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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z16
管理番号 1090371 
審判番号 無効2001-35079 
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-02-23 
確定日 2004-01-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4393217号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4393217号商標(以下、「本件商標」という。)は、「共済住宅情報」の文字を標準文字により書してなり、平成11年2月12日に登録出願され、第16類「雑誌、新聞」を指定商品として、同12年6月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第28号証(枝番を含む)を提出した。
1 請求の理由
請求人はその発行に係る不動産情報誌(以下「請求人雑誌」ともいう)について、長年に亘って「住宅情報」(以下「引用商標」という。)をその題号(商標)として使用しており、その結果、引用商標は、本件商標の出願前から請求人雑誌を表示するものとして周知著名となっていたものである。そして、商標権者が本件商標をその指定商品に使用する場合には、当該商品があたかも請求人または請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせる虞がある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、同法第46条の規定によりその登録を無効とされるべきである。
2 引用商標の著名性について
(1)引用商標は、商品「雑誌」に大々的に使用されている。当該雑誌は土地・建物に関する情報を掲載したもので、当該雑誌の題号として、請求人により使用されている。
請求人雑誌は1976年1月に月刊として創刊され、その後首都圏版については1979年9月から毎週発行されて現在に至っている。当初は首都圏の不動産情報を掲載する首都圏版だけであったが、需要の高まりに応じる形で1978年に関西版を、1981年に東海版・北海道版及び九州版(最近、福岡版と改称するとともに、2000年6月から北九州版を追加)を、1982年に東北版を、1990年には中国版(現在は広島版)を、それぞれ発売し、ほぼ日本全国をカバーする。現在、首都圏版と関西版は毎週発行され、それ以外は月刊または隔週の発行となっている。最近の発行部数は、首都圏版が9.2万部、関西版が3.5万部、東北版が2.25万部、東海版と広島版がそれぞれ2万部、北海道版が1.9万部、福岡版が1.6万部であって、北九州版は発行から間もないこともあって0.65万部であるが、いずれにしても、大部分の個人にとって「一生に一度の買い物」といわれる不動産の情報誌としては、極めて膨大な部数である(甲第2号証)。また、請求人雑誌の売上高(広告料収入を含まず)は創刊以来順調に推移しており、平成6年には10億円を突破した。 甲第3号証の1〜23は1976年以降の各年に発行された請求人雑誌(首都圏版)の表紙と裏表紙の写しであり、書体は若干の変遷が見られるものの、特に変哲のない文字で一見して「住宅情報」の題号と認識される形態で表示されている。
(2)請求人は長年に亘って請求人雑誌の広告宣伝に努めてきている。主な広告媒体は新聞、テレビ、電車の中吊り広告などであり、首都圏版だけで見ても広告宣伝費の総額は昭和50年代末から平成3年頃までは毎年十数億円もの巨額に上っていた。その後は、請求人雑誌が市場を確立したことに伴う広告の必要性の低下や不況の影響を受けたことなどもあって減少してはいるが、それでも首都圏版だけで毎年数億円を広告宣伝に費やしている。
新聞広告についていえば、首都圏で発行される朝日新聞と読売新聞に殆ど毎号の広告を掲載しているほか、毎日新聞と日本経済新聞にも時々掲載している。甲第4号証の1〜10は平成4年から最近までの新聞広告の一例であるが、いずれも大きなスペースを割いている。また、中吊り広告も頻繁に行っており、例えば平成7年度は49回発行したうちの42回について実施しており、8年度は50回中の37回といった具合である。山手線や中央線、京浜東北線などのJR線や地下鉄、私鉄の通勤電車を対象に実施していて、その一例を甲第5号証の1〜6として提出する。
