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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 018
管理番号 1090400 
審判番号 無効2001-35380 
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-08-29 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4171376号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4171376号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4171376号商標は、別掲に表示のとおりの構成よりなり、平成9年3月31日に登録出願、第18類「愛玩動物用被服類」を指定商品として、同10年7月31日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求める、と主張し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第11号証を提出している。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標の構成は、欧文字の「WALK IN THE NIKE DOG」を、花びらのように配した図形に重ねた構成からなるものである。このうち「NIKE」の語が請求人、ナイキ・インコーポレーテッド(NIKE,INC.)の所有する著名商標であることは、特許庁においても顕著な事実である。
また、6つの花びらのような図形の一つ一つは、後述するようにやはり請求人の著名商標で「スウッシュ」と呼ばれる図形商標と同一のものであり、この図形は独自の着想の下に翼をイメージした流線型を図案化した独特なものである。
請求人は、本件商標の図形部分と同様の構成の商標について、かって商標登録していたのであるが、最近は使用しなくなったため更新せず、既に存続期間が満了している。甲第4号証の商標は、「スウッシュ」を花びらのように組み合わせて「NIKE」の文字と結合した商標であって、本件商標がこの請求人の過去の商標に酷似することは一見して明らかである。また、この商標は、登録第1371518号の「スウッシュ」のみから成る商標(甲第5号証)の連合商標として登録されていた。よって、特許庁においても、「スウッシュ」の図形商標と、それを花びらのように組み合わせて成る商標が類似すると判断されていたことがわかる。
(2)商標の外観の類否について判断する際に、商標の要部を抽出して行う観察手段は、商取引が時と場所を異にするものである点に鑑みれば、当然に容認されるものである。しかして、本件商標について視覚上、特に注意を惹き、識別標識として強く印象に残る部分は、中央部に位置する請求人の著名商標である「NIKE」の文字であり、また「スウッシュ」の図形である。なぜなら、需要者は、本件商標には著名商標と同一の商標が含まれている、と記憶し、その他の特に識別力の強くない文字は需要者の記憶に留まらないからである。本件商標の場合は、特に文字部分全体の「WALK IN THE NIKE DOG」が何を意味するか、需要者には理解されないと考えられ、独自の観念が直ちに生ずるものではないので、尚更である。
本件商標は、著名商標「NIKE」及び同じく著名な図形商標「スウッシュ」を含むものであることから、請求人の商標と相紛らわしいものであることは明白である。
(3)請求人、ナイキ・インコーポレーテッド(NIKE,INC.)は、「運動靴、運動用特殊靴」、「被服、運動用特殊衣服」等について世界的に著名な商標「NIKE」及び「SWOOSH」(スウッシュ)と呼ばれる図形商標の所有者である。この「スウッシュ」と呼ばれるナイキのシンボルマークは、ギリシャ神話の勝利の女神NIKEの翼を表わしている(甲第6号記)。
「スウッシュ」は、単独で出願人の登録商標となっており(甲第2号証の1及び同号証の2)、出願人のテレビコマーシャルでも単独で印象的に用いられている。請求人は、「スウッシュ」があまりに著名化したため、その読み「SWOOSH/スウッシュ」をも保護する必要があると考え、欧文字の「SWOOSH」の欧文字及び片仮名について同じく第25類に登録しているほどである(登録第4256037号及び登録第4256038号、甲第7号証)。
請求人は「スウッシュ」商標を、外延のみ黒線で表わした態様(甲第2号証の2)、上部に「NIKE」の文字を配した態様(甲第2号証の3)、更にその下部に「AIR」の文字を配した態様(甲第2号証の4)等で、多角的に商標登録を受けている。
このように、「スウッシュ」は請求人の重要な図形商標である上に、「NIKE」の文字をも含む本件商標が指定商品に使用された場合、請求人の関連商品であると誤認されるおそれが極めて高いものである。
請求人の製品については、本件商標出願前に、新聞雑誌等で広く報道されているように、「ナイキ」のシューズは、青少年の間で一つのブームになり、新しいモデルが発売されるとたちまち売り切れる人気商品となっていたため、1996年の末には、「ナイキ」シューズを狙った窃盗、強盗、また偽物の販売が後を絶たないという、一種の社会現象となっていた (甲第8号証)。また1996年には、ナイキ製品専門の雑誌も発行されていた(甲第9号証)。甲第9号証に明らかなように、ナイキ製品は全国各地の店舗で販売されていた。
本件商標が出願されたのは、1997年3月であるが、特に甲第8号証から、引用商標が本件商標出願前に世間一般の需要者に周知となっていたことは明らかである。従って、本件商標が本件指定商品に使用された場合、ナイキの新しいモデル、珍しいモデルに常に注目している需要者がナイキ製品と誤認混同するおそれが高かったものである。
(4)本件商標に対しては、請求人は先に異議申立てを行っているが(平成10年異議第91980号)、これに対しては以下のような決定がなされている。
本件商標中の「WALK IN THE NIKE DOG」の文字部分は、同じ書体、大きさで一連に書されているものであり、不可分一体の構成よりなるものというべきであるから、本件商標は、申立人の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。
引用各商標が本件商標の登録出願時に申立人の業務に係る商品「運動用特殊靴」等の商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたとしても、本件商標と引用各商標とは、本件商標中の6枚の花びらを組み合わせた如き図形部分にしても、全体で一図形を構成しているものとみるのが自然であるから、その外観、称呼及び観念のいずれからしても十分に区別し得る商標であるから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品が申立人又は申立人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれのないものであり、かつ、不正の目的をもって使用するものとはいえない。
この決定では、引用各商標が取引者・需要者の間に広く認識されていたことは正しく認定されているが、その余の判断は、この決定の直後の審査から適用されている、特許庁の改正審査基準に照らして(平成11年7月1日の審査から実施)誤りである。
すなわち、改正審査基準においては、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の著名な商標の部分が既成の語の一部となっているもの、又は指定商品との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものを除く。」とされている。
従って、本件商標の文字部分がたとえ「不可分一体の構成よりなるもの」であるとしても、また、図形部分が「全体で一図形を構成しているものとみるのが自然である」としても、上記基準に照らせば、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うべきものである。
更に、本件商標の場合は、上記基準の但し書にも該当しないことは明らかである。すなわち、本件商標において「NIKE」の部分は既成の語の一部となっているものではない。すなわち、「WALK IN THE NIKE DOG」という既成の諺や慣用句があるわけではない。逆に、この文言は意味不明であって、「NIKE」の語を挿入する必然性はなく、著名商標にあやかろうとの意図は明白である。
また、指定商品との関係においては、本件指定商品である「愛玩動物用被服類」については、近頃ではシャネルやグッチなどの著名ファッションブランドが犬の首輪などを販売していることもあり(甲第10号証)、ナイキブランドの犬の靴、犬の首輪があっても不思議ではない、と誤認されるおそれが十分ある。
(5)なお、被請求人は、本件商標と同一の商標について第25類に商願平9-106081号を出願しているが、この出願は拒絶査定されている(甲第11号証)。出願書類が廃棄されているので、正確な拒絶理由は不明であるが、商標法第4条第1項第15号により拒絶されたものと考えられる。本件商標の指定商品との関係でも、請求人の商品と出所混同を生ずるおそれがあることは上述のとおりであるから、本件商標も同じく登録されるべきではなかったものである。
2 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、請求人の著名な略称である「NIKE」の文字を含むものであり、請求人の承諾を得ているものではない。「WALK IN THE NIKE DOG」の文字部分は、同じ書体、大きさで一連に書されているものであるとしても、上述したように、既成の諺や慣用句があるわけではなく意味不明であって、不可分一体の構成よりなるもの、と見るべき理由はない。よって、本件商標は、請求人の著名な略称を含む商標に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の商品を表示するものとして日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されている「NIKE」及び「スウッシュ」の図形商標と類似の商標である。両商標の著名性に鑑みれば、本件商標の出願前から登録に至るまで、わが国の法人である本件商標権者が引用商標の存在を知らないということは考えられない。よって、本件商標は著名な外国商標である引用商標の顧客吸引力に只乗りしようとの不正の意図をもって使用をされるものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
特に外国商標については、わが国において出願されていない商標を、正当権利者の商品、あるいは正当権利者が使用していない商品について先取りして出願したり、その一部の文字又は図形を取り入れて自己の商標として出願するといった模倣盗用行為が頻繁に行なわれているのが実情である。そのような外国商標の盗用は国際信義に反する行為でもあり放置しておくことはできない。
愛玩動物用であるとは言え、アパレル関係の商品を扱う当業者であれば、たとえ一般的な商標の類否基準では非類似とされ得るような商標であっても、引用商標の著名性に鑑みて、引用商標と同一の文字及び図形をその構成中に含む商標を使用することは競業秩序の維持という観点から避けるべきものである。
また、外国著名商標である引用商標に化体した信用が、内国の紛らわしい商標により損なわれることは、また国際信義に反することである。すなわち、請求人は、オリンピック選手に提供するような陸上競技用シューズやウエアで名声を博しているものである。すなわち、請求人は、オリンピック選手に提供するような陸上競技用シューズやウェアで名声を博しているものである(甲第9号証参照)。一方、著名商標「NIKE」に、請求人の製品イメージと全く異なる「DOG」の文字を組み合わせた商標を、やはり請求人の製品コンセプトと異なる「愛玩動物用被服類」に使用して、需要者が本件指定商品の出所を請求人と誤認した場合には、請求人の名声が著しく損なわれるおそれがあるものである。
5 むすび
本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第8号、同第19号及び同第7号の規定に違反してなされたものであるから、無効とされるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し、何等答弁していない。

