも、かかる約束を記録した何の書面も存在しないのであるから、そのような「合意」はそもそも存在しなかったと考えるのが常識に合致する。これに対して、甲第15及び第16号証のメールは、請求人が被請求人による本件商標の登録出願を承諾していないことを如実に示す証拠であり、これを覆す証拠は被請求人からは全く提出されていないのであるから、「請求人が被請求人に対して被請求人自らが日本において本件商標の出願を行い、登録することを承諾したことは一度もない。」との請求人の主張に誤りはない。
エ.さらに、甲第32号証の2002年1月29日付の手紙においても、請求人は、「日本においてTWO’S COMPANYの商標を貴社が保有していることは、契約違反である。」と指摘し、本件商標にかかる商標権の返還を求めている。したがって、甲第32号証の手紙からも、請求人が被請求人による本件商標の出願を承諾していないことは明らかである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第73号証を提出している。
1 請求の理由について
(1)請求人は、「引用商標4に係る商標登録を米国で有していなくても、甲第5及び第6号証の商品カタログに掲載された商品についての引用商標4の『商標に関する権利』を有していることは明らかである。」とするが、これらの商品カタログは、2001年及び2002年の商品カタログであって、本件商標出願時点の2000年2月の使用を立証する証拠にはならない。
甲第5及び第6号証に掲載された「ろうそく」「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,時計,記念カップ・記念たて,キーホルダー」「写真立て」「印刷物」の商品については、引用商標4の「商標に関する権利」を有するかどうかが、明らかではない。
(2)請求人は、本件商標から「『トゥーズカンパニー』のみの称呼が生ずることは明らかである。」とするが、甲第1号証の2(4443739号の商標登録公報)(561)【称呼(参考情報)】に記載するとおり、「ツーズカンパニージャパン」、「ツーズカンパニー」、「トゥーズカンパニー」の称呼が生ずる。最下段の「JAPAN」部分にも称呼がある。
また、請求人は、引用商標1の「INC.」の部分について権利不要求の主張を行っていることから、この部分から称呼が生じないことは明らかであるとするが、上記と同様に、「ツーズカンパニーインク」あるいは「ツーズカンパニーインコーポレイテッド」の称呼も生じる。
(3)請求人は、本件商標と引用商標1ないし4の指定商品は、同一又は類似であるとし、「ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。)」は、引用商標1の指定商品「鏡,額縁,枕等」と用途,需要者,販売部門等が一致するとするが、「陶器や木製のネームプレート及び標札」は、「鏡,額縁,枕等」と用途,需要者,販売部門等が一致するとはいえないから、非類似商品である。
(4)被請求人は、正当な理由なく請求人の承諾を得ないで本件商標の出願を行った、とする指摘は誤りである。
これについては、次項で詳細に、その理由を記載する。
2 「正当な理由」及び「請求人の承諾」について
(1)日本における独占販売店契約
被請求人の社長は、請求人の商品をロスアンゼルスのショウルームで見た際、気に入って、提携を申し込んだ。
そして、平成12年(2000年)1月19日に請求人と日本における独占契約を締結した。
被請求人は、デパートや小売店への卸売商及び結婚式の引出物等の通信販売を業務とする商社である。その営業に関し、日本において知名度の低かった「TWO’S COMPANY」商品を宣伝するため、2000年8月、大阪の一等地(大阪府吹田市江坂町1‐17‐26 吉田東急ビル1階)に、多額の経費をかけて「TWO’S COMPANY」のショウルームをオープンした(乙第66号証「大阪ショウルームの写真」、乙第67号証「内部の商品陳列の写真」)。
(2)請求人の本件商標の出願には、正当な理由がある。
本件商標登録出願は、請求人と日本の独占契約を締結した約1ヶ月後の、平成12年(2000年)2月25日に出願した。被請求人による本件商標登録出願には、以下ア.ないしエ.に記載する点で、正当な理由がある。
ア.本件商標を被請求人が出願した最も大きな理由は、「TWO’S COMPANY」商品の安価な販売に対処するためである。
請求人と日本の独占契約締結後1ヶ月もしないうちに、日本のある大手デパートや幾つかの小売店で、「TWO’S COMPANY」商品の安価な販売が行われていることが判明した。
これらの「TWO’S COMPANY」商標を付した商品の販売は、いずれも被請求人が販売し得ない安い価格の販売で、これらに対抗することは被請求人の死活問題である。これらの商標使用を放置しては被請求人の日本における「TWO’S COMPANY」商品の営業は成り立たない、との危機意識を持った。