さらに、請求人はテレビでの広告もかなり行っている。甲第6号証ないし甲第16号証(枝番を含む。)はその資料である。
(3)請求人雑誌は創刊当時は月刊であったために「住宅情報」そのものが題号として用いられていた(甲第3号証の1〜4)。その後、首都圏版と関西版は毎週発行となり、「週刊」の文字が小さく付加されるようになったけれども、その他の地方版は月刊または隔週刊であり、「週刊」の文字を含まない「住宅情報」そのものを題号として使用している。その一例として、北海道版(甲第17号証の1〜19)、東北版(甲第18号証の1〜18)、東海版(甲第19号証の1〜4)、中国版(甲第20号証の1〜11、平成11年9月号から「広島版」に変更)及び九州版(甲第21号証の1〜8、最近「福岡版」に変更)を提出する。これらは、昭和59年以前に発行されたものを除き、題号の後ろに対象地域を示す言葉(東北版、東海版など)が表示されているが、この種の情報誌が地域性を有することは必然であるから、雑誌の題号として認識される部分は大きく表示された「住宅情報」になることが明らかである。そして、これら地方版が「住宅情報」として認識される以上、首都圏版や関西版も「週刊」の文字の有無に拘わらず、「住宅情報」として認識され記億されているものと見ることが至当である。
引用商標が周知、著名となっていることは、新聞や他の雑誌の記事で取り上げられ頻度が高いという事実によっても裏付けられている。甲第22号証及び甲第23号証(枝番を含む)はその資料である。
(4)請求人雑誌は、不動産物件の需要者(消費者)にとっては商品であるとともに、不動産業者などの取引者にとってみれば広告媒体でもある。即ち、請求人雑誌の取引者には、不動産物件の売主や仲介業者などが含まれるのであるが、それら取引者の間で請求人商標が広く知られていることは、甲第24号証の1(社団法人日本高層住宅協会の証明書写し)及び2(社団法人首都圏不動産公正取引協議会の証明書写し)からも明らかである。このように、引用商標は、請求人雑誌の商標として周知著名となっているのである。
3 出所混同の虜について
(1)本件商標は「共済住宅情報」の文字よりなるものであるが、そのうち、「共済」は「相互に助け合い、力を合わせて事をなすこと」(甲第25号証)という意味合いの言葉であって、公務員の共済組合や共済年金などで用いられるほか、生活協同組合の行う共済事業(保険に近似した制度)でも用いられている言葉である。本件商標の審査において発せられた拒絶理由通知書では、本件商標が「共済組合が所有する住宅の情報」の意味合いを容易に想起させる旨が指摘された(甲第26号証)。共済組合が、所属組合員に対して住宅取得資金を貸し付けることは一般に行われているようであるが、住宅を所有して組合員に貸与する(或いは分譲する)といった事実があるのかどうか、請求人が調べた限りでは確認できなかった。インターネットのホームページを検索してもそのような事実が発見されなかったことからすれば、少なくとも、共済組合が組合員のために住宅を所有することは一般的なことでないのは明らかである。因みに、住宅開発・供給を目的とする生活協同組合も存在しているが、「共済」なる言葉は用いられておらず、上記した保険類似の共済事業を行う生活協同組合の名称と区別している(甲第27号証)。このような事情からすれば、「共済住宅」なる用語が実在し社会的に認知されているなどとは到底言えないし、「共済住宅」なる文字から一定の具体的意味合いが想起されると見ることもできない。してみれば、本件商標は「共済住宅」と「情報」とに分離して理解されるものではなく、馴染みのある「共済」の語と、全体として語呂良く発音でき、熟語的な意味を有し、かつ請求人の著名商標である「住宅情報」とを組み合わせたものと把握され認識されるものである。換言すれば、本件商標は請求人の著名商標「住宅情報」に、「相互に助け合い、力を合わせて事をなすこと」いった抽象的な意味合いの「共済」を結合させたものと認識されるのである。そして、「住宅情報」が請求人の著名商標であるが故に、これに抽象的な意味合いの言葉「共済」を付加したにすぎない本件商標をその指定商品(特に雑誌)に使用した場合には、当該商品が請求人または請求人と何らかの関係を有する者の発行に係るものであるかの如く、商品の出所について混同させる虜がきわめて大きい。
このことは、請求人雑誌に「首都圏版」「関西版」などの付記的な言葉が表示されているという事実や、請求人が姉妹紙として「女性のための住宅情報」や「住宅情報賃貸版」等を発行しているという事実(甲第2号証、第28号証)からも明らかであろう。