第4 当審の判断
本件商標の構成は、別掲のとおり図形と文字の組み合わせよりなるところ、両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情はなく、それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、本件商標は、「WALK IN THE NIKE DOG」の文字部分より、「ウォークインザナイキドッグ」の称呼を生ずるものと認められる。
ところで、請求人提出の各号証を総合すれば、本件商標構成中に含まれる「NIKE」の文字は、請求人がスポーツ関係を中心とした関連の商品、例えば、はき物、被服、運動用具等に使用され、本件商標の登録出願前より、取引者、需要者間に広く認識されているものであることを認めることができる。
そこで、本件商標の「WALK IN THE NIKE DOG」文字部分をみるに、これらの文字構成から既成の諺や慣用句としての意味を有するものとは認められず、かつ、全体として特定の意味合いを看取し得ない。
そうとすれば、「WALK IN THE NIKE DOG」の文字を有して成る本件商標をその指定商品について使用された場合、これに接する取引者、需要者は、構成中の著名性の認められる「NIKE」の文字に着目し、また、文字部分全体の冗長性よりして、主としてスポーツ関連の商品を扱う請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同するおそれがあるものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標

審理終結日 2003-05-15 
結審通知日 2003-05-20 
審決日 2003-06-02 
出願番号 商願平9-35372 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (018)
最終処分 成立  
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 岩崎 良子
小林 薫
登録日 1998-07-31 
登録番号 商標登録第4171376号(T4171376) 
商標の称呼 ウオークインザナイキドッグ、ウオークインザニケードッグ 
代理人 小出 俊實 
代理人 西村 雅子 
代理人 石川 義雄 
代理人 鈴江 武彦 

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