これらの小売店等の商標使用者に対して、日本の独占販売店であることを主張したい、本件商標の登録により対抗したいと考えた。これが、被請求人が商標登録出願した最大の理由である。
イ.乙第68号証(上告受理申立書)及び乙第69号証(損害賠償請求事件控訴審判決)の訴訟記録に明らかなように、被請求人は、無用な紛争を防ぎたい、商標については慎重に万全を期して対処したいという考えを持っていたことも、商標登録出願をした第2の理由である。
ウ.被請求人は、甲第10号証の独占契約に、商標登録出願に関する禁止規定がなく、日本の独占販売店として商標登録出願をすることは、当然許される裁量の範囲に含まれる、と考えて疑わなかったことも第3の理由である。
被請求人は、請求人の「TWO’S COMPANY」商標を守るために、そして、日本国内における他の商標使用者とのトラブルを防ぐために、日本の独占販売店として本件商標の出願が必要であると考え、全く他心がなかった。決して、自己の利益の為だけに出願したものではない。
エ.本来ならば、請求人は日本で商標登録しておき、該登録商標を日本の独占販売店にライセンス提供する義務(責任)がある。また、日本の独占販売店契約を締結する前提として、他のTWO’S社代理店の販売を規制しておく義務(責任)もある。
その後の調べで、これらの「TWO’S COMPANY」商標使用の殆どは、「Magnum」(甲5号証の2001年商品カタログの裏表紙に記載)の卸したデパートや小売店の商品に関する使用であることが判明した。
「Magnum」とは、被請求人が弁護士を通じて交渉の末、2000年12月19日に合意に達し、その日本国内における商標使用は中止された(乙第70号証 「Magnum」との合意書)。
これらの義務(責任)が、請求人により充分保証されていない以上、日本地域の独占販売店である被請求人が自ら商標出願して、「TWO’S COMPANY」の商標使用者に対抗することは、極めて自然なことであり、本件商標登録出願は正当な理由を有すると確信する。
3 請求人の代理店への販売価格及び商品の品質
何故、被請求人が販売できないような低価格で、「Magnum」が日本で「TWO’S COMPANY」商品を販売できるかであるが、請求人は、代理店別に「TWO’S COMPANY」商品の販売価格を決めていたようである。ある代理店への販売価格は安く、被請求人への販売価格は高いようで、価格設定が極めて不明瞭であった。
商品の品質については、東南アジアの各工場から直送される商品は、請求人による商品管理がなされておらず、粗悪品で、カタログの商品とは全く違っていた。顧客への往復返品送料は被請求人負担で、しかも、請求人に返品する際には、写真撮影して不良品申請しなければならず、現在、写真撮影・現像・書類作成にかかる費用・手間から、US$500,000(約6120万円)相当の欠陥商品在庫が、被請求人の倉庫に山積みされたままになっている(乙第1ないし第65号証)。
4 請求人の社長が来日した際の口頭での合意
請求人は、「請求人が被請求人に対して被請求人自らが日本において本件商標の出願を行い、登録することを承諾したことは一度もない。」とするが、これは誤りである。
上記3に記載した苦情処理のため、2001年4月16日から2日間、請求人の社長が来日した際、請求人と被請求人のミーティングが行われた。ミーティングは友好的な雰囲気で行われ、請求人の社長は商標登録の件を持ち出した際「(株)宏和が日本の独占販売店を辞める時は、宏和が商標取得にかかった費用は米国TWO’S社が支払うから、その時は米国TWO’S社に商標を返して欲しい」と話された。被請求人側も、概ね請求人側の意見に同意した(乙第71号証)。
この来日時の請求人の社長の「商標登録出願は被請求人が独占販売店を辞める際に有料で買い取る。」という話は、請求人が事後的に被請求人の商標登録出願を承諾したことを裏付けるものである。
5 甲第15号証のメール及びFAX(2001年4月20日)について
4月20日のメールは、被請求人の米国駐在員のトモヨ氏にあてたもので、トモヨ氏は来日の際の礼状及び被請求人側の苦情への対応と解釈し、深い意味を持つメールとは考えなかったので、被請求人の社長や専務に、特に商標の件を強調して伝えることはなかった。甲第15号証の4月20日のメールから1週間後に、請求人の社長自身から送られた乙第71号証の4月27日付メールと写真では、友好的な雰囲気が維持されており、商標契約書作成の返事を催促・追及するような険悪な雰囲気は感じられない。
FAXに関しては、請求人が被請求人へFAXすることは殆どないので記憶に残るはずだが、被請求人の西美乃専務(メールではミノになっているが、実際の名前はヨシノ氏)は、FAXを確認できなかった、と言っている。
甲第15号証のメールに返事をしなかったことに、商標に関する契約や交渉を拒むなどの意図は全くない。
6 甲第16号証のメール(2001年8月16日)について