(2)甲第2号証には、現在我が国で発行されている主な不動産情報誌の概要が掲載されているが、「住宅情報」の文字を含む題号を用いているのは請求人雑誌及びその姉妹紙だけである。「住まい情報」を含む題号は、一地方で発行されている雑誌で幾つか見受けられるけれども、「住宅情報」を用いているのは請求人のみであるから、請求人商標が実際の商取引の現場において極めて強い出所表示機能を発揮しているであろうことは、容易に想像できる。「住まい情報」と「住宅情報」とでは明らかに印象が異なるばかりか、
他の出版者が請求人商標との区別を図るべく、意図的に明確に異なる商標(題号)を採択していることが推測される。
(3)このように、本件商標が指定商品に使用された場合、請求人との間で出所混同の生じる虜は極めて高いと言わざるを得ない。
(4)引用商標は商品「雑誌」についての著名商標であるから、本件商標「共済住宅情報」がその指定商品に使用された場合には、当該商品が請求人またはこれと何らかの関係がある者の出所に係るものであるかの如く混同が生じることは避けられない。
それ故、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであって、同法第46条により無効とされるべきである。
4 被請求人の平成13年5月22日付け答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、請求人が使用している商標は「週刊住宅情報」であって
「住宅情報」ではないと言うが、失当である。上記2の(3)及び甲第17号証ないし21号証から明らかなように、請求人は「週刊住宅情報」の題号も使用しているが、「週刊」の文字を含まない「住宅情報」も使用している。首都圏版と関西版では題号中に「週刊」の文字が加わっているけれども、「住宅情報」に比べて著しく小さく、かつ縦書きで表示されており、一見して「住宅情報」の部分が目立つ態様である。本来的に自他商品識別力を有しない標章を、使用によって識別力を獲得したとして登録を認める場合には、出願商標と使用に係る商標の同一性を厳格に考えるのが特許庁の実務である。これは、実際の使用によって識別力を獲得したものである以上、それと厳密に同一の商標だけが識別力有りとして登録されるべきであるからである。しかしながら、そもそも識別力を有する商標が、使用によって周知著名となった場合、混同の虜を判断するのに使用に係る商標と厳密に同一のものだけを対象として比較すべし、という理屈はない。商標法第4条第1項第15号の適用を判断するに当たっては、どのような商標が周知著名となっているのかこそが問題とされるべきであり、表面的な使用態様で比較すべきでないことはむしろ当然である。
本件では、上述のような事情から「住宅情報」の部分が周知著名となっていると考えられるばかりでなく、新聞や雑誌の記事でも「住宅情報」として取り上げられているのであるから、雑誌の商標として「住宅情報」が広く知られていることは疑問の余地がないところである。従って、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かを判断するに当たって比較すべき
は、まさに「住宅情報」に他ならない。被請求人が指摘するように、請求人が「住宅情報」を商品「雑誌」について出願したのは、本件商標よりも後である。しかし、これは、「週刊住宅情報」(「週刊」の文字は縦書きで小さく表されている)を古くから登録しており、商標登録としてはこれで足りると考えていたからであって、「住宅情報」の使用を開始したのが最近ということではない。「週刊」を含まない「住宅情報」は、1976年の創刊時から使用している(甲第3号証の1)。
(2)特許庁の実務において、雑誌をはじめとする定期刊行物の商標について、識別力類似性の判断が他の商品と異なっている面があることは請求人も承知している。需要者が書店等で直接商品を視認して購入するという、定期刊行物の取引の実情が反映されているのであろうという被請求人の主張も、正当なものと思われる。従って、定型的な類否を判断する商標法第4条第1項第11号を問題とするのであれば、「共済住宅情報」と「住宅情報」とは非類似であって併存できる、との結論は不当なものではない。しかしながら、本件で問題としているのは、周知著名な「住宅情報」との混同のおそれであって、類似性ではない。定期刊行物に関して商標の類似の幅が狭く解されているからといって、周知著名な商標と混同を惹起するおそれがあるかどうかまで、限定的に解釈すべき理由は何もない。
(3)審判請求書で述べたとおり、「共済住宅」なる用語が実在し社会的に認知されているといった事情は皆無である。即ち、本件商標中の「共済」と「住宅」または「住宅情報」とは、観念的に繋がらないのであって、これらが常に一連のものとして認識されるとは到底言えない。被請求人が提出した乙第5号証及び同第6号証によれば、被請求人を代表者とする「共済グループ」は、公務員などの共済組合の組合員を対象として、雑誌の頒布や各種物品の販売、不動産事業等を営んでいることが窺われる(しかし、その実体は純然たる民間企業と考えられる)。グループ内には「株式会社共済住宅情報」なる企業もあるが、乙号証から判断する限り、その業務は一般の別荘の販売(または販売斡旋)であって、共済組合の不動産といったものでは全くない。
つまり、被請求人目ら、「共済」と「住宅情報」とを別個の意味合いで使用しているのである。この事実からしても、「共済」「住宅情報」とが結びつかないことは明白である。
(4)上述した定期刊行物の取引の実情を勘案すれば、本件商標と請求人商標とが商標自体としては区別される蓋然性はあるかも知れないが、購入に際し、一般に小さく表示される発行元まで確認することは稀であろう。そして、商標法第4条第1項第15号は、いわゆる狭義の混同だけでなく広義の混同にも適用されるというのが通説・判例であり、特許庁の実務でもある。この観点から考察すれば、本件商標「共済住宅情報」を付した雑誌が・周知著名な「住宅情報」と同一の出所から発行されているものであるかの如く、誤認混同されるおそれは極めて現実的である。特に、請求人が姉妹紙として「女性のための住宅情報」や「住宅情報賃貸版」等を発行しているという事実(甲第2号証、第28号証)や、実際の市場において、「住宅情報」の言葉を含む題号の不動産情報誌(雑誌)は請求人の発行に係るもの以外には存在しいないこと(甲第2号証)などに照らせば、少なくとも広義の混同が生じるであろうことは疑問の余地がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 本件商標について
本件商標は標準文字を用いて一連ー体に左横書きされた「共済住宅情報」の構成からなる。そして、本件商標の構成中、「共済」の部分は、請求人も指摘しているように「相互に助け合い、力を合わせて事をなすこと」を意味するものとして周知である。また、本件商標の構成中、「住宅」の部分は、周知のように「人が住むための家」を意味している。さらに、本件商標の構成中、「情報」の部分は、これも周知のように「状況に応じた適切な判断を下したり、行動をとったりするために必要とされる知識」を意味している。しかも、「共済」の語は、上記意味合いがあることから「共済組合」や「共済保険」、「共済事業」等々のほか、「県民共済」や「市民共済」などというように、他の語との馴染みがよく、相互に結び付いて造語を生成しやすいものとなっている。つまり、本件商標は、「共済住宅の情報」もしくは「相互扶助住宅の情報」といったような意味合いを容易に知得させながら、「キョウサイジュウタクジョウホウ」として常に一連一体に読み下すことができる被請求人の採択にかかる造語商標であること明白である。しかも、本件商標は、指定商品「雑誌、新聞」の題号として使用されるものであるが故に、常に一連一体となった「共済住宅情報」のもとで自他商品識別力ありと認定されたものである。
2 引用商標の著名性について
請求人が周知著名であると主張している引用商標は、「住宅情報」ではなく「週刊住宅情報」として特定されるべきである。また、雑誌の題号として使用されている事実関係を勘案するならば、これを要部観察することはできず、常に一連一体となった「週刊住宅情報」の全体構成のもとで自他商品識別力を発揮しているものであるといわなければならない。すなわち、引用商標が真に周知著名性を取得しているか否かは定かでないものの、本件商標との関係で比較対象となるべき商標の構成は、あくまでも「週刊住宅情報」でなければならない。したがって、本件審判において請求人が「住宅情報」を引用商標として特定するのは失当である。
3 出所混同の虜について
本件商標は、その指定商品を「雑誌、新聞」としている以上、常に一連一体となった「共済住宅情報」のもとで唯一の自他商品識別力を発揮しているというべきであり、「住宅情報」に「共済」を単に付加して構成されたものであるとする請求人の主張は、「共済」の語が先に述べたとおり造語を生成しやすいことからしても合理的な理由を欠くものであると思料する。このような被請求人の主張は、例えば登録第3153588号商標「賃貸住宅情報」(乙第9号証)のほか、登録第3204820号商標「住宅情最前線」(乙第10号証)」や登録第4248179号商標「住宅情報最前線}(乙第11号証)」が、引用商標との関係を問われることなく現に有効に存続していることなどからもその正当であることを窺い知ることができると考える。