甲第16号証のメールで、甲第10号証の独占契約の内容の変更を含む商標契約案が提示されたが、これは請求人の一方的な言い分であって、来日の際の合意と全く齟齬する。「商標は、被請求人が独占販売店を辞める際に有料で買い取る。」という合意を全く無視して、急に命令口調に変わってしまったのは納得できないことである。
4月の請求人の社長の来日後も、東南アジアの各工場からの不良品は続き、その処理について被請求人から請求人への苦情は続いたが、事態は何も改善されなかった。このため、被請求人から請求人へ商品注文を出せば、不良品の在庫が蓄積するばかりであるため、被請求人から請求人への商品注文は、段々控える傾向になった。商品注文が少なくなったため、請求人との関係は徐々に悪化し、2002年のカタログには、被請求人の名前は掲載されなかった(甲第6号証「2002年カタログ」裏表紙参照)。
この点について、請求人の社長との軋轢を避けるため、2001年10月頃から2002年4月頃まで、米国弁護士に依頼して交渉したが、埒があかなかった(乙第72号証「米国弁護士から請求人の社長に宛てた手紙」、甲第78号証「米国弁護士から請求人の社長に宛てた手紙」)。
7 欠陥商品在庫についての責任(本国商標権者の代理人に対する優越的地位の濫用)
被請求人は、請求人の商品のみを購入し、請求人との契約事項を守って日本国内で販売した。また、日本国内では知名度が低かった「TWO’S COMPANY」商品の宣伝のために、大阪店を開店・維持し、このため2億円近い投資をした。現在、被請求人の倉庫には、「TWO’S COMPANY」商品の US$500,000(約6120万円)相当の欠陥商品在庫が山積みされており(乙第1ないし第65号証)、請求人に損害賠償の裁判を起こすことも検討している。
被請求人としては、取消審判より先に、何故、商標権譲渡の話合をしてくれなかったのかと当惑している。おそらく、話合になれば、欠陥商品在庫の点に触れられるので、いきなり取消審判を起こしたのであろう。
8 結論
上記2(2)ア.ないしエ.に詳述したとおり、(1)「TWO’S COMPANY」商標を付した商品の小売店等の販売が日本国内で行われており、いずれも被請求人が販売し得ない安価な販売であることから、これらの販売を放置しては営業が成り立たないとの危機意識から、これらの商標使用者に対抗するため、本件商標の商標登録出願をしたこと、(2)被請求人は過去に商標権侵害訴訟を受けた経験から、無用な紛争を防ぎたい、商標については慎重に、万全を期して対処したいという考えをもっていたこと、(3)甲第10号証の独占契約に、商標登録出願に関する禁止規定がなく、日本の独占販売店として、本件商標の出願をすることは、当然許される裁量の範囲に含まれると考えて疑わなかったこと、から商標登録出願をしたもので、これらは正当な理由に該当する、と被請求人は確信する。
また、2001年4月に請求人の社長が来日の際、「被請求人が請求人の独占販売店を辞める際に有料で買い取る。」という口頭での合意があり、事後的に商標登録出願への承諾があった。
甲第16号証のメール1通で、一方的な契約内容の変更や、合意事項の撤回がなされるのは、到底納得できない。重要事項の決定(変更・撤回)は、双方合意の上で(少なくとも、話合の場を設けた上で)なされるのが、ビジネス倫理であると考える。

第4 当審の判断
1 請求人の商標に関する権利について
請求人の提出に係る甲第2ないし第4号証によれば、請求人はパリ条約の同盟国である米国において引用商標1及び2の登録商標を有していること、パリ条約の同盟国であるオーストリア、ベルギー、デンマーク等のヨーロッパ諸国に効力を有する引用商標3の共同体登録商標を有していること、これらの登録商標は、第16類「住所録,ノートブック,鉛筆,筆入れ,帽子用の紙製容器,ペーパーウェイト,クリップボード」、第20類「鏡,額縁,枕及び非金属製の宝石箱等の手製の刺繍商品」、第21類「花瓶,植木鉢及び植木鉢用容器,ろうそく立て(貴金属製のものを除く),ティッシュ及び帽子保管用の家庭用刺繍織地製箱」、第28類「手刺繍を施した動物のぬいぐるみ」、第14類「宝飾品」、第21類「家庭用又は台所用器具及び容器(貴金属製及び貴金属によるめっきを施したものを除く。),くし及びスポンジ,ブラシ(塗装用ブラシを除く。),ブラシ製作用材料,掃除用具,スチールウール,未加工又は半加工のガラス(建築用ガラスを除く。),ガラス製品,他類に属さない磁器及び陶器」又は第28類「ゲーム用具及び遊戯用具,他類に属さない運動用具,クリスマスツリー用の装飾用具」を指定商品とするものであることが認められる。
また、甲第5及び第6号証によれば、請求人は、米国において「ろうそく、ろうそく立て」等の種々の商品について引用商標4を使用していることが認められるところ、米国においては、使用主義が採られており、商標の使用により商標権に相当する権利が発生するとされているので、請求人は、甲第5及び第6号証のカタログに掲載された商品について、引用商標4について商標権に相当する権利を有しているというべきである。
被請求人は、甲第5及び第6号証のカタログは、2001年及び2002年の商品カタログであって、本件商標登録出願時点の使用を立証する証拠にはならず、該カタログに掲載された「ろうそく」、「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,時計,記念カップ・記念たて,キーホルダー」、「写真立て」及び「印刷物」の商品については、引用商標4の「商標に関する権利」を有するかどうかが明らかではない旨主張している。
しかしながら、請求人が本件商標の出願時においても上記商品を取り扱っていたことは、甲第5及び第6号証によれば、毎年同様の当年度版の商品カタログが発行されていることに加え、請求人の提出に係る甲第17号証のカタログ(2000年度の商品カタログ)にも上記と同様の商品が掲載されていることから明らかであり、請求人は本件商標の出願時においても引用商標4について商標権に相当する権利を有していたというべきである。
2 本件商標と各引用商標との類否について
本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、子持罫の間に圧倒的顕著に書された「TWO’S COMPANY」の文字部分と子持罫の外側に小さく書された「JAPAN」の文字部分とは、視覚上分離して看取されるばかりでなく、「JAPAN」の文字は商品の産地、販売地表示としての「日本」を表したものとして認識されるというべきであるから、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは、「TWO’S COMPANY」の文字部分であって、これより単に「トゥーズカンパニー」の称呼をも生ずるものである。
これに対し、引用商標1及び3は、いずれも「TWO’S COMPANY INC.」の文字を書してなるところ、構成中の「INC.」の文字部分は、有限責任会社であることを示す語であって、取引の実際にあってはしばしば省略されることが多く、自他商品の識別力がないか極めて弱いものであり、引用商標1及び3はこの文字部分を除外して「TWO’S COMPANY」の文字部分から生ずる称呼をもって取引に資される場合が少なくないというべきであるから、これより単に「トゥーズカンパニー」の称呼をも生ずるものである。引用商標2は「TWO’S COMPANY」の文字を書してなるものであるから、「トゥーズカンパニー」の称呼を生ずること明らかである。さらに、甲第5及び第6号証のカタログの表紙に記載された引用商標4は、本件商標とは「JAPAN」の文字の有無という差異のみであり、その他は子持罫を含め同一といい得るものである。
してみれば、本件商標と各引用商標はいずれも「トゥーズカンパニー」の称呼及び外観において類似する商標というのが相当である。
3 本件商標の指定商品と引用商標1ないし3の指定商品及び引用商標4が使用されている商品との類否について
(1)本件商標の指定商品中の第4類「ろうそく」については、引用商標4が使用されている請求人の商品カタログに掲載されている商品「ろうそく」と同一といい得るものである。
(2)本件商標の指定商品中の第14類「貴金属,貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶・水盤・針箱・宝石箱・ろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口・靴飾り・コンパクト及び財布,貴金属製喫煙用具,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計,記念カップ・記念たて,キーホルダー」は、引用商標2の指定商品「宝飾品」又は引用商標4が使用されている請求人の商品カタログに掲載された「貴金属製食器類、貴金属製のナプキンホルダー・盆・花瓶・ろうそく立て、身飾品、時計、記念たて」等と同一又は類似の商品といえるものである。
(3)本件商標の指定商品中の第16類「写真立て,文房具類,印刷物」は、引用商標1の指定商品「住所録,ノートブック,鉛筆,筆入れ,ペーパーウェイト,クリップボード」又は引用商標4が使用されている請求人の商品カタログに掲載された写真立て」と同一又は類似の商品といえるものである。
(4)本件商標の指定商品中の第20類「家具,木製・竹製又はプラスチック製の包装用容器」は、引用商標1の指定商品中の「鏡,額縁,枕及び非金属製の宝石箱等の手製の刺繍商品」又は引用商標4が使用されている請求人の商品カタログに掲載された容器と同一又は類似の商品といえるものである。
もっとも、請求人は本件商標の指定商品中の第20類「ネームプレート及び標札(金属製のものを除く。)」は引用商標1の指定商品「鏡,額縁,枕等」と類似する商品である旨主張するが、用途、製造部門、販売部門等が一致するとは必ずしもいえず、取引の実情に鑑み、非類似商品といわざるを得ない。