したがって、本件商標「共済住宅情報」は、「週刊住宅情報」が仮に周知著名であるとしても、この引用商標との関係で出所混同を生ずる虜は皆無である。また、引用商標が常に一連一体なものとして把握されるべき本件商標「共済住宅情報」との間で出所混同を生ずる虜は上記同様に皆無である。
4 商標権者と本件商標との関係について
商標権者は、「宮坂倭男」氏を代表者として設立された「共済法規研究会」による広報活動の一環として発行されていた「月刊共済ニュース」(乙第4号証)を引き継ぎ、例えば1995(平成7年)年2月号の「月刊共済ニュース」からも明らかなように、その発行人となっている(乙第5号証)。
また、本件商標権者を発行人とする「月刊共済ニュース」は、その発行部数も約700,00部を超え、全国の多くの共済組合員に愛読されている(乙第6号証)。さらに、本件商標権者は、乙第4号証中の第69頁に示されている「株式会社共済住宅情報」の代表者をも兼務するものであり、当該会社は、不動産取り引きを行っている。このように、本件商標権者は、各種の共済関連事業と深い関わりをもつ者であり、当該事業の一環として本件商標「共済住宅情報」を取得しているほか、英語等で「共済」を意味する「MUTUAL」をも商標登録(乙第7号証,乙第8号証)するなど、共済関連事業に対する強い使命感と関心とをもって今日に至っている。
5 以上に述べたところからも明らかなとおり、請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではないので、商標法第46条の規定により無効にされるべきではない。
第4 当審の判断
1 引用商標の著名性について
請求人は、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時、需要者間に請求人の業務に係る商標として周知著名なっていたと主張しているのでこの点について検討する。
(1)請求人は、1976(昭和51年)年1月に月刊として創刊した「雑誌」に引用商標を永年使用した旨主張するが、請求人の提出に係る甲第3号証の1は、1976(昭和51年)年2月号の雑誌の表紙の写しであり、その上部には「住宅情報 1976 2」、「《比較研究》今春分譲の物件情報」、右下部に斜め書きに「普及版」等の表示があるが、奥付けの表示も明らかにされておらず、発行者が特定できない。同じく甲第3号証の2は、雑誌の表紙の写しであり、発行年月日が特定されず、「住宅情報」、「通巻19号」、「毎月1日発行」、「マイホーム購入のための最新物件情報誌《関東首都圏版》」の文字が表示されているのが確認できるが、発行者が確認できない。
同じく甲第3号証の3は、昭和53年2月1日発行の雑誌の写しであり、「住宅情報」、「2月号」、「マイホーム購入のための最新物件情報誌《関東首都圏版》」の記載及び下部に黒塗り菱形図形内に羽根を上下に広げた鳥の図形と「日本リクルートセンター」の文字が確認できる。同じく甲第3号証の4は、4月15日発行の雑誌の写しであり、「住宅情報」、「首都圏版」、「4・15」文字等が表示され、裏表紙には「住宅情報」、「4月15日発行」、「日本リクルートセンター住宅情報事業部」、「定価200円」の文字等の表示が確認できる。同じく甲第3号証の5ないし23号証は、昭和55年4月30日〜平成10年7月22日に発行された雑誌の表紙及び裏表紙であり、共通して「住宅情報」の左側に「週刊」の文字が縦書きで表示され、「首都圏版」、「発行月日」、「定価」、「日本リクルートセンター住宅情報事業部」、「(株)リクルート」または「リクルート」あるいは黒塗り菱形図形内に羽根を上下に羽根を広げた鳥のと思しき図を白抜きした図形及び「RECRIUIT」の文字等の表示が確認できる。
また、甲第4号証の1ないし10は、請求人雑誌の新聞広告の写しであるが、共通して「住宅情報」の左側に「週刊」の文字が縦書きで表示され、「首都圏版」、「発行月日」、「定価」あるいは菱形図形内に羽根を上下に羽根を広げた鳥のと思しき図を表した図形及び「RECRIUIT」の文字等の表示が確認できる。
甲第5号証の1ないし6は、請求人雑誌の中吊り広告の写しであるが共通して「住宅情報」の左側に「週刊」の文字が縦書きで表示され、「首都圏版」、「発行月日」、「定価」あるいは菱形図形内に羽根を上下に羽根を広げた鳥のと思しき図を表した図形と「RECRIUIT」の文字等の表示が確認できる。また、甲第5号証の1にはインターネットでらくらく住まい探しihttp://www.recuit.co.jp/jj/の表示も確認できる。
甲第6号証(枝番を含む)ないし甲第16号証(枝番号を含む)は、テレビ広告のスクリプトと放送通知書の写しであるが、「週刊住宅情報 1995『もっと広い家』15”」、「同『もっと安い家』15”」、「同『もっと近い家』15”」、「週刊住宅情報 公園(ノウハウ)篇 30’」(甲第9号証の1)(甲第8号証)、「週刊住宅情報 商店街(ライフスタイル)篇 30’」(甲第9号証の2)「週刊住宅情報 ソファ(比較検討)篇 30’」(甲第9号証の3)、「週刊住宅情報 公園(ノウハウ)篇 30’」(甲第9号証の4)、「週刊住宅情報 商店街(ライフスタイル)篇 大阪 15’」(甲第9号証の5)、「週刊住宅情報 ソファ(比較検討)篇 15’」(甲第9号証の6)ほか「住宅情報 東海版 公園(ノウハウ)篇 15’」(甲第11号証の1)、「住宅情報 東海版 ソファ(比較検討)篇 15’」(甲第11号証の2)において広告された内容は「週刊住宅情報」または「住宅情報 東海版」であることが確認できる。
甲第17号証(枝番を含む)ないし甲第21号証(枝番号を含む)は、「住宅情報」のほか「北海道」「東北版」「東海版」「中国版」「広島版」「九州版」の記載及び「発行リクルート」の記載が確認できる。
(5)その他請求人の提出に係る各書証を総合勘案しても、請求人が自己の発行にかかる「雑誌」について、創刊号より「住宅情報」の文字を使用していたことが認められるものの、新聞、電車の中吊り広告、テレビ放送により大々的に広告宣伝されているのは「週刊住宅情報」であり、「黒塗り菱形図形内に羽根を上下に羽根を広げた鳥の図」と「日本リクルートセンター」、「RECRUT」及び「リクルート」の文字の記載をもみられることからすれば、仮にかかる態様の下で「週刊住宅情報」または「リクルートの週刊住宅情報」として需要者間に広く知られるに至っている場合が有り得るとしても、引用商標を構成する「住宅情報」の語のみが、取引者、需要者間に請求人の業務に係る商標として周知、著名になっていたものということはできない。
さらに、「住宅情報」の語は、これに接した取引者、需要者をして、先ず「住宅に関する情報」であることを容易に想起させるというのが自然であり、商品「雑誌」に使用しても、単に商品の内容表示とのみ理解され、自他商品の識別機能が希薄なものといわなければならない。このことは、請求人が、創刊当初「住宅情報」のみを使用していたにも関わらず、その後大々的に使用、宣伝したのは「週刊住宅情報」であり、姉妹紙として「女性のための住宅情報」や「住宅情報賃貸版」等を発行しているという事実(甲第2号証、第28号証)のように、「住宅情報」単独で使用してこなかったことからも裏付けられる。
2 結論
本件商標は、前記のとおり「共済住宅情報」の文字を同書、同大、同間隔で一体に表してなるものであり、その全体の構成文字より生ずる「キョウサイジュウタクジョウホウ」の称呼も、とりわけ冗長ともいえず淀みなく一連に称呼しうるものであるから、その構成全体として一連一体の商標と認識されるというのが相当であるのに対し、引用商標が著名な商標ということができないこと前記のとおりであるから、本件商標は、その構成中に「住宅情報」の文字を有するとしても、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、引用商標を連想・想起したり、また、その商品が請求人及び請求人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く需要者の間に商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることは出来ない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2003-10-29 
結審通知日 2003-11-04 
審決日 2003-11-20 
出願番号 商願平11-11835 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Z16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 良弘原田 信彦 
特許庁審判長 小林 薫
特許庁審判官 岩崎 良子
林 栄二
登録日 2000-06-23 
登録番号 商標登録第4393217号(T4393217) 
商標の称呼 キョーサイジュータクジョーホー、キョーサイジュータク 
代理人 黒川 恵 
代理人 鈴木 知 
代理人 熊谷 浩明 
代理人 原島 典孝 
代理人 一色 健輔 

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