(5)本件商標の指定商品中の第21類「ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),食器類(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ガラス製叉は陶磁製の包装用容器,植木鉢,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,ろうそく消し及びろうそく立て(貴金属製のものを除く。),花瓶(貴金属製のものを除く。)」は、引用商標1の指定商品中の「花瓶,植木鉢及び植木鉢用容器,ろうそく立て(貴金属製のものを除く)」又は引用商標3の指定商品中の「家庭用又は台所用器具及び容器(貴金属製及び貴金属によるめっきを施したものを除く。),未加工又は半加工のガラス(建築用ガラスを除く。),ガラス製品,他類に属さない磁器及び陶器」と同一又は類似の商品といえるものである。
4 被請求人が本件商標登録出願の日前1年以内に請求人の代理人又は代表者であったかどうかについて
請求人の提出に係る甲第10号証によれば、請求人と被請求人との間には平成12年(2000年)1月19日付で独占契約が締結されていたことが認められる。そして、甲第14号証によれば、両者間で実際に商品の取引が行われていたことが認められる。
そうすると、被請求人は本件商標登録出願の日前1年以内に請求人の代理人であったというべきである。
5 被請求人の正当理由について
請求人の提出に係る甲第10、第15及び第16号証によれば、独占契約には本件商標に関して規定がないこと、請求人は本件商標を自己に移転するように被請求人に求めていることが認められることからすれば、請求人が被請求人に対して、我が国において本件商標の出願をし登録を受けることを承諾していたということはできない。
被請求人は、本件商標の出願には正当理由があるとして、他人による安価な商品販売に対抗するためであること、他の商標使用者とのトラブルなど紛争を防ぐためであること、上記独占契約に商標登録出願に関する禁止規定がなく、本件商標の出願は裁量の範囲に含まれること、むしろ、請求人は我が国における商標管理の義務及び責任があること等縷々述べ、請求人の社長との口頭による合意がある旨主張している。
しかしながら、上記独占契約に商標登録出願に関する禁止規定がないとしても、上記のとおり、請求人は被請求人に対し本件商標の出願を承諾した事実が認められない以上、被請求人は請求人に無断で本件商標を出願したものといわざるを得ず、被請求人の行為は到底裁量の範囲に含まれるものとはいえない。被請求人が請求人の社長による口頭の合意があることを立証するとして提出する乙第71号証は、単なるお礼と写真送付について述べた手紙であって、本件商標に関する事項は一切言及されていないから、これをもって合意があったものとはいえない。その他、本件商標の出願について請求人と被請求人との間に合意があったと認めるに足る証拠はない。
なお、被請求人は請求人の商品の販売価格及びその品質の欠陥について縷々述べ証拠を提出しているが、これらは本件商標の出願とは全く関係のないことであり、別途当事者間で解決すべき問題である。
してみれば、被請求人は、正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないで本件商標を出願したものというべきである。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者である請求人の当該権利に係る商標、即ち、引用商標1ないし4と類似する商標であって、引用商標1ないし4に係る商品と類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、その登録出願が、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないで、本件商標登録出願の日前1年以内にその代理人であった被請求人によってされたものであるから、商標法第53条の2の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2004-02-17 
結審通知日 2004-02-20 
審決日 2004-03-05 
出願番号 商願2000-16536(T2000-16536) 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (Z0414162021)
最終処分 成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 2001-01-05 
登録番号 商標登録第4443739号(T4443739) 
商標の称呼 ツーズカンパニージャパン、ツーズカンパニー、トゥーズカンパニー 
代理人 牧 レイ子 
代理人 牧 哲郎 
代理人 平松 剛実 
代理人 鳥海 哲郎 
代理人 小林 ゆか 